健育会グループ 研究事例 平成9年4月度 第1回合同事例研究会 「ハワイ発・ナーシングホームでの研修報告」 熱川温泉病院 4階病棟 研究チーム 1.施設の概要 ■OAHU CARE FACILITY 1986年に開設された。 ベッド数82床3階建ての施設で2、 3階に4人用のユニット、各階には大きな食堂、 アクティビティールーム、 ナー スステーションがあり、 その他リハビリティションルームやキッチン・オフイス等の設備がある。 オアフケア施設は、 質の高い看護とホスピスケアを行なう長期ケア施設で、 病院よりも家庭的なスペースになっている。 スタッフは、入居者の方々お一人お一人を大切に少しでも病気や障害を軽くして差し上げて家庭に帰すこと を目標にお世話をしています。 ■PEARL CITY NURSING HOME 1995年に開設された。 ベッド数122床5階建ての施設で2∼4階に4人用のユニットがあり各階には食堂室、 レクリエーションルーム、 ナースステイション、 サポートサービスエリア、 5階はオフイスとレクリエーションルームになっている。 この施設は オアフケア施設と同様に不期ケア施設で、毎日のアクティビティー、医療的援助を提供しています。 また、24時 間の看護体制で各分野のスタッフが一丸となって入居者のお世話をしています。 2.スタッフの構成 日本と比較して、様々な専門の分野があります。 プロフェッショナルシステムが確立していますのでいろいろな 角度からバランスのとれたケアが展開されています。 ■組織体制 <表1> 健育会グループ 研究事例 平成9年4月度 第1回合同事例研究会 3.処遇内容 日常のお世話は介護員 (CNA) がシフトにより居室を担当します。 居室担当制が敷かれています。 お一人お一人の入居者の状態を把握しており、 居室に入室する際のノックの徹底プライバシーの保持は守ら れています。 またケアを行なう際のゴム手袋の着用も取り決められています。 ■ 食事 入居者の身体の状態、 状況にあった食事を補って載くためにカロリー、 コレステロール等計算されたメニュ作り がなされています。 又は、 温度チェックも徹底されており、 調理員が、 保存機能のある台車から直前に盛り付けを 行い温かい食事を提供しています。 ■ 排泄 両施設共各居室に1つトイレが設置されており、 オムツ交換、 トイレ誘導の時間が定められているわけではなく担 当のCNAがケースバイケースで行なっています。 (排泄のタイミングのポイントは食後、 シャワー時です。 ) ■ 入浴 個室のシャワールームが設置されています。 各担当者は入居者にゆっくりと余裕を持ってケアを行なっています。 日本と違い浴槽がないので日系人の多い両施設では温泉を懐かしむ声をたくさん聴くことが出来ました。 ■ アクティビティとリハビリテーション コーディネイターが1ヵ月のプログラムを立て展開する内容もゲームや歌謡などのイベントが随所に組まれており たい充実したものです。又、 リハビリテーションも、 同様に専属のスタッフがお一人お一人の計画を実践して個々 の目標に向かっておられます。 ■ ケアカンファレンス (ケアプラン) 入居者お一人お一人に合った最高のケアを実践する為に週2回の割合でケアカンファレンスを行なっていま す。 可能な限り、 本人あるいは家族が参加して本人の意思を優先して今後の目標を決めていきます。 常時5∼6 人のカンファレンスをこなしています。 時間が掛かりますが個々に即応したケアがなされています。 ■ ホスピスケア ホスピスの文化はヨーロッパが最初でそこからアメリカに渡りました。 ハワイでは二つのホスピス病院があります。 ホームのホスピスケアの場合、 ケアマニュアルや処置など、 病院の専門医師や看護婦が助言して行ないます。 ■ ソーシャルワーカーの業務内容 ・入所退所の手続きをします。 ・費用等の金銭処理をします。 ・入居者の精神面でのケアをします。 ・家族との話し合いをします。 素行に関しての苦情処理として一ヵ月に一回家族、 入居者の不平、 不満、 意見等聞きディスカッションし、 より良 い解決に向けて話し合いを行なっています。 健育会グループ 研究事例 平成9年4月度 第1回合同事例研究会 4.監査と認定 病院やナーシングホームは、 毎年、 州政府厚生局の施設ライセンスを受ける為の監査がおこなわれます。