バラの香りに新しい高抗酸化香気成分発見 - カネボウ化粧品

2009 年 3 月 27 日
バラの香りに新しい高抗酸化香気成分発見
株式会社カネボウ化粧品
カネボウ化粧品・製品開発研究所は、曽田香料㈱
との共同研究により、化粧品に用いられるバラ精油
(rose damascena)の一つに、新規バラ香気成分「ロ
ゼルシノール 26」を発見しました。この成分は、バ
ラの香りの後残りに影響を与える「ロングラスティ
ングなスパイシー香気」を持ち、さらに非常に高い
抗酸化効果を併せ持つ優れた香気成分であることが
確認できました。
今後、この新規バラ香気成分を効果的に用いるこ
とにより、新たな商品化などへの可能性を見出して
いきます。
研究の背景
バラは花の女王であり、古くから時代や国、性別を越えて人々を魅了し、愛され続けて
きました。バラの栽培の歴史は、人類の歴史とほぼ重ね合わせることができるほどです。
人類がこのように長い間バラの香りを利用してきた背景には、単に、バラの嗜好性に関わ
る役目のみに期待していただけではなく、その利用価値が身体的・精神的病の治療、さら
には、より美しくなるための美容手段にも及んでいたことがあげられます。
カネボウ化粧品でも、バラの花の香りについて、単に嗜好性の観点からだけではなく、
多面的に深く掘り下げた研究をしてきました。これまでにも、バラ香気の中でも最も軽い
揮発性香気成分である「トップローズアロマ」を発見し、その「香り共鳴効果」や「リラ
ックス効果」を見出したほか、白バラ「ローズアルバ」の香気成分「ブランシロームMS」
にメラニン生成抑制機構を発見するなど、数々の成果をあげています。
バラの新規香気成分「ロゼルシノール 26」の高い抗酸化効果
一般に、バラの花の香りには抗酸化効果があ
1.
抗酸化試験(DPPH)
るといわれています。しかし、その効果につい
て香気成分を同定する研究はほとんどなされ
ていませんでした。
そこで、カネボウ化粧品では、まずバラ精油
0
ビタミン E
-
-
ロゼルシノール 26
(rose damascena)について、フリーラジカル
消去能を測定する抗酸化試験(DPPH)により、その抗酸化力を測定しました。フリーラジ
カルは体内で他の物質を酸化させることから、肌の老化や種々の疾患発症の因子として考
えられているものです。測定の結果、バラ精油にある程度の抗酸化効果があることを確認
しました。そこで、抗酸化成分を同定するためにバラ精油をいくつかの分画部分に分け、
その抗酸化力を測定しながら分析を続けました。
その結果、酸・フェノール部分の中の特定の分画部分に高い抗酸化力があることを見出
しました。もともと、酸・フェノール部分には、オイゲノール(Eugenol)をはじめ多くの
香気成分が同定されています。今回、詳細に解析することにより、これまでに報告されて
いる成分も含め 100 種以上の香気成分が含まれていることがわかりました。そして、同定
されたこれらの香気成分には、この既知のオイゲノール(Eugenol)の他にも、幾つかの高
い抗酸化力を有する成分が含まれていることがわかり、中でも非常に高い抗酸化力を持つ
新規香気成分を同定することができました。それが、
「ロゼルシノール 26」です。この成分
は、これまでに高い抗酸化効果が知られているビタミン E と比べても劣らない非常に高い
抗酸化力を持っています。細胞内の過酸化脂質生成抑制効果を確認する試験でも、有害な
細胞内 LPO(過酸化脂質)生成が効果的に抑制されていることがわかり、この結果からも
フリーラジカル消去能が示唆されました。
健康を語る上では好ましくないフリーラジカルの産生を抑制することができる天然精油
の探索、そして高い抗酸化効果を有する香気成分の有効活用は、化粧品の香りとしての応
用のみならず、様々な分野での活用が期待されるものです。
この成果は、第 129 年会日本薬学会(京都、2009/03/26∼28)で発表します。