Annex29WSおよび2005IEAヒートポンプ会議における地中熱に関連する

2005/9/5
地下熱利用とヒートポンプシステム研究会 資料
Annex29 ワークショップおよび 2005 IEA ヒートポンプ会議各セッションにおける
地中熱に関連する講演内容について
1. Annex29 ワークショップ
日時:2005 年 5 月 30 日 13:30∼17:30
場所:アメリカ、ラスベガス
①オーストリア:発表者 Hermann Halozan (Graz University of Technology)
(1)オーストリアの Heat pump 市場
2001 年の 2,800 台から、2003 年では約 3,500 台に増加(図 1.1 参照)。そのうち直膨-水システムが
約 50%、ブライン-水システムが約 25%と大部分を占めている(図 1.2 参照)。
(2)直膨型システムの紹介
水平型システムと垂直型システムにおける冷媒のクォリティ、圧力、温度、冷却能力の変化
水平型システムの実例(図 1.3 参照)
直膨垂直型地中熱交換器の種類(図 1.4 参照)
(3)CO2 ヒートパイプを用いた地中熱交換器
CO2 冷媒の物性-飽和圧力と冷却能力
CO2 ヒートパイプの概要
(4)基礎杭を地中熱交換器として用いた建物の事例
STRABAC, Vienna. Austria(図 1.5 参照)
口径 850mm の現場打ちコンクリート杭 400 本で、冷房負荷 2100kW、暖房負荷 1500kW を賄う
図 1.1 オーストリアのヒートポンプ市場の変化
1
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Air/Water
DX/Water
Water/Water
Air/Water
Water/Water
Brine/Water
DX/Water
Brine/Water
図 1.2 オーストリアのヒートポンプの種類別導入割合(2003 年度)
図 1.3 直膨水平型地中熱交換器を用いた GSHP システム
図 1.4 直膨垂直型地中熱交換器の種類
2
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図 1.5
STRABAC, Vienna. Austria の外観(左)とその GSHP システムの概要(右)
②日本:発表者 葛 隆生 (北海道大学)
鋼管基礎杭を地中熱交換器として用いた建物の紹介
(1)施工法
鋼管杭の埋設方法、U チューブの挿入方法、鋼管杭の配筋方法等
(2)設計
地中熱交換器(鋼管杭)長さに対してのシステム適正規模の決定
暖冷房システムの決定と、システム概要
(3)導入検討とフィージビリティスタディ
導入検討の結果
→約 4.7m×51 本の鋼管杭と 75m×3 本のボアホール型地中熱交換器に対して、50kW ベース
負荷であれば長期運転が可能でそのときの予測される平均 COP は 4.4。
フィージビリティスタディの結果
→GSHP システムは比較対象としたガス吸収式冷温水器と比べ約 3830kg の CO2 排出量削減効果
③ノルウェー:発表者 Jorn Stene (SINTEF Energy Research)
(1) ノルウェーの Heat pump 市場
2003 年度の導入数は約 55,000 台であり、そのうち約 2,500 台が地中熱システム。
(2)Integrated CO2 Heat Pump Unit
暖冷房給湯用 CO2 ヒートポンプユニット
(3)GSHP システムの実例
オスロ空港の地下水熱源システム→45m×9 本(暖房用)、45m×9 本(冷房用)の井戸
事務所建物の暖冷房→延床面積約 35,000m2 の建物
地域冷暖房→合計延床面積約 180,000 m2
④USA:Arun Vohra (DOE)
(1)USA の Heat pump 市場と総エネルギー消費量に占める割合
3
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地中熱は USA の総エネルギー消費量の、エネルギー源のうち約 0.32%を占める(図 1.6 参照)。
住宅部門の再生可能エネルギーの使用量は約 400,000TJ、
そのうち 18,000 TJ が地中熱による(図 1.7 参照)。
商用部門では再生可能エネルギーの使用量は約 200,000TJ、地中熱は内、15,000 TJ(図 1.8 参照)。
産業部門では再生可能エネルギーの使用量は約 1,800,000TJ、地中熱は内、5,000 TJ(図 1.9 参照)。
USA の GSHP システムの年間導入台数約 80,000 台(図 1.10 参照)。
(垂直型:約 37,000 台、水平型:約 30,000 台、開放型:約 8,000 台)
ヒートポンプユニットのメーカー→30 社
(2)USA の Heat pump 導入拡大への課題と対応策
導入コストの問題、特に掘削コストを下げる事が導入拡大への鍵となっている。
USA の掘削コストは土質により$11.5∼55.8/m (平均$36/m)
→空気熱源と比較するとイニシャルコストが高い
導入コストを下げるため技術的なブレークスルーが必要。
