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日本動物学会 第 83 回 大阪大会 2012
高校生によるポスター発表
2012 年 9 月 15 日(土)
大阪大学 全学教育推進機構 B 棟
ポスター発表
表彰式
12:00〜14:00
14:00〜14:30
2 階廊下スペース
F 会場(B218 室)
日本動物学会では、年次大会において「高校生によるポスター発表」を開催し、高
校生に普段接する機会が少ないプロの動物学研究者と語る場を提供して、未来の研究
者を育てる活動を行っています。本企画は、毎年全国の多くの高校からの参加をいた
だき、公益社団法人化した動物学会と高校生との交流の場として定着しつつあります。
ポスター発表の内容については、大会ホームページまたは当日配布します特別企画要
旨集の「高校生によるポスター発表」をご覧下さい。なお、ポスター発表終了後に表
彰式を行いますので、高校生の検討をたたえてくださることを期待しております。 1
オオイタサンショウウオの人工授精と発生段階 [所 属]清心女子高等学校(岡山県倉敷市) [発表者]森下 瑶子、大西 優衣 秋山 繁治(顧問) 本研究では、大分県を中心に九州、四国
のごく限られた地域に生息しているオオ
イタサンショウウオの発生段階表の作成
を目指した。オオイタサンショウウオは、
2000 年環境省のレッドデータブックにも
「絶滅危惧Ⅱ類(VU)」に指定されている
種である。 本校では、1997 年からオオイタサンショウ
ウオの卵からの飼育に取り組み、性成熟し
た個体が確保でき、人工授精の方法も確立
できたので、発生段階を受精時から詳細に
記録することが可能になった。人工授精は、
親個体を殺す方法は避け、繁殖期に性成熟
した個体に HCG 注射をして、開腹しないで
絞り出す方法で卵嚢と精子を採取してお
こなった。なお、オオイタサンショウウオ
の発生段階の特徴については、アカハライ
モリ(梶島・江口,1989)とクロサンショ
ウウオ(岩澤・山下,1991)の発生段階図
表と比較して観察した。 2
実験室内で卵から育てたオオイタサンショウウオで繁殖行動を誘発する [所 属]清心女子高等学校(岡山県倉敷市) [発表者]田中 美世、伊藤 頌子 秋山 繁治(顧問) オオイタサンショウウオは 2000 年環境
省のレッドデータブックにも「絶滅危惧Ⅱ
類(VU)」に指定されている種である。大
分県を中心に九州、四国のごく限られた地
域に生息している。多くの繁殖場所が圃場
整備などの人為的な改変で奪われて、近年、
個体数が激減していることが推測されて
いる。1997 年からオオイタサンショウウオ
の卵からの飼育に取り組み、繁殖できる段
階まで成長した個体が確保できたので、実
験室内での繁殖を試みた。飼育下で繁殖さ
せる方法に、①開腹して、卵巣、輸精管を
取り出して受精させる方法②ホルモン注
射などを用いて、繁殖行動を誘発して産卵
させる方法③自然産卵を模した飼育環境
を与える方法がある。本研究では親個体を
殺す方法は避け、③で HCG 注射して、配偶
行動を誘発して水槽で自然産卵させる方
法を試みた。その結果、配偶行動の観察に
成功したので、その特徴について報告した
い。 3
ウミシダの系統解析 [所 属]横浜市立横浜サイエンスフロンティア高等学校・サイエンスリテラシー (神奈川県横浜市) [発表者]大野 李瑛 小島 理明(顧問) 棘皮動物の中で、ウニやヒトデは研究が
進んでいますが、進化的には中枢神経節を
失っています。それに対し、進化的に古く
中枢神経節を残すウミユリ・ウミシダは棘
皮動物の原型の姿を残し、進化的に重要な
位置にある生物です。さらに、再生能力が
高く、ヒトに共通するタンパク質や再生の
仕組みをもつなど、再生医療の研究にも貢
献できる可能性を持っています。本研究で
は、他の生物で研究が進んでいるミトコン
ドリア CO1 遺伝子をウミシダについて解析
しました。遺伝子から見た生物の進化系統
樹を作成し、ウミシダの生物進化での位置
づけをより明らかにし、永く地球上に生き
永らえてきた生命力の謎に迫りたいと思
います。 4
アホロートルの再生についての研究 [所 属]横浜市立横浜サイエンスフロンティア高等学校・理科調査研究部 (神奈川県横浜市) [発表者]岡崎 詩歌、内田 瀬奈、小島 理明(顧問) ウーパールーパーは再生能力を持つこ
とで有名である。本校では、ウーパールー
パーの後ろ足を利用し、再生過程で見えて
くる脱分化や細胞死の様子を光学顕微鏡
で画像化したり、タンパク質分析を行い、
再生途中で変化がみられるタンパク質を
特定することを試みた。 再生過程の中でも主に足の指が形成さ
れていく過程を観察するために、永久プレ
パラートを作成した。ウーパールーパーを
4 個体用意し、それぞれの後ろ左足の第一
関節手前を一斉に切断し、切断後 30 日、
40 日、50 日、60 日の足の再生芽の切片の
永久プレパラートをそれぞれ作成した。切
断初日から 30 日後までのプレパラートは
作成済みで、30 日までのものからは、足の
指が生えてくる前の段階の細胞分裂の様
子などが見られた。また、別のウーパール
ーパー12 個体を用意し、それぞれの後左足
の同じ部分を一斉に切断し、液体クロマト
グラフィーを利用して切断後 30 日、40 日、
50 日、60 日の切断部のタンパク質を分析
し、プレパラートを作成したのと同じ段階
の足のタンパク質の量の変化などを調べ
た。 また、足の切断部位を明確にするために、
四肢が健全なウーパールーパー1 個体をそ
のまま透明骨格標本にした。 5
ニワトリ胚の細胞培養における分化形態の観察 [所 属]横浜市立横浜サイエンスフロンティア高等学校(神奈川県横浜市) [発表者]安部 丈、片田 瑛士 溝上 豊(顧問) ニワトリの胚の培養は、横浜サイエンス
フロンティア高等学校におけるサイエン
スリテラシーⅠの授業におけるニワトリ
胚の観察実験の発展として行った。購入し
た受精卵を用い、発生の日時を追って受精
卵より胚を取り出し培養実験を行った。取
り出した胚は、トリプシン処理により細胞
をバラバラにし、10%の FBS を含む D-MEM
