ÎÓк ½ 川崎医療福祉学会誌 ÆÓº ¾ ¾¼¼ ¿ ß¿ 資 料 医療保育科学生の保育所実習前後の子どもイメージ , 心理社会的発達の変化とこれらの関連性 岡 田 恵 子£½ 高く,子どもイメージも高いと述べている研究 µ が はじめに 平成 ½ 年に新設された ある. ¿ 年課程である à 医療短期 心理社会的発達とは ,自我とその働きを社会,文 大学の医療保育科は ,医療の知識を備え ,さまざ ま 化,歴史的状況の諸条件との相互作用の中に把握し な病気や障害のある乳児や幼児に対応できる保育士 ていく方法論的立場からみた人間の発達の程度であ を養成することを目的としている. 年時より専門 る µ. 的な医療的カリキュラムが多く組まれ , 年時以降 が必要であるとし ,人生の課題が漸次的に拡大しつ の保育所実習 ,施設実習 ,幼稚園教育実習の他に , つある活動範囲に沿って ,環境との定常的な相互作 ½ ¾ ¿ 年時に小児病棟実習,発達障害児実習が組み込ま れている.このため ¾ 年課程の保育科に比べ ,健康 Ö ×ÓÒ は ,自我発達には一連の環境の存在 用を通して ,能力や成熟といった心理社会的発達が もたらされる ½¼µ と述べている. 障害,発達障害のある子どもと向き合うことが多い. このような心理社会的発達は ,実習効果と関連性 より高度な専門性をもった保育士を目指す医療保育 が推測される要素であるが ,医療保育科学生におい ¾¼歳前後の短期大学生 科学生にとって ,これらさまざ まな実習は重要な位 ては実証されていない.また 置づけをもつ.したがって ,それらの実習効果を把 にとって , 年間の保育教育やさまざ まの実習体験 握することはとても意味あることと考える. で ,心理社会的発達自体が変化するのか調査した研 ¿ 医療保育科学生にとって ,子ど もイメージは ,子 究も見当たらない.そこで ,筆者は ,医療保育科学 ど もとの関わりの質を決定したり,問題解決をする 生における実習効果を把握する目的で ,それぞれの 上で重要である.実習で触れ合った子ど もや障害者 実習後の子ど もイメージの変化とともに心理社会的 に対するイメージ得点が上がり,肯定的なイメージ 発達も変化するのか調査し ,さらに両者の関連性を が増加することにより実習の有効性が確認されたと 探りたいと考えた .そし て関連性が見出されれば , いう研究は多い ½ ¾µ .そこで筆者は ,医療保育科独 学生の心理社会的発達に応じた有効な指導のあり方 自の小児病棟実習,発達障害児実習も含め,在学 を検討し ,今後の学生の教育や実習に生かしてゆき ¿ 年間に行われる教育やさまざ まな実習を通して生ず たいと考えた . る子ど もイメージの変化を,学生自身の子ど も理解 この研究の一環として ,筆者らは先の研究 ½½µ に や意識の深まり,教育や実習効果を考察する指標と おいて ,高橋ら ½¾µ の小児病棟実習で病児と接する 考え ,子どもイメージの変化から ,医療保育科の医 看護科学生の子ど もイメージの肯定度が下がること 療保育教育をふり返り,より効果的な教育や実習の を見出した研究をふまえ ,同じく小児病棟実習を経 あり方,および効果的な学生のサポートを検討して 験し ,健康障害,発達障害の子ど もと向き合うこと いきたいと考えた . が多い医療保育科学生の子ど もイメージが ,さまざ à また実習効果をみる上で ,学生の個人的資質であ まな実習でいかに変化するのか , 医療短期大学の る心理社会的発達に応じた指導をすることが望まし 看護科学生の子ど もイメージと比較しながら考察し いことが見出されている ¿ µ .