抗酸化能測定結果 - 株式会社T&G

株式会社T&G
委託分析報告書
- 精肉(豚)の抗酸化能測定 -
2014 年 3 月 21 日報告
東京理科大学
矢島 博文
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抗酸化能測定
2014/3/21
1. 概要
腐植前駆物質水溶液「リードアップ」およびフルボ酸培養液を用いた精肉の抗酸化能を、DPPH を用い
た吸光光度法で測定した。その結果、③ 肩ロースが 7.81Trolox mg/100mg で最も高かった。
2. 原理
1,2,3)
,3)
フリーラジカル 1,2,3
活性酸素とは、酸素分子(3O2)が電気的刺激や紫外線によって、より反応性の高い化合物へと変化したも
のの総称である。一般には、一重項酸素(1O2)、スーパーオキシドアニオンラジカル(O2・―)、過酸化水素
(H2O2)、ヒドロキシラジカル(HO・)が挙げられる。フリーラジカルとは不対電子を持つ原子・分子であり、
スーパーオキシドアニオンラジカル(O2・―)、ヒドロキシラジカル(HO・)等の他に、脂質ラジカル(L・)、脂
質ペルオキシルラジカル(LOO・)等が挙げられる。
私たち人間は、これらの活性酸素・フリーラジカルを利用して食物をエネルギーに変えたり、体内に侵
入した細菌を攻撃して身を守ってくれる。しかし、余剰な活性酸素・フリーラジカルはタンパク変性、脂
質過酸化、核酸分解、酵素失活を引き起こして細胞にダメージを与え、数々の病気を引き起こす。
これを防ぐために、活性酸素・フリーラジカルによる水素原子の引き抜きを止めたり、連鎖反応を止め
る抗酸化機能がある。それは、生体内にあるスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)やカタラーゼ、グルタ
チオン、ペルオキシターゼ等の酵素である。又、食物など外部からビタミン C や E、ポリフェノール、β
カロテンなどの抗酸化物質を摂取することで抗酸化能を得ることが出来る。
食物の抗酸化能測定法として一般的である DPPH(1,1-diphenyl-2-picrylhydrazyl:Fig.1 参照) を用い
た吸光光度法 3)により、ラジカル消去能を評価した。これは、フリーラジカルである DPPH の窒素上のラ
ジカルが、水素原子が付くことによって消去され、520nm の吸光度が減少する事を利用した測定法であ
る。
O2 N
O2 N
+
H
N N
O2N
O2 N
Fig.1 DPPH のラジカル消去
2
NO2
+
RRRR
NO2
HHHH
RRRR
N N
3.方法
3.方法
3-1 試料
精肉(豚:小田畜産)
・① スペアリブ
・② (無記名)
・③ 肩ロース
・④ バラ
3-2. 試薬
・DPPH (1,1-Diphenyl-2-picrylhydrazyl Free Radical (contains 10-20% Benzene)):東京化成
MW 394.32
・Trolox (6-Hydroxy-2,5,7,8-tetramethylchroman-2-carboxylic Acid):東京化成
MW 250.29
・MES (2-morpholinoethanesulphnonic acid):ナカライテスク
・エタノール 試薬特級:関東化学
3-3.装置
・吸収スペクトル測定
V-570 UV/Vis/NIR Spectrophotometer (JASCO)
3-4.測定方法
食品機能研究法 4)を基に 1cm セルで測定が出来るようにスケールを調整し、最終濃度がサンプル 1mg に
対して DPPH 4nmol になるようにした(Table.1)。又、標準物質である Trolox は、DPPH 35nmol に対し
て 35 nmol になるようにした。
Table.1 サンプルと試薬の最終濃度
sample
DPPH
Trolox
食品機能研究法
7.5mg/300μL
30 nmol
30 nmol
実際の実験系
8.75mg/700μL
35 nmol
35 nmol
3-4-1.検量線
Trolox 2.5mg を EtOH で 200mL にメスアップし、試料溶液とする。
3-4-2.サンプル溶液の調製
可食部 5g を秤取り、80%エタノール水溶液 20mL を加えてミキサーにかけ(精肉はミキサーのみ)、遠心
分離(3600rpm,15min)をした後、上澄みを 0.20 µm のメンブレンフィルターでろ過してサンプル抽出原液
とした。これを 80%エタノール水溶液で 20 倍に希釈してサンプル抽出液とした。この抽出液を、0μL、
100μL、200μL、300μL……、700μL、添加し、( 700μL-サンプル抽出液量)の 80%エタノールを添加
し、サンプル抽出液と 80%エタノールの合計が 700μL となるように調製する。
3-4-3.緩衝溶液の調製
超純水に溶かした MES (2-morpholinoethanesulphnonic acid)を NaOHaq で pH6.0 にし、最終濃度が
0.2M となるように調製した。
3
3-4-4.抗酸化能測定方法
① DPPH を 2mg/50mL となるようにエタノールでメスアップし、15 分間超音波バスにかけた後、2 倍
希釈して 50µM DPPH 溶液を調製した。
② ①と 20%エタノール水溶液、緩衝液(3-3-2.参照)を 1:1:1 となるように混ぜ合わせ、調製開始から
30 分後に、この溶液 2100μL と濃度を振ったサンプル抽出液(3-3-1.参照)700μL を濃度の薄いものから
2分置きに加えた。遮光して 20 分静置後、520nm の吸光度を紫外可視吸光光度計で 1cm セルを用いて
測定した。この時、抽出液の割合の小さいものから順に測定をする。
③ 吸光値の減少を濃度既知の Trolox の吸光度に対する相対値として算出するために、Trolox で同様の
実験を行い、検量線を作成した。
3-4-5.計算方法
上記の方法により、各濃度の 520nm の吸光度をプロットし、近似直線を引いた。直線性が得られる範囲
の任意の点を、Trolox によって作成した検量線(直近の二つの平均)に代入し Trolox 等量を算出した。これ
をサンプル 100g 当たりの Trolox 量(Trolox mg/100mg)に換算した。
Me
Me
O
COOH
HO
Me
Fig.2 Trolox
Fig.3 Trolox によるラジカル消去能の検量線
4
4. 結果
4-1.精肉(豚:小田畜産)
精肉の抗酸化能 (Trolox mg/100mg) を測定した結果、① スペアリブは 3.04Trolox mg/100mg、② (無
記名)は 6.33Trolox mg/100mg、③ 肩ロースは 7.81Trolox mg/100mg、④ バラは 7.46 Trolox mg / 100g
となった(Fig.5)。 又、これら 4 種の部位の平均値は 6.16 Trolox mg / 100g となった。しかし、赤身と脂身
の割合によって値が変わるので、参考程度である。
Fig.5 精肉(豚)の抗酸化能
5. 総括
結果として、③ 肩ロースが最も抗酸化能が高かった。しかし、精肉のサンプルは脂身の比率によって値
が異なるので、赤身と脂身をそれぞれ別に測定するなどの工夫が必要であると考える。又、精肉はブランク
が無いのでブランク測定もした方が望ましい。
6.参考文献
.参考文献
1) 『活性酸素・フリーラジカルのすべて―健康から環境汚染まで』 丸善 (2009.10)
2) 『フリーラジカル 生命・環境から先端技術にわたる役割』米田出版(1999.10)
3) Journal of Agroalimentary Processes and Technologies 2011, 17(2), 163-168
4) 『食品機能研究法』光淋(2005.10)
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