「最近の米国調剤薬市場概況(PartⅡ)」 - ドラッグストア研究会

「最近の米国調剤薬市場概況(PartⅡ)」
「トップ 20 調剤チェーン」
順位
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
会社名
業態
CVS
ウォルグリーン
ウォルマート
ライトエイド
ブルックス・エカード
クローガー
スーパーバリュー
セーフウエイ
メディシン・ショップ
シアーズ
ロングス
アホールド USA
アルバートソン
ターゲット
パブリックス
コスコ
H-E-B
サムズ・クラブ
ジャイアントイーグル
デュエンリード
(Drg=ドラッグストア
Drg
Drg
DS
Drg
Drg
Spr
Spr
Spr
Drg
GMS
Drg
Spr
Spr
DS
Spr
WC
Spr
WC
Spr
Drg
調剤売上
(百万ドル)
28900
27350
11036
10900
5500
5450
3600
3100
2520
2400
2300
2100
1700
1580
1200
1100
882
876
780
715
DS=ディスカウントストア Spr=スーパーマーケット
前年比
(%)
+34
+15
+21
+1
NA
+11
NA
+11
0
-8
+6
-16
NA
+13
+29
+19
+4
+15
+8
-12
調剤売上
構成比(%)
68
64
5
63
67
9
8
8
97
4
49
9
17
3
5
2
8
2
14
45
店舗数
6171
4953
3289
3323
1853
2507
2653
1775
1066
3900
477
840
655
1397
876
346
300
567
216
250
調剤
店舗数
6071
4953
3289
3323
1853
1913
956
1332
1066
1117
477
675
453
1150
636
331
193
441
181
250
GMS=ジェネラルマーチャンダイズストア WC=ホールセールクラブ)
調剤薬売上げランキングを見てみると、CVS が売却されたエカードの半分の店を購入した結果、
第 1 位に躍り出た。自前路線を行くウォルグリーンは第 2 位になったが、店舗辺りの処方薬の
売上げはまだウォルグリーンの方が CVS より多い。第 3 位にディスカウントストアのウォル
マート、第 6 位クローガー、第 7 位スーパーバリュー、第 8 位セーフウエイと、いずれもスー
パーマーケットが占めている。第 10 位にシアーズ(K マートを含む)が入っている。このよ
うに見ていくと、調剤薬売上げトップ 10 では、なんとドラッグストア以外の他業態 5 社が占
めているということだ。
「薬に関する情報源として、各業態における薬剤師の信頼度」(2006 年)
独立ドラッグ
スーパー
マスマーチャンダイザー
クリニック
チェーンドラッグ
メイルオーダー・ウエブサイト
07 年 3 月号
大変信頼する
76.0%
67.0
65.0
64.0
62.0
58.0
信頼する
18.0%
26.0
27.0
27.0
28.0
32.0
普通
4.0%
6.0
7.0
6.0
8.0
9.0
信頼しない
1.0%
0.5
0.5
1.0
1.0
0.5
全く信頼しない
1.0%
0.5
0.5
2.0
1.0
0.5
1
薬剤師の信頼度はどの業態でも高く、「とても信頼する」と「信頼する」の合計では 90%内外
と高い。その中でも独立ドラッグが一番高い。この信頼を裏切らないようにするために、処方
箋や薬歴の電子化を促進しており、調剤過誤の防止に非常に役立っている。なにしろ米国では
毎年 1.5 百万人の人が何らかの調剤過誤により損害を受け、数千人が死亡している。そして、
この調剤過誤で国に年間 35 億ドルの損害を与えている。
「調剤サービスの重要性」
サービスの種類
価格及び保険関連
専門的サービス
便利性
店舗サービス
予防・ウエルネスサービス
メールオーダー・ウエブサイト
非常に重要
68%
60
56
37
13
9
重要
28%
35
36
39
22
15
あまり重要でない
1%
3
5
13
31
23
重要でない
3%
2
3
11
34
53
調剤サービスの重要性では「価格及び保険関連」という項目が最重要で、これは自分の保険に
どの薬が適用されるかを知ることや保険会社への手続きなどについてのサービスであるが、
80%以上の人々が保険を持っている現状では当然のことだ。2 番目に「専門的サービス」、そし
て 3 番目に「便利性」が問われる。
「最も利用されるファーマシー」
タイプ
チェーンドラッグ
メール・ウエブサイト
独立店
スーパー
マスマーチャンダイザー
クリニック
2006
34%
20
15
12
11
7
2005
42%
18
8
13
9
9
2004
42%
20
9
13
7
10
2003
43%
17
11
14
6
10
最も利用されるファーマシーをタイプ別に見ると、チェーンドラッグだけが急落している。効
率を追いすぎる姿勢に顧客が魅力を感じなくなった結果だ。嬉しいことに、独立店は顧客との
