いろいろな石の道具

常設展解説シート No.9
暮らしをささえた道具たち
いろいろな石の道具
いろいろな石の道具
した。
じょうもん
縄文時代(今から約 13,000~2,400 年前)
や よ い
<縄文時代 万能ナイフ 石匙>
石鏃とならび、縄文時代を代表する石の道
や弥生時代(今から約 2,400~1,700 年前)
の遺跡の発掘調査をすると、石でつくられた
具の一つです。石匙は、使われた痕跡を観察
いろいろな道具が見つかります。
した結果、肉を切ったり木を削るなど様々な
いしさじ
こんせき
けず
縄文時代には、木の実がなり、小動物が暮
らくようこうようじゅりん
らす豊かな森「落葉広葉樹林」が東日本を中
心に広がります。このような環境のなかで、
と
縄文時代には、動物を獲ったり、木の実を加
工したりする様々な道具がつくられるよう
き の う
ばんのう
機能をもった万能ナイフとして使われてい
じょうたん
たことが分かりました。また、つまみが上端
ひも
につくり出されていることから、紐など巻き
けいたい
つけ、携帯していたと思われます。
になりました。
ここでは、縄文時代~弥生時代を通して、
数多くある石の道具の中で、各時代を代表す
るものを紹介します。
肉を切る様子
<縄文時代 狩りの道具 石鏃>
ししうち
石匙(福島市獅子内遺跡
<縄文時代 穴を掘る道具 打製石斧>
縄文時代を代表する石の道具と言えば、矢
せきぞく
の先端に付ける狩りの道具石鏃です。縄文時
粗く加工された大型の石の道具で、形は
たんざくがた
ばちがた
ふんどうがた
え
短冊形、撥形、分銅形と様々です。柄を付け
すき
てスコップや鋤のようにして使っていたと
考えられます。
<縄文時代 木を切る道具 磨製石斧>
みが
全面が磨かれた石の道具で、形は短冊形を
するど
したものが多く、刃は両方から鋭くつくりだ
住居跡から見つかった石鏃(本宮市高木遺跡)
土偶に描かれた狩
の様子。左側の人物
弓⇒
は手に弓を持って
います。
(本宮市高木遺跡)
しょうこ
代になり、弓矢による狩りが行なわれた証拠
となる道具です。形は三角形をしたものが多
く、遺跡から見つかったものの中には、石鏃
や が ら
せ っ ち ゃ くざ い
を矢柄に付ける時の接着剤として用いられ
たのか、アスファルトが付いたものもありま
打製石斧(上)
、磨製石斧(下)
(磐梯町・猪苗代町法正尻遺跡)
ばっさい
されています。伐採用の道具などとして使わ
れたものと考えられています。
い し ざ ら
す り い し
<縄文時代 調理道具 石皿、磨石>
縄文時代の遺跡からは、トチ、ドングリ、
しゅしょく
クリ、クルミなどが見つかることから、主食
は木の実と考えられています。
これらの木の実の多くは、図のように石皿
こなじょう
と磨石などを使って、粉状に加工され、食べ
られていたと思われます。
す。これに伴い、道具にも変化がみられ、弥
生時代には、農耕具や工具類といった道具が
多くなります。しかし、遺跡からは、石鏃や
石皿、磨石なども見つかり、引き続き狩猟・
採集が行なわれていたと考えられます。
また、弥生時代には、中国大陸や朝鮮半島
ま せ い せ っ き
たいりく
で使われていたものと同様の磨製石器(大陸
けい ま せ い せき ふ
系磨製石斧など)が見つかります。これらは、
お米づくりといっしょに日本にもたらされ
たものと考えられます。弥生時代の終わりご
ろになると、遺跡から石の道具がほとんど見
つからなくなってしまいます。このことは、
この頃に道具の素材が石から木や大陸から
磨石
新しく入ってきた鉄に変化していったもの
石皿
と考えられます。
<弥生時代 工具>
<縄文時代 道具の素材>
縄文時代のいろいろな石の道具には、数種
そ ざ い
類の石が使われています。石の道具の素材と
けつがん
して、よく使われるのは、頁岩とよばれる石
です。頁岩は、加工しやすく、石の道具を作
さいてき
るのには最適な石の一つです。
近年の調査研究では、良質の頁岩が山形県
も
が み が わ りゅう い き
弥生時代を代表する石の工具には、大陸型
ふ と が た はまぐり ば せ き ふ
磨製石斧の太型 蛤 刃石斧(刃先が蛤のよう
ぶ あつ
に分厚く、木を伐採するのに適したもの)と
へんぺいかた ば せき ふ
けず
扁平片刃石斧(木の皮をはいだり、表面を削
ったりするのに適したもの)があります。こ
の他、ノミ形石斧(細かい木の加工に適した
最上川 流 域で産出することが確認されてい
ます。県内の縄文時代の遺跡からは、山形産
もの)などが工具として見つかっています。
の頁岩を素材とした石の道具がたくさん見
農耕具は、
弥生時代を代表する石の道具、
石
<弥生時代 農耕具>
いし
ぼ う ちょう
つかります。
い な ほ
つ
いしぐわ
庖丁(稲穂を摘み取る道具)や石鍬(畑など
また、素材となる頁岩が、穴の中に大切に
たがや
を耕す道具)などがあります。
おさ
納められた状態で見つかることもあります。
石包丁
扁平片刃石斧
ノミ形石斧
弥生時代の石器
てんじんざわ
(南相馬市天神沢遺跡)
ノミ形石斧
ゆ み て はら
穴の中から見つかった頁岩(福島市弓手原A 遺跡)
弥生時代の石の道具
や よ い
石鍬
<引用参考文献>
月舘町社会教育委員会 2002 『西原遺跡発掘調査報告』
しゅりょうさいしゅう
弥生時代になると、狩猟採集を中心とした
のうこう
太型蛤刃石斧
生活から、農耕を中心とした生活に変わりま
福島県立博物館 1993 『東北からの弥生文化』
福島県立博物館 1997 『縄文たんけん』