第11回 公共サービスへの価格メカニズムの導入 ごみ有料化② 山谷修作教材 1 講義内容 1.第3回調査にみるごみ減量効果 2.発生抑制効果を引き出せるか 3.有料化導入時の課題 2 1.第3回調査にみる減量効果 有料化導入前年度との比較時点 有料化翌年度の減量効果 有料化5年目の年度の減量効果 手数料体系別サンプル数(合計88市) 単純方式 70市 超過量方式(二段式を含む) 18市 対象ごみ 一般ごみ、 家庭ごみ総量(資源物含む) 一般ごみ(可・不・粗)の減量効果(総数) ( 30 翌年度 ) 市 数 5年目の年度 25 22 23 19 20 21 19 17 20 16 15 9 10 5 5 2 3 0 10%以上増加 10%未満増加 10%未満減少 10~19%減少 N=88 20~29%減少 30%以上減少 家庭ごみ総量(資源含む)の減量効果(総数) ( 35 ) 市 数 30 翌年度 5年目の年度 28 28 24 25 21 20 18 15 15 13 10 5 7 7 7 5 3 0 10%以上増加 10%未満増加 10%未満減少 10~19%減少 N=88 20~29%減少 30%以上減少 資源物量の変化(総数) ( 35 ) 市 数 30 翌年度 28 25 22 20 20 15 15 15 5年目の年度 21 14 12 11 10 8 6 4 5 0 減少 20%未満増加 20~49%増加 N=88 50~99%増加 100~199%増加 200%以上増加 一般ごみ(可・不・粗)の減量効果(単純方式) ( 30 翌年度 ) 市 数 5年目の年度 25 20 19 18 18 16 14 14 15 14 12 10 8 4 5 1 2 0 10%以上増加 10%未満増加 10%未満減少 10~19%減少 N=70 20~29%減少 30%以上減少 家庭ごみ総量の減量効果(単純方式) ( 35 ) 市 数 30 翌年度 5年目の年度 26 24 25 19 20 16 15 13 11 10 6 5 7 5 5 6 2 0 10%以上増加 10%未満増加 10%未満減少 10~19%減少 N=70 20~29%減少 30%以上減少 一般ごみ(可・不・粗)の減量効果(超過量方式) ( 15 翌年度 ) 市 数 5年目の年度 10 7 6 5 5 3 5 3 2 1 1 1 1 1 0 10%以上増加 10%未満増加 10%未満減少 10~19%減少 N=18 20~29%減少 30%以上減少 減量効果(超過量方式:家庭ごみ総量) ( 15 翌年度 ) 市 数 5年目の年度 10 8 6 5 5 4 2 1 4 2 2 1 1 0 0 10%以上増加 10%未満増加 10%未満減少 10~19%減少 N=18 20~29%減少 30%以上減少 手数料水準と一般ごみの減量効果 (単純方式:導入翌年度) -45 -40 -37.0 -35 平 均 -30 減 量 -25 率 -20 % -15 ( -18.9 -18.9 ) -14.4 -10 -5 -4.3 0 10~20円台 (N=12) 30円台 (N=18) 40円台 (N=16) 50~60円台 (N=14) 80円以上 (N=10) 手数料水準と一般ごみの減量効果 (単純方式:導入5年目) -45 -41.2 -40 -35 平 -30 均 -25 減 量 -20 率 -15 -17.8 ( -14.9 -14.1 40円台 (N=16) 50~60円台 (N=14) ) % -10 -5 0 +5 +2.1 +10 10~20円台 (N=12) 30円台 (N=18) 80円以上 (N=10) 手数料水準と一般ごみの減量効果 (単純方式:導入翌年度/導入5年目) -45 -40 導入翌年度 -41.2 導入5年目 -37.0 -35 平 -30 均 -25 減 量 -20 率 -15 -18.9-17.8 -18.9 ( -14.9 -14.4 -14.1 ) % -10 -5 -4.3 0 +5 +2.1 +10 10~20円台 (N=12) 30円台 (N=18) 40円台 (N=16) 50~60円台 (N=14) 80円以上 (N=10) 手数料水準とごみ総量の減量効果 (単純方式:導入翌年度) -45 -40 -35 平 均 -30 減 量 -25 率 -20 % -15 -26.5 ( ) -15.4 -12.2 -8.6 -10 -5 0 0.0 10~20円台 (N=12) 30円台 (N=18) 40円台 (N=16) 50~60円台 (N=14) 80円以上 (N=10) 手数料水準とごみ総量の減量効果 (単純方式:導入5年目) -45 -40 -35 -29.2 平 -30 均 -25 減 量 -20 率 -15 % -10 ( -13.6 ) -7.2 -6.0 -5 0 +5 +10 +6.3 10~20円台 (N=12) 30円台 (N=18) 40円台 (N=16) 50~60円台 (N=14) 80円以上 (N=10) 手数料水準とごみ総量の減量効果 (単純方式:導入翌年度/導入5年目) -45 -40 導入翌年度 導入5年目 -35 -29.2 平 -30 均 -25 減 量 -20 率 -15 % -10 -26.5 ( -15.4 -13.6 -12.2 ) -7.2 -8.6 -6.0 -5 0 0.0 +5 +10 +6.3 10~20円台 (N=12) 30円台 (N=18) 40円台 (N=16) 50~60円台 (N=14) 80円以上 (N=10) 2.発生抑制効果を引き出せるか • 旧与野市民に対する意識調査結果 • 日野市で大きく出た排出抑制効果 • 有料指定袋を活用した発生抑制の 取り組み 旧与野市民意識調査 1996年4月 与野市 家庭ごみを有料化 大袋30円 中袋25円 小袋20円 5年間 家事合計ごみ量が11~14%減少 2000年1月 山谷研究室による意識調査 対象:市民2000人(郵送) 回収:751件(回収率38%) 与野市民調査 ごみ減量に役立った行動の重要度点数評価 総得点 5,967点 第1位 第2位 第3位 第4位 第5位 2500 分別による資源ごみとしての排出 2,024点(33.9%) 町内会等の集団資源回収への排出 784点(13.1%) 家庭用ごみ処理機器の利用 211点( 3.5%) 店頭回収箱への包装物の投入 1,128点(18.9%) 自家焼却 133点( 2.2%) 過剰包装の拒否 837点(14.0%) ごみにならない製品の選択 728点(12.2%) 買い物袋持参など 122点( 2.0%) 1500 1000 500 買い物袋持参など 製品の選択 過剰包装の拒否 自家焼却 店頭回収箱への投入 ごみ処理機器の利用 集団回収への排出 0 資源ごみとしての排出 ※ 第1位に5点、第2位に4点、第3位に3点、第2位に2点、 第5位に1点を配点 2000 与野市民調査 買い物袋の持参 はい いいえ 無回答 無回答 1.3% 301人 440人 10人 はい 40.1% いいえ 58.6% 与野市民調査 買い物袋の持参開始時期 有料化前から 有料化後 無回答 184人 109人 8人 無回答 2.7% 有料化後 36.2% 有料化前 から 61.1% 与野市民調査 買い物時の過剰包装の拒否 はい いいえ 無回答 545人 188人 18人 無回答 2.4% いいえ 25.0% はい 72.6% 与野市民調査 過剰包装の拒否開始時期 有料化前から 有料化後 無回答 394人 140人 11人 無回答 2.0% 有料化後 25.7% 有料化前 から 72.3% 与野市民調査 買い物時のごみにならない製品の選択 はい いいえ 無回答 342人 402人 7人 無回答 0.9% はい 45.5% いいえ 53.5% 与野市民調査 ごみにならない製品の選択開始時期 有料化前から 有料化後 無回答 224人 115人 3人 無回答 0.9% 有料化後 33.6% 有料化前 から 65.5% ごみ処理有料化・市民意識調査からの知見 有料化でごみはどのように減量したか リサイクル 7割 リデュース 3割 有料化は市民のライフスタイルを変える! 