監査 は予告制ではなく、 抜き打ち監査です。 施設面、 運営面とも良好であれば1∼2日ですみますが、 なかには1週間 というものもあり、 ペナルティも内容に応じて厳しい改善命令が下され、 従わなければ閉鎖命令が出されます。 ま た、 医療機関においては、 JCAHO(医療機関認定委員会) の認定を3年に1回受けなければなりません。認定 にかかる費用は10万ドルで1週間に渡り調査を受けますがその中で患者様家族本人様がCS( Customer Satisfaction) について問われます。 さらに州政府やJCAHOの評価内容は一般へ全面公開されます。 5 . 老 人 の 生 活 と 意 識 ・ ア メ リ カと日本の比較 今回の研修で専門職員の確保やケアプランの充実そして監査が厳しい事から日本よりも福祉施設のレベルが 高いように思われますが実際に高齢者はどのように感じているのでしょうか。 資料として「高齢者の医療・福祉施設の満足度」から検討を加えて見ました。 表Ⅱからうかがい知れることはまだまだ地域の医療・福祉施設が充分すぎるとは考えられません。高齢化がます ます深刻になっている今日この頃、 いかにして高齢者の施設に対する満足度が高められるかが、 今後の課題と 言えます。 <表2> (得点) 日本 アメリカ 現状でよい (+-0) 51.4 68.3 もっと充実する必要あり (+1) 45.1 23.7 むしろ減らしてもよい (-1) 0.5 0.4 どこにあるか知らない (-) 2.6 7.7 0.46 0.25 (得点) 日本 アメリカ 現状でよい (+-0) 19.1 33.2 特別養護 もっと充実する必要あり (+1) 63.0 45.3 老人ホーム むしろ減らしてもよい (-1) 0.1 0.2 どこにあるか知らない (-) 17.6 21.3 0.77 0.57 病 院 平均点 平均点 6.研修を終えて 初めに、 日本の入所施設の体系とは多少違いがあり、 ナーシングホームは日本で言う老人保健施設に近い機 能で運営されていることを付け加えておきたい。 健育会グループ 研究事例 平成9年4月度 第1回合同事例研究会 ハワイの高齢者の為の収容施設には3種類あり、看護を必要としない、 ケアホーム、 中級のケアーを行なうイン ターミディエイト ・ケア施設、 完全看護のケアーを行なうキルドケアー施設がある。 今回の研修を通して施設に入所されているお年寄の状態や処遇面、 生活スタイルや文化の違いなど多くの事 を学び取り、 また感じ、 知識として習得することができた。 その中でも特に印象深かったことは、 想像以上に日系人の方々が多かったこと。 お陰さまで入居者の方との会話が出来、 コミニュケーションがはかれ、 ホームでの生活についても話を聞くことが できた。 アクティビティに於いても盆踊りや伝統的日本の歌、 遊びなども取り入れられておりハワイにきて本来の日本人の 姿を見た様な気がする。 多くの方々は、 英語でも日本語でも話すことが出来るが、 中には日本語しかお話になられない方もいらっしゃって、 日本人である私達をとても喜んで歓迎してくださり昔を思い出して涙ぐむ方もいた。 そういう方に今、 一番何が不 自由であるかを聞くと、 やはり言葉の壁だった。 オアフケア施設でも、 最近108歳で亡くなられた方がおられ、 「私は日本人だから日本語でしか話さない。 」 と言っ て最後まで日本語で話す事を通した方もいると施設の職員の方が話されていた。 これだけ多くの日系人方がいらっしゃるのだから、 職員も日本語を話す事が必要であるように思う。 そうする事に より今以上に、 意思の疎通が諮られ入居者にとっても安心した施設の生活が送れることと思われる。 何れにせよ、 今回初めての研修で不安や緊張感があったが、 実際に体験実習することにより、 海外での福祉に 対する視野をひろげられ、 とても貴重な2週間であった。 最後に忙しい最中、 いろいろご指導賜りましたディレクターはじめ職員の皆さんそしてあたたかく歓迎して下さっ た入居者の皆様に心から感謝申し上げ、 報告を終わります。 研修期間 1996.9.22∼1996.10.6
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