第33号 平成23年4月15日発行 ごあいさつ 春まだ浅き洞爺湖と 有珠山を望む 例年であれば、新年度を迎えるこの季節は、卒業や進 なのために、繋がろう日本!」との言葉を 学、就職などのお祝い行事が多く見られる時期なのです 繰り返し聞きます。多くの若者や子供ま が、今年は一変してしまいました。平成23年3月11日 でが日本の再起のために力を合わせよ に発生した東日本大震災は各地に未曾有の被害をもた うとしている姿を見て、「まだまだ日本は らし、地震と津波により多くの尊い命が失われ、今なお多 捨てたものではないな…。」と感じている くの被災者が辛く厳しい避難所での生活を余儀なくされ のは私だけではないと思います。 ています。亡くなられた皆様方のご冥福を衷心よりお祈 り申し上げます。 院 長 中谷 玲 二 3月23日に甲子園で春の選抜高校野球の開会式が ありました。選手宣誓は多くの方がご覧になったと思い 今回の震災では、生活の全てが奪い去られてしまい、 ます。岡山県代表、創志学園高校野球部の野山主将の選 特に、愛するご家族や大切な友人と予期せずに引き裂 手宣誓では、「私たちは16年前、阪神・淡路大震災の年 かれた方々に於かれましては、突然の悲しみと深い悲嘆 に生まれました。今、東日本大震災で多くの尊い命が奪 に耐えながら、これからの時間を過ごされていくことと われ、私たちの心は悲しみでいっぱいです。被災地では、 思います。同時に、自分だけが生き残ったことへの罪責 全ての方々が一丸となり、仲間とともに頑張っておられ 感、避難所で大勢の方と一緒に暮らすことによるストレ ます。人は仲間に支えられることで、大きな困難を乗り越 スなどにより、精神面の不調や脳卒中や急性心不全など えることができると信じています。“がんばろう!日本”生 の二次的な疾患に襲われる方もいらっしゃいます。こう かされている命に感謝し、全身全霊、正々堂々とプレー いった方々には阪神大震災の教訓より“心のケア”も大 することを誓います。」勇気づけられる言葉で、心を励ま 切と思われます。 された方も多いと思います。 この震災に際して、道内の多くの医療機関より災害医 新年度を迎え、当院においても新たな職員を仲間に迎 療派遣チームが派遣され、多くの被災された方々への医 えることができました。福田前看護部長の後任に、岩村 療支援が行われております。当院の職員も医療者として 看護部長が就任し、福田前看護部長は、看護部顧問とし 現地に支援に赴きたい思いは強く持っておりますが、派 て引き続き看護部を支えていただけることになりました。 遣者の食料や宿泊の準備、燃料の確保などが困難なた 看護師2名、作業療法士1名、看護補助者5名と今年は め、後方からの可能な限りの支援を行うようにしており 例年より少ない人数ではありますが、若さとエネルギッ ます。 シュさとで、これからの当院を盛り上げていってほしいと そこで、当院では、まずできることとして職員等から義 思っています。 援金を集めることを決め、多くの善意が集まりました。こ 今なお苦しんでおられる被災地のことを忘れずに、甲 の義援金募金は、4月末まで継続して実施してまいりま 子園球児にも負けないように正々堂々と地域医療に取 す。また、医療機関として被災者の中で入院を必要とす り組む所存でおります。今後とも、皆さまのご支援を宜し る方を数名受け入れる準備も進めております。また、消 くお願い申し上げます。 耗品などの物資の使用につきましても、無駄を無くす積 み重ねが少しでも支援に繋がると考え、職員一同が意識 的に働いています。「みんなは一人のために、一人はみん 平成23年4月5日 院 長 看 護 部 長 就 任 の ご 挨 拶 看護部長 岩村 光子 この度、洞爺温泉病院へ4月1日より看護部長として勤務させていただくことになりまし た。どうぞよろしくお願いいたします。 当院に着任してみて、美しい自然にはぐくまれた洞爺湖周辺を舞台とした療養環境がす ばらしいと感じ、また、スタッフ(看護職はもとより他の職種のスタッフも含め)から受 ける印象がとても“あたたかい”ということも感じました。そして、その“あたたかさ” 岩村看護部長 が病棟の患者様との関わりにも反映されており、患者様一人一人にきめ細やかな配慮がさ れ、その人らしく生活できるように対応されていることを実感しました。この“あたたかさ”を大切に、根拠 に基づいた看護の提供をすべく努力をしなければと改めて感じております。 看護は表面的な関わりでは患者様より共感と信頼を得ることができません。