(High Glucose)を用いて培養を行った。
その結果、数種類の分化細胞を確認するこ
とが出来た。 今回、発生の経過日時の違いによる細胞の
形態の違いを顕微鏡写真で報告する。今後、
分化細胞の特定を行うことを検討してい
る。 6
鱗翅目幼虫の色覚と行動に関する研究 [所 属]滋賀県立彦根東高等学校 SS クラス3年生(滋賀県彦根市) [発表者]小栗 あかね、建部 冴巴、力武 里菜 細井 剛(顧問) 上船 雅義(学外指導者、京都大学生態学研究センター研究員) 一般的に鱗翅目の昆虫は視覚器として、
成虫は複眼・単眼、幼虫は側単眼を持つと
言われている。成虫の複眼は多数の個眼か
ら構成されており、形態や色を識別できる
のに対し、成虫の単眼は明暗や光の方向を
感じ取れるだけで、色を識別することがで
きないと言われている。それに対し、幼虫
の頭部側面に見られる側単眼には何種類
かの視細胞が存在し、何らかの色覚が存在
するのでないかと言われていたが、はっき
りと確認されてはいなかった。そこで、
我々は側単眼を持ち、かつ負の光走性があ
ることがわかっている鱗翅目の幼虫にさ
まざまな色や強さの光をあて、その光に対
する幼虫の行動を観察した。その結果、幼
虫が光の波長や強度を側単眼で認識し、行
動を変化させていることで、その生き残り
にいかしている可能性があることがわか
った。 7
細胞内共生菌はハダニのパフォーマンスに 影響を及ぼすのか [所 属]滋賀県立彦根東高等学校 SS クラス3年生(滋賀県彦根市) [発表者]齊藤 航介、木村 健、久保田 智大、中川 章吾 細井 剛(顧問) 上船 雅義(学外指導者、京都大学生態学研究センター研究員) 私たちは生物の共生に興味を持ち、共生
関係にある生物にはどのような利益があ
るのかを研究した。今回の実験では、ナミ
ハダニとその細胞内共生菌の関係を取り
上げ、細胞内共生菌の有無によるナミハダ
ニの産卵数、生存率、食害量、植物選好性
の比較を行った。 その結果、この共生菌はハダニの栄養に
関わるなんらかの役割を担っているのか
もしれないこと、ハダニは共生菌を細胞内
に住まわせることで、いろいろな食草を食
べられるようになり、生活領域が広げるこ
とができるようになった可能性があるこ
とがわかった。 8
プラナリア(ナミウズムシ)の研究 [所 属]岐阜県立岐山高等学校生物部(岐阜県岐阜市) [発表者]青山 朋世、長野 美佐子、森 理紗 中川 和浩(顧問) 岐阜市周辺でプラナリアの DNA 調査をし
たところ、2つのグループに分けられるこ
とが分かった。そのうち、美山円原川では
それらが混在していることから、その理由
を調査・考察した。いろいろと仮説を立て
て調べたが、理由を確定することはできな
かった。また、有性生殖をするプラナリア
と、無性生殖のみをするプラナリアが存在
したため、それらの行動の違いを調べるこ
とにした。有性生殖の方が集合性が高いと
考えて実験を計画して実施したところ、特
に集合性に違いはないことが分かった。た
だ、集合性に対してフェロモンのような何
らかの物質が重要であることや、耳葉の重
要性が確認された。 9
カワニナを通して考える地域の生態系 [所 属]岐阜県立岐山高等学校(岐阜県岐阜市) [発表者]杉山 高大、長野 紗弓 神谷 恭司(顧問) ゲンジボタルの幼虫の餌として琵琶湖
のカワニナを岐阜市内の17ヶ所で放流
していることを知った。岐阜にいるカワニ
ナと琵琶湖のカワニナの生態的違いを研
究するため次の実験を行った。①流れに対
する強さ。②寒さに対する強さ。③ゲンジ
ボタルの幼虫に対する逃避行動。④COⅠ
領域のDNAの変異。これらの結果をもと
に、カワニナを放流している団体に放流を
やめてもらうよう要請し、10年以上続い
た琵琶湖カワニナの放流をやめてもらっ
た。 また、琵琶湖カワニナを放流していた地
点から1kmずつ川を下り、カワニナを採
集した。放流地点では琵琶湖カワニナは見
つからなかったが、下流の川が蛇行し、流
速が弱まる地点で、大量の琵琶湖カワニナ
を発見した。流れに弱い琵琶湖カワニナは
下流に流され、流速が弱まるエリアに定着
していることがわかった。 10
カイコガに対する昆虫由来の有用物質の投与効果 [所 属]東北学院中学校・高等学校生物部(宮城県仙台市) [発表者]小林 敦樹、三浦 弘輔、小島 紀幸 小島 紀幸(顧問) カイコの絹糸成分やセイヨウミツバチ
からのプロポリスなど昆虫由来の生理活
性物質をカイコの幼虫に投与することで,
その後の幼虫発育や繭層重量,成虫寿命な
どにどのような影響を与えているかを研
究してきた。これまでのところ,シルクパ
ウダーやプロポリスを人工飼料を活用し
た摂食法で調査したが,幼虫発育に関して,
発育期間の差や生存率の低下もあり,明確
な有意差がみられたかどうかを正しく判
断することができていなかった。また,寿
命の測定に関しても,各個体の水分量の維
持が要因となり,特に蛾尿排出の影響など
の調査ができていなかった。そこで,これ
までの課題解決をできるだけ図り,生理活
性物質の効果を調査した研究結果をまと
めて報告する。 11
兵庫県に生息するメダカは遺伝的脅威にさらされているか [所 属]兵庫県立神戸高等学校総合理学科(兵庫県神戸市) [発表者]播磨 晃帆、矢野 綾子、横井 裕子 繁戸 克彦(顧問) 絶滅危惧Ⅱ類に指定されているメダカ
(Oryzias latipes)の兵庫県における分布
と生息の現状を把握し,遺伝的多様性の保
持に役立たせるべく,メダカのミトコンド
リア DNA に含まれるチトクローム b 遺伝子
(cyt b)の多型について,兵庫県全域の河
川 等 か ら 採 集 し た も の を
PCR-RFLP(Restriction Fragment Length Polymorphism)法により解析した。4年間
の調査の結果,今まで知られていなかった
兵庫県南部地域のメダカのハプロタイプ
の分布と生息状況について報告する。また,
これらのハプロタイプの系統樹を作成し,
それらの分布に至った経緯を推察した。さ
らに県南部地域数カ所で,東日本型と判定
される個体を採取した。このタイプは市販
されているメダカにも確認されており,こ
れら個体の cyt b の塩基配列を明らかにし,