また、いくつかの州では GSHP システムの導入の奨励プログラムを実施している。
(3)地下センターに対応した地下水プロジェクト
世界最大級の GSHP が導入された The Galt House East Hotel とウォーターフロントのプロジェク
トについての紹介。
4,700 トンの GSHP システムが暖冷房システムとして導入されている。
The Galt House East Hotel はそのうち 1,700 トンの GSHP システムが導入されており、その導入コ
ストは$1,500/トンである(他のシステムは$2,000∼3,000/トン)。
さらには、一ヶ月あたり約$25,000 のランニングコスト削減効果。
U.S. Energy Consumption by Energy Source, 1999-2003
8
100
10
10
10
Natural Gas
Nuclear
1
106
Hydroelectric
TJ
Quads
Coal+Coke
7
105
0.1
0.01
1999
4
2000
2001
2002
2003
10
2004
Year
Source:Energy Information Administration: Data for 2003; Reported Release: August 2004
www.eia.doe.gov/cneaf/solar.renewables/page/trends /table2.html
図 1.6
USA におけるエネルギー源別エネルギー消費量の変化
4
Geothermal
Biomass
Solar Energy
Wind Energy
Petroleum
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0.633
0.5
0.528
0.4
0.422
0.3
Residential (Total) 0.316
0.2
Biomass
Geothermal
0.211
-6
0.6
TJ/y x 10
Quadrillion Btu/y
Renewable Energy Consumption by Energy Use in
Residential Sector and Energy Source, 1999-2003
Solar
0.1
0
1999
0.1055
2000
2001
2002
2003
2004
2005
Year
Source:Energy Information Administration: Data for 2003; Reported Release: August 2004
www.eia.doe.gov/cneaf/solar.renewables/page/trends/table2.html
図 1.7
USA における住宅部門の再生可能エネルギー使用量の変化
Renewable Energy Consumption by Energy Use in Commercial
Sector and Energy Source, 1999-2003
0.25
Biomass
0.264
Wood/Woodwaste
0.211
0.15
0.158
0.1
0.106
0.05
0.0053
0
1999
-6
MSW/Landfill Gas
TJ/y x 10
Quadrillion Btu
0.2
Other Biomass
Geothermal
Conventional
Hydroelectric
Commercial (Total)
2001
Year
2003
2005
Source:Energy Information Administration: Data for 2003; Reported Release: August 2004
www.eia.doe.gov/cneaf/solar.renewables/page/trends/table2.html
図 1.8
USA における商業部門の再生可能エネルギー使用量の変化
5
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Re ne w able Ene rgy Consum ption by Energy Use in
Industrial Sector and Ene rgy Source , 1999-2003
4.5
4.2
Biomass
3.5
W ood/W oodwaste
3
3.2
2.5
2
2..1
1.5
1
MSW /Landfill Gas
TJ x 10 -6
Quadrillion Btu
4
Ot her Biomass
Geothermal
Conventional
Hy droelectric
Indus trial (Total)
1.1
0.5
0
1999
2001
2003
2005
Year
Source:Energy Information Administration: Data for 2003; Reported Releas e: August 2004
www.eia.doe.gov/cneaf/solar.renewables/page/trends /table2.htm l
