藤原ゼミ 2013/10/29(火) 『雇用・利子および貨幣の一般理論』 文責:鈴木優介 第 13 章 利子率の一般理論 報告:経済学部経済学科3年 橋口昇平 司会:経済学部経済学科2年 松本光司 まとめ:経済学部経済学科3年 鈴木優介 ☞この章では利子率決定の一般理論の概略が展開される。 →この先の 14 章と補論で今までの新古典派の経済理論により、どのように市場利子率が決 まってきたか述べられている。 第1節 ●投資を上下に動かして資本の限界効率が利子率に等しくなるようにする力がいくつかあ るが、資本の限界効率自体と利子率とは別物である。 →利子率が当期に供給される資金量を決定し、実際に貸付資金の需要量を資本の限界効率 が決定するという考えのため。 ●古典派の利子率決定理論は一言でいうと利子率は投資と貯蓄が等しくなるような水準に 決まってくるというものであった。 →しかし、投資も貯蓄も利子率からだけでは一意的に導き出すことができない。貯蓄は国 民所得 Y の水準に依存する。 r S I I,S 第2節 ●個人の心理的な時間選好には2段階の意思決定が関与している。 第一段階は、所得の内どれだけ貯蓄するかということである。 第二段階は、貯蓄性向が決定された時、貯蓄を具体的にどのような形で行うかを決定す る問題である。 →人々の流動性選好がどの程度あるかにによって貯蓄の形態が決まってくる。 ▶流動性選好とは人々が全資産の内、どれだけ貨幣の形で保有するかを決める要素である。 ▶古典派は利子率が前者のフローの次元で決定されると考えており、後者のストックの次元 を無視したのである。 1 藤原ゼミ 2013/10/29(火) 『雇用・利子および貨幣の一般理論』 文責:鈴木優介 ☞利子率に対する古典派とケインズの考えの相違 古典派:利子は不支出(貯蓄あるいは待忍)の報酬 ケインズ:利子は不保蔵の報酬。つまり、貨幣(流動性)を手放す事に対する対価。 ●貨幣の供給量 M は次式のようにケインズの理論に登場する。 M = L(𝑖) M:貨幣の供給量 L(𝑖):流動性選好すなわち貨幣需要 ●利子率は投資に対する需要と現在の消費をどれだけ節約する用意があるかを均衡させる 要素ではない。 →それは、資産を貨幣の形で保有しようという欲求と貨幣の供給量とを均衡させる「価格」 である。流動性選好と共に貨幣量は現実の利子率を決定するものの1つの要因であると 言える。 ☞貨幣の2つの機能について、 ➀経済取引の決済手段 ➁富の保蔵手段 が挙げられるが、富の保蔵手段としての貨幣に対して流動性選好が存在する条件は、将 来利子率の不確実性である。ケインズはこれについて数式を用いて説明している。 n𝑑𝑟 = ₁𝑑𝑛 +𝑟 ₁𝑑𝑛 ここで、₁𝑑𝑟:r 年後に満期となる1ポンドの現在年1における値 n𝑑𝑟:n 年から r 年後に満期となる1ポンドの n 年における値 である。 ●人々の群集心理の将来利子率に対する期待によって流動性選好も決まる。 ここでケインズは2つのタイプの人々の心理状態について述べる。 ➀“強気”な状態:現行利子率が高すぎる場合、将来は利子率は下がっていくだろうと 人々は予想する。この場合、利子率の動きとは逆に債券価格は上昇すると予想。 ➁“弱気”な状態:現行利子率が低すぎる場合、人々は将来利子率が上がっていくだろ うと予測する。この場合債券価格は低下すると予想。 Cf.)弱気は bear 強気は bull と訳されるが、これは牛と熊それぞれの攻撃方法から由来して いる。当時アメリカの西部で牛と熊を戦わせる賭け事があり、ここから生まれた言葉で あると思われる。 2 藤原ゼミ 2013/10/29(火) 『雇用・利子および貨幣の一般理論』 文責:鈴木優介 ●流動性選好の動機として以下の3つが挙げられる。 1.取引動機:モノの規則的な購入のために貨幣を保有する動機。 2.予備的動機:モノの予見されない不規則な購入のために貨幣を保有する動機。 3.投機的動機:資産運用のために貨幣を保有する動機。