健育会グループ 研究事例 平成22年2月度 第4回看護・リハビリテーション研究会 片麻痺患者への手浴の有効性 花川病院 回復期リハビリテーション病棟 川端 圭子 研 究 背 景 入院中の脳血管障害をもつ患者は特に麻痺側手指の清潔が保ちにくく、看護師は保 と 清を目的として手浴を行なうことが多い。 しかし、手浴には鎮痛効果や血行の促進・温 目 的 度刺激によって脳血流速度の上昇という効果が先行研究で明らかなっており、 その 他、 自律神経への効果やリハビリテーション (以下リハビリ)効果についても報告されて いる。 リハビリを進めていくうえで、半側空間無視やうつ状態が阻害要因となることが 多く、 それらが改善することは非常に重要である。 しかし、手浴をすることで半側空間 無視の改善は得られるか、闘病意欲の向上を図れるかという視点で評価された研究 はない。そのため、 これに焦点をあてた研究に臨もうと、手浴はリハビリ看護としてどの ような有効性があるかを検証した。 対象:入院中の脳出血・ くも膜下出血・脳梗塞の患者で本研究の内容に対し本人と家 研 究 方 法 族の協力と同意が得られた13名(男性6名 女性7名) 期間:平成21年7月16日∼平成21年10月5日 場所:A病院 回復期リハビリテーション病棟 方法:対象者(患者)の状態にあわせて実施場所の設定をした。湯の温度を38℃に調 整し、原則的に両側の手を湯の中に入れ10分間の手浴をした。麻痺側の手から石鹸 を付け、対象者(患者) に声をかけながら軽くマッサージするように洗った後、取り換え たきれいな湯の中に両手を浸し時間の経過を待った。 この後、 タオルで水分をよく拭き 取り、ザーネクリームを両手全体に塗布し終了とした。 データの内容と分析方法:結果にある(1)から(9)までの項目を調べ、t検定して得られた 結果のp値<0.05を有意差ありとした。 結 果 1)バイタル値 手浴の直後に最高血圧の低下と体温の低下がみられ、 先行研究の裏づけができた。 (2)麻痺手の疼痛 大きな変化も有意差も得られなかった。先行研究とは異なり鎮痛効果も得られなかった。 (3)麻痺手の痺れ 大きな変化はなく有意差も得られなかった。 また、 若干の悪化がみられた。 (4)麻痺手皮膚の状態 大きな変化はなく有意差も得られなかった。 (5)麻痺手の臭気 大きな変化はなく有意差も得られなかったが、 継続した手浴の施行で臭気は消失した。 健育会グループ 研究事例 平成22年2月度 第4回看護・リハビリテーション研究会 (6)気分(フェイススケール)変化があり有意差も得られた。手浴を長期間継続することで、気分の改善につな がった。 (7)半側空間無視の評価 有意差は得られなかったが、 個別では時間の短縮や範囲の広がりが得られた。 (8)うつの評価 大きな変化はなく有意差も得られなかったが、 個別では5名に改善が見られた。 (9)浮腫の評価 有意差があり、 手浴を長期間継続することで浮腫の改善が得られた。 考 察 および 結 論 継 続 的な手 浴の実 施は気 分と浮 腫の評 価の値に有 意 差がでており、データからも改 善があるこ とがわかった。 また半 側 空 間 無 視においても改 善の変 化が得られる期 待 感は持てた。麻 痺 手の疼 痛と痺れについてのデータ上での悪 化は、手 浴による各 作 用の効 果が 加わり、刺 激を認 知し表 現 できるようになったからと考えられ、悪 化ではなくむしろ改 善 傾 向ととらえることができた。手 浴は一つ の看 護 行 為ではあるが、たくさんの刺 激をもたらすリハビリともとらえることができ、脳の可 塑 性を高 める効果のある看護行 為ともいえた。 また、対 象 者と施 行 者が1 0 分 間 一 対 一でそばに居ることにより、 コミュニケーションを図る機 会と なり、安 堵 感やリラックス効 果もえられ 、今まで以 上に対 象 者( 患 者 )の訴えが 聞 かれるようになっ た。手 浴を心 待ちにしている言 動は、看 護に対して期 待 感を持っていただけたと思われ、闘 病 意 欲 につながる可 能 性を感じた。片 麻 痺 患 者 への手 浴はリハビリ看 護として有 効な関わりであったと考 えることができ、今後も継続していく価値を見出せた。 ■参考文献 ・高次脳機能障害のリハビリテーションVer. 2 ・脳血管障害による 高次脳機能障害 ナーシングガイド 他省略
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