人為的流入によるものかどうか,従来から
この地域に生息していた集団なのかを考
察する。これらの結果を踏まえ,兵庫県に
おけるメダカの分布に影響を及ぼす因子,
メダカの遺伝子の変遷,そして人為的な他
地域個体の流入の現状についての報告を
予定している。 12
校内の生物多様性保全活動と注目種について [所 属]奈良学園高校 SS研究チーム(奈良県大和郡山市) [発表者]新田 亘、金田 尚己、久保 明也 澄川 冬彦(顧問) 本校は、奈良県矢田丘陵の南東部中腹に
位置し、約 13ha の広い校地面積を持つ、
男女共学の中高一貫校です。元は地域の里
山であった学校林と、校地に流入する3本
の沢並びに、学校創立時に築いた砂防堤に
よってできた里池と、校内に陸上・陸水生
態系の環境要素がそろった恵まれた学校
です。 本校の科学部生物班(SS研究チーム)
は、27 年間にわたり、校地内の昆虫調査を
継続し、標本とリストを作成してきました。
5年前より、学校と共に学校林の里山整備
と生物多様性保全活動を始めたところ、多
くの動植物の回帰が見られるようになり
ました。この 27 年間の昆虫相の変化の原
因や、保全活動の成果を検証するため、昨
年度より生物マップを作成したところ、い
くつかの知見が得られたので、発表します。 13
条件反射を利用したプラナリアの脳機能の測定 [所 属]佐野日本大学高等学校(栃木県佐野市) [発表者]和田 昴大、齋藤 裕紀、西村 和真、平山 優佑、江村 翼、清水 翔平、 井岡 由加里 谷津 潤(顧問) プラナリアは優れた再生能力を持つこ
とで知られている。また、プラナリアは生
物の中で初めて脳を持った生物だという
説が存在する。私たちは、この小さな生物
の持つ生物原始の脳がどの程度の機能を
有しているか興味を持ち、生物の条件反射
を用いてその機能の検証を行った。光と電
気刺激を条件とした条件反射獲得実験で
は、通電の際に自作の電源回路を使用した。
これによって通電間隔を制御し、パブロフ
の犬を参考に実験系を考案・実行した。そ
の結果、プラナリアに条件反射が確認され
た。さらに、プラナリアの条件反射の喪失
とその日数を測定した。また、次の目標と
して、条件反射を獲得したプラナリアを切
断し、脳を持たない半身の再生後に条件反
射が確認できるかどうかの調査を計画し
ている。測定環境を整えるため、眼点の再
生日数を測定した。結果、23℃の環境下で
は平均日数 3-4 日で眼点の再生が確認され
た。 14
大阪府北部のプラナリア調査 [所 属]大阪府立箕面東高等学校 環境・サイエンスワールド バイオサイエンスサークル(大阪府箕面市) [発表者]東筋 朋美、山﨑 文乃、吉野 優花 西谷 信一郎(顧問) 一般にプラナリアと呼ばれる身近な河
川に生息する、再生力の強い淡水生三岐腸
類(扁形動物門、渦虫綱)について、淀川以
北の大阪府内にどのような種類が生息し
ているかを調べるとともに、採集したプラ
ナリアの染色体調査を実施した。 平野部の淀川沿いでは外来性のプラナ
リアであるアメリカツノウズムシ
(Girardia dorotocephala)およびアメリカ
ナミウズムシ(G. tigrina)の生息が確認さ
れた。その染色体数はそれぞれ 2n=16/24
と 2n=24 であった。前者は混数体、後者は
三倍体と考えられる。 山 麓 部 で は ナ ミ ウ ズ ム シ (Dugesia japonica) が 採 集 さ れ 、 そ の 染 色 体 数 は
2n=24+1B であった。このプラナリアは三倍
体と考えられるが、小型の B 染色体を有し
ていた。 山間部ではミヤマウズムシ(Phagocata vivida)とナミウズムシが採集された。そ
の染色体数はそれぞれ 2n=36 と 2n=16/24
であった。また、山麓部で採集された三倍
体(2n=24+1B)と同様のプラナリアも確認
された。豊能町ではミヤマウズムシとナミ
ウズシの混生が確認されたので、報告する。 15
メボソムシクイ(Phylloscopus borealis xanthodryas)の囀りの声紋分析 [所 属]大阪府立岸和田高校・生物部(大阪府岸和田市) [発表者]家本 優輝、上村 真太郎、山中 麻由、小林 和惠 中村 進(顧問) 奈良県大峰山系で繁殖するメボソムシ
クイの囀りは、標準的な4拍の囀りでなく
3拍で囀るため、声紋分析により囀りの構
造を解析し、標準の囀りや他地域の囀りと
の違い、個体識別の可能性、近縁種の囀り
との違いを比較することを目的とした。 標準的なメボソムシクイの囀りは2種
類のシラブルからなる4拍のフレーズ(A
BAA)を繰り返しており、チョリチョチ
ョと聞こえるのに対し、大峰山系のメボソ
ムシクイの囀りは第2Phrase を欠き、3拍
(AAA)のフレーズを繰り返すため、チ
ョチョチョと聞こえることがわかった。木
曽御嶽山での囀りは5拍(AABAA)で
あった。 各シラブルのパターンの違いで個体識
別が可能であることがわかった。 3拍で囀る近縁なオオムシクイとは声
紋が全く異なることもわかった。 夏鳥のメボソムシクイの囀りが地域ご
とに異なる方言を持つことより、渡ってく
る繁殖地はかなり固定されているのでは
ないかと考えられる。 16
モリアオガエルの泡巣溶解に関する研究 [所 属]山形県立上山明新館高等学校(山形県上山市) [発表者]結城 奈都美、鈴木 ありさ、峯田 晃輔 小関 由里子(顧問) 孵化酵素の多くは、タンパク質分解酵素
の 1 種であるメタロプロテアーゼの仲間で
あり、亜鉛などの金属を必要とする。これ
までの研究でモリアオガエルの孵化酵素
も金属を必要とすることが示されたので、
メタロプロテアーゼの仲間である可能性
が高いと考えた。そこで、プロテアーゼ阻
害剤を使用し、泡巣の溶解を阻害できるか
調べ、プロテアーゼの種類の特定を試みる
ことにした。この実験中に、阻害剤で泡巣
が溶解するという予想外の事が起きた。こ
の時、泡巣を溶解できる阻害剤と泡巣を溶
解しない阻害剤があることが分かった。こ
のことは、泡巣の溶解はある程度、特異性
のある反応であることを示している。これ
までの研究では、孵化液により泡巣が溶解
できる事と、孵化と泡巣の溶解のどちらも
EDTA で阻害できることから、孵化酵素と泡
