生物化学工学科における実践型専門英語教育への取り組み 群馬大学工学部 生物化学工学科 武野宏之 1.はじめに 生物化学工学科では、 「現代的教育ニーズ取り組み支援プログラム(現代 GP)」に採択された 「産学連携による理系専門英語の実践型教育」の方針に基づき、今年度前期において「課 外オープントレーニング講座アドバンスコース」、および後期において「技術英語(2 年生 対象)」を開講した。前者においては生物化学的な専門内容のリスニング、スピーキングを 学習すること、後者においては少人数のグループ別に分かれた英語によるプレゼンテーシ ョンを行うことを目的とした。 2.課外オープントレーニング講座アドバンスコースの概要 当学科のスタッフが生物化学に関連した内容の会話形式の自主教材を製作し、本大学のネ イティブ専任英語講師の協力の下、教材を録音、音源化した。各教材の内容は以下の通り である。生物化学を専攻する学生にとって、重要な専門用語を用いた短い文から構成され た Q&A 形式の英会話教材になるように努めた。内容的には大学院生も参加できるレベルの ものとなっている。さらに、聞き取りの困難な学生への対応策として、音声ソフトを用い てスローバージョンも用意した。 Program 1 タンパク質の吸光度測定による定量分析 Program 2 遺伝子とセントラルドグマ Program 3 細胞について Program 4 放射性標識実験の紹介 Program 5 生物化学系研究室訪問 3.「技術英語」の概要 最初に全受講生(約 120 名)を対象に、実践的な英語学習の動機付けとして「英語で仕事体 験談」という題目で、企業における英語の重要性についての特別講演を行っていただいた(元 伊藤忠商事:倉成正也氏)。実際の講義は第 2 回目から行い、以後クラスを 2 つに分け(各 60 名程度) 、専任教員(桂、井上)が担当した。前半では、主に専門分野の内容を教材にし た講義・演習(読解、作文、リスニング、小テスト、スライド作成法など)を行った。後半 の数回分については、クラスをさらに1グループあたり 4~5 人の小グループに分け、英語に よるプレゼンテーションを目的としたスライドの作製を行った(図1)。このとき、民間企業 において技術英語の豊富な経験を有する 3 人の非常勤講師[矢嶋照雄氏(サンデン株式会社)、 針ケ谷文子氏(東機貿)、設楽真佐代氏(曙ブレーキ)、全て本学科の卒業生]の協力のもと でテーマの立案、ストーリー作製、 スライド作製、発表練習、そして発 表を行った。図 2 は、実際に作成し たスライド例である。演習授業環境 は、3 人の講師が 4 グループ(1 人の 講師あたり約 15 名の学生を指導)を 担当し、それぞれ講義室を用意した。 また、12 グループに対して 7 台のノ ート PC しか準備できなかったが、不 足分は学生の個人使用の PC を使用 した。必要時には電子辞書を貸与し た。大多数の 2 年生は、日本語の発 表はもちろんのこと、英語でスライ ドを作成し、かつ英語で発表という 機会は初めての経験であった。この ため、かなりレベルが高いと感じた ようであるが受講生全員がこのハードルをクリアした。全講義終了後にアンケートを独自に とったところ、ほとんどの学生にはとても良い経験になったようである。 また、担当教員 と非常勤講師は時間外に学生のスライドの添削を電子メール等で行ったため、非常に負担の 大きいものでもあった。しかしながら、学生の満足度を考慮すると無駄ではなかったと感じ た。 Types of Pheromones Releaser pheromones Sex pheromones, Trail pheromones, Alarm pheromones, Aggregation pheromones, etcÉ Primer pheromones Caste specialization pheromones, etc É . ーGlycolysis ー Glycolysisー Chromosome abnormalities chromosomal anomaly arise ↓ Glycolysis is anaerobic respiration. Glycolysis is anaerobic Chemical Reaction inGlycolysis C6H12O6 2C3H4O3 + 4〔H 〕 + 2ATP ・・・ (1) 4〔H〕 Glycolysis is performed in cytoplasm. several disorders Example ・ Turner syndrome(monosomy X) ・ Down syndrome( syndrome(an extra chromosome of 21st) 21st) ・ Klinefelter's syndrome( syndrome(male has has an extra X sex chromosome) chromosome) 図 2. 作成したスライド 4.まとめと今後の課題 上述のように、英語によるプレゼンテーションは学生、および講師にとって負担の大きい ものであったが、従来の受身型の授業に比べて学生が積極的に授業に取り組んだことは非 常に有意義な経験になったと思われる。今後の課題として、本授業で学んだことをこの場 限りでなく更に持続、発展できる場を提供できるように努めなければならない。
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