第1回 2009年4月7日 竹内 幹 一橋大学大学院経済学研究科 実験経済学を講義します。 「合理的な個人」=フィクション ≠ 生身の人間 生身の人間の行動を観察する必要 実験室(ラボ)のなかで、”被験者”を 経済学モデルと同じような状況下におく 経済学モデルと現実とのギャップをうめていこう オークション、公共財、ゲーム理論、市場取引、協力行 動など、多くの分野で経済実験が行われてきた 目的:経済学モデルの否定ではない 第1回 :イントロダクション 第2回 :市場実験1 第3回 :市場実験2(独占) 第4回 :公平性(最後通牒ゲーム) 第5回 :公共財の供給・信頼ゲーム 第6回 :リスク選好・損失回避 第7回 :時間選好1「今日やるか明日やるか」 第8回 :時間選好2「やっぱり明日にしよう」 第9回 :オークション理論1 第10回:オークション理論2 第11回:男女の違い・文化の違い 第12回:実験手法(被験者の選好をあぶりだす) 第13回:実験経済学の誕生 第14回:レポート発表と講義レビュー 第15回:まとめ・評価・他 宿題 25% (「来週までに~ ~ ~ 」) 欠席した場合は、ブログ「竹内幹の講義」を見て、 宿題が出ていないかどうか確認してください。 http://takekan-lecture.blogspot.com/ レポート 25% 毎月第1回目の講義に提出 課題1:提出日 5月12日 課題2:提出日 6月 2日 課題3:提出日 7月 7日 期末試験 50% 7月21日 本でもノートでも、持ち込み自由です。 ただし、携帯電話の使用、インターネットへの接続、 PC/Macや大容量記憶装置の使用はNGです。 教室の全員が参加。 各自、0~100の数のなかから、数をひとつ選びます。 教室の全員が数字を提出したあとで、 みんなが選んだ数の平均値を計算します。 さらに、その平均値を0.7倍します。 その数(平均値×0.7)をアタリ番号とします。 アタリ番号とぴったり同じ数を書いていた人がいれば、 その人に賞品をさしあげます。 ぴったり同じ数を書いた人がいないときは、当選番号に 最も近い数を書いた人が賞品を得ることができます。 該当者が2人以上いた場合は抽選して1人を選びます。 さて、0~100までの数字のなかから、何を選ぼうか。 みんなが書いた数の平均よりも小さい数を書け! 待てよ、他のみんなも同じように考えるわけだから。 → 全員がゼロを選ぶはず。(それがナッシュ均衡) 実際はどうだろうか? 生身の人間はやはり非合理的で予測できないものなの か? 1回目 18 16 14 12 10 8 6 4 2 0 0~ 10~ 20~ 30~ 40~ 50~ 60~ 70~ 80~ 90~ 2回目 18 16 14 12 10 8 6 4 2 0 0~ 10~ 20~ 30~ 40~ 50~ 60~ 70~ 80~ 90~ 3回目 18 16 14 12 10 8 6 4 2 0 0~ 10~ 20~ 30~ 40~ 50~ 60~ 70~ 80~ 90~ 4回目 18 16 14 12 10 8 6 4 2 0 0~ 10~ 20~ 30~ 40~ 50~ 60~ 70~ 80~ 90~ Level-0 : ランダムに数字を選ぶ。 Level-1 : 他の全員がLevel-0だと考えて、 最適行動をとる。 Level-2 : 他の全員がLevel-1だと考えて、 最適行動をとる。 … Level-k : 他の全員がLevel-(k-1)だと考えて、 最適行動をとる。 Level-0 : ランダムに数字を選ぶ。 0~100のなかから、ランダムに選ぶとすると その平均は 。 Level-1 : 他の全員がLevel-0だと考えるので、 平均値は50(ぐらい)になるはずだ、と予想。 最適行動は、その0.7倍である35を選ぶこと。 Level-2 : 他の全員がLevel-1だと考えるから、 平均は35(ぐらい)になるはずだ、と予想。 最適行動は、その0.7倍である24.5を選ぶこと。 生身の人間は、合理的な経済人とは違う。 合理的な経済人は、すべてを瞬時に計算し、自分以外 の人も全員が合理的であると想定している。 実際には、計算はできないし、非合理的な人だらけ。 でも、非合理的な行動にも根拠はあるはず。 Level-k 思考は、リーズナブルな推論方法。 非合理的な行動は、ただのでたらめではない。 予測することも可能。 どのようにずれているのか、体系的に理解すべきだ。 ケインズ『雇用・利子および貨幣の一般理論』, 1936. 玄人筋の行う投資は、投票者が100枚 の写真の中から最も容貌の美しい6 人を選び、その選択が投票者全体の 平均的な好みに最も近かった者に賞 品が与えられるという新聞投票に見立 てることができよう。 ケインズ『雇用・利子および貨幣の一般理論』, 1936. この場合、各投票者は彼自身が最も美 しいと思う容貌を選ぶのではなく、他 の投票者の好みに最もよく合うと思う 容貌を選択しなければならず、しかも 投票者のすべてが問題を同じ観点か ら眺めているのである。 ケインズ『雇用・利子および貨幣の一般理論』, 1936. ここで問題なのは、自分の最善の判断 に照らして真に最も美しい容貌を選ぶ ことでもなければ、いわんや平均的な 意見がもっとも美しいと本当に考える 容貌を選ぶことでもないのである。 第12章第6節 数当てゲームで、ゼロを合理的 に選んでも、ゲームに勝てるわけ ではない。 深読みが裏目に出て、失敗。 1歩だけ先を読め! 数当てゲームのルールを以下のように変更します。 旧) アタリ番号=平均値×0.7 新) アタリ番号=平均値×0.7 + 3 1.新ルールでの、ナッシュ均衡を求めよ。 (ヒント:他の全員がXという数字を選んだら、自分もXを 選ぶのが最善である状態を見つけ、そのXを答えなさ い。旧ルールではX=0であった。) 2.Level-0は0~100のなかからランダムに数を選ぶも のとしたうえで、Level-1 と Level-2 が選ぶ数字をそ れぞれ答えよ。
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