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粘土を採掘した遺跡
あし
くち
東北大学埋蔵文化財調査室
ノ口遺跡の調査成果から
東北大学電子光理学研究センターがある東
北大学富沢地区。実は、縄文時代、古墳時代、
東北大学
電子光理学研究センター
奈良・平安時代の遺跡の上にあることをご存
埋没林
じでしたか。電子光理学研究センターは、芦
ノ口遺跡という遺跡の中にあります。
そのため、新しく建物を建てる時、水道・
舎
富沢宿
縄文時代の
粘土採掘坑
縄文・古墳時代の
粘土採掘坑
実験棟
管理棟
ガス管などを改修する時、地表面を掘る工事
をする前には、必ず発掘調査をして、遺跡の
研究棟
状態を記録保存しています。
古い沢跡
芦ノ口遺跡は、これまで大小 11 カ所の発
掘調査をしてきました。その結果、他の遺跡
芦ノ口遺跡発掘調査地点
とは少し異なる、芦ノ口遺跡の特徴がわかっ
てきました。
芦ノ口遺跡の土(堆積層)は、良質な粘土層があり、縄文時代・古墳時代に土器を作るため
ねんどさいくつこう
など、粘土を採掘した穴(粘土採掘坑)がいくつも発見されています。
ここ
三神峯公園
ここ
調
査
区
芦ノ口遺跡出土の縄文土器
芦ノ口遺跡第 10 地点(北西から)
かめがおかしきどき
2013 年に、電子光理学研究センター研究棟の増築の
縄文時代晩期の“亀ヶ岡式土器”と呼ばれる土器です。彫刻のような
ために行われた発掘調査地点から、南東側にある三神
細やかに連続する文様がみられます。植物のシダの葉のような模様であ
峯公園を臨んだところ。
ることから“羊歯状文 ”と呼ばれる文様で、この時期の土器に特徴的な
しだじょうもん ものです。
地盤が粘土質で地下水を帯水しやすいため
か、芦ノ口遺跡の土器は、溶けたように脆い
ものが多いです。そのため、遺物を取り上げ
る時には、発泡ウレタンでパックして壊れな
いようにし、土ごと掘り出して、調査室に持
湿ったクッキーのような
脆い状態で出土します。下
の土を台座状に残し、土ご
と取り上げます。
土器をキムタオルなどで養
生し、発泡ウレタンが直接付
かないようにします。急激に
乾燥しないように、時々、霧
吹きで湿らせます。
養生した土器の上にウレタ
ンをいれ、台座にした土部分
を切り離します。この塊ごと
調査室に持って行き、逆側か
ら台座の土を丁寧に取り除き
ます。
ち帰ってから室内で丁寧に土をはずして、土
器が破損しないような方法を使うことがあり
ます。手間と時間は掛かるが、土器の文様な
どの貴重な情報が損なわれないための大事な
作業です。
ねんどさいくつこう
粘土の採
粘土の採掘法の模式図
採掘
掘法の模式図
図
縄文時代の粘土採掘坑
上からみたところ
横からみたところ
良質な粘土層
良質な粘
粘土層
粘
土層
目的の粘土層まで
作業できる程度の穴を掘る
上からみたところ
上
からみたと
ところ
横からみたところ
良
良質な
良質な粘土層
な粘土層
取りたい粘土層だけ
横に掘り進む
上からみたところ
上
上か
か みたところ
からみ
オーバーハング
して掘るので
崩れやすい
掘った穴
った穴
縄文時代晩期の人たちが、土器を作るための粘土を掘った穴
はおおよ
です。不整形な穴が不規則に並んでいます。穴の深さはおおよ
とがわか
そ同じで、良質な粘土の層だけを狙って掘っていることがわか
ります。
良質な
粘土層
前の穴を利用して他の穴を掘り、
作業効率よく粘土を獲得する
粘土層の下からは、埋没林
粘土層の下からは
は、埋没
埋没
没林
粘土層の断面図
横からみたところ
粘土層より下層
粘土層より下層で発見された埋没林
層
層で発見
見され
見
され
さ
れた埋没林
れ
が発見されました。根株や倒
根株や倒
や倒
れた幹などの樹木が、一面に
れた幹などの樹木が
面に
生々しい状態で保存されてい
砂が混ざる粘土層
良質な粘土層
古墳人が
狙っていた
粘土層
縄文人が
狙っていた
粘土層
ました。トウヒ属とカラマツ
属の混在する亜寒帯生針葉樹
林であることが判明していま
す。
遺物などの人間活動の痕跡
は発見されていません。炭素
安定同位体比分析の結果、最
終氷期の前半かそれ以前に形
成されたものと考えられます。
沢状の落ち込み
ねんどさいくつこう
古墳時代の粘土採掘坑
西
古墳時代の粘土採掘坑は、縄
文時代の粘土採掘坑よりも上の
層にある粘土を採集しており、
下層にある良質な粘土層までは
到達していません。縄文土器に
はじき
適した粘土と、土師器 ( 古墳時
代の土器)に適した粘土の質が
違う可能性、あるいは土器作り
以外の目的で粘土を取った可能
性など、いくつかの理由が考え
られます。
周辺の土と色の違うところ
が、古墳時代の人が掘った穴
どこう
の跡(土坑という)です。周
辺の自然の土と色が違うのは、
この穴が埋まった時に、色や
特徴の違う土が入るからです。
発掘調査では、土の色や混ざ
り具合、特徴などを注意深く
観察しています。
東
西から東に向かって沢幅が広がっています。沢の中か
ら、平安時代の土師器が出土しており、古い時代に埋ま
っていることがわかります。昔の地形をとらえることが
できました。
東北大学埋蔵文化財調査室ウェブサイトはこちら→
http://web.tohoku.ac.jp/maibun/
各調査地点の詳しい成果は、
『東北大学埋蔵文化財調
査年報』、『東北大学埋蔵文化財調査室調査報告』にま
とめております。東北大学附属図書館で閲覧できます。
東北大学機関リポジトリからダウンロードできます。
http://ir.library.tohoku.ac.jp/re/
全国遺跡報告総覧からダウンロードもできます。
http://sitereports.nabunken.go.jp/ja