図 1.9
USA における産業部門の再生可能エネルギー使用量の変化
Geothermal Heat Pump Growth 1975-2005
25000
20000
Geothermal Heat
Pump Growth
TJ/y
15000
10000
5000
0
1970
1975
1980
1985
1990
1995
2000
2005
2010
Yea r
図 1.10
USA における GSHP システム市場の変化
⑤スウェーデン:発表者 Martin Forsén (The Royal Institute of Technology)
(1)スウェーデンの Heat pump 市場
2004 年度の導入数は約 66,000 台であり、そのうち約 39,000 台(約 60%)がブライン-水(地中熱)シ
ステム(図 1.11、図 1.12 参照)。
スウェーデンの電気料金は発熱量 1kWh あたりで灯油の約 1.1∼1.6 倍程度。
(2)スウェーデンの一般的な条件
6
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ストック建物はかなり古いものが多い→少しずつ新築建物の建設が行われている
気温→南部は年間平均約 8℃、ストックホルムで年間平均約 6℃、北部では年間平均約 2℃
地中の岩盤は主に花崗岩
温水暖房システムが暖房システムとして優位な状況にある
(3)スウェーデンの典型的なヒートポンプユニットの紹介
構成機器はスクロール圧縮機、プレート熱交換器、温度膨張弁、冷媒は R404a(図 1.13 参照)
0℃-45℃条件で出力は 5.2kW、平均 SPF は約 3.0
(4)大規模商業用建物(図 1.14 参照)への導入
4 階建て、延床面積 7,020m2
ボアホール 200m×38 本、グラウトは無し(地下水をそのまま使用)
冬期はヒートポンプ暖房、夏期はフリークーリング
41kW のヒートポンプ(R407C 冷媒)×6 台(図 1.15 参照)、255kW のバックアップ電気ボイラ
導入コスト比較(表 1.1 参照)
年間コスト比較(表 1.2 参照)
コストペイバックタイム→2.5 年
66 154
70 000
60 000
48 806
50 000
36 568
40 000
30 000
39 602
24 253
20 000
17 023
18 699
20 296
1997
1998
1999
12 431
10 202
9 028
1994
1995
10 000
0
1996
図 1.11
2000
2001
2002
2003
スウェーデンにおけるヒートポンプ市場の変化
0%
9%
9%
Air/Water
Air/Air
Exhaust air
Brine/Water
23%
59%
図 1.12
スウェーデンのヒートポンプの種類別導入割合(2004 年度)
7
Open loop
2004
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図 1.13
図 1.14
スウェーデンの典型的なヒートポンプの外観(左)とその内部(右)
スウェーデンの GSHP システムが導入された大型商用建物
8
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図 1.15
スウェーデンの大型建物に導入されたヒートポンプ(出力 41kW×6 台)
表 1.1
スウェーデンの大型建物の導入コスト比較
Alternative 1
District heating and chillers
Alternative 2
Ground source heat pumps
Connection fee district
heating
78’ euro
District heating central
44’ euro
Additional costs for
extended electric power
supply
Drilling
chillers
22’ euro
289’ euro
183’ euro
Heat pumps
94’ euro
305’ euro
405’ euro
年間コスト削減→100 ユーロ
表 1.2
スウェーデンの大型建物のランニングコスト比較
Alternative 1
District heating + chillers
Heating winter time
925 MWh x 59 euro
54’ euro
Heating summer time
50 MWh x 44 euro
2’ euro
Cooling winter time
190 MWh x 91 euro / 3,0 (COP)
6’ euro
Cooling summer time
305 MWh x 91 euro / 3,0 (COP)
9’ euro
71’ euro
Alternative 2
Ground source heat pumps
Heating winter time
925 MWh x 91 euro / 3,0 (COP)
28’ euro
Heating summer time