信頼を得るためには看護センス が要求され、且つ、専門的知識と技術が要求されます。我々看護職は、これらの感性・知識・技術を習得すべ く日々努力をしておりますが、その学習環境においても、研修や看護研究への参加に対する支援の体制作りが されていると思いました。 今後、看護職・介護職等の人々と一体となり、他職種との協働を通し、この病院を取り巻く 地域との密着した連携を大切に、安心・安全の医療の提供をしていきたいと思っております。 そして、今、私は当院が目指している、地域の人々においてはあってよかった、職員にとっ ては働いていてよかったと思える職場作りに参画させていただける事に感謝しております。 学会報告 第26回 日本静脈経腸栄養学会参加報告 臨床検査課主任 橋本 美紀 2 月 27 日、28 日の 2 日間、名古屋市で開催された「第 26 回日本静脈経腸栄養学会」に参加させて頂きました。 当院からは 3 演題の発表があり、その中で私も口頭発表をさせて頂きました。今年は、適切な栄養管理方法を日本 ※ すべての医療施設に普及させることを目指して作られた「NST プロジェクト」が10年目を迎える節目の年でもあ り、1万人以上もの参加者が熱気あふれる中、活発な意見交換が行われました。 今学会では、「治療の効果を上げるためには、まず栄養状態を良くしよう」という基本的な内容から、さらに一歩踏 み込んだ内容の発表が多かったと感じました。ただ栄養状態を良くするということではなく、その中でもいかに楽しく、 美味しく食事をするか、いかに合併症を未然に防ぐか、単に栄養を与え続け るだけで良いのかなど、当院の NST でも今後さらに検討していかなくてはな らない課題だと思いました。 これからも今学会で得た知識を NST の一員として、院内のみならず地域 全体に活かしていけるよう、活動していきたいと思います。 ※NST: 栄養サポートチーム。職種の壁を越え、栄養管理を患者個々や 各疾患治療に応じて適切に実施するチームのこと。 -2- 会場前での記念撮影 左から、三上副院長、中谷院長、橋本検査課 主任(報告者)、上杉栄養課主任、増田薬剤師 ~ 今できること、病める身体を心で診る ~ この度の東北地方太平洋沖地震により、お亡くな ~ りになられた方々のご冥福をお祈り申し上げます とともに、被災された皆様に心よりお見舞い申し上 げます。 思い返しますと平成 12 年の有珠山の噴火の時 にも、避難生活の疲れから体調を崩され当院に入 院される方が少なからずいらっしゃいました。現在、 多くの方がいつ終わるかわからない不自由な避難 生活を送られており、健康な方でもギリギリのとこ ろで生活していらっしゃるでしょうに、高齢の方、病 気や障がいを持たれている方はどうされているだ ろう、どうかこれ以上二次的な被害が増えませんよ うにと祈るばかりです。 今の自分にできること、しなければならないこと は何かと考えた時に、義援金や節電、その他にもた くさんあるのでしょうが、やはり、まずは地に足をつ け日々の業務、生活に 取り組むことだと改め て思います。 その思いを強くした きっかけは、通所リハ ビリ利用者の A さんか リハビリ室窓の下に咲いた福寿草 (連載30回目) らいただいた言葉でした。先日、 作業療法の中で、何人かの方で ステンシルのカード作りをしまし 担当:リハビリテーション課 植田課長 た。カードの周囲に花柄模様を 色付け、中央には自由にメッセージが書けるように なっており、A さんは私たちリハスタッフに向け、次 のような短歌を詠んで下さったのです。 「数多き 病める患者の身体を 心で診ているセラピストたち」 何となく震災で心が重くなり、あるいは日々の忙 しさの中で、目の前の患者様とちゃんと向き合って いるか、この短歌は私の目を覚まさせ背筋を伸ば してくれました。 皆がこの言葉をいつも目にし忘れないよう、カー ドはリハビリ室の壁に掛けさせていただきました。 リハスタッフ一同、セラピストのあるべき姿を示し ていただいて身の引き締まる思いでいます。被災地 の皆様が一日も早く穏やかな生活を取り戻せるよ う祈りながら、自分たちのやるべきことに対し誠実 に向き合っていきたいと思います。 の可愛い花。 このコーナーは当院のあちこちを探訪 し、当院を支えるスタッフや施設の紹介 をしていくコーナーです。今回は「中材(中 央器材室)」の紹介です。 洞爺温泉病院 今回の「あちこち」は東棟2階にある「中央器材室(略して中材)」を訪ね、 担当の小林職員に「中材」について話を聞きました。 Q1.