心理社会的発達の程 ようと考えた .そしてまず ,医療保育科学生と看護 度と学生のストレス反応,ストレス対処法に関連性 があることを示した研究 科学生の入学時の子どもイメージと「子ど もに µ や小児看護実習におい て ,心理社会的発達が高い学生ほど 実習の充実度が £½ 川崎医療短期大学 医療保育科 倉敷市松島¿½ (連絡先)岡田恵子 〒 ¼½¹¼½ ¹Å Ð Ó º Û × ¹Ñº し たい」という子ど もへの親和感情を調査,比較し報 告した . 川崎医療短期大学 º Ô ¿ ¿ 岡 田 恵 子 この調査の後,医療保育科学生はほぼ ½ 育教育を受け ,平成 ¾ 年 年時の ½ 年間の保 月に最初の保育 体発達分化の図式にそって ,人間の心理社会的発達 段階としてとらえ ,各段階の発達程度を測るた を 所実習を体験した .机上で学んだ保育を体験的に理 めに ,オーストラリアの 解し ,技能を実践的に学ぶ最初の貴重な経験となっ 西らが改訂し た ½¿µ( たと考えられる. そこで先の研究 ½½µ に続き ,今回は ,第一の目的 として医療保育科学生 ½ 期生の子どもイメージ ,心 ¾ ½ ÊÓ× ÒØ Ð らが開発し ,中 )尺度である .本尺度は Ö ×ÓÒ の述べる信頼性,自律性,自主性,勤勉性, 同一性,親密性,世代性,統合性の 位尺度として ,それぞれに 発達課題を下 つの質問項目がある. かに変化したのか明らかにするため,第二の目的と ½ :全く違うの 件法 で評定させた.それぞれに ½ 点を与え ,得点化 し 分析した .全 項目のうち¿¾項目は逆転項目で , して医療保育科学生の心理社会的発達と ,子ど もイ それらは得点化を逆にした . メージや子ど もへの親和感情との関連性を検討する ¿ .¿ 子どもに対する親和感情:これも先の研究 ½½µ ため,調査を行った .心理社会的発達に関してより で使用した尺度である. 項目 , 件法で測定し , 理社会的発達,および子どもへの親和感情が , 年 時に初めて経験した保育所実習後に ,入学時よりい それらを :全くその通り 理解を得るための資料として ,保育所実習後に医療 得点化した .入学時の親和感情得点については ,す 保育科学生の個人技能の開発に関わるライフスキル でに報告 ½½µ している 感についても調査し ,心理社会的発達との関連性を ¿ . ライフスキル尺度( 実習後のみ実施) :健康 検討したので ,これらを報告する. の実現のための包括的な概念であるヘルスプロモー ションの骨子の一つである「個人技能の開発」に関 ½ 研究方法 ½ .調査対象者と調査時期 ½ 年 月に à 医療短期大学に入 ½ 名である.入学時の調査 時に欠席していた ¿ 名と ,翌年の保育所実習終了時 の調査時に欠席していた ½ 名を除いた , ¾ 回とも完 全に回答した ¿名が有効分析対象者である. 最初の調査は入学時平成½ 年の 月¿¼日, ¾ 回目 の調査は平成½ 年,最初の保育所実習終了直後の ¾ 調査対象者は平成 学した医療保育科 期生 年生時 月 日である. なお今後,第 ÏÀÇ が提唱した「学校 教育におけるライフスキル教育のガ イド ライン」½¼ わるものとして , ½ 回目すなわち入学時で保育所実習 ¾ 回目の , 項目に ,竹井が説明する文言をつけて,高校生の学 習教材に用い ,自己評価させたもの ½ µ を用いた . 「いくつかの選択肢の中から最良と考えられを自分で 選択できる」などの意志決定スキル ,コミュニケー ½¼項目を ,· ¾ :充 · ½ :少々,自負できると 思う, ¼ :まあまあ,身についていると思う, ½ : 少し ,不足していると思う, ¾ :おおいに不足し ションスキル ,共感スキルなど 分に備わっていると思う, ていると思う,で評定させ得点化した. 