巣を溶解する酵素の区別をせずに実験を
行ってきたが、泡巣はある特定の物質によ
り自己消化を起こす可能性が出てきたた
め、孵化と泡巣溶解は別々の仕組みによる
可能性が高くなった。そこで、泡巣溶解の
システム解明に取り組んできた。 17
耐酸性水生昆虫に関する研究 [所 属]山形県立上山明新館高等学校(山形県上山市) [発表者]結城 奈都美、鈴木 ありさ、峯田 晃輔 小関 由里子(顧問) これまでの飼育実験より、蔵王川、酢川
に生息するユビオナシカワゲラは pH2〜3
の強酸性下でも生存可能であることが確
認できた。ただし、酸の種類によって生存
率に差がみられることもわかった。また、
水酸化ナトリウム水溶液による飼育実験
より、比較的高い耐塩基性を持つことが示
唆された。 また、ユビオナシカワゲラとユスリカの
耐酸性、耐塩基性は、pH の大きさだけでは
なく、酸の種類により異なることから、蔵
王川や酢川に限られた種しか生息しない
のは、両河川の水に含まれる物質の組成や
濃度が大きく影響していることが考えら
れる。 そこで、蔵王川と酢川の水に含まれる成
分の検証とともに、通年の水質変化を継続
して調査し、データの蓄積を行いつつ、ま
た付近の河川に生息する水生生物との比
較を行い両河川の生物相の形成に影響し
ている環境要因をより詳細に検討した。 18
プラナリアの遺伝子から見た地理的分布の研究 [所 属]滋賀県立彦根東高等学校 SS 部生物班(滋賀県彦根市) [発表者]手良村 知功、大幡 良融、小西 峻太、長友 陽太郎、塚本 要 佐藤 友人、宇佐美 昭二(学外指導者、長浜バイオ大学) 細井 剛(顧問) 滋賀県北部地域で捕獲したプラナリア
(ナミウズムシ)について、チトクローム
オキシダーゼ・サブユニットⅠ遺伝子(COI)
遺伝子の塩基配列を比較し、幾つかのグル
ープに分類した。それらのグループのうち
幾つかは、滋賀県と岐阜県、滋賀県と三重
県に水系を越えて分布していることがわ
かった。また、洞窟より採取したナミウズ
ムシのデータより、COⅠ遺伝子がこれらの
グループに分かれた過程も考察した。 19
アルパカについて [所 属]大阪府立農芸高等学校ふれあい動物部(大阪府堺市) [発表者]藤本 幸穂、服部 照子、小谷 萌絵 藤田 和久(顧問) ふれあい動物部では、動物を介して命の
大切さや温もりを伝える「ふれあい動物園」
を行っています。この活動に共感したアメ
リカコロラド州「Green dog Alpaca Ranch」
のシューガーマン夫妻が本校にアルパカ
を寄付していただきました。日本ではアル
パカについて知られていないことが多い
ので、アルパカについての紹介活動を行い、
その素晴らしさを伝えていきたいです。ア
ルパカは毛を利用する家畜です。その毛を
活用するために、大阪府和泉市の「さをり
の森」へ研修に行きました。そこで学んだ
ことは、毛から糸への紡ぎ方と製品を作る
方法でした。私たちは、毎年一回アルパカ
の毛を刈り取り、それを洗毛し、糸に紡ぎ
織り機で織っていきます。すべて手作業で
一つの製品を作るのにとても時間がかか
ります。私たちはアルパカ製品を製作し、
見たり触れていただくことで、多くに人に
アルパカの魅力を知ってもらう活動をし
ています。 20
飼育動物の QOL について [所 属]大阪府立農芸高等学校(大阪府堺市) [発表者]森田 秀貴、尾﨑 泰希、林 和人、清水 武生 藤田 和久(顧問) ☆アルパカ広場の芝生化 アルパカが生息している環境を再現する
ためアルパカの飼育スペースに芝生を定
植しました。寒地型の芝をマットで生育・
定植を行い、暖地型の芝の種も播きました。 結果)アルパカの飼育スペース範囲が狭く
可哀想なので早めに養生柵を取り外した
結果、発芽して1ヶ月ほどしか経っていな
かった暖地型の芝は根が張り付いておら
ず、現在は定植をした寒地型の芝が残って
いる状態です。 ☆山羊の遊具改良 山羊は高い場所が好きなので、山羊を飼育
しているスペースに階段形の遊具があり
ました。修繕と補強、更に階段の段数を増
やしました。 結果)高い場所まで山羊が登れるようにし
ました。 ☆ポニーの広場の造築 本校のポニーは狭い環境で飼育されてい
ることに気づき、より快適に走り回れるス
ペースで放牧するため、広場に柵を建てて
います。 広場で運動させることでポニーのストレ
スの緩和や運動量の増加により痩せ形の
体系になれればと考えています。 21
クサガメの産卵行動について [所 属]栃木県立佐野高等学校(栃木県佐野市) [発表者]矢ヶ崎 琢、菊元 えりか、落合 悠太、関根 幸子、須長 茉耶 青柳育夫(顧問) 生物部では、これまでに栃木県内の河川
に生息するクサガメおよびミシシッピア
カミミガメの行動圏や両種の雌雄の行動
圏について、標識再補法やラジオテレメト
リー等を用いて調査してきた。今年度は、
これまで明らかにすることができなかっ
たクサガメの産卵行動に関して新たな知
見を得ることを目的に調査を行った。5月
よりラジオテレメトリーを用いてクサガ
メの雌2頭の野外での行動を追跡し、産卵
行動との関連を探るとともに、校庭にクサ
ガメのビオトープ(2m×2m)を作成し、
飼育下でのクサガメの雌雄の行動をビデ
オカメラで記録し、繁殖行動および産卵行
動等について解析した。 22
クマムシが多く出現するコケについて [所 属]栃木県立佐野高等学校・筑波大学未来の科学者養成講座(栃木県佐野市) [発表者]加藤 遥 青柳 育夫(顧問) ク マ ム シ Tardigrada (Spallanzani 1777)は緩歩動物門に分類される体長 0.1
〜1.0mm の微生物で、樽状態(いわゆる仮
死状態)では-273℃の低温から 100℃以上
の高温、そして 5000 気圧もの超高圧にも
耐えることが知られる。クマムシはコケな
どに生息し、特にギンゴケに多く出現する
と言われているが、なぜクマムシがギンゴ
ケに多く出現するかについては追究され
ていないのでそれを調査するために研究
を始めた。そこでクマムシの個体数とコケ
の種類との関連を確かめるために 2012 年
7月、関東地方の 3 地域(横浜市 22 地点、
佐野市 20 地点、つくば市 16 地点)にて生
息調査を行った。それぞれの地域にてコケ