50 MWh x 91 euro / 3,0 (COP)
2’ euro
Cooling winter time
11 MWh x 91 euro (energi dist.pump)
1’ euro
Cooling summer time
11 MWh x 91 euro (energi dist.pump)
1’ euro
32’ euro
年間コスト削減→39 ユーロ
9
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⑥カナダ:発表者 Vasile Minea (Laboratoire des Technologies de L’nergie)GSHP のマーケット:1997 年
9000 台、2008 年までに 25000 台を目標とする
Multi-function GSHP ユニットの紹介
2.2005 IEA ヒートポンプ会議
日時:2005 年 5 月 31 日∼同年 6 月 2 日
場所:アメリカ、ラスベガス
参加者 20 カ国 222 名 内、日本から 37 名
2.1 各国の状況について
RR1 北米におけるヒートポンプ市場について
発表者 Mark Menzer (Air Conditioning and Refrigeration Institute, USA)
近年のヒートポンプ導入数はゆっくりではあるが着実に成長している(図 2.1)
。昨今の天然ガス
料金の高騰もまた有利に働いている。2006 年、連邦政府により定められるスプリットシステムの性
能下限値が 13 SEER に引き上げられるため、ENERGY STAR もまたこれを採用すると予想される。
これにより、現行の 10 SEER の場合に比べて約 30~40%熱交換面積を増やす必要があると試算され
ている。また、2010 年までに廃止される HCFC-22 から HFC-410A へ冷媒の転換も、現在生産業者
に委ねられる課題である。現在、北米で販売されるほとんどのヒートポンプユニットが、ARI の水
準を採用している(http://www.ari.org/cert/index.html)。この他、NATE(北米技術者能力協会)では、
空調技術者の認定試験を行っており、認定技術者は 21000 人にのぼる。
図 2.1 米国のヒートポンプ出荷数
(http://www.eia.doe.gov/emeu/recs/recs97/decade.html)
RR2 ヨーロッパのヒートポンプ市場の現状と動向
発表者 Monica Axell (IEA Heat Pump Centre, Sweden)
2003 年のヒートポンプの導入台数を図 2.2 に示す。フランスでは 1997 年からの 5 年で年間販売
台数が 10 倍以上に成長している。北欧諸国でも成長が大きく、特にノルウェーでは資源エネルギ
ー庁からの補助(ENOVA)により、2000 年比で 20 倍以上の約 55000 台が売られている。
地中熱ヒートポンプに関する情報として、現在あげられる問題のひとつにはイギリス、ドイツな
どの井戸掘削に関して経験ある技術者数の不足がある。一方では、地下資源の権利の問題もあり、
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ドイツ、チェコではそれぞれ、100m、30m 以下の地盤を国が所有している。また、多数本のボアホ
ールを用いる場合の互いの熱的干渉が、特に都市部での普及を律速する要因になっており、水平型
熱交換器の適用を検討している地域もある。
自然冷媒への転換はヨーロッパでも注目されており、2005 年中には暖房・給湯用の CO2 ヒート
ポンプが販売開始される。現在、最も可能性があるのは、高温の水システムを採用している既存建
物である。一般に昔の水システムではラジエーターを過大に設計していることが多いため、低温水
循環システムにおいても室内の快適性は保たれると予想される。
RR3 アジア、太平洋におけるヒートポンプ技術の概要
発表者 Takeshi Yoshii (Heat Pump Technology Center of Japan, Japan)
ここ数十年の間にアジアの空調ヒートポンプ市場は急速に成長した(図 2.3)。今後も大きな成長
の可能性があるこのエリアでは、ヒートポンプの使用が特に有望である。地中熱ヒートポンプ市場
の成長は世界に比べるとゆっくりしているものの、近年注目が集まっている。オーストラリアのキ
ャンベラでは、350 本のボアホールに 220 の水-空気ヒートポンプを用いたシステムが 1999 年に施
工されている。中国、韓国、日本では、水-水ヒートポンプの方がより用いられており、韓国と日
本では地下水システムに比べ、水またはブラインによる間接熱交換方式に人気がある。また、日本
では基礎杭を地中熱交換器として用いる、いわゆる「エネルギーパイル」方式も注目されている。
図 2.2 ヨーロッパ各国における 2003 年のヒートポンプ販売台数 (出所:EHPA)
図2.3 世界のRAC、PAC市場の変化とアジア地域における成長 (JRAIA 調査による)