前に調査したデータを実習前データ ,第 .分析方法 最初の保育所実習終了時の調査データを実習後デー .½ 目的 タと簡略して称することにする. 年, ½ ß実習前後の子どもイメージ ,心理社 会的発達,親和感情の変化を明らかにする. ¾ .調査方法 .½ .½ 実習前後の子ど もイメージ 調査は ,研究の趣旨に同意し協力の得られた学生 に ,授業後質問紙による一斉調査を行った.その際, Ø ¾ 項目ごとの 平均得点と総得点を算出し , 検定で比較する. .½ .¾ 実習前後の子ど もイメージの構造の変化 個人のプライバシーが漏れることがないこと ,研究 をみるため ,実習前と実習後の子ど もイメージ得点 目的以外には使用しないこと ,回答は任意であるこ に,重みなし最小二乗法(プロマックス回転)による となどを伝え倫理的配慮に留意した. 因子分析を行い比較した.実習前後の因子分析とも, ¿ .調査内容 ¿ .½ 子どもイメージ:これは先の研究 ½½µ で使用 ¿ 因子を抽出し ,各因子とも回転後 の因子負荷量が ¼º 以上を示した項目を採用したが , した尺度である.すなわち,プラス―マイナスの子 両者は重なりが多かった .そこで ,本調査における ど もイメージを表す形容詞対 子どもイメージの因子得点算出には,先の研究 ½½µ で ¾ 項目を 件法で測定 ½ 固有値 以上で し ,得点化した .入学時の子ど もイメージ得点につ 見出した,実習前の子どもイメージの因子分析結果 いては ,すでに報告 ½½µ している. を採用することにした.すなわち,因子 とは「意 ß ß Á ß ¿ .¾ 心理社会的発達:学生の心理社会的発達は 欲的な 無気力な」 「積極的な 消極的な」 「活発な 日本語版 鈍感な」など「子ど もの活動的イメージ 」の因子, ÈËÁ(エリクソン心理社会的段階目録調 査 Ö ×ÓÒ Ô×Ý Ó×Ó Ð ×Ø ÒÚ ÒØÓÖÝ )を使 用した .これは , Ö ×ÓÒ の提唱した精神分析的個 因子 ÁÁ とは「理解力のあるß理解力のない」「きちん ß ß とした だらしのない」 「頼もしい 頼りない」など 保育所実習前後の子どもイメージ ,心理社会的発達の変化と関連性 「子ど もの性格に関するイメージ」の因子,因子 ß ß ¿ ÁÁÁ とは「かわいらし い にくたらし い」 「 好きな 嫌い ß な」 「気持ちのよい 気持ちの悪い」など「対子ど も 感情イメージ」の因子である.この因子分析結果を 用い,実習前後の子ど もイメージ Ø ¿ 因子得点を算出 し , 検定で比較する. .½ .¿ 実習前後の心理社会的発達の総得点と , Ö ×ÓÒ の提唱した心理社会的発達 段階に当たる 下位尺度得点を算出し , Ø 検定で比較する. .½ . 実習前後の子ど もに対する親和感情得点 Ø 目的 ¾ ß心理社会的発達と ,子どもイメージ , について , 検定で比較する. .¾ 親和感情および 自己のライフスキル感との関連を 探る. 関連の検討に先立ち,実習前後の心理社会的発達 得点の相関関係をみた結果, Ö ¼º Ô ¼º¼½と強 い相関関係がみられた .したがって ,本研究では対 象者の実習前の心理社会的発達度得点の高得点群を ·½»¾Ë 平均得点 ½»¾Ë ,低得点群を平均点 ¿ , その間を中間得点群とし , 群に分け ,各群の関連 をみることにした .なお ,それぞれを高群 ,中群 , 低群と称する. ¿ .¾ .