複数種を採集し、生息するクマムシ等の動
物性微生物の種類と個体数を記録した。本
発表では、コケの種類のちがいとクマムシ
の個体数の関係を提示するとともに、個体
数の差がもたらされた要因について考察
する。 23
ゼブラフィッシュを用いた魚類の逃避行動の解析 [所 属]広島大学附属高等学校・科学研究班(広島県広島市) [発表者]小池 拓也、坂本 圭、田口 慧、原山 郁花、樋口 温子 井上 純一(顧問) 動物には,生命維持のためのしくみとし
て,不安や恐怖などの情動が備わっている。
情動は,生理機能の変化やある種の逃避行
動として現れるため,ある情動を再現する
ことができれば,定量的な解析によって,
その身体的反応を数値化することができ
る。 本研究では,繁殖・飼育が容易なゼブラ
フィッシュを用いて,様々な不安や恐怖を
与えたときに起こる身体的反応の解析を
行い,魚類の逃避行動のパターンを明らか
にすることを目的にしている。現在は,球
体の落下による逃避行動のパターンを調
べた結果,球体が水面に達する直前に各個
体の移動速度が上昇したことから,視覚に
よる逃避行動に焦点を当て,球体落下の映
像を用いた衝突回避実験を行い,逃避行動
の閾値を求めることに取り組んでいる。ま
た,今後は,薬物(アルコール)を用いて
同様の実験を行い,薬物の影響により不安
や恐怖が回避されるのかどうかなど,様々
な視点で実験を進めたいと考えている。 24
中海の水質環境の迅速的調査方法の確立 [所 属]国立米子工業高等専門学校(鳥取県米子市) [発表者]越智 遥海、鶴田 しおり、内籐 星佳 粳間 由幸(顧問) 中海は白鳥が飛来することで知られる
湖であり、平成17年にはラムサール条約
に登録された国際的に保護が求められる
湖である。また、中海は他の湖とは異なり、
汽水湖であることから、独自の生態系を有
する個体群が生息する。近年では、中海に
おいて赤潮が観測されている。そこで、
我々は中海の水質調査において、迅速に水
質汚染状況を知る方法を確立するために、
水中に生きる原生生物に注目をした。中海
や近隣の水鳥公園そして付近の河川で採
水を行い、原生生物の学名を調べた。結果、
水鳥公園では動物性プランクトンを観察
したのに対して中海ではケイ藻、ラン藻な
どの植物性プランクトンが多くみられ、特
に 汚 水 性 プ ラ ン ク ト ン で あ る
Osccillatoria tennis が確認された。この
事実から我々が考えているよりも、中海が
汚染されていることが明らかになった。本
発表では原生生物を指標に用いた中海の
汚染状況の調査分析法について述べる。 25
鳥の卵膈膜を用いた色素増感太陽電池の作製 [所 属]米子工業高等専門学校(鳥取県米子市) [発表者]西尾 幸祐、井田 健太郎、大江 ひかる、遠藤 未来 谷藤 尚貴(顧問) 卵の内皮として知られる卵殻膜は食品
加工における段階において非可食部位と
して知られているが,近年はアミノ酸の加
水分解による調味料への利用や化粧品の
成分として活用する等の実用的なリサイ
クルに始まり,金属イオンや有機色素を吸
着する特性を有することが報告されてい
る. 本研究では、この卵殻膜(卵の内皮)を従
来の用途以外の高価値の材料として活用
するための取り組みとして有機色素を吸
着させた素材として活用するための材料
開発に取り組んだ. その際に、有機色素を含有した材料として
改良が求められている色素増感型太陽電
池に着目し,光電変換を行う酸化チタン部
位へ卵殻膜を混ぜ合わせたところ,増感剤
として用いた電極の色素の光耐久性が大
きく向上する効果が見出された. 26
ショウジョウバエの摂食行動の匂いによる促進効果 [所 属]福岡県立小倉高等学校(福岡県北九州市) [発表者]久保園 遙、玉木 翼、櫟村 祐喜、井手 聰義(顧問) ショウジョウバエは発酵食品の匂いを
好み、化学薬品の匂いを嫌う。絶食状態の
ハエは足に刺激を受けると吻伸展反射を
行う。これは人間でいう食欲のようなもの
だ。それを利用し、匂いと食欲の関係を調
べると、発酵食品の匂いの時に食欲が増し、
化学薬品の匂いの時に減った。摂食量は好
きな匂いでは増し、嫌いな匂いでは匂いな
しに比べてあまり変化がなかった。ハエは
味と匂いを関連付けて学習ができるか調
べた。ハエが好きな味、嫌いな味を、ハエ
が好きでも嫌いでもない匂いに組み合わ
せて連合学習をさせ、どちらの匂いを好む
か調べた。その結果、どちらの組合せでも
好きな味と組み合わせた匂いに多く集ま
った。同じ条件で、満腹後に再びどちらの
匂いを好むか調べた。すると、特に規則性
は見られなかった。この実験から、ハエは
空腹状態では匂いと味を結びつけて学習
を行うことができるが、満腹後には忘れて
しまう、もしくはどうでもよくなると考え
られる。 Vinegar flies’ appetite and the amount of
eaten food will be influenced by smells. We’ve
investigated if they can form an association
between an odor and a taste. First, we had
them learn two types of neural odor with their
favorite taste or offensive. We, then, gave the
subjects two types of a neutral odor, previously
gave them with their favorite taste, and
offensive without any tastes. As a result, they
flocked to the smell combined with the
favorite tastes. However we made them full,
nothing particular was found. Judging From
these experiments, they’re hungry but they
seem to forget that when they’re full.