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O2-2 アメリカ北東部および中部大西洋側における地中熱ヒートポンプ導入による CO2 排出量削
減の効果
発表者 Alice Gitchell (Richard Stockton College of New Jersey, USA)
Richard Stockton 大学の 120 万 m2 のエリアには、135m のボアホールが 400 本埋設されている。
この例は既存建物への採用であったこと、ヒートポンプの性能が現行品に比べ低かったことなどに
より、最適設計であるとはいえないが、年間 CO2 の削減量は 2207t 程度であった。この他、9 つの
商業建物での実施建物における実測から、高効率の地中熱ヒートポンプを用いた場合、従来のガス
ボイラーと冷却塔を用いたシステムに比べた CO2 削減量は 31~50%であった。
O9-3 カナダにおけるヒートポンプに関する R&D の変遷
発表者 Sophie Hosatte (Natural Resources Canada, Canada)
GS2000 は、Caneta Research Inc.により開発されたソフトウェアであり、1995 年から配布が始まっ
ている。
北米 129 箇所の地下データを有し、
垂直型および水平型の地中交換器の設計が可能である。
2000 年までに、技術者などに 200 部が無料で配布されている。現在、NRCan’s CANMET Energy
Technology Centre-Ottawa (CETC-Ottawa)のインターネットサイトでも入手可能である。
また、2002 年には Canadian GeoExchange Coalition(カナダ地中熱利用連合)が設立され、問題克
服のための活動や情報の提供などを行っている。
O9-4 スイスにおける研究
発表者 Th.Kopp (Swiss Federal Office of Energy, Switzerland)
スイスでは、全体の 40%において地中熱または地下水をヒートポンプの熱源として使用している。
ボアホールの掘削については、充分な研究が進められており、これ以上はほとんど必要でない。通
常ダブル U チューブが用いられ、ボアホールの総長は 150~500m 程度である。一次側でブラインを
用いる場合、ポンプ動力が大きくなることが問題であったが、これを克服するため、CO2 を用いた
自然循環方式によるポンプレスの地中熱交換器が開発されている。このとき、一本当りの長さは配
管径φ40mm で 350m 必要である。通常のブライン方式と比較した COP の向上は 12~15%である。
O9-6 中国における研究活動
発表者 Wei Xu (China Academy of Building Research,China)
中国でも地中熱ヒートポンプの開発は急速に進められている。3 年後までに、年間 40~50 のプロ
ジェクトが開発されるに至ると予想される。
2.2 地中熱関連の講演内容の紹介
**口頭発表**
KN-4 ”GROUND SOURCE HEAT PUMPS: MEETING GLOBAL CHALLENGES THROUGH LOAD
NETWORKING”
発表者 James E. Bose (Oklahoma State University, USA)
湖(池)水熱源型 GSHP システムの導入設計の事例について紹介している。まず、対象となる 3 つ
の建物(大規模商用建物、カジノ建物、本社建物)について熱負荷の解析を行い、現時点では使用さ
れていない商用建物の冷凍機の排熱を建物の暖房に使用するように変更している。非暖房期間にお
いては建物の近辺にある池を排熱供給源として、中間期においては暖冷房双方の熱供給源として使
用している(図 2.4)。さらには、GSHP システムの LCC の削減や応用範囲の拡大のために必要なこ
とについて述べ、また、技術の伝達活動について紹介している。
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O4-1 ”SIMULATION AND OPTIMIZATION OF GROUND SOURCE HEAT PUMP SYSTEMS”
発表者 J D. Spitler (Oklahoma State University, USA)
GSHP システムのシミュレーション、設計と最適化についての最近の研究開発について述べてい
る。まず、ボアホール型地中熱交換器の温度解析について、Eskilson らの g-function を用いた手法に
ついて紹介し(図 2.5)、それを筆者らによって発展させたシミュレーションモデルについても紹介し
ている。また、開放型の地中熱交換器や、水熱源ヒートポンプの解析方法にも触れておりいくつか
の研究例を紹介している。現在のところボアホール型地中熱交換器のシミュレーションについては
商用化されているものもあり、それらのシミュレーションはシステムの運転可能な地中熱交換器長
さなどを決定できるようになっている。さらには、他熱源を併用した GSHP システムや道路融雪な
どの応用への展開もなされている。システムの最適化については幾つかの研究が行われているもの