½ 群別に実習前後の子ど もイメージ総得 ¿ 点, 因子得点,および親和感情得点を Ø 検定で比 較する. .¾ .¾ 一元配置分散分析により,実習前後の子 図½ 実習前後の子どもイメージ ¾ 項目の得点比較 ¿ どもイメージ総得点, 因子得点,親和感情得点と , それらの得点差( 実習後の得点の伸びを意味する), 実習後の自己のライフスキル感得点について ¿ 群比 較を行なう. .¾ .¿ 基準とする実習前の心理社会的発達と実習 後の自己のライフスキル感得点の相関関係を調べる. 結 果 ½ .目的 ½ ß実習前後の子どもイメージ ,心理社会 的発達,親和感情の変化について ½ .½ 子ど もイメージ ¾ 項目ごとに ,実習前後の ß ½ ,Ô ¼º¼½ )「理解力のあるß 理解力のない」 (Ø ¾ , Ô ¼º¼½ )「伝達力のあ るß伝達力のない」 (Ø ¼ , Ô ¼º¼½ )「 良いß悪 い」 (Ø ¿ ½ , Ô ¼º¼½ )「かわいらし いßにくた ¿ , Ô ¼º¼½ )「 頼もし いß頼りな らし い」 (Ø い」 ( Ø ¿ ½ , Ô ¼º¼½ ) 「たくましいß弱々しい」 ( Ø ¿ ¿ ,Ô ¼º¼½ )など ½ 項目が,有意に高くなっ ていた(図 ½ ).また,子どもイメージ ¾ 項目の総得 点を算出し ,実習前後で Ø 検定をすると ,実習後の 方が有意に高かった(図 ¾ ). (Ø ¾ ,Ô ¼º¼½ ) 平均得点を算出し 比較すると , 「 落ち着いた 落ち 着きのない」 ( Ø 図¾ 実習前後の子どもイメージ総得点, ¿ 因子得点, 親和感情得点の比較 ½ .¾ 子ど もイメージ ¿ 因子得点を ,実習前後で 比較すると ,子ど もの性格に関するイメージ因子 ÁÁ ¿¼ 岡 田 恵 子 Ø ¾¾ , Ô ¼º¼½ ),対子ど も感情イメージ因子 ÁÁÁ( Ø ¿ , Ô ¼º¼½ )において実習前後に有意 な差が見られた(図 ¾ ).因子 ÁÁÁ は ,もともと平均 得点が高く, ¾ 点台を推移したが ,因子 ÁÁ はマイナ ( スからプラスへの変容となった . ½ .¿ 心 理 社 会 的 発 達 に つ い て 実 習 前 後 で 比 Ø ¿ ¿ , Ô ¼º¼½ ),自主 Ø ¾ ¿¿ , Ô ¼º¼ ),親密性( Ø ¿ ½ , Ô ¼º¼½ ),生殖性( Ø , Ô ¼º¼½ )におい て実習前よりも有意に低くなっていた( 図 ¿ ). 較すると ,総得点( 性( イメージおよび親和感情の実習前後の比較を行うと, 高群,中群では子ど もイメージ総得点と子ど もの性 ÁÁ ,対子ど も感情イメージ ÁÁÁ において ,低群では子ど もイメージ総得点 と子ど もの活動的イメージ因子 Á ,子ど もの性格に 関するイメージ因子 ÁÁ において実習前後で有意な得 点の変化が見られた( 表 ½ ). ¾ .¾ 一元配置分散分析により ¿ 群比較を行うと , 格に関するイメージ因子 因子 実習前の子ど もイメージ総得点,子どもの活動的イ Á メージ因子 ,親和感情,実習後の子ど もイメージ 総得点,自己のライフスキル感,および実習前後の Á ¾ ). 子ど もの活動的イメージ因子 の得点差において 群で有意な差がみられた(表 ¿ ¾ .¿ 心理社会的発達と実習後の自己のライフスキ ル感との相関関係を調べると , Ö ¼ ¿ , Ô ¼º¼½ でかなり相関関係がみられた . 考 察 ½ .