一般には馴染みの無い部署ですが、「中材」とはどのような部署なので すか? 小林職員 田鍋職員 小林.中材の業務は病棟で使用するありとあらゆる診療材料(脱脂綿一枚か ら注射針、胃ろうボタンやIVHの手術セットまで)の在庫を管理することと、診療に使用 した器具類の洗浄・滅菌工程を管理することが主な内容です。 Q2.どのくらいの種類の診療材料を扱っているのですか? 小林.250種類近くあります。それらの各病棟での消費量を予測して、発注量の調整等を行い、 適正な在庫量を確保し、病棟の請求に応えられるよう心がけています。 Q3.お二人の写真は滅菌機の前で撮りましたが、ここにはどのような設備がありますか? 小林.滅菌機は蒸気滅菌機とガス滅菌機があり、滅菌物の材質等によって使い分けています。週に 一度、生菌による滅菌テストを行い、滅菌の不良による事故のないよう心がけています。ま た、病棟から戻された不潔物の 洗浄→乾燥→滅菌→払出し の工程の間に不潔物と清潔物の 混合が起きないように動線を考えた設備配置にしていますが、それでも清潔物の取扱いには 気を抜けませんので、常に緊張して作業しています。 感想.いろいろお話しいただき、ありがとうございました。中材とは病院の清潔物の聖域のような 場所と言う印象を受けました。また次回も病院ならではの場所を訪れたいと思います。 -3- 担当 : 江島 正顕 医師 “酒は百薬の長”皆さんも聞かれたことがある昔か らの言い伝えですが、本当にそうなのでしょうか? では、どれくらいの飲酒が一番寿命を延ばすのでし ょうか?この事についても、研究されていますが、1日 “フレンチパラドックス”という言葉は御存知でしょ のアルコール摂取量で20グラム程度„ビール中ビン うか。日本語ではフランスの逆説とでも訳されるのだ 1 本、日本酒 1 合、チュウハイ„7%‟350mL 缶 1 本、ウ と思いますが、ある学者がフランス人は他の西欧諸 ィスキーダブル 1 杯などに相当します‟を摂取する人 国の人に比べ、動物性脂肪の摂取量は変わらないの は飲酒しない人に比べても寿命が長くなることがわ に狭心症や心筋梗塞のような動脈硬化による心臓病 かっています。 の死亡率が低いことに目をつけ、これはワインを他国 正に“酒は百薬の長”なのですが、飲み より多く飲んでいるためだと推論しました。後に、日本 過ぎたら逆に健康を害しますし、妊娠し でも赤ワインブームが起こるきっかけになりました。 ている方、アルコールを分解できない体 この心臓病の予防効果は証明されていくことになり 質の方、肝臓などの病気をお持ちの方は ますが、実はこの効果は赤ワインだけではなく、日本 飲酒の制限が必要な場合もありますので、 酒、ビールなどの他のアルコール類でも同様にみられ、 該当する方は御相談を。 赤ワインが特に優れている訳ではないようです。 2月3月の行事 節分、ひな祭り、そば打ち実演 節分„豆まき‟ ひな祭り そば打ち実演 2月3日は節分、この時期にな 3月に入るとすぐひな祭りがあ 3月22日の昼食メニューは「お るとなぜか院内にも鬼が出現! りました。今年も、病棟ごとに そば」。食事に先立ち厨房スタッ しかし、患者さん達の豆まき攻 ひな人形のお飾りの前で甘酒 フによるそば打ちの実演が患者 撃を全身に受けてすごすごと やお菓子をいただき、ゲームで さんの前で披露されました。こ 退散していきました。これで今 楽しいひと時を過ごしていただ のおそばが美味しかったのは言 年も福が来ますね。 きました。 うまでもありません。 洞爺温泉病院の理念 信頼される医療を目指して ◆ 優しさにあふれた患者様中心の医療 ◆ 個々の研鑚とチーム医療の実践により 患者様に満足される医療 企画・編集 医療法人社団洞仁会洞爺温泉病院 広報図書委員会 〒049-5892 虻田郡洞爺湖町洞爺町54-41 TEL 0142-87-2311 基本方針 編 集 後 記 洞爺もようやく暖かくなり、春の息吹が感じられる 1) 私たちは、地域のニーズに応えるため ホームページ ようになりました。今回の大震災に被災された方々にも春の暖かさ の、急性期から亜急性期にかけての医療 のような心の平穏が早く得られるように心から願っています„H.:‟ を提供します。 2) 私たちは、生活の質の向上を大切にした-4- 慢性期医療、患者様の尊厳や自立性を大 F:X 0142-87-2260 http://www.toya-onsen-hospital.or.jp
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