の、結論についてはまだ述べられていないのが現状である。
O4-2 ”A JOINT WESTERN AND EASTERN CULTURE PROCEDURE FORE COST ESTIMATING
GEOTHERMAL HEAT PUMP SYSTEMS”
発表者 William S. Fleming (Jacwill Services, USA)
USA と中国が GSHP システムの導入促進で協力するという同意に達して、1999 年から 2000 年に
3 つの GSHP システム導入現場において、システムの構築、運用、維持のために中国側が USA の
GSHP の機材を購入している。このときの導入プロジェクトでは 1m2 あたりの GSHP システムの機
材費用は 11∼16 ドルと全 HVAC の 1m2 あたりの費用約 30∼50 ドルと比較して低コストに抑えら
れることが示された。また、2001 年から 2004 年に 4 つのシステム導入促進現場でも機材を購入し
ている。
O4-3 ”STATUS OF DESIGN TOOLS FOR GROUND-SOURCE HEAT-PUMP SYSTEMS”
発表者 Göran Hellström (Lund University, Sweden)
現在の GSHP システムの設計ツールについて述べている。GSHP システム設計手続きは簡易的な
システム設計から始まり、実施設計がなされ、評価、計測などが行われる。このうち設計が要求す
るのは、ボアホールの長さ、本数、充填材などである。ここではまず、ボアホール充填材が採熱性
能に与える影響について述べている。次に熱応答試験により設計に用いる温度応答 g-function の再
現性の確認などを行い、また、地下水流れによる有効熱伝導率への影響の検討や、その場合の熱応
答試験のシミュレーションも行っている。さらには、設計ツールの一例として EED (Earth Energy
Designer)や、SBM (Superposition Borehole Model)を紹介している。
O4-4 ”DEVELOPMENT OF A DESIGN AND PERFORMANCE PREDICTION TOOL FOR THE GSHP
SYSTEM”
発表者 T. Katsura (Hokkaido University, Japan)
新たに開発した GSHP システム設計・性能予測ツールについて紹介している。このツールはユー
ザーフレンドリーなインターフェースを有していることや、高速計算を行えること、ライフサイク
ル計算を行えること、さらには複数埋設管の計算を行えることなどが特長として挙げられる。さら
にこのツールを用いた計算の一例として東京の住宅において、8m×20 本の基礎杭を地中熱交換器
として使用した場合の計算を紹介し、結果としてシステムの長期運転が可能であることや、従来方
式と比較してコストペイバックタイムが数年程度で抑えられる可能性があることを示している。
O4-5 題名”STATUS OF DESIGN TOOLS FOR GROUND-SOURCE HEAT-PUMP SYSTEMS”
発表者 Martin Forsen (Royal Institute of Technology, Sweden)
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2005/9/5
地下熱利用とヒートポンプシステム研究会 資料
スウェーデンの GSHP システム市場において、関係者の提携で開発された新しい設計ツールにつ
いて述べている。このツールはボアホール型地中熱交換器の設計を行うのと同様にシステム性能の
予測も可能である。地中温度予測には無限円筒理論を使用しており、ボアホール内の熱抵抗を与え
ることでブライン温度を計算している。ヒートポンプの性能については、一次側、二次側の代表点
において性能試験を行い、その結果に直線補間することで、性能曲線を得ている。このツールは既
にスウェーデンで商用化されており、現在では 600 以上のライセンス契約・使用者がいる。
O6-5 ”CO2 THERMOSYPHONS AS HEAT SOURCE SYSTEM FOR HEAT PUMPS – 4 YEARS OF
MARKET EXPERIENCE”
発表者 Rene Rieberer (Graz University of Technology, Austria )
地中熱交換器破損時の環境配慮とシステム COP の向上の面から CO2 ヒートパイプを用いた垂直
地中熱交換型 GSHP システムがオーストリアでは導入され始めており、現時点で導入数は 100 程度
にまで上っている(図 2.6)。ここではこのシステムについて初期段階の実験(図 2.7)結果と、導入時
におけるヒートパイプの材質、ヒートパイプ頭部処理、ボアホール 1 本あたりのプローブの本数、
設置方法、長さ、ボアホールの間隔、CO2 の封入方法などの最適手法について示している(図 2.8)。
さらには水平地中熱交換器に CO2 ヒートパイプについても紹介し最初の実験結果について示して
いる。