目的 ½ ß実習前後の子どもイメージ ,心理社会 的発達,親和感情の変化について 入学後の保育教育や保育所実習後,医療保育科学 ¾ 生の子ど もイメージ総得点が有意に上がり, 中 ½ 項目 項目に有意差がみられたということは ,学生の 子ど もに対するイメージがよりプ ラスの肯定的な 方向へ変容していたということで ,望ましいことで 図¿ 実習前後の心理社会的発達得点の比較 ½ . 子どもに対する親和感情について実習前後で 比較すると ,実習前より実習後の方が高かった( 図 ¾ ).( Ø ¾ ¾ , Ô ¼º¼ ) ¾ .目的 ¾ ß心理社会的発達と,子どもイメージ ,親 和感情,自己のライフスキル感との関連について ¾ .½ 心理社会的発達の ¿ 群別に,Ø 検定で子ども 表½ ある. 医療保育科学生のもつ子どもイメージの構造では, 子どもの性格に関するイメージ因子 感情イメージ因子 ½ ÁÁ と,対子ども ÁÁÁ の得点が ,実習後に有意に高 くなっていた . 年間の教育や実習で子ど もと関わ ることにより,今まで把握しにくかった子ど もの性 格面がより客観的に理解され ,子ど もには実はまじ 心理社会的発達の ¿ 群別子どもイメージ総得点, ¿ 因子得点,親和感情得点の実習前後の比較 保育所実習前後の子どもイメージ ,心理社会的発達の変化と関連性 表¾ ¿½ 実習前後の子どもイメージ総得点, ¿ 因子得点,親和感情得点等の心理社会的発達の ¿ 群による比較 めさや落ち着き,理解力,頼もしい面があるのだと ば ,初めて出会う子ど もたちや実習先の指導スタッ いう肯定的認識が ,有意に高まったと考えられる. フの中で ,初めて社会に触れ ,さまざ まな戸惑いや 子ど もの性格面に対する肯定的認識が深まるとと 不安,ストレス,緊張を乗り越え ,困難,課題に対 もに , 「かわいらし い ,好きな ,良い」という子ど 処しながら,保育を実践的に学ぶさまざまの実習は , もに対する感情イメージ因子 医療保育科学生の発達課題の達成,能力形成に関与 ÁÁÁ も有意に肯定的に なっていた.また , 「子ど もと話したい,遊びたい, すると思われる.しかし ,心理社会的発達の総得点 触れたい」という親和感情も高まっていた. は有意に減少した .その中でも医療保育科学生の自 「子どもイメージが学生の行動に影響するため,子 ど もに肯定的なイメージをもつことは重要」½ µ と言 主性,親密性,生殖性は実習後に有意に減少した . われるが ,いろいろな不安や戸惑い,ストレスの多 で決断をとろうとする感覚 µ である .初めての実 い実習を経て ,医療保育科学生がこのようにより肯 習で ,実習指導者のもとで初めての保育実践に取り 定的なイメージをもつに至ったことは望ましいこと 組む医療保育科学生にとっては ,戸惑いのほうが多 自主性とは物事に対して積極的に取り組み,自分 である.実習後に ,子ど もや障害者に対するイメー く,自分が思うように積極的に取り組むことはでき ジ得点が上がり,実習の有効性が確認されたという なかったのではないだろうか .それで自主性はより 研究 ½ ¾µ と同様に ,本研究でも保育教育や保育実習 低くなったのではないかと思われる.また ,親密性 の有効性が実証されたと言えよう. とは相手の個別性を尊重した上でお互いに信頼し協 次に ,実習前後の心理社会的発達の変化について 考察する. て Ö ×ÓÒ は ,人間のライフサイクルとし つの段階を設定し ,各段階に心理社会的発達課 力し合いながら ,相互の欲求を満足させ合うという 相互性の発達感覚をもつこと µ である.生殖性とは 自分の子ど もをもつというだけでなく,他人や社会 題があると考えた.