27
陽イオンとグルコースによるマウスとヒト赤血球の形態変化 [所 属]宮城県仙台第三高等学校・自然科学部生物班(宮城県仙台市) [発表者]木下 理子 粕谷 博之(顧問) 教科書の記述通り,赤血球が水溶液の濃
度に応じて膨張あるいは収縮し,変形をす
るのか疑問を持った.そこで,「赤血球は
低張液中では丸く大きく膨張し,高張液中
ではコンペイトウ状になり,その形状を維
持したままで収縮する」という仮説を立て
さまざまな種類の溶液を用いて赤血球の
形態変化を調べた.水溶液は NaCl,KCl,
MgCl2,CaCl2,グルコースを用いて 13 種類,
あるいは 3 種類の濃度を調製した.血液は
マウスとヒトから採血した.水溶液に血液
を滴下し一定時間経過後に写真撮影し,直
径の計測と形状ごとの計数を行った.その
結果,マウス赤血球・ヒト赤血球ともに,
濃度に応じて単純に直径や形状が変化す
るわけではないことがわかった.直径変化
についてはマウスとヒトでその傾向が異
なっていて,いずれも高張液にあっても直
径が大きいものがあった.形状変化につい
ては 60 分間では浸透圧に,24 時間後には
陽イオンやエネルギー生成が影響してい
ることが分かった. 28
マウスとハムスターのバランス能力と尾の役割 [所 属]宮城県仙台第三高等学校・自然科学部生物班(宮城県仙台市) [発表者]坂本 滉平 粕谷 博之(顧問) マウス(Mus musculus)の尾の役割につい
て調べるため,マウスとゴールデンハムス
ター(Mesocricetus auratus)のバランス能
力を,「棒渡り」の可否によって調べた.
材料は,マウスのつがいとその子,雌のゴ
ールデンハムスターとキンクマを使用し
た.実験 1 では,3 種類ずつの丸棒と角棒
を I 字型の木製台に 250mm 間隔で渡し,一
分間での歩行の可否を調べた.実験 2 では,
マウスの尾にチューブをはめて尾の動き
を制限し,実験 1 と同条件で歩行の可否を
調べた.結果として,実験 1 では,マウス
は丸の 5mm と角の 4mm で成功回数が少なく,
ハムスターは全ての丸棒と 4 ㎜の角棒で成
功回数が少なかった.実験 2 では,成功回
数は多かったが,歩行速度の低下や,体勢
の立て直しにかかる時間が増加した.結果
より,マウスの体の均衡には尾が重要だと
考えられる.また,マウスとハムスターで
は四肢の稼動範囲に違いが見られたが,こ
れは両者にバランス能力の差が出た要因
だと考えられる. 29
カタクチイワシ視交叉の左右非対称性 [所 属]宮城県仙台第三高等学校・自然科学部生物班(宮城県仙台市) [発表者]工藤 俊樹 粕谷 博之(顧問) カタクチイワシ視交叉は視神経が数本
の視神経束に分かれて交叉している.そこ
で,視神経束の発生過程での組み合わさり
方を調べようと考えた.その基礎資料とし
て,視葉と網膜との連絡の仕方について,
カタクチイワシを下顎側から解剖して
脳・視神経・眼球を取り出して顕微鏡での
観察,固定標本の作製を行い調べた.その
結果,視神経は視神経束内や視索内をほぼ
平行に走っており,眼球に対して垂直では
なく接線方向から接続した後ほぼ直角に
曲がり眼球に入る.盲斑は溝のようになっ
て眼球の中心ではなくやや後方に位置し,
視神経が盲斑から網膜へ放射状に伸びて
いた.また,脳上面では視葉が大きく場所
を占めており,中脳の他の部位や間脳を覆
うような形状をしていた.以上のことから,
網膜側の部位と視葉に入る部分とを大ま
かではあるが対応させることが可能であ
り,背側の網膜は背側の視葉に,腹側の網
膜は腹側の視葉に繋がっていることがわ
かった. 30
ハシボソガラスのクルミ選択行動 [所 属]宮城県仙台第三高等学校(宮城県仙台市) [発表者]梅津 亮汰 千葉 美智雄(顧問) 仙台三高における過去の課題研究で,カ
ラスが複数のクルミの中から大きいもの
や重いものを1つだけ選んでいるように
見えることが報告された.そこでクルミ選
択の際に重さや大きさがどのように影響
を及ぼすか調べた. 晴れまたは曇りの日にクルミを2つ並
べて置き,8〜10m離れたところからビデ
オ撮影をし,カラスがクルミに触れてから
持ち去るまでの選択時間を計測した. クルミの重さの差が 5gから 0.1g程度
の場合,差が小さくなるにつれて選択時間
が長くなる傾向が見られた.大きさの差が
0.8cm から 0.01cm 程度の場合, 0.3cm 付
近で選択時間が最大になる傾向が見られ
た. 軽いクルミ,小さいクルミが選択された
のは 10 回中3回であった.迷った上で軽
い方または小さい方を選択したのは,重さ
の差が 0.5g 以下または大きさの差が 0.1
〜0.2cm の間であった.今後,重さと大き
さのどちらがより選択に重要かを検証し
たい. 31
発泡ガラス(グラセ—ラ)を用いた植物栽培に関する基礎研究 [所 属]鈴鹿工業高等専門学校 電気電子工学科(三重県鈴鹿市) [発表者]後藤 菜水、大戸 紅菜 大津 孝佳(顧問) リサイクル発泡ガラス(グラセ—ラ)は
主成分が SiO2 で、Pd 等の不純物がないこと
から、壁材や床材、庭石等の建築材等、様々
な用途の研究がなされている。本材料は多
孔質軽量であり、水分を保持し、植物の育
成に使えないかと思い、実験を行った。実
験方法は、①水分の含浸性、②水分量と電
気抵抗の関係、③フウセンカズラの発芽実
験とし、以下の結果が得られた。 ①水槽(食紅水)に入れると、すぐには沈
まず、8 日で沈むものが現れ、14 日でほぼ
沈む。 ②インピーダンス測定(1kHz)より、水を十
分含浸した状態では 42 kΩ、乾燥時は 1.8 MΩとなり、約 2 桁の違いがある。 ③発泡ガラスの周りに高分子ポリマー(ア
クアボール)を配置することにより、80% (4/5)の発芽が確認できた。 よって、電気抵抗による水分量モニタリン
グの見通しが得られた。また、発泡ガラス
の新たな利用方法として、植物等の室内栽
培への応用が考えられる。今後、更なる応
用方法の検討を進めたい。 [参考文献]グラセーラ GLACERA 資料 (株)
アベック 32