つまり、債券価格が将来下落しそう なために、危険資産である債券ではなく安全資産である貨幣を保有する動機。 →また、ケインズは流動性選好がどのような影響を受けるかということを組織化された市 場の有無によって検証している。 ・組織化された市場がないという仮定:貨幣量が増加した場合、予備的動機に基づく流動 性選好は増大する。投機的動機からの現金需要が少なく、貨幣量が増加すると利子率を 即座に低下させ、債券価格は上昇する。 ・組織化された市場が存在するという仮定:貨幣量が増加した場合、投機的動機に基づく 流動性選好に大幅な変動が生じる。利子率は低下し、反対に債券価格は上昇する。 ~ゼミ内議論~ ●p164,l.1 時間選好という概念はケインズの考えではない。 →新古典派の考え方に基づいている。(貯蓄を今消費するか、後で消費するかで捉える) ●P165,l.4 逆比率とは A:B=A/B の比率の逆、B/A にすること(利子率=特定期間手放される対価と しての額/一定貨幣額) 。したがって、ここでは文章の都合上使用された表現だと解釈した。 ●p165 後ろから l.2 文脈から利子率と貨幣需要は相互に影響しあうことがいえる(利子率は貨幣需要の関数)。 →L=L(r)。右下がりになる。また、下図のように債券価格と利子率の影響で、①と②の動 きが見られると結論づけた。 r r' ② r ① M,L ①r→L…曲線 L 上の点の移動 ②L→r…曲線 L のシフト →流動性選好関数は②のケースがあるのを想定すべきだとするものだ。 ●p167,l.2 利子率が予測できる場合の式について 現在から n 年の価値を予測できる→n+r 年次の現在価値も予測できる。 このことから、利子率が確実にわかっている場合は現在の時点において、債権で保有す べきか、貨幣で保有すべきかの判断が有利に行えるようになる(次ページ図参照)。 3 藤原ゼミ 2013/10/29(火) 『雇用・利子および貨幣の一般理論』 文責:鈴木優介 ①=③/② →n𝑑𝑟= ₁𝑑𝑛 +𝑟 ₁𝑑𝑛 ●p170,後ろから l.2 イギリスとアメリカの株式市場の違い 人々の利子率に関する意見の持ち方で変わる。英は多様な意見、米はほぼ似ている意見 を持つ人が多い 図からもわかるように、貨幣量が変化した際(公開市場操作含む)の利子率の動きが英は小 さく、米は大きくなる傾向がある。 第3節 貨幣量が経済体系の中に組み込まれていく過程で注意しなければならない点について。 1.貨幣量の増加は、他の事情が同じならば、利子率を低下させる しかし、大衆の流動性選好が貨幣量の増加以上に急上昇する場合、これは起こらない 2.利子率の低下は、他の事情が同じならば、投資額を増加させる しかし、資本の限界効率表が利子率より急速に低下する場合、これは起こらない 第4節 『貨幣論』における弱気と、 『一般理論』における弱気の違いについて 『貨幣論』 :資産と債権をあわせた価格と、貨幣量との関数関係として定義される 『一般理論』 :利子率と貨幣量との関数関係として定義される 第5節 保蔵という概念は流動性選好という概念の第一次近似である。保蔵は貨幣ストックを表し、 不保蔵は債券ストックを表している。ケインズは、金利と保蔵との関係を人々が見過ごし 4 藤原ゼミ 2013/10/29(火) 『雇用・利子および貨幣の一般理論』 文責:鈴木優介 がちなために、利子とは不支出の報酬であると思われがちだと述べている。しかし実際は 不保蔵の報酬であることをケインズは主張した。 ~ゼミ内議論~ ●p172,第 5 節全体 保蔵という概念について ケインズは定義によって、正しくも間違いにもなると指摘。 →保蔵したいと欲する総量と現存の貨幣量を均等化 図から実際の r(利子率)と乖離した r’の部分において、人々の貨幣需要を指すものが保蔵 であると理解できる。また、債券に変えたいと思う量を保有している場合もある。 5
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