各段階の心理社会的発達課題は, に尽力して価値観や伝統を伝え ,福祉,教育などの それぞれの新し い段階に到達し た個人に ストレ ス 向上に役立ちたいという感覚をもつこと µ である . と緊張の心理的危機をもたらし ,人はそれに対処す いずれも他者との相互関係を基盤にするという点で るために ,自分のもっている内的・外的な資源を総 同様であり,保育士には求められる側面である.し 動員する.人間が形成されるとは ,こうした苦渋に かし前述したように初めての学外実習で ,不安や戸 満ちた努力を必要とする ½¿µ . 惑いの中での , 日間という短期間の中では ,関わ Ö ×ÓÒ の理論に従え ½¼ ¿¾ 岡 田 恵 子 る子ど もたちについて理解するのが精一杯で ,さら 実習を経て著しく好転し ,子どもの活発な実態が認 に相手を充分尊重しつつ,積極的に関わり合い,役 識できたものと思われる. 立とうとするところまでは達せなかったのではない だろうか . ¿ 群別に , Ø 検定で実習 ¿ ジ総得点と子どもの性格に関するイメージ因子 ÁÁ は しかし心理社会的発達の 前後の比較を行なった結果, 群とも子ど もイメー 注目したいのは ,乳幼児期の信頼性から,自律性, 自主性,勤勉性,同一性という医療保育科学生の年 有意に上がり,高群,中群では対子ども感情イメー 齢段階までの発達課題のうち,自主性以外は実習前 ジ因子 後で有意な差がなかったことである.実習中でも自 情イメージ因子 ÁÁÁ も上がっていたが ,低群は ,対子ど も感 ÁÁÁ は実習前後で差がなかった . 分に対する自信の感覚は極端にはたじろがず ,自分 このことから低群は ,子ど もの活動面や性格に対 をコントロールしたり,目標に向かって努力し ,自 する認識は深まったが ,子ど もを「かわいらし い, 己の有能性を確認しようとする感覚や ,これから先 好きな ,良い」と感ずる好感情の有意なアップには もこの自分でやっていけるという感覚 µ が ,実習前 結びつかなかったことが分かる. とあまり違いがなかったことは ,不安や戸惑い,精 心理社会的発達とライフスキル感の関連が強かっ 神的危機が多い中でも相互的な対処行動がきちんと たことから,ライフスキル感の低迷しがちな低群は , できていたことを示すのではないだろうか.佐方は 実習中,客観的な理解や観察はできても,自信を持っ 「心理的危機に対処する能力があるかないかが ,そ て子ど もと関わったり,子ど もに共感したり,うま の後の発達と成長に深くかかわってくる.すなわち く自分を表現したりすることができず ,子ど もに対 最初の人間的な信頼感をもてない子ど もはその後の する感情が好転しにくかったのではないだろうか . 発達課題の解決も困難になる」½¿µ と述べている.し 谷本らは「 イメージや認知の構造が行動のパターン たがって医療保育科学生の多くは ,乳幼児期の信頼 を規定するにしても,実際にその行動を起こさせる 性から同一性までの発達課題がある程度すでに確立で エネルギーになるのは情動である」½ µ と ,情動の重 きていたため,自分なりの対処ができたと考えられる. 要性を述べている.また「教員は学生が理解や観察 また ,実習前後の学生の心理社会的発達得点はか にとど まらず直接,積極的に子ど もに働きかけるこ なり相関関係が高く,実習という出来事によって得 とを促し ,学生が子ど もに働きかけることによって 点は下がったものの,ストレスや困難を伴う実習を 得られる子ど もの反応を,学生自身が気付けるよう 通しても,同じような傾向で推移することが明らか 配慮することが必要」½ µ とも述べている.