株式会社神戸製鋼所 高砂製作所 鋳鍛鋼事業部 鋳造 - 素形材センター

財団法人素形材センター会長賞・環境負荷量低減表彰
株式会社 神 戸 製 鋼所 高砂製作所
鋳鍛鋼事業部 鋳造工場
特 集
1.はじめに
業床、通路の改造から清掃方法の改善に取り組み、一
仕事 / 一片付け / 一清掃が定着した職場となった(写
鋳造部門は株式会社神戸製鋼所創業以来 100 年超継
真 2)。2007 年には粉塵発生源対策として大規模設備
続している部門で、1953 年に兵庫県神戸市から高砂市
投資行い、職場環境を大幅に改善した工場となってい
に移設、操業を開始している。主たる製品は、大型船
る(写真 3)。
舶ディーゼルエンジン用クランク軸、大型プレス用大
型鋳鋼品である(写真 1)。1999 年には 「ISO14001」 を
取得している。
写真 2 成型作業場
写真 1 大型舶用ディーゼルエンジン用クランク軸
2.工場内外の環境の概要
当工場は兵庫県播磨臨界工業地帯に位置する。以下
に概要を説明する。
生産量:31,600 ton(平成 19 年度)<鋳造部門のみ>
従業員:164 名(平成 19 年度)<鋳造部門のみ>
2004 年から鋳物砂リサイクル率向上活動を進めてお
り、2006 年から事業部をあげて、美化運動を開始し作
36|素形材 2008 .12
写真 3 ガス切断場用大型集塵機
環境優良工場
3.環境優良工場としての特徴と環境負荷低減
の経過
(6)清掃・整理整頓の実施
事業部をあげての美化運動を開始、あるべき姿(活
動前後の写真)の掲示と作業エリア責任者制度、室内
(1)騒音・振動対策
一斉清掃を毎月実施するなど継続的な 3 S 維持活動を
鋳物砂再生用集塵機排気口へのサイレンサーを設
図っている。また、幹部による審査・表彰制度も設け、
置、ブロアー全体の防音ラギング処理により騒音レベ
3 S の維持・向上の推進力も高めている(図 1)。
ルを大幅に改善した。
(7)廃棄物処理(再利用・リサイクル)
(2)ばい煙対策
回収したガス切断ヒュームの鉄源化、湯道レンガ材
熱処理用燃料を A 重油から都市ガスに転換し、「 イ
の薄肉化や副資材梱包方法の見直し・簡略化等により
オウ酸化物、ばいじん 」 の低減を図った。
廃棄物量低減や、3 R 活動を推進している。
(3)粉塵対策
枠ばらし・砂落し作業場への水ミスト噴霧装置を導入
4.環境負荷量低減の具体的成果及び経営への
寄与
(写真 4)
、ガス切断場は専用建屋 + 移動式フード + 大
型集塵機を設置し、大幅に作業環境改善効果をあげた。
(1)産廃物削減
用率向上のために以下の対策を実施し、埋め立て廃棄
物の削減を図った。
・再生条件の最適条件下での操業による再生能力の向上
・再生装置(写真 5)稼動時間延長
・脱硅砂化(再生摩滅量が少ないクロマイト砂比率増)
(図 2)
写真 4 水ミスト噴霧
(4)暑熱対策
砂ばらし・砂落し作業場への水ミスト噴霧により、
玉掛け作業者への暑熱負荷を低減した。
(5)臭気対策
塗型塗布作業要領をスプレー方式からシャワー方式
に変更することにより、溶媒であるアルコール飛散防
止を図った。
写真 5 再生装置(一部)
美化運動
※ペイント塗るだけが美化ではない。
ペイント⇒物の置き方、行動範囲
基本3S:
(整理・整頓・清掃) を規定する。
異常をわかりやすくする。
強化策の一つとして取組み
・不安全な状態 よくわかる
・設備異常
心のゆとり
来客者への好印象
すがすがしい気持ち 顧客からの信頼アップ
(清潔)
作業環境の抜本的 大事に至る前に対応
な改善(集塵 等)
作業効率
安全
(躾)行動が変わる
品質
受注、
長い付き合い
顧客信頼
事業経営課題に直結
図 1 職場美化運動の主旨
図 2 生産量とクロマイト砂量の推移
37
特 集
鋳物砂として利用しているクロマイト砂の再生・利
財団法人素形材センター会長賞・環境負荷量低減表彰
・人造砂の中子への採用
また、徹底した 3 S 活動により以下の成果もあげる
・高温多湿環境下での鋳型発現挙動を確保する再生ク
ことができている。
・環境・安全に対して室員全員の意識改革が出来、ルー
ロマイト砂専用樹脂の採用
(2)省エネ
ル厳守の人材育成が定着した。
熱処理炉バーナのリジェネ化、耐熱鋼製軽量マクラ
の採用、炉壁材のセラミックファイバー化、炉内温度
分布の改善や熱処理用燃料を A 重油から都市ガスへの
燃料転換を行い、燃料原単位を 20% 向上させた(図 3)。
加熱装置にはマスフローコントローラーを設置
し、加熱条件を最適化させた。
高温処理&低温処理
60
・不備な設備の早期発見が容易となり保全 / 本質安全
化への活動に結びついた。
・作業環境改善により、生産性向上に加え、従業員定
5.設備、生産活動の現状と見通し、新技術
当社は、現在大型船舶用ディーゼルエンジン用ク
50
特 集
万kcal/Ton
組めば、成し得るという自信が職場全体に定着した。
着率向上にも効果を出した。
高温処理
熱処理燃料原単位
・目標に対して、全員参加で、最後まで諦めずに取り
ランク軸の世界シェアー 1 位であり、今後も旺盛な
40
造船需要に対応し生産量拡大を図っていく。
30
20
新技術としては、鋳物砂(肌砂)として利用して
10
いるクロマイト砂の代替砂として、厚肉鋳鋼品に対
応しかつフラン樹脂プロセス対応した人造砂(写真
0
02
03
04
年度
05
06
07
図 3 熱処理燃料原単位低減
7)への置き替えを行い、更なる再生効率向上による
産業廃棄物低減と省資源を行っていきたい。
(3)省資源
厚肉鋳鋼品においてニアネット形状技術開発を行
い、実用化し、加工代削減と製品歩留まりを改善した
(写真 6)。
押湯
写真 7 フラン樹脂プロセス対応した
耐焼着性の高い人造砂
製品
6.将来展望、抱負
粉塵対策はほぼ完了したが、まだまだ改善すべきと
ころもあり室員総力をあげて、さらなる改善に努めた
新技術適用 従来技術 新技術適用
従来技術
写真 6 厚肉鋳鋼品ニアネット形状化
いと考えます。
そして、生産面だけでなく、安全・環境・衛生面も揃っ
た世界一の大型鋳鋼工場を目指したいと考えます。
(文責:吉本篤人)
これらの施策により、産廃物削減、工場のエネルギー
原単位改善、歩留まり向上を図り、工場コストの圧縮
を行った行った。
さらに、ニアネット形状化により、作業の技能レス
化にも寄与し、急増する計画生産量達成を可能として
いる。
38|素形材 2008 .12
株式会社神戸製鋼所 鋳鍛鋼事業部 製造部 鋳造室
http://www.kobelco.co.jp
〒 676−8670 兵庫県高砂市荒井町新浜 2 丁目 3−1
TEL 079−445−7202 FAX 079−445−9045