**ポスター発表*
P4-1 発表者 Ed Lohrenz (Ice Kube Systems, Canada )
地中熱、氷蓄熱複合型の暖冷房システムについて述べている。その特長として負荷のピークカッ
ト効果があり、さらにその利点としてヒートポンプ容量、地中熱交換器規模の縮小、システムの高
効率化、ランニングコスト削減効果などを挙げている(図 2.9)。
P4-2 発表者 Jason E. (University of Tennessee at Martin, USA)
テネシー州の GSHP システムの導入現場について、テネシー大学がライフサイクル評価を行って
おり、GSHP システムはこれまでの HVAC システムや DHW システムと比較して約 46%のエネルギ
ー削減効果があることを報告している。
P4-3 発表者 M.Bianch (Swiss Federal Institute of Technology, Swizerland)
実際の暖房負荷を模擬したヒートポンプの性能試験装置により、新たに開発した MPC-PWM 型
のコントローラーを搭載したヒートポンプと従来のリレー型コントローラーのヒートポンプの性
能比較を行い、暖房コストが 10%削減できることを示している。
P4-4 発表者 T. Llindholm (Chalmers University of Technology, Sweden)
現在暖房の熱源に空気熱源ヒートポンプシステムが使用されている、スウェーデン南西部の住宅
街において地中・空気二重熱源ヒートポンプシステムの導入検討を行っている。この導入検討の結
果として、100,000SEK の投資に対して、年間コストの削減幅は地中熱源の 6,200SEK に対して、空
気熱源は 3,200 SEK であり、この事から二重熱源は地中熱交換器の埋設長さが限られる場所のみで
適用した方が良いということが結果として得られている。
P4-5 発表者 H. Halozan (Graz University of Technology, Austria)
Annex29 の主題である GSHP システムについて述べている(内容は Annex29 ワークショップの
Hermann Halozan (オーストリア)の発表と同じであるためそちらを参照)。
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地下熱利用とヒートポンプシステム研究会 資料
P4-6 発表者 A Presetschnik (Arsenal Research, Austria)
場所打ち杭を地中熱交換器として用いた GSHP システムを暖冷房システムとして使用している実
際の建物の計測結果について報告している。初年度(2004 年度)の結果として全供給エネルギーに対
する SPF は 2.5 であった。結果より、冷熱需要が予定よりも多くなるという特殊な条件がシステム
の性能に大きく影響したという知見を得ている。
P4-7 発表者 Eric Dumont (Mons, Belgium)
ベルギーにおける住宅用 GSHP システムの計測結果について述べている。2 つの住宅にそれぞれ
3 年、2 年の計測を行った結果得られたヒートポンプの暖房期間平均 COP はそれぞれ 2.69 と 2.96
であったと報告している。
P4-8 発表者 Johnny Wärnelöf (IVT Industrier, Sweden)
Compact Collector と呼ばれた新しい地中熱交換器について紹介している(図 2.10、図 2.11)。
Compact Collector を用いた地中熱と排熱を熱源としたヒートポンプシステムを住宅に導入し測定
を行った結果、年平均の COP は 3.3 であり、システムの導入が可能であることが示されている。ま
た、この結果から暖房を床暖房のみで行うものとすれば、4 以上の高い年平均 COP が得られること
も示唆されている。
P4-9 発表者 Ryuzo Ooka (University of Tokyo, Japan)
場所打ち杭を地中熱交換器として使用した冷房試験と、その地中熱交換器とボアホール型地中熱
交換器のコスト比較を行っている。冷房試験より、杭 1 本あたりの放熱量は 186∼201W/m であり、
平均 COP は 4.89 という結果が得られている。また、この結果をもとにした、熱量あたりの設置費
用は 79 円/W であった。一方でボアホール型地中熱交換器は 300 円/W であることから、このシス
テムは商用化の可能性が十分にあるという結論に達している。
P4-10 発表者 Yoshiro Shiba (Zeneral Heatpump Industry, Japan)
地中熱利用のための高効率水-水ヒートポンプの開発研究について紹介している。まず、熱交換
器や圧縮機の改良を行っている。次にヒートポンプの設計プログラムを作成し、その結果をもとに
さらなる改善を行い、それらの結果として開発機は冷却 COP5.5 を達成している。
P4-11 発表者 K. Nagano (Hokkaido University, Japan)
新しいヒートポンプの性能試験装置について紹介している。この試験装置の特長として、プレー