このこと となった . から ,本研究でも,自己のライフスキルを低くとら では ,こうした心理社会的発達と子ど もイメージ え ,自己開発のスキルが未発達でありがちな心理社 はどのような関連があり,心理社会的発達の高い学 会的発達の低群の医療保育科学生には特に ,子ど も 生と低い学生は ,子ど もイメージ ,親和感情をはじ との関わりを積極的に促し ,その過程で ,学生が子 めとしてどのような傾向を示すのだろうか.次に考 ど もの反応をより肯定的にとらえ ,自信を持てるよ 察したい. うフォローしてゆく必要があると考える.医療保育 ¾ .目的 ¾ ß心理社会的発達と,子どもイメージ ,親 科学生が子どもと関わることの喜び・楽しさを感じ , 和感情および自己のライフスキル感との関連につ その中で子ど もへの好感情が高まっていくよう配慮 いて することが必要であろう. 一元配置分散分析により心理社会的発達の ¿ 群間 一方,先行研究 ¾µ でも指摘されているように,実 で比較をすると ,実習前は ,子ど もイメージ総得点 習という体験が学生のイメージをプラスに変容させ, と子ど もの活動的イメージ因子 ,親和感情で ¿群 おもに実習前に顕著に肯定的でないイメージほど 有 に有意差があったが ,保育所実習後には , 群間で Á 意に変容する可能性があるということが ,本研究の ¿ 子どもイメージ総得点とライフスキル感のみ差がみ 低群でも実証されたと考える.このことは教育や実 られるものの ,子ど もの活動的イメージ因子 の差 習の仕方によって肯定度の低い子ど もイメージも大 はみられなくなった .これは ,低群における因子 幅に肯定的に変わることを示していよう.子どもイ Á Á ¿ 群で有意差があっ の得点の伸びが ,高群,中群より有意に大きいこと メージ総得点は ,実習後もなお からも裏付けされる. た .すなわち心理社会的発達が高い群ほど ,子ど も 心理社会的発達の低群は ,実習前,子どものステ イメージ総得点も高いことから ,やはり医療保育科 レオタイプのイメージであるにもかかわらず ,子ど 学生の心理社会的発達と子ど もイメージは関連性が もは元気で陽気,活発,意欲的で積極的といったイ あると思われる. メージが他群より有意に低かったが ,教育や保育所 以上のことから ,医療保育科学生の心理社会的発 ¿¿ 保育所実習前後の子どもイメージ ,心理社会的発達の変化と関連性 達に応じた子ど ものとらえ方,子どもへのかかわり 今後に続く実習についても,医療保育科学生の子 方に対する適切な指導やアドバイスを行なうと共に, ど もイメージ ,心理社会的発達等の変化を調査し , 学生の心理社会的自我の発達そのものを育てるよう それらの関連を考察することにより,よりよい保育 な教育や実習指導を行うことが ,今後,医療保育科 教育,実習指導のあり方を模索し実施してゆきたい の医療保育教育や実習の効果をあげる上で非常に重 と考えている. 要であると考えられる. 文 献 ½ )遠藤芳子,後藤順子:小児看護学(幼稚園)実習の有効性の検討 実習前後の看護学生の子ど も観と実習のとらえ方 の変化から .山形保健医療研究, ,¿¿ß ¼ ,¾¼¼ . ¾ )奥山清子,西崎博子,本保恭子,八重樫牧子:障害児」と「教職」に対するイメージの変化に影響する障害児教育実習前 の知識と経験.ノートルダム清心女子大学紀要,½ ( ½ ), ß½ ,½ . ¿ )砂田正子,磨家敦子,中新美保子,田中七恵,山本玉起,難波千恵子,田村千代美,小野ツルコ,谷原政江:看護学生の 自我の発達の度合いと小児に対する親和度および小児看護実習の充実度との関連.