整形外科デバイスの実験力学的評価-模擬骨応力場イメージング法 Biomechanical evaluation of orthopedic devices-Stress field imaging technique of synthetic bone ○正 兵藤 行志(産総研) 徐 超男 (産総研) 野中 勝信 (産総研) 三島 初 (筑波大) 宮川 俊平 (筑波大) Koji HYODO, Biomedical Sensing and Imaging Group, Human Technology Research Institute, National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST), Namiki 1-2-1, Tsukuba, Ibaraki Katsunobu NONAKA, National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST) Chao-Nan XU, National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST) Hajime MISHIMA, University of Tsukuba Syumpei MIYAKAWA, University of Tsukuba Thermoelastic stress analysis is a full-field, non-contact technique for surface stress mapping of materials and structures. The advantage of the method is its ability to image whole-surface stress (Δ (σ1+σ2)) distribution in specimens. An experimental system using the thermoelastic stress analysis method and a synthetic femur was utilized to perform reliable and convenient mechanical biocompatibility evaluation of prosthesis design. A device in which mechanoluminescent materials are applied to a synthetic bone is a “mechanoluminescent synthetic bone.” Since the region subjected to load emits high intensity light in the visible region, the device has allowed high-definition and highspeed visualization of the mechanical dynamic environment. It is confirmed that they are very effective and complementally techniques in vitro biomechanics research and to contribute to a variety of biomechanical analyses and thus support the practical implementation of prosthetic devices. Key Words: Biomechanics, Orthopedic Device, Synthetic Femur, Optical Stress Imaging 1.背 景 ・目 的 熱 弾 性 応 力 測 定 法 は,試 料 と非 接 触 に表 面 主 応 力 和 の変 化 (Δ(σ 1 +σ 2 ))を定 量 的 に捉 えられる利 点 を有 し、 工 業 分 野 における応 用 が広 がっている。我 々は、硬 組 織 代 替 デバイスの装 着 による骨 の応 力 環 境 の変 化 をin vitro実 験 で可 視 化 するために、熱 弾 性 応 力 測 定 法 と模 擬 骨 を組 み合 わせた 実 験 系 の開 発 を 行 い 、 整 形 外 科 デ バイ スの力 学 的 適 合 性 評 価 への応 用 を進 め てきた 。 一 方 、 応 力 が加 わると高 輝 度 に発 光 する無 機 材 料 の開 発 と実 用 化 を進 め、 形 状 及 び力 学 特 性 を生 体 骨 へ模 擬 した人 工 骨 へ適 用 し, “応 力 発 光 模 擬 骨 ”を開 発 した。この手 法 では模 擬 骨 自 体 が応 力 によって可 視 域 で発 光 し、その分 布 を2次 元 的 に捉 え る こと がで き る . 硬 組 織 の 解 析 におい て 、 熱 弾 性 応 力 測 定 法 と、 開 発 した応 力 発 光 法 との相 互 補 完 的 有 効 性 を検 討 する。 2.方 法 試 料 に は 、 模 擬 大 腿 骨 ( Composite femur 、 #3303 、 Pacific Research Laboratory ) を用 い た。まず、 模 擬 骨 材 料 の熱 弾 性 応 力 特 性 、および発 光 特 性 を、模 擬 骨 皮 質 骨 材 料 (グラス充 填 エポキシ)にてJIS形 状 平 板 試 験 片 を作 成 し、それぞれの計 測 を行 った。次 に模 擬 大 腿 骨 の計 測 で は、 表 面 に 応 力 発 光 材 料 を 均 一 に 薄 く 塗 布 し 、 材 料 試 験 装 置 への設 置 に当 たっては、遠 位 部 65mmを切 除 し、骨 端 部 40mmを生 理 的 内 転 位 置 で骨 セメントにて固 定 する保 持 ジ グを 使 用 し た 。 熱 弾 性 応 力 測 定 で は、 荷 重 は 材 料 試 験 器 ( MiniBionix858 、 MTS ) で 垂 直 圧 縮 荷 重 を 正 弦 波 (5Hz)で1.0±0.9kNの大 きさで骨 頭 部 に負 荷 した。また、 発 光 測 定 においては、骨 頭 部 への垂 直 圧 縮 荷 重 を1800N の 大 き さ で 負 荷 し た ( 荷 重 速 度 7000N/sec )。 