痛みについて 考えてみましょう 秋田大学医学部附属病院 緩和ケアセンター 安藤 秀明 •患者さんの半分以上の方が痛みを感じます •早期から痛みを感じる人もいれば、病状が 進んでから初めて痛みが出る人もいて、 痛みの現れ方はさまざまです ●内臓痛: 「押されるような」 ●体性痛: 「うずくような」 ●神経障害性疼痛: 「灼けるような」、 「ビーンと走るような」 (日本緩和医療学会緩和医療ガイドライン作成委員会, 2010) 侵害受容性疼痛 腹部腫瘍の痛みなど局在 医療用麻薬が があいまいで鈍い痛み 内臓痛 効きやすい ズーンと重い 骨転移など局在がはっきり 突出痛に対するレ スキューの使用が 体性痛 した明確な痛み 重要になる ズキッとする 神経叢浸潤、脊髄浸潤な 神経障害性 ど、びりびり電気が走るよ 難 治 性 で 鎮 痛 補 助薬を必要とする うな・しびれる・じんじんす 疼痛 ことが多い る痛み •気持ちが和らぐ •痛みのためにできなかったことが できるようになる •食欲が戻る •よく眠れるようになる 手術・放射線治療・化学療法の副作用による痛み – 手術のキズのまわりの痛み – 放射線治療、化学療法後の手足のしびれ、 吐き気、嘔吐 体力低下や全身の衰弱による痛み – 寝たきりで長時間同じ姿勢(筋肉痛) – 床ずれによる痛みなど WHO(世界保健機関)方式病気疼痛治療 「病気の痛みは治療できる症状であり、治療すべき症状」 時間 昔の考え方 病気の治療 痛みの治療と緩和ケア 現在の考え方 病気の治療 痛みの治療と緩和ケア 「病気」の治療と並行して痛みの治療を行う! 痛みの軽減 3.8% ほぼ完全な除痛 9.0% 無効 0% すべての痛みは必ず和らげられる 完全な除痛 87.2% •患者さん自身が痛みに向き合う気持ち •家族や医療スタッフなど周りの人たちが、 痛みを理解するためにコミュニケーション •痛みは患者さんにしかわかりません •どんな名医でも患者さんの痛みの強さは わかりません 我慢しないで周りの人(家族、医師、看護師、 薬剤師など)に伝えましょう いつから・・・ – ○時ころから、○日前から、○週間前から – 長時間歩いたあとから – 重いものを持ったときから – 転んだときから •どこが・・・ – おなか、腰、太もものあたり、など – 絵を描いて説明するとわかりやすい •いつも痛い?時々痛い? どんなふうに・・・ – うずくように、刺すように、締め付けるように、電 気が走るように、焼けるように – ビリビリ、キリキリ、チクチク、 ピリピリ、ヒリヒリ – だるい、しびれる – 冷たい、熱い •どんなときに強くなる? – 動いたとき、長時間座ったとき – 寝返りを打ったとき、呼吸をするとき – 触れたとき、など •どんなときに楽になる? – じっとしているとき、横になっているとき – 座っているとき – お風呂に入っているとき、など •日常生活や精神状態は・・・ – 眠れない – 食欲がない – 動けない – 不安になる – イライラする •患者さんと医療スタッフが共有できる痛みの 強さの「ものさし」を持ちましょう •例えば・・・ – 想像できる限りの最高の痛み=10 – 痛みのない状態=0 とすると、 →今の痛みはいくつですか? ・・・「5くらいです」 治療の前と後の痛みの変化 – 「治療前の痛みを8とすると、治療後の痛みは 4くらいです」 →医療スタッフにも治療の効果がわかりやすい! 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 大事なことは・・・ – 数字や目盛りの大小ではありません – 治療により痛みがどう変わったか(強く なったか、弱くなったか)を知ること → それにより、痛みの治療が十分か、 そうでないかを判断する 「病気」の痛みがあると、 「痛くて眠れない」 「痛くて食べられない」 「痛くて動けない」 → 普通の日常生活が奪われます 痛みによって失われた 本来の日常生活を取り戻すこと 治療目標のステップ(WHO) – 第1目標 痛みに妨げられないでぐっすり眠れること – 第2目標 じっとしているときに痛みがないこと – 第3目標 歩いたり体を動かしたりしても痛みがない •病気の痛みは治療できます。 •痛みは我慢しないで、周りの人に 伝えましょう •医療スタッフと共通の「ものさし」を使っ て、痛みの程度を上手に伝えましょう •普通の日常生活を送れることを目標に、 痛みに向き合っていきましょう ご静聴ありがとうございました
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