ナバックレター養鶏版 第40号

ナバックレター
養鶏版Vol.40
養鶏用飼料の栄養価を高めるには(2)
J. Ignacio Fernández and David González, MyA, Pintaluba Group, Spain
複合酵素剤
単胃動物の栄養では、様々な成分の原材料を含む配合飼料の使用が増え、重要性を増している畜産以外の産業由来の副産
物(DDGS、ふすま、グルテンフィード)など、食物繊維に富むエネルギーおよびタンパク質源の添加およびそれらへの依
存が増加しています。このことは、これらの飼料に含まれるNSPが非常に複雑で多様性に富むため、複数の酵素活性作
用が必要になることを意味しています。単一の酵素活性をベースとする酵素剤では、これらのNSPの多くを分解できな
いでしょう。
前号のように、NSP酵素を養鶏用飼料に添加するようになった本来の理由は、NSP
(キシランおよびβグルカン)の水溶
性成分によって引き起こされる有害作用を防ぐためでした。
水溶性NSP成分に起因する粘性によって栄養利用が低下し、その結果として家禽の生産成績が悪化しました。注意しな
ければならないことは、家禽で観察される有害作用と腸レベルで測定された粘性にはあまり相関性が見られないことです。
たとえば、一般に消化管内で小麦および小麦副産物が生成する粘性は、大麦と比べてはるかに低いのですが、酵素添加に
よる改善は、ほとんどの場合、同様の重要性を持っています。
一方、カプセル化説なら、養鶏用飼料中に水溶性NSPがほとんど含まれない場合に、なぜ複合酵素剤の添加によって生
産パラメータの改善が観察され記録されているのかを説明できるでしょう。細胞壁が障壁となって細胞含有物を利用でき
ないので、あらゆる成分が常に酵素添加の恩恵を受けるという結論が得られます。真菌、具体的にはアスペルギルス属の
非GMO発酵によって産生される酵素の場合が良い例で、高濃度のβグルカナーゼおよびキシラナーゼ以外にも数種類の
酵素を産生することが知られています。
表2 複合炭水化物分解酵素剤(キシラナーゼ+βグルカナーゼ+αガラクトシダーゼ+βマンナーゼ)
添加がトウモロコシ‐大豆粕飼料を給与したブロイラー鶏の発育成績に及ぼす影響(1∼14日)
試験
増体量(BWG)
(g/14日)
飼料要求率(FCR)
(飼料g /増体量g)
対照群
酵素剤添加群
対照群
酵素剤添加群
A
537
546
1.42a
1.36b
B
487b
532a
1.46a
1.42b
C
492
501
1.44
1.42
D
502
508
1.49
1.47
E
473
496
1.35a
1.32b
F
328
337
1.42
1.40
G
334
354
1.49
1.35b
平均値
450
改善率(%)
b
a
468
3.9
1
a
1.44
1.39
3.2
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さらに重要と言えるのはヘミセルラーゼおよびセルラーゼ系酵素であり、中でもαガラクトシダーゼおよびβマンナーゼ
類は重要です。小麦/大麦飼料で粘性が問題であると考えられている場合のこれらのタイプの酵素は、粘性は問題とは考
えられていないトウモロコシ‐大豆飼料でも有効性を示しています。鶏で行われた、様々な活性を持つ主要および二次的
補酵素を含む複合酵素剤のトウモロコシ−大豆飼料添加試験の概要を表2に示します。
(前頁参照)
現在、家禽栄養専門家が取り組んでいる課題は、飼料に酵素を添加した後に飼料で起こる分解をどのように適正に評価す
るかということです。この分解は、細胞含有物のより高いより完全な利用率と分解後のNSP成分の潜在的栄養価という2
つの面から解釈できます。この2つの寄与因子は、複合酵素剤を最大限に有効活用する上で非常に重要です。
たとえば、ヘキソース単位は能動輸送されて利用されます。しかし、ペントースモノマーは、高濃度では誤用されるだけ
でなく毒性もあり、低濃度では能動輸送されないので吸収率が低下します。NSPの分解により生成した成分は、細胞壁
成分から遊離した繊維の断片とともに善玉腸内細菌叢のための基質となってプレバイオティクスとして働くため、腸内全
体の健康状態を改善し、競争的排除によって病原体量を間接的に低減します。
したがって、従来の飼料成分よりも高い基質価値を飼料成分に割り当てることは、広域スペクトルの複合酵素剤を使用す
る場合の合理的なアプローチと考えられ、最近ではこの研究に高い関心が集まっています。
酵素戦略
ある製品の開発では、最も一般的に使用される養鶏用飼料のあらゆるNSP成分、つまり、従来のβグルカンやアラビノ
キシランばかりでなく、その他の分解できそうな基質にも焦点を当ててきました。
この非GMO発酵プロセスにより、当該製品は、大量のエンド-1,4-β-キシラナーゼおよびエンド-1,3(4)-βグルカナーゼ
の他、様々な種類の酵素活性を含んでいます。これらの中には、キシラナーゼおよびβグルカナーゼの複数のアイソザイ
ムおよびその他のセルロース分解およびヘミセルロース分解酵素が含まれ、飼料中のあらゆるタイプのNSPの分解を促
進します。
当該製品は、前述の酵素以外に、ラフィノース属オリゴ糖(RSO)分解酵素(αガラクトシダーゼ)やβマンナーゼなどの
定量化された酵素も含んでいます。
RSOは、大豆粕中に4.5 ∼ 6.5%含まれており、家禽の内因性酵素では単糖に分解できません。したがって、RSOは下
部消化管まで未消化のまま残り、そこで腸内細菌によって発酵され、揮発性脂肪酸(VFA)が産生されることによって消化
管内にガスが貯留し、飼料の代謝エネルギー(ME)価が低下します。
βガラクトマンナンは、大豆粕にも含まれ(1.5%)、グルコース代謝阻害および腸粘膜を通過する時の鶏の先天性免疫シ
ステムの刺激要因としての作用により、強力な栄養阻害作用を示します。その結果、飼料摂取量および栄養利用が低下して、
生産成績に影響を及ぼします。
全体的に飼料原料価格の上昇が見られる状況において、代替原料(副産物)を利用したり広範なスペクトルを持つ酵素を利
用して飼料から最大限の栄養を引き出すことは、養鶏用飼料のコスト低減のための最良の解決策と考えられます。
コスト低減は、穀物配合飼料(大麦‐小麦)およびトウモロコシ‐大豆飼料など、様々な配合組成において評価されています。
飼料原材料の価格にもよりますが、当該製品の使用により、配合飼料コストは飼料1トンあたり平均9 ∼ 15ユーロ低減
されます。
したがって、飼料用NSP酵素は、食物繊維に富む代替原料を配合したり従来の飼料成分の栄養価を最大限に高めたりす
るコスト低減戦略として、将来有望と考えられます。
これは「International Poultry Production Vol.19,No.7」を抄訳したものです。
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