看護教育,第¾ 回, ¿ß ,½ ¿. )中新美保子,谷原政江,長江宏美,大場広美,太田にわ,砂田正子,山口三重子,留田通子,福山礼子:看護学生の心理 社会的発達 看護大学生・看護専門生・非看護系学生の比較 .川崎医療福祉学会誌,½ ( ½ ),¾ ß¾ ¿ ,¾¼¼ . )谷原政江,砂田正子,中新美保子,山口三重子,田村千代美,長江宏美:学生の自我の発達と小児看護実習におけるス トレス反応との関連.看護教育,第¾ 回,½¼ ß½½½ ,½ . )田村千代美,谷原政江,砂田正子,中新美保子,田中七恵,山口三重子,柳修平:学生の自我の発達と小児看護実習にお けるストレスおよびその対処行動との関連.看護教育,第¾ 回, ß ,½ . )谷原政江,砂田正子,新美保子,山口三重子,田村千代美,長江宏美:学生の自我の発達と小児看護実習におけるスト レッサーおよび対処行動との関連 続報 .川崎医療短期大学紀要,½¼ ,¾ ß¿ ,¾¼¼¼ . )中新美保子,田中七恵,山本玉起,難波千恵子,田村千代美,谷原政江,砂田正子,磨家敦子,小野ツルコ:看護学生の 自我の発達の度合と実習充実度 小児に対するイメージ ,親和度との関連から 地区看護研究学会収録, ß ¿ ,½ .平成 年度日本看護協会中国四国 ¿. )Ê .Á .エヴァンズ,岡堂哲雄,中園正身訳:エリクソンは語る アイデンティティの心理学 京,½¾ ,½ .第½ 版,新曜社,東 ½. ½¼ ) .À .エリクソン ,岩瀬庸理訳:アイデンティティ 青年と危機.第 版,金沢文庫,東京,½¼¼ ,¿½½ ,½ ¿. ½½ )岡田恵子,中新美保子,谷原政江:医療保育科学生と看護科学生における入学時の子どもイメージの比較.川崎医療福 祉学会誌,½ ( ½ ),½ ß½ ¿ ,¾¼¼ . ½¾ )高橋紀美子,谷原政江,酒井恒美:看護科および保育科学生の抱く子どものイメージ 二・三の要因,特に自我構造 との関係 .岡山県立大学保健福祉学部紀要, ½( ½ ), ß ¾ ,½ ½¿ )佐方哲彦:自分の生き方を見つける,中西信男編,人間形成の心理学,第½½版,ナカニシヤ出版,京都,½ . ½ )宮原忍,竹井操,内山絢子,星山佳治,近藤洋子:少子社会における養育力と価値観に関する研究( ½ ) ÈËÁ(エリク ソン心理社会的段階目録検査)とライフスキル .日本子ど も家庭総合研究所紀要, ¼ ,½¾ ß½ ¾ ,¾¼¼¿ . ½ )谷本公重,猪下光,尾方美智子:看護学生の幼稚園・幼稚園実習前後における子どもへの認知とイメージの変化.香川 医科大学看護学雑誌, ¿( ¾ ), ß½ ,½ . ( 平成½ 年½¾月 日受理) ¿ 岡 田 恵 子 ËØÙ Ý Ó Ø Ê Ð Ú Ò Ó ÈÖ Ø Ð ÌÖ Ò Ò Ó Ø È×Ý Ó×Ó Ð Ú ÐÓÔÑ ÒØ Ó ÆÙÖ× Ò Ð Ö ËØÙ ÒØ× × ÓÒ ÓÑÔ Ö Ø Ú Ò ÐÝ× × Ó ËØÙ ÒØ× ÁÑ × Ó Ð Ö Ò ÓÖ Ò Ø Ö È Ö ÓÖÑ Ò ÌÖ Ò Ò Ø ÆÙÖ× ÖÝ Ë ÓÓÐ Ã ´ Ã Ý ÛÓÖ × ÓÖÖ ×ÔÓÒ Ò ØÓ Ã Ó Çà ÔØ º ¸ ¾¼¼ µ ÒÙÖ× ÖÝ × ÓÓÐ ÔÖ Ø ¸ Ð Ñ ¸ Ô×Ý Ó×Ó Ó ÇÃ Ô ÖØÑ ÒØ Ó ÆÙÖ× Ò Ð Ð Ú ÐÓÔÑ ÒØ Ö ¸Ã Û × ÓÐÐ Ó ÐÐ À ÐØ ÈÖÓ ×× ÓÒ× ÃÙÖ × ¸ ¼½¹¼½ Ó ¹Å Ð ´Ã Û × Å ¸Â Ô Ò º Û × ¹Ñº º Ô Ð Ï Ð Ö ÂÓÙÖÒ Ð ÎÓк½ ¸ ÆÓº¾¸ ¾¼¼ ¿ ß¿ µ
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