タニシ精子に関する研究〜正型精子と異型精子について〜 [所 属]宮城県宮城第一高等学校・生物部(宮城県仙台市) [発表者]大友 真夏、大友 純花、阿部 栞織里、高橋 花乃子、市川 梨乃、 佐藤 萌恵、中林 果歩 鈴木 俊彦(顧問) タニシは、受精する正型精子と受精しな
い異型精子を持つ。本研究では、その正型
精子と異型精子について研究を行った。 正型精子は、頭部が螺旋状で、尾部が長く、
平均の長さが約35μmであった。一方、
異型精子は、頭部が非常に長く、尾部は複
数の短い鞭毛を持ち、平均の長さが約63
μmであった。我々は、実際に精子を観察
したところ、正型精子の数が異型精子の数
に対して非常に少ないと感じ、その割合を
調べた。その結果、昨年10月に採集した
タニシの正型精子と異型精子の割合は、正
型精子が約3%、異型精子が約97%であ
った。この差は年間を通してある程度一定
なのか、または変動するのかを知りたいと
思い、今年4月から毎月タニシを採集し、
精子の割合を調べた。その結果、4月に採
集した個体の正型精子の割合は約19%、
5月に採集した個体の正型精子の割合が
約26%と徐々に増加した。この結果は、
生殖行動に合わせて正型精子が増加した
ことが考えられる。 33
サワガニと湧水地の関係を探る [所 属]埼玉県立和光高等学校生物部(埼玉県和光市) [発表者]小室 紗季、半澤 裕太 児玉 早希(顧問) サワガニはきれいな水の湧き出る澤や
小川、渓 流などに生息し水陸両生であり
完全に淡水域で の生活をしている。埼玉
県和光市は都市化が進んでいるが、武蔵野
台地の縁にあるため湧水が 豊富にあり、
そこにはサワガニが生息している。私たち
は、昨年度からサワガニの生息状況 の調
査を開始した。内容はサワガニの生息の分 布と、各湧水地の個体群の調査(大きさ、
雌雄、 体色)、サワガニの生息している湧
水の環境状態 である。私たちは、埼玉県
和光市で発見したサ ワガニを指標とした
市内湧水地の環境改善をすることを最終
目的としている。そのために市内 各湧水
地とサワガニとの関係調査をしている。 また、現在のままだとサワガニは絶滅の危
機に あると考えられる。この危機からサ
ワガニを救 うため、和光高校で人工飼育
を行い、捕獲した サワガニの人工繁殖の
条件をさぐった。その結 果、人工条件下
でも、抱卵する事を確認した。 34
人間はクマムシになれるのか [所 属]西大和学園高等学校(奈良県河合町) [発表者]田澤 悠人、吹田 航一(顧問) 今回,「人間はクマムシになれるのか」
というテーマで研究を行った.クマムシは
緩歩動物に分類される体長 0.5mm 程度の生
物で,身の回りの様々なところ,苔の中な
どに生息している.クマムシは周囲が乾燥
するとクリプトビオシス(樽状態)と呼ば
れる状態に変化する.この状態ではクマム
シは非常に強い耐性を持つ.温度に対して
は絶対零度から 150 度,放射線においては
57 万レントゲン(ヒトの致死量は 500 レン
トゲン)にまで耐えることができる.この
ような耐性を持つクマムシだが,飼育は難
しく,刺激に耐える理由も完全には解明さ
れていない.そこで,私はクマムシの飼育
に挑戦するとともに,耐性実験を通して,
人間がクマムシのような強い耐性を持つ
可能性について研究した.その結果,乾燥
した状態のクマムシに強い耐性が見られ
たことからクマムシが細胞を乾燥させる
ことで立体構造を崩れにくくして耐性を
得ているのではないかという仮説に至っ
た. Tardigrades are creatures about 0.5 mm in
length and live in various places, such as moss
and lichen. They change into the state of
cryptobiosis to survive in dehydrated state.
This state has much strong resistance (being
able to stand up to 0 ~ 423 K and 570,000
X-ray _ this is more about 1100 times than
humans fatal dose). Then we are interested in
this strong resistance of tradigrades, so we
tried to breed them and study whether this
resistance can be applied to human beings. In
this study, we made a hypothesis that this
strong resistance is from the compact cell
structure in the state of cryptobiosis.
35
見えない土壌ファウナを理解する〜ササラダニ亜目の食性から〜 [所 属]清真学園高等学校(茨城県鹿嶋市) [発表者]矢野 更紗 十文字 秀行(顧問) 土壌動物は陸上生態系のサイクルを構築
する上で重要な存在であり、特にササラダニ
亜目は、リターの分解段階において大きな役
割を担っている。しかしながら、この役割の
詳細は十分に理解されていない。本研究の目
的は、土壌生態系におけるササラダニ亜目の
役割を明らかにすることである。これまでの
自身の研究過程で、リターの分解段階が異な
ると、優占するササラダニ相に違いがある事
がわかった。「ササラダニの食性が落葉の分
解段階と密接に関連し、分解者の役割を果た
しているのではないか」という仮説をたて、
①ササラダニの鋏角の形態的分析、②ササラ
ダニ及びリター各々の炭素同位体比の測定
という分子的分析から検証を行った。サンプ
リングは、暖温帯と冷温帯の森林から、分解
段階の異なる上下層を分けて行い比較した。
これらより、ササラダニが自身の食性に相当
する分解段階のリター層にハビタットを持
ち、効率的な分解に作用している事が示唆さ
れた。 36
中間報告:外来水棲巻貝コモチカワツボの新情報 Interim report: Information of the alien aquatic snail Potamopyrgus antipodarum (Gray, 1843).