熱 弾 性 応 力 測 定 では、赤 外 線 応 力 測 定 装 置 JTG8010(日 本 電 子 )及 び Cedip Silver450M を 、 ま た 発 光 計 測 で は CDD カ メ ラ C9100-12(浜 松 ホトニクス)を用 いた(Fig1)。 Oscillator unit Mini Bionix 858 MTS Thermoelastic stress analysis unit (JEOL) or CCD camera unit (Hamamatsu) Camera Speci -men Controll -er Fig.1 Experimental setup 3.結 果 ・検 討 材 料 特 性 試 験 結 果 をFig.2に示 す。(A)は熱 弾 性 応 力 特 性 であり、(B)は応 力 発 光 特 性 である。それぞれ、試 験 片 の 温 度 変 動 (Δ T )と主 応 力 和 の変 動 ( Δ σ ) 、 お よ び 歪 みエ ネル ギ 密 度 変 動 と 光 強 度 変 動 ( ΔA/A 、 A :光 強 度 、 a.u. ) は線 形 関 係 である。(A)の結 果 から、試 料 の熱 弾 性 係 数 K は 約 1.47 × 10 - 11 /Pa で あ り 、 約 1mK の 温 度 変 動 は 0.227MPa の 主 応 力 和 変 動 に 相 当 す る 。 一 方 、 光 変 動 1.0 は約 3.56kJに相 当 する。 Fig.4 で は 、 (A) は 試 料 の 外 観 を 、 そ し て 応 力 発 光 に よ る 測 定 結 果 を (B) に 、 熱 弾 性 応 力 測 定 に よ る 結 果 を (C) に 示 す。いずれも大 腿 骨 後 方 側 (Posterior→Anterior)からの撮 像 であ り、 (B) と(C) は 最 大 荷 重 変 動 1800N に おけ る 結 果 で ある。大 腿 骨 頸 部 の変 動 が最 も大 きく、内 側 近 位 部 そして 外 側 近 位 部 においても高 変 動 領 域 が可 視 化 されている。 30 20 10 0.05 -0.15 -0.10 -0.05 0 0.10 0.15 ΔT K -10 -20 Fig.4 Specimen (A), stress luminescent (B) and thermoelastic stress (C) results. -30 (A) 8 6 4 2 0 5 10 15 20 ΔStrain energy density kJ/m3 20 (B) Fig.2 Thermoelastic stress (A) and stress luminescent (B) characteristics of the specimens Fig.3に は、 模 擬 大 腿 骨 ( 左 )を 用 い た 熱 弾 性 応 力 実 験 結 果 を示 す。人 工 股 関 節 ステムを装 着 することによる、近 位 部 内 側 の圧 縮 応 力 (白 色 )および外 側 の引 張 り応 力 の大 き な減 少 が可 視 化 されている。 Fig.3 Surface stress distribution change subject to artificial hip stem implantation 熱 弾 性 応 力 測 定 法 では、実 用 的 な応 力 計 測 には1mK程 度 の温 度 変 動 (ΔT)の測 定 が必 要 となる。しかしながら、最 新 型 セ ン サを 搭 載 し た 赤 外 線 サ ーモ グラ フ ィで 計 測 で きる 温 度 差 (NETD、雑 音 等 価 温 度 差 )でも10mK程 度 である。こ のため、試 料 に断 熱 変 形 条 件 を満 たすような比 較 的 高 速 の 繰 り返 し荷 重 を加 えつつ、荷 重 に同 期 させて加 算 平 均 を行 う方 法 やロックインアンプを用 いての信 号 抽 出 等 で、検 出 温 度 差 を向 上 させている。この方 法 では、赤 外 線 アレイセンサ の 進 展 と も 相 ま っ て 、 温 度 分 解 能 1 ~ 0.1mK 、 鋼 材 の 応 力 測 定 における応 力 分 解 能 約 1~0.1MPa精 度 の計 測 を実 現 するに至 っている。ただ、数 ~数 十 秒 の測 定 時 間 が必 須 な ため、弾 性 範 囲 内 においても、高 速 で過 渡 的 な変 化 の測 定 には限 界 が ある。 一 方 、 応 力 発 光 法 では可 視 光 を検 出 するため、CCD等 のより一 般 的 な撮 像 デバイスを使 用 するこ とが可 能 である。デバイスの感 度 やフレームレートに依 存 す るが、画 像 加 算 を必 要 とせずにmsecオーダでの測 定 も可 能 である。また、高 画 素 数 のCCD等 も広 く普 及 しており、赤 外 線 検 出 素 子 のVGA(640×480)程 度 であると比 較 して、より 高 い空 間 分 解 での測 定 が可 能 である。 4.結 語 熱 弾 性 応 力 測 定 法 は,試 料 と非 接 触 に表 面 主 応 力 和 の変 動 (Δ(σ 1 +σ 2 ))を定 量 的 に捉 えることができ 1 ) 、 2 ) 、 そして応 力 発 光 測 定 は時 間 、空 間 分 解 能 等 に優 れるなど、 それぞれの測 定 モダリティは相 互 補 完 的 な特 徴 を有 してお り、生 体 力 学 のin vitro実 験 、整 形 外 科 デバイスの力 学 的 な評 価 に効 率 的 で有 効 な手 法 であると言 える 1) 。 参考文献 1) Hyodo K, Xu C, Mishima H and Miyakawa S, Optical stress imaging for orthopedic biomechanics – comparison of thermoelastic stress analysis and developed mechanoluminescent method, IFMBE International Proceedings ”ICBME 2010, 14 th Conference on Biomedical Engineering", 2010 in press 2) NDIS3425:2008 熱 弾 性 応 力 測 定 法
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