ミ ド ル リ ー ダ ー 養 成 研 修 ミドルリーダーの資質・能力の向上を図り、学校園運営に主体的に参画する人材の育成をめざし、 小・中学校の教員からなる43名の研修員を対象に研修を実施した。 1 研修の概要 1 2 3 選 択 1 選 択 2 ・ 4 5 選 択 3 *については、教頭も対象とした。 日 時 内 容 5月19日(火) 講話 「『 伊丹市教育ビジョン』の基本施策 、『伊丹の教育』の重点目標につ いて」 教育施策企画担当 金光一彦 主幹 「伊丹の教育課題を踏まえ、今、中堅教員に求められるもの」 総合教育センター 加藤哲三 所長 6月23日(火) 講話・演習 「教育法規」(服務関係) 職員課 峰松誠治 課長 「私の学校経営」(学校教育関係) 松崎中学校 石原隆典 校長 7月29日(水) *講話・演習 「学校における組織的な学力向上の取り組みについて」 関西大学 田尻悟郎 教授 8月 5日(水) 研究1(選択) 8月10日(月) 研究2(選択) *講話 「学校組織マネジメントのあり方について」 大阪教育大学 野口克海 監事 8月17日(月) *講話・演習 「学校活性化に向けたミドルリーダーの役割 ∼組織づくりと人づくりの考え方と進め方∼」 兵庫教育大学 浅野良一 教授 8月21日(金) 研究3(選択) 10月22日(木) グループ討議 6 7 1月19日(火) グループによるプレゼンテーション 「各学校園におけるミドルリーダーとしての実践について」 指導助言:総合教育センター 加藤哲三 所長 2 研究の概要 (1)研究1∼3(選択) ①第3回の「講話・演習」を受け 、「学力向上」を研究テーマとする希望者による研究グループ を編成した。 ※小・中学校の希望研修員7名で1グループを編成した。 ②研究グループ員が研究テーマにそった研究計画を立てて、夏季休業中に3回研究を行った。 (2)研究の継続 ①研究グループでは、夏季休業後も継続して計5回研究及び実践を行った。 ②第7回ミドルリーダー養成研修において、研究の成果を発表し、成果の共有化及び有効活用を 図った。 ※第7回ミドルリーダー養成研修において、研究グループ以外の他の研修員も2学期以降の各学 校園での実践をテーマごとに発表した。 発表テーマ 「子どもの安全な学校生活のために」 「校園内研究体制づくりについて」 「若手教員とベテランの先生とのつなぎ役として」 「各々が取り組んだことについて」 3 研究グループの研究報告 「学力向上研究グループ」 グループ員:◎村田文生(西中学校) ○向井敬子(南小学校) 吉井稔雄(西中学校) 村上英里(南小学校) 安田英生(神津小学校) 廣重久美子(鈴原小学校) 礒田かおり(鈴原小学校) 1 研究テーマ 「小中連携∼中1ギャップを感じさせないために∼」 2 研究内容 (1)研究の目的 近年、中学校に進学してから、スムーズに中学校生活になじめず、不登校になったり、問題行動 を起こしたりする生徒が増え 、 中1ギャップ といわれる問題がある。このような問題が生じる 背景として、小学校と中学校の教師間の連携が進んでいないことも一つの要因ではないかと考えら れる。そこで、最初にグループ内でお互いのことをよく知るために情報交換を行った。その結果、 小学校と中学校では同じ教科を教える場合でも、教具の使い方や指導方法に違いがあることや、学 習面や生活面の指導について共通理解できていないことがわかってきた。それをもとに、授業実践 を通して中1ギャップを防ぐ方法を探り、研修を深める。 (2)研究の実践 ①算数・数学における小中連携 算数・数学の小中連携では「比例」を取り上げた。その理 由としては、小学校6年生と中学校1年生で学習するため 比較的学習する時期が近く、また、指導内容も大きな隔た りがなく小学生にも理解しやすいためである。しかし、小 学校の比例の扱いは、伴って変化する2つの量 x、yの間 に、y=ax(aは定数)またはy/x=aが成り立つと き、yはxに比例するというもの(文字x,yを使って説 明はしない)であり、関数本来の function の意味がはっき りとしない。そこで、関数の意味を教えたうえで、自分たちが習った比例が関数であることを ることを気づかせ、小学校で習う内容を中学校の内容につなげていける授業を提案した。 ア 指導方法のポイント ・ブラックボックスの利用 手作りのブラックボックスを操作して、出力される数は入力される数にどのようなはたらき を及ぼしているかを、興味を持って考えられるようにする。 ・問題づくり 児童がブラックボックスのはたらきを考え、問題とその解答を作成することで、関数が「は たらき」であることを理解させる。 ・比例と関数 次に示すように、教科書の時間と水面の高さの関係の表を、ブラックボックスの形に書き直 すことにより、比例が関数であることを自然に理解できるようにする。 時間(分) 水面の高さ(㎝) イ 0 0 1 2 2 4 3 6 4 8 0 1 2 3 4 0 2 4 6 8 授業を受けた児童の感想 ・ブラックボックスを使った関数の勉強をしてみて、小学校で習う比例も関数だとわかってび っくりした。 ・先生は本物のブラックボックスを持って来ていて、それに数字を入れる度に、たしたり、ひ いたり、かけたり、わったりなどの操作を行っていた。ブラックボックスを使って数字が変 わる度に計算をどのようにすればよいのかわかり、楽しかった。 ・小学校ではx×2=yとかやっていたけど、中学校からはy=x×2とやることがわかった。 ・中学校に行ったら他にどのような勉強があるのかと思い、急に楽しみになった。 ・僕は西中に行くので、西中に村田先生のような優しい人がいるとわかってうれしかった。 ウ 成果 「中学校の数学は難しい」という印象をなくし、中1ギャップを埋めるために、教具の使用 や児童の活動を取り入れた授業を行った。上記の児童の感想を見ると、ある程度目標は達成で きたものと考えられる。今回、授業の組み立てや指導方法について、小中の教師がじっくりと 話し合い、授業づくりをしたことが、このような結果に結びついたのだと思う。授業までに文 字を使う学習を事前に小学校でしていたことが、無理なく関数を式として表すことにつながっ た。また、ブラックボックスについても小学校の教師のアイデアにより、児童の興味・関心を ひくことができる教具に仕上がった。 エ 課題 成果から、小中連携の鍵は教師の交流であることを強く感じた。その交流の中で、教科の内 容や配列、指導方法等の共通点と相違点をお互いが理解することで、小中のギャップが埋まる と思う。その交流の場と時間をいかに生み出すかが最大の課題である。 ②体育における小中連携 体育の小中連携では「ハードル」と「体つくり運動」を取 り上げた。その理由としては、二つの領域とも小学校から中 学校にかけて継続して指導するからである。新学習指導要領 に対応して、中学校につなぐために小学校でどの程度まで指 導するべきかを研究した。授業では、ハードルの振り上げ足 の「上げ方」と「着地の仕方」、さらに「インターバルのリズ ム」に焦点をあてて実践を行った。その中で、中学校の教師 からの児童への教授を通して、より一層の技術的な高まりを ねらいながら、中学校の教師とのつながりも育んでいければ と考えた。 ア 指導方法のポイント ・新学習指導要領に対応した指導 小学校では基礎の徹底、中学校では専門的な深まりをねらう。 ・自己の課題に応じた課題設定ができる環境 インターバルを個々の歩幅に適した距離に調節できるようにする。 ・体づくり運動 継続した取り組みが効果的である。 イ 児童の感想 ・吉井先生に詳しく教えてもらって自分のタイムが上がった。 ・ハードルを初めて楽しいと感じた。 ・リズムが変わらなければ、どんどん速く走ることができるとわかった。 ・着地の足を速く地面につければ、もっと速く走れることがわかった。 ・中学校の先生はわかりやすく教えてくれた。 ・振り上げ足をハードルぎりぎりにねらわないといけないことがわかった。 ・吉井先生に「犬のおしっこ」のポーズをするといいと教えてもらったら走りにくくなった。 しかし、ハードルが高くなったら「犬のおしっこ」のポーズをした方がよいということがわ かった。 ウ 成果 この実践を通して、小学校におけるハードル指導では基礎を徹底させることが大切だとわか った。ハードルにおける基礎は「インターバルをリズミカルに走ること」と「振り上げ足をま っすぐに上げ、素早く着地すること」である。一方、小学校で基礎を徹底していれば、中学校 で、より高いハードルを越えるという課題に向上心を持って取り組めると思われる。また、中 学校の教師の専門的な指導により、児童は技能の向上を実感することができたようである。 エ 課題 児童に基礎を徹底するためにも、技能の専門的な知識を身につけておく必要があると感じた。 小中のギャップを埋めるには、教師がお互いの指導を交流していくことが大切だと言える。 3 成果 グループ研究において、小学校と中学校の教師が一緒になって、小中のギャップを埋めるための 実践を行った。それを通して、小学校高学年の児童が中学校の学習に対して抱いていた不安を解消 したり、期待をもたせたりすることができた。また、グループ研究にあたり、小学校と中学校の教 師が、今回実践した科目・領域に関わらず、日常的な学校生活の様子、学習習慣や学習内容など、 様々な内容について議論を交わしたり、情報を交換したりすることができた。このように教師間の 考え方のギャップを埋めることができたのも大きな成果といえる。 4 課題 普段の生活の中で校種の違う教師が話し合う場をつくり出すのは時間的に難しい。また、ギャッ プをさらに埋めるためには、互いの指導内容を知っておくことは必要不可欠であるが、よく知らな いのが現状である。小学校・中学校のそれぞれの教師自身が、常に連携を意識しながら必要に応じ てお互いの指導内容について研究する機会をもち、系統立った指導を行うよう努力していきたい。
© Copyright 2024 ExpyDoc