[所 属]向上高等学校・生物部(神奈川県伊勢原市) [発表者]越地 駿人、酒井 勇気、香川 理、一杉 航平、嶋谷 大輝、篠塚 佳典、 山口 大世、山口 晃一朗、山口 嵩真、久我 睦人、佐野 拓実、 鈴木 新平、簑島 智代、星加 泰宏、宮澤 まどか、酒井 勇気、高橋 瞬、 平石 恵一、振原 悠人、若井 仁、小菅 桃子、佐藤 祐香、服部 新太郎、 井出 佳宏、神田 旭、伊東 桂一、園原哲司(顧問) ニュージーランド原産淡水小型巻貝コ
モチカワツボが,国内で急速に分布を広げ
ている。成貝で殻長 4mm 程度と小さいが,
生息密度が 1 ㎡当り数万〜数十万個体に達
する。移入先では雌のみの単為発生がほと
んどであるが,千葉市稲毛海浜公園の個体
群で国内初となる雄性個体が確認された。
生物部では,個別飼育実験によって雌のみ
の単為発生を確認した。 遺伝的多様性を高めると考えられる両
性生殖の有無を調べる目的で,精子の確認
(現在未確認),染色体の倍数性の確認等
を行っている。稲毛海浜公園を含め,雌雄
の存在する個体群,雌のみの個体群で DNA
相対量を測定したが,DNA 相対量に有意な
差はなく、2 倍体,3 倍体の存在を示唆す
る 1.5 倍ほどの差は見いだされなかった。
雄も含めすべて 3 倍体である可能性が示唆
された。 現在,染色体数の直接確認に取り組んで
おり,国内に生息するコモチカワツボの倍
数性解明に向け研究を進めている。 37
透明骨格標本によるアフリカツメガエルの骨成長 [所 属]大阪教育大学附属高等学校平野校舎生物部(大阪府大阪市) [発表者]横山 水紀、平田 真悠、谷内 千紗、恩知 千菜美 中井 一郎(顧問) 昨年度から平野高校生物部では、筋組織
を透明化し、骨を染色して動物の骨格を観
察する透明骨格標本づくりの活動を行っ
てきました。また、私達はアフリカツメガ
エルを用いたさまざまな実験を行ってき
ましたが、今回、その発生過程においてど
のように骨格が形成されるのかをこの透
明骨格標本を用いて知ることができるの
ではないかと考え、胚を発生段階ごとに透
明骨格標本にする実験を行いました。実験
の結果、胚発生のステージ 44 頃から軟骨
として染色される部分が現れ、それ以前に
はまだ骨の組織が存在していないことが
わかりました。また、軟骨から硬骨への変
化や尾の収縮の過程での骨の変化等、今ま
での解剖では観察が難しかったことがわ
かったので、発表したいと思います。 38
PCR 法による近畿地方のゲンジボタルの遺伝子多様性の調査 [所 属]大阪教育大学附属高等学校天王寺校舎・生物部(大阪府大阪市) [発表者]平田 瑞季、長町 萌香、門田 奈々、森田 淑乃、加藤 洋樹 森中 敏行(顧問) ゲンジボタルは、環境変化により、日々
減少している。その結果、放流が行われ、
遺伝子撹乱が問題視されている。本研究は、
ゲンジボタルのミトコンドリア ND5 遺伝子
の地域による変異を調査することにより、
遺伝子撹乱の状況を把握しようと試みた
ものである。 当初、草桶秀夫氏(福井工業大学)が設
計したプライマーを用いた PCR 法により
ND5 遺伝子の多様性を調査した。この方法
では,全国のホタルを大きく 5 タイプに分
類可能である。しかし、近畿圏をより詳細
にグループ分けする必要性が生じたため、
分子系統樹を基に独自に近畿圏を 4 グルー
プに分けるプライマーを設計した。さらに、
この開発したプライマーによる分析方法
の妥当性を,外注による DNA シークエンス
解析結果との比較により検証した。さらに、
開発したプライマーで近畿圏の3箇所で
採取したゲンジボタルの ND5 遺伝子の多様
性を調査し、DNA データバンクの情報をも
とに類似性を検索した。 39
GLUT2 にみる摂食時刻の差異とその身体的影響 [所 属]大阪教育大学附属高等学校天王寺校舎(大阪府大阪市) [発表者]久保 圭祐、波々伯部 夏美 森中 敏行(顧問) 本研究では現代の食生活において、脂肪
の摂食過多・摂食時間が身体にどのような
影響を与えるのかを肝臓中のタンパク質
に焦点をあて実験した。試料を得るために、
①ラット(実験開始時 7 週齢 Wister 系♂)
を無作為に 6 匹ずつ選び、飼育条件により
③以下のように群分けした。②ラットの活
動期である暗期と非活動期である明期を
各 12 時間確保した。③Active stage Diets
群(以下 AD 群)は活動期 12 時間摂食であり、
No Active stage Diets 群(以下 NAD 群)は
非活動期 12 時間摂食である。また、Half Active stage Diets 群(以下 HAD 群)は活動
期と非活動期を跨ぐ 12 時間摂食である。
④この3群には高脂肪食のみを与えた。⑤
Control 群(以下 CON 群)には 24 時間にわた
り普通食を与えた。⑥11 日間の飼育後屠殺
し 採 取 し た タ ン パ ク 質 GLUT2(Glucose Transporter2)の量を測定した。GLUT2 はグ
ルコース分子が生体膜を通過する際の膜
輸送蛋白質であり、生体の適応反応により
その量は適宜調整される。考察として3群
について GLUT2 量と体重増加量、摂食量を
比較した。 40
ナマコのメタボローム解析【キャッチ結合組織】 [所 属]麹町学園女子高等学校(東京都千代田区) [発表者]細谷 藍里 亀崎 圭太(顧問) 棘皮動物は筋肉組織以外にキャッチ結
合組織という組織を有している。キャッチ
結合組織は少量のエネルギーで硬度の調
整と維持が可能な点で筋肉組織と異なる。
一般的な生物は筋肉組織のみを用いて移
動を行うが、ナマコは体組織の硬化や軟化、
移動をこの組織を主に用いて行っている。
本研究はキャッチ結合組織が硬度の調整
を行うメカニズムを明らかにする事を目
標として研究活動を行っている。今回の研
究では硬度の調整を行っている代謝物を
特定する為に、刺激を与える前と後のサン
プルを対象にメタボローム解析を行った。
その結果、キャッチ結合組織より 60 種類
の代謝物が検出された。刺激を与える前と
後で比較を行った結果、細胞膜の構造の保
全と細胞シグナリングの働き、アセチルコ
リンへ合成される事による神経伝達物質
としての役割などの働きがある事で知ら
れている Choline などを含む 10 種類ほど
の代謝物において有意な差が見られた為、
その結果を報告したい。 41
滋賀県守山市の淡水魚の実態 [所 属]立命館守山高等学校(滋賀県守山市) [発表者]角藤 将翔 浅井 一(顧問) 立命館守山がある滋賀県守山市は、川の
上流域に湧き水が吹き出る場所があり、ト
ゲ魚類が生息しておりところどころに素
晴らしい水資源が存在します。 その一方で、湖岸に近づくにつれ水の濁り
が増し、日本淡水魚の生息域が少なくなり
ます。外来種の数も湖岸に近づくのと比例
して捕獲量が増して来ます。 守山市全体を見ていると決して水資源が
豊とは言えません。しかし、こんな過酷な
水環境でも力強く生きている魚達がいま
す。個人調査通してわかって来た淡水魚の
実態について発表したいと思います。