買い物袋の持参 過剰包装の拒否 買い物時のごみにならない製品の選択 日野市のごみ排出抑制効果 (単位:千t) 年度 1998 1999 有料化 2000 ごみ量 60.6 59.0 51.6 38.3 39.3 39.8 38.1 38.6 38.7 資源量 3.2 3.8 8.3 12.6 12.8 13.0 12.6 12.7 12.6 ごみ 総量 99年度 比:% 63.8 62.8 59.9 50.9 52.1 52.8 50.7 51.3 51.3 -4.7 -18.9 -17.1 -16.0 -19.3 -18.5 -18.5 2001 2002 2003 2004 2005 2006 清瀬市のノーレジ袋・マイバッグ運動 指定袋のデザインに工夫 マイバッグとしての利用促進 28 青梅市の指定袋バラ売りプログラム • NPOの要望を受けて、市がコンビニ・商店など 指定袋取扱店に働きかけて実現 • マイバッグを忘れたお客が、指定袋を1枚買っ てレジ袋代わりに使用し、帰宅後はごみ排出 に用いることができる • 指定袋のダブルユースにより、レジ袋を削減で きる 29 3.有料化導入時の課題 ①万全な不法投棄対策 ②情報流通の徹底 ③ごみ減量の受け皿整備 ④ 手数料収入の使途明確化 ⑤収集方法の見直し ⑥ブラスチック資源の有料化 ⑦PDCAサイクルによる制度運用 30 課題Ⅰ 万全な不法投棄対策 • 家庭ごみ有料化への反対理由、有料化 実施の条件として住民から最も多く出さ れる意見 • 有料化の目的の一つが、ごみ減量と並ん で、負担の公平性であるからには、負担 を不正に免れようとする行為としての不 法投棄を放置することはできなくなる 31 有料化と不法投棄・不適正排出 一般的状況 ・有料化による不法投棄の著増はみられない ・通報件数は増加する 対策 ・地域の住民団体、集合住宅管理人との連携 ・監視・パトロール態勢の強化 ・郵便局やタクシー会社との通報協定 ・有料化導入当初の管理職総出による集積所指導 32 有料化実施直後から現在までの 不法投棄の状況 第3回全国調査 その他 13(8.7%) それなり増加した が、その後減少した 12(8.0%) かなり増加し、 その後も減少しない 7(4.6%) 多少増加したが、 その後減少した 30(20.0%) ほとんど増加しな かった 69(46.0%) N=150 多少増加し、 その後も減少しない 19(12.7%) 家庭ごみ有料化の実施直後から現在 までの不適正排出の状況 その他 16(7.1%) かなり増加し、 その後も減少しない 4(1.8%) ほとんど増加 しなかった 68(30.4%) 多少増加し、 その後も減少しない 19(8.5%) かなり増加したが、 その後減少した 43(19.2%) 多少増加したが、 その後減少した 74(33.0%) N=224 住居形態別の違反排出状況(札幌市) 調査対象 集積所数 A 違反排出が あった集積所 数(比率) B (B/A) 戸建住宅地区 519 共同住宅地区 518 81 (15.6%) 242 (46.7%) 違反排出ごみ 1集積所当た 数(個) り違反排出数 (個) C C/A 241 0.46 2,863 5.53 1集積所当たりの平均利用世帯数は戸建住宅地区22世帯、 共同住宅地区39世帯。 