演 題 番 号 :29 演 題 名 :と畜申請時における病歴及び投薬歴の申告状況と投与薬剤の残留モニタリング検査 発表者氏名:○倉瀧英人 廬原美鈴 発表者所属:島根県食肉衛生検査所 1.はじめに:平成 15 年 5 月のと畜場法施行規則の改正に伴い、と畜申請書の記載事項として病歴及び投薬歴 (以下「病歴等」という)が追加され、当所では平成 16 年 8 月 1 日から一般畜の病歴等の申告を受理している。 今回、これまでの病歴等の申告状況と、その間に当所で行った残留抗生物質検査の状況について報告する。 2.材料及び方法: (1)平成 16 年 8 月 1 日∼平成 18 年 3 月 31 日に当所が島根県食肉公社においてと畜検査を 行った牛 9,587 頭(うち病畜 505 頭)と、豚 140,443 頭(病畜はなし)を調査対象とした。(2)一般畜は、病 歴等の申告があったものの出荷者、申告病名並びに投与薬剤を調査、集計した。また、投与薬剤は抗生物質等の 薬効別に分類し集計した。(3)病畜は、それらの投薬歴について一般畜と同様の集計を行った。(4)残留抗生 物質検査は、牛 232 頭(うち病畜 174 頭)、豚 37 頭について、公定法である簡易検査法を用いて行った。 3.成績:(1)一般畜の病歴等の申告頭数は、牛が 469 頭/34 業者、豚が 295 頭/8 業者であった。病名別申 告頭数は、牛は「筋炎」 (338 頭)が、豚は「発熱・食欲不振」 (35 頭)が最多であった。投与薬剤別では、牛は デキサメタゾン(357 頭)が、豚はリンコマイシン(197 頭)が最多であり、また薬効別にみても、それぞれホ ルモン剤(362 頭)と抗生物質(283 頭)が最多であった。 (2)病畜の投与薬剤としてはアンピシリン(116 頭) が最多で、薬効別にみても 155 頭(と畜頭数の 30.7%)に抗生物質の投薬歴があった。(3)残留抗生物質検査 では、病畜4頭が陽性となり、うち1頭は全廃棄に、また残り3頭は内臓のみの廃棄処分となった。 4.考察:豚の病歴等の申告率(0.2%)が一般畜の牛(4.9%)と比べてと低い値を示した。これは、牛と豚の 疾病管理を含めた飼養形態の違いが少なからず関係していると考えられた。一般畜の投薬歴では、牛、豚ともに 特定の出荷者において群単位で投与されていた薬剤が最多の申告頭数となった。また一般畜、病畜ともにアンピ シリンの投薬率が高く、残留抗生物質検査で陽性となった4頭にも投与されていた。先般のポジティブリスト制 度の導入により、様々な動物用医薬品に残留基準が設定されたが、今後はこれらの中でも特に投薬機会の多い抗 生物質を中心に、今回のデータを踏まえて地域の投薬状況に合った残留検査体制の確立が必要であると思われた。
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