親身な関係作りが大きな武器になって、前年の倍近くも伸びている。そして独立店利用者の
90%は今後も利用し続けると述べている。マスマーチャンダイザーは調剤室を入り口近辺に配
置することによって便利性を高めた。これが利用者に評判が良くてシェアを高めた。
業態別に顧客の期待するものが違っているのが面白い。チェーンドラッグの患者は「便利性」を
最も期待しているが、独立ドラッグの患者は「専門的なサービス」と「薬剤師との親身な関係」
を、ウォルマートなどマスマーチャンダイザーの患者は「価格」を、クリニックの患者は「予防・
ウエルネスサービス」を、又メールオーダー及びウエブサイトの患者は「ウエブサイトサービス」
を最も期待している。
満足度では独立ドラッグが一番高く評価されているが、それは患者との密接な関係作りに起因
するところが大きい。実際に独立ドラッグの患者の 41%は薬剤師と密接な信頼関係が築かれて
07 年 3 月号
2
いると答えているが、スーパーマーケットファーマシーでは 16%、マスマーチャンダイザーや
チェーンドラッグでは僅か 12%の患者しか、薬剤師と密接な関係が築かれていると答えていな
い。独立ドラッグが再度活躍しだしたのは、患者と薬剤師の間に信頼できる人間関係があるか
らだ。事実、独立ドラッグの多くの患者は薬剤師と自由に話すことが出来て、親切なカウンセ
リングをしてくれると答えている。
患者の正しい薬の摂取には多くの改善余地がある。まず患者の 2/3 弱しか必要な薬をきちんと
処方してもらっていない。また服薬をやめたり、必要量より少なく服薬している。必要な全て
の薬を処方してもらわない理由として最も多いのが、
「必要ない(42%)」と自己判断している
こと、次いで「高い(27%)
」である。処方してもらった薬を正しく服薬しない理由の第一は「忘
れた(79%)
」
、次に「薬が切れた(19%)」である。調剤薬の服薬による消費者の経済的負担は
年々高くなっており、2005 年度の調剤平均単価は 46.25 ドルで前年比+4 ドル(9%アップ)し
ていることも影響している。今後患者がきちんと必要な薬を服薬するように、薬剤師が患者に
対して必要性をしっかり説明したり、リフィルの時期が来たら患者に知らせるというシステム
も必要になってきている。ウォルグリーンなどの大手ドラッグでは、患者の了承があればリフ
ィルの時期を知らせるシステムを既に導入している。
このところインストアクリニックという考え方が急速に進んできている。ヘルスケアのワンス
トップショッピングということで、米国のファーマシーにとっては究極の目的来店性の武器に
なる。また、クリニックで処方された処方箋の 90%は店内のファーマシーに来て受け取られる
のでビジネス上も良い。またインストアクリニックに来る客の 70%は、今までその店舗を利用
したことの無い新規客なので、新規客の獲得にも非常に役立つ。しかもその新規客は、クリニ
ックに来たついでに、38%の客が OTC を、80%の患者が雑貨を購入している。CVS はインス
トアクリニックの高い可能性に注目し、インストアクリニックを成功させた最大の大手ミニッ
ト・クリニックを買収した。現在インストアファーマシーは 165 箇所あるが、将来 2000 箇所
まで成長すると予測されている。保険会社も、コスト面で通常のドクターに行くより安く上が
るので積極的であり、現在ではインストアファーマシーの 40%は大手の保険を適用している。
各インストアクリニックには上級看護師、医師アシスタントがいるが、実際に医師を配置して
いる所もある。料金的には 35 ドル~130 ドルの幅だ。現金客は 20%程度で、他は保険適用客
だ。このインストアクリニックの成功要因で最も重要なのは、「便利な立地」ということである。
また顧客は保険を持っていない人々で、
保険会社が介在しないため利益の上がる大切な顧客だ。
この人々はヘルスケアに毎年 320 億ドル使っている。また子供を抱える若いファミリーも大切
なターゲット客だ。予約が不要で待ち時間が少ないというのは、忙しい彼らにはとても魅力的
だ。問題は重度の病気を見逃される危険性があること、治療履歴が普段利用している医師の記
録に残らないこと、そして医師からの反発だ。これらが今後の課題となっている。
07 年 3 月号
3
「代表的なインストアクリニック」
クリニック名
MinuteClinic
出店店舗
CVS、Bartell Drug
SmartCare Family
Medical Centers
Brooks/Eckerd,
Rite Aid、Walgreen
DuaneReade,
Walgreen、Walmart
Kerr Drug、Kroger、
Walmart
The Little Clinic
Kroger
Take Care
RediClinic
店舗数
2007 年までの
予定店舗数
83
600
17
400
11
100
3
400
11
50
Excell-K
ドラッグストア研究会
会長
07 年 3 月号
松村 清
4