35 有料化導入後の不適正排出状況 不 適 正 排 出 件 数 O 不適正排出曲線 t 0 36 有料化後の経過期間 佐世保市における不適正排出率の推移 調査年月 2005年1月 2005年2月 2005年9月 2005年11月 可燃ごみ 不適正排 4.5% 0.8% ー 1.2% 出率 不燃ごみ 不適正排 55.7% 25.0% 11.6% ー 出率 有料化実施2005年1月 37 課題Ⅱ 情報流通の徹底 住民説明の重要性 • 住民説明会は徹底的に実施する 他部局職員の協力も得て全庁態勢で臨 むことが望ましい • ごみの出し方、減らし方に関する情報 ■有料化の成否は「情報の不完全性」を克 服できるかどうかにかかっている 38 課題Ⅲ ごみ減量の受け皿整備 ごみ組成分析 資源化可能物の識別 減量可能性の把握 ○資源ごみ回収の充実 回収品目、回収回数、回収場所数など 39 有料化によるごみ減量・資源化効果 資源物 発生抑制 資源物 資源化 可能物 ごみ ごみ 有料化前 40 有料化後 資源化の課題3品目 • ミックスペーパー • プラスチック • 生ごみ 41 課題Ⅳ 手数料収入の使途明確化 ○ 一般財源 ○ 特定財源化による使途明確化 ・手続き:収支予算の議会承認 ・使途:ごみ処理施設の整備、減量活動助成、 啓発事業等 ○ 基金化による使途明確化 ・手続き:条例制定 42 町田市の手数料収入基金化 条例制定による基金化 ・基金積み立て対象 手数料純収入額=手数料収入総額 -指定袋作製・流通等の諸経費 ・基金の使途 ごみ減量・リサイクルの推進 43 課題Ⅴ 収集方法の見直し 戸別収集の導入 戸別収集の利点: ・排出者責任の明確化:分別の向上とごみ減量 ・小規模集合住宅の不適正排出対策 ・小規模事業所ごみの排出適正化策 戸別収集の懸念点: ・収集コストの増大 ・狭小路地対応 44 戸別収集導入による可燃ごみ排出量の変化 (台東区竜泉) 600 g/人日 544.0 500 45.1 25.5 483.9 26.3 12.8 400 資源 不燃物 可燃物 300 473.4 200 444.8 100 0 導入前 導入後 戸別収集への切替えに伴う経費増とその抑制対策 第3回アンケート調査から 収集運搬体制 切替えによる 経費増加率 戸別収集に伴う経費増を抑制するための工夫 可燃 不燃 A市 委託 委託 倍近く B市 直営 委託 30% 可燃:直営努力で経費増なし、不燃:近隣市を参考に増車数抑制 C市 委託 委託 30% 直営での収集から委託収集に切替え D市 委託 委託 10% 収集回数の削減(可燃:週3→週2) E市 直営 委託 30% 収集回数の削減(可燃:週3→週2) F市 委託 委託 10% 収集回数の削減(可燃:週3→週2、不燃:週2→週1) G市 委託 委託 10% 収集回数の削減(可燃:週6→週3、不燃:週1→隔週1) H市 委託 委託 20% 最短ルートの組立てによる収集時間短縮化 I市 委託 委託 20% 収集回数の削減(可燃:週3→週2) J市 委託 委託 40% 収集回数の削減(不燃:週1→隔週1)、収集委託単価の見直し K市 直営 委託 増加なし L市 委託 委託 40% 特に行っていない M市 委託 委託 10% 収集回数の削減(不燃:週1→隔週1) 収集作業員数の削減(収集車1台当たり2人→1人) 戸別収集の習熟効果 収 集 時 間 O 47 習熟曲線 t 実施期間 課題Ⅵ プラスチック資源の有料化 • 昭島、清瀬、東村山、小金井、西東京など 狙い:資源を含むごみ総量の減量化 使い捨て容器の発生抑制 収集処理費の負担適正化 • もともと有料の「不燃ごみ」からの外出しの場 合、市民の理解が得られやすい • 高い料率で新たに資源物を有料化する場合に は、住民の理解が得られにくい ex.札幌市 48 課題Ⅶ PDCAサイクルによる運用 Plan 有料化制度 の計画策定 Action Do 有料化制度 の見直し 有料化制度 の実施 Check 有料化制度 の評価 49 おわりに: 求められるVFMの視点 • 有料化は、ごみ減量の経済的手法として価格 メカニズムを導入することであり、ごみ処理 サービスの「市場化」という側面をもつ • 市場においては、顧客としての住民は、手数 料という対価の支払い(Money)に見合うサー ビスやメリット(Value)を期待する • 行政にも、Value for Money(VFM)の思考と 説明責任(アカウンタビリティ)が要求される 50
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