MA2011-2

MA2011-2
船 舶 事 故 調 査 報 告 書
平成23年2月25日
運 輸 安 全 委 員 会
(東京事案)
1 ケミカルタンカー三春丸貨物船新吉祥衝突
2 フェリーありあけ船体傾斜
(地方事務所事案)
仙台事務所
3 漁船第八大喜丸乗組員負傷
4 漁船恵比須丸乗組員死亡
横浜事務所
5 液体化学薬品ばら積船王和丸衝突(灯浮標)
6 水上オートバイLE’VENT4同乗者死亡
7 貨物船神海丸貨物船第三十一三晃丸衝突
8 水上オートバイパール11水上オートバイしん衝突
9 漁船天救丸浸水
10 カヌー(船名なし)操船者死亡
神戸事務所
11 モーターボート王将モーターボートHAMAKIYU衝突
12 引船港丸台船リース106号漁船明石丸衝突
13 石材運搬船第五金比羅丸乗揚
14 ケミカルタンカー第二十五伸興丸貨物船あさひふじ衝突
広島事務所
15 貨物船東福丸衝突(防波堤)
16 貨物船 WEI LONG ケミカルタンカー日誠丸衝突
17 貨物船 CAPE ACACIA 衝突(灯標)
18 ケミカルタンカー敬和丸貨物船第十五浜幸丸衝突
19 貨物船大王丸乗揚
20 貨物船第三共福丸乗揚
21 遊漁船うずしお丸モーターボート明紀丸衝突
22 遊漁船ファーストⅢモーターボート正洋丸衝突
23 旅客船ゆきひめ乗揚
24 遊漁船信成丸衝突(かき筏)
25 遊漁船光進丸のり養殖施設損傷
門司事務所
26 水上オートバイゴエモン水上オートバイH&S衝突
長崎事務所
27 モーターボートSeahawk乗揚
28 漁船海幸丸乗組員死亡
那覇事務所
29 カヌー(船名なし)カヌー(船名なし)カヌー(船名なし)操船者死亡
本報告書の調査は、本件船舶事故に関し、運輸安全委員会設置法に基づき、
運輸安全委員会により、船舶事故及び事故に伴い発生した被害の原因を究明し、
事故の防止及び被害の軽減に寄与することを目的として行われたものであり、
事故の責任を問うために行われたものではない。
運 輸 安 全 委 員 会
委 員 長
後
藤
昇
弘
≪参
考≫
本報告書本文中に用いる分析の結果を表す用語の取扱いについて
本報告書の本文中「3
分
析」に用いる分析の結果を表す用語は、次のとおりと
する。
① 断定できる場合
・・・「認められる」
② 断定できないが、ほぼ間違いない場合
・・・「推定される」
③ 可能性が高い場合
・・・「考えられる」
④ 可能性がある場合
・・・「可能性が考えられる」
・・・「可能性があると考えられる」
21 遊漁船うずしお丸モーターボート明紀丸衝突
船舶事故調査報告書
平成23年1月27日
運輸安全委員会(海事専門部会)議決
委
員
横 山 鐵 男(部会長)
委
員
山 本 哲 也
委
員
根 本 美 奈
事故種類
衝突
発生日時
平成22年10月21日(木) 06時24分ごろ
発生場所
山口県周防大島町屋代 島 雨田鼻西方沖
すおう
や し ろ じま あ ま た
し も に ない
下荷 内 島灯台から真方位352°3.4海里付近
事故調査の経過
(概位 北緯33°54.2′ 東経132°10.4′)
平成22年11月18日、本事故の調査を担当する主管調査官(広島事
務所)を指名した。
原因関係者から意見聴取を行った。
事実情報
船種船名、総トン数
船舶番号、船舶所有者等
A 遊漁船 うずしお丸、2.2トン
YG3-60601(漁船登録番号)
、個人所有
L×B×D、船質
8.96m(Lr)×2.38m×0.71m、FRP
機関、出力、進水等
ディーゼル機関、198kW、平成7年4月18日
あ き
B モーターボート 明紀丸、5トン未満
291-16239山口、個人所有
5.54m(Lr)×1.52m×0.59m、FRP
ディーゼル機関、17kW、昭和55年10月
乗組員等に関する情報
A 船長 男性 64歳
二級小型船舶操縦士・特殊小型船舶操縦士・特定
免 許 登 録 日
昭和53年8月25日
免許証交付日
平成22年6月28日
(平成28年6月23日まで有効)
B 船長 男性 68歳
二級小型船舶操縦士・特殊小型船舶操縦士・特定
免 許 登 録 日
平成6年5月26日
免許証交付日
平成20年10月2日
(平成26年5月25日まで有効)
死傷者等
A なし
B 負傷 1人(船長B)
損傷
A 右舷船首部に擦過傷
B 船首部に破口及び右舷船首部に亀裂
事故の経過
あ げのしょう
A船は、船長Aが1人で乗り組み、釣り客3人を乗せ、屋代島安 下 庄
南方沖の釣り場に向かい、船長Aが、椅子に腰を掛けて手動操舵により操
わきが
ひ み
船し、屋代島脇ケ鼻沖約50mに達したとき、同島日見埼沖約50mに向