ト熱交換器を使用して、試験装置の小型化、省エネルギー化をはかったほかに、冷温水の温度調節
を自動的に行える点が挙げられる。また、この試験装置を用いた性能試験の一例として、試験した
ヒートポンプの出力・COP が 0℃-35℃条件でそれぞれ 5.0kW、3.5 という結果が得られている。
P4-12 発表者 Li Bing-xi (Harbin Institute of Technology, China)
低負荷時のヒートポンプの最適運転について報告している。結果としてあらゆる熱負荷に対して
ヒートポンプを最小エネルギーコストで運転させることができる最適運転負荷(最適値)があり、こ
の最適運転を行うことによってシステムの効率を改善できるという知見を得ている。
P4-13:発表者 Xu Shengheng (Ever Source Science & Technology Development Co., Ltd , China)
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地下熱利用とヒートポンプシステム研究会 資料
単数井戸型井水熱源ヒートポンプシステムの中国の導入例について紹介している。10 の建物につ
いて、その基本設計と年間の利用熱量とそれに対する電力消費量についての測定結果を示している。
また、新たに 21 の建物に導入が進められていることを紹介している。
P6-1 発表者 Stefan Bertsch (Ray W Herrick Laboratories, USA)
地中熱交換器に使用される CO2 ヒートパイプの数値計算モデルを示し、その計算の一例として
ヒートパイプの口径を変更した場合の結果について示している。その結果の一つとして、ヒートパ
イプ内の CO2 の圧力効果は、大部分は重力によって引き起こされるものであり、摩擦が大きく影
響するのは口径が小さい場合のみであるということを述べている。
P6-2 発表者 H.Kruse (Research Centre for Refrigeration and Heat Pumps, Germany)
地中熱交換器に使用される CO2 ヒートパイプの理論的、実験的検討を行い、その結果として、
要求されるヒートパイプの熱流は 50W/m と推定されている。また、ヒートパイプの熱流はパイプ
内の液膜の幅を決定するものであり、これが大きい場合には、液膜の上層部の速度が大きくなり、
それが液体の流下を妨げる恐れがある。それゆえ、ヒートパイプの長さによって口径を選択し、液
膜幅や採熱量によって大きさを変更しなければならないという結果も得られている。
P6-11 発表者 K. Nagano (Hokkaido University, Japan)
鋼管杭を地中熱交換器として用いた、採熱実証実験について紹介している。二つの場所で実証実
験を行っており、一つは大口径の鋼管杭について、地中熱交換器の仕様を変更した場合のものであ
り、もう一つは住宅の暖房利用を想定した、25 本の小径鋼管杭を使用したものである。
P6-12 発表者 G Romero (Universidad Poliecnica de Valencia, Spain)
商用建物について、GSHP システムと ASHP システムの比較検討を行っている。理論的解析の結
果として 25 年間の運転で暖房期間の運転効率は 32∼36%程度改善され、冷房期間では 50∼60%程
度の効率改善が見られる事が示された。
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地下熱利用とヒートポンプシステム研究会 資料
図 2.4 湖(池)水熱源ヒートポンプシステムの熱交換器の設置状況(左)と銅チューブ熱交換器(右)
図 2.5 g-function
図 2.6 オーストリアにおける CO2 ヒートパイプを用いた地中熱交換器の設置数(左)と
ボアホールの長さ別の CO2 ヒートパイプ本数(右)
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地下熱利用とヒートポンプシステム研究会 資料
図 2.7 CO2 ヒートパイプを用いたヒートポンプシステムの実験系統図
図 2.8 CO2 ヒートパイプ熱交換器の設置風景(左は導入初期、右は最近の設置風景)
図 2.9 カナダの氷蓄熱+GSHP システム及び GSHP システム、ボイラー+チラーシステムの
年間ランニングコスト比較
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地下熱利用とヒートポンプシステム研究会 資料
図 2.10 スウェーデンの compact collector(左)とその接続部(右)
図 2.11 スウェーデンの compact collector の垂直型設置例(左)と水平型設置例(右)
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地下熱利用とヒートポンプシステム研究会 資料
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