く針路とし、同島西岸に沿って約23ノット(kn)の速力(対地速力、以
し さ
下同じ。
)で南進中、同島志佐の西方沖を通過したとき、左舷船首5°1,
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200~1,300m付近の同島雨田鼻西方沖にB船を初めて視認した。
船長Aは、衝突の約25秒前、船首を北に向けたB船を左舷船首5°3
00m付近に見るようになったので、B船の左舷側を10m以上隔てて通
過することができると思い、釣り場のことなどを考え始め、B船から目を
離した。
船長Aは、B船に対する見張りを行わなかったので、A船が、風潮流の
影響で左方に圧流され、B船に向けて航行するようになったことに気付か
なかった。
船長Aは、衝突の直前、右舷船首方至近にB船を視認し、左舵約10~
15°をとったが、平成22年10月21日06時24分ごろ、A船の右
舷船首部とB船の右舷船首部とが衝突した。
船長Aは、反転してB船のところまで戻り、負傷者及び損傷の有無を確
認し、釣り客を乗せていたことから、後刻、互いに連絡を取り合うことと
し、安下庄に向けて航行を再開した。
B船は、船長Bが1人で乗り組み、06時15分ごろ、雨田鼻西方沖の
釣り場に到着したので、船長Bが、機関を中立として船首から錨を投入
し、船首が北を向いた状態で航海灯を表示して前部甲板で左舷側を向いて
座って釣りを始めた。
船長Bは、衝突の約2分前、志佐の西方沖を南進するA船を初めて視認
したが、航行する船舶が錨泊船を避けてくれるものと思い、A船から目を
離して釣りを行っていた。
船長Bは、衝突の数秒前、他船の機関音を聞いて船首方向を見たとき、
B船に向かって来るA船を視認し、操舵室の後方に移動して両手で操舵室
の両端を握って身構え、A船に向かって大声を出したが、両船が衝突し、
衝撃で船長Bが転倒した。
船長Bは、衝突後、船長Aと連絡先等の確認を行い、志佐漁港に帰航し
た。
両船長とも、すぐには海上保安部に事故発生の連絡をしなかった。
気象・海象
気象:天気 曇り、風向 北北東、風速 約2.7m/s、視界 良好、日出
時刻 06時20分ごろ
海象:海上 平穏、潮汐 上げ潮の末期、潮流 微弱な南流
その他の事項
A船は、約18kn の速力で航行すると、船首が浮上して船首死角が生じ
て水平線が見えなくなり、約23kn では、滑走状態となって船首が下が
り、水平線が見えるようになるので、いつも約23kn で航行することにし
ており、事故当時も約23kn で航行していたので、船首方向は約30mの
ところから水平線まで見えていた。
A船は、GPSプロッター及び汽笛を装備していた。
A船の釣り客は、衝突するまでB船に気付かなかった。
A船の釣り客3人のうち1人は、救命胴衣を着用していたが、船長Aと
他の2人の釣り客は、救命胴衣を着用していなかった。
B船は、汽笛を装備していなかった。
船長Bは、すぐに釣り場を移動するつもりであったので、錨泊後、機関
を中立運転とし、錨泊船が表示する灯火又は形象物を掲げず、航海灯を表
示していた。
船長Bは、これまで雨田鼻沖50m付近で錨泊しているとき、他船がB
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船の沖側を航行していたので、B船付近を航行する他船はいないものと思
っていた。また、仮に、B船付近を航行する他船がいれば、他船が錨泊中
のB船を避けてくれるものと思っていた。
船長Bは、救命胴衣を着用していた。
本事故当時、雨田鼻付近には、B船以外に錨泊船はいなかった。
分析
乗組員等の関与
あり
船体・機関等の関与
なし
気象・海象の関与
あり
判明した事項の解析
A船は、雨田鼻西方沖を南進中、船長Aが、考
えごとをしていて適切な見張りを行わなかったこ
とから、風潮流の影響を受けて前路で錨泊中のB
船に向かっていることに気付かずに航行し、B船
と衝突したものと考えられる。
B船は、雨田鼻西方沖で錨泊中、船長Bが、航
行中の船舶が錨泊中の船舶を避けてくれるものと
思い込み、釣りに意識を集中して見張りを行って
いなかったことから、接近するA船に気付かずに
錨泊を続け、A船と衝突したものと考えられる。
原因
本事故は、日出直後の雨田鼻西方沖において、A船が南進中、B船が錨
泊中、船長Aが、適切な見張りを行わず、また、船長Bが、見張りを行わ
なかったため、A船がB船に向けて航行し、B船がA船の接近に気付かず
に錨泊を続け、両船が衝突したことにより発生したものと考えられる。
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