本文表示 - 寒地土木研究所

報 告
第3回日中地盤工学シンポジウムに参加して
佐藤 厚子*
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2007年11月4日∼7日の4日間、中国で開催された
日中地盤工学シンポジウム
(The 3rd Sino-Japan
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Geotechnical Symposium)に寒地地盤チームから福島
宏文主任研究員、橋本聖研究員、および筆者が参加し
ました。
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今回のシンポジウムは、重慶から三峡ダムまでの約
600㎞を長江
(揚子江)
を下りながら移動する船上
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クトリア7号)で開催され、世界一の三峡ダムを見学
するというテクニカルツアーも組み込まれていまし
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た。 出 発 地 重 慶 は 4 つ あ る 直 轄 市 の 1 つ で 面 積 は
82,300㎢、人口3,144万人、主な産業は重工業です。
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日中地盤工学シンポジウムは、アジア会議(ソウル
1999年)
、第15回国際地盤工学会議(イスタンブール
2001年)
、Underground Construction に関する地域会
議(上海2001年)などを通じて、日中双方の地盤工学研
究者・技術者の国際交流・技術交流が重要であるとの
認識から、2003年に第1回目が開催されました。今回
は1回目の北京、2回目の上海に続くものです。
参加者には、ネームプレート、論文集の他に参加記
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念品として本年開催される北京オリンピックを意識し
たマスコット人形が渡されました。
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第3回日中地盤工学シンポジウムは、87の投稿論文
があり、53件の口頭発表があり、約130人が参加しま
した。1日目は、このシンポジウム開催の中心となっ
た4人の先生からの挨拶によるオープニングセレモ
ニーがありました。その後2日間にわたり、日中両国
より各3名ずつのキーノートレクチャーがありまし
た。数値シミュレーションの問題点、実験施設と技術
水準、補強土壁の地震時安定性、廃棄物による埋め立
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昼食、夕食、常に質問の恐怖にさらされていて、緊張
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が解けることはありませんでした。実際、発表のすぐ
あとの休憩時間には、座長から筆者が担当している寒
て地の問題、土壌浄化に関する話題、斜面の摩擦特性
冷気候を利用した土質改良について「おもしろい研究
に関する問題などが提供されました。キーノートレク
をしている」というコメントをいただきましたし、次
チャーの後、3つのセッションに分かれて一般論文が
の日の昼食時には、参加者から「興味がある」という
発表されました。第1セッションで、福島宏文主任研
ことで、研究の内容について質問攻めにあいました。
究員が Performance-Based Design and in-Situ Testing
軟弱な土材料の改良を中心とする中国や北海道での取
for Spread Foundations(直接基礎の性能規定設計法
り組みについて意見交換する機会を得、今後の研究に
お よ び 現 場 試 験 方 法 )を、 橋 本 聖 研 究 員 が Multi-
有意義な方向性を見いだすことができたと思います。
Anchored Reinforced Soil Wall Method Using Crushed
Soil as a Fill Material(固化破砕土を利用した多数アン
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カー式補強土工法の事例)を、第3セッションで筆者
が Improvement of High-Moisture Soil by Repeated
最近、地盤工学会や土木学会などでも話題となって
Freezing and Thawing(凍結による高含水比土の改
いる廃棄物による埋め立て地盤に関する問題点などの
良)
を報告しました。
指摘が議論されました。埋め立てからの時間が経過す
今回のシンポジウムは船上であったため発表会場が
ることによる地盤沈下、地盤の強度変化、有害物質の
1つに限定されました。3つのセッションに分かれて
溶出など、通常の地盤材料ではあまり問題とならない
いました。
ことが、廃棄物による埋め立てで発生しており、その
セッション1では、地震に関する論文が多く報告さ
対策が報告されていました。廃棄物による埋め立てで
れました。地震により破壊した箇所の不撹乱試料の強
は、気候、地形、埋め立て場所、埋め立て方法、維持
度測定例が報告され、地震中に進行性破壊の発生が予
管理方法など、様々な条件が地盤材料としての特性に
想できました。また、地震に起因する現象の解析や地
影響します。今後北海道でも発生しうる問題点でもあ
震時の安全性評価に関する報告がありました。
り、国際的な学会での情報交換が大切と感じました。
セッション2では、土材料の基本的な性質に関する
このほかにも、様々な施工例、自然斜面の安定性、
論文が多く報告されました。粘土や砂の構成式、地盤
列車通行による振動、柱状節理のある岩の支持力、地
の変形・破壊解析手法について模型実験や比較検証の
下天然ガス施設の基礎構造物設置に関するシミュレー
事例が報告されました。
ション、複合地盤の数値解析、粘土の異方性モデルな
セッション3では、改良した材料の性質に関する論
どに関する報告があり、寒地地盤チームや他の研究
文がありました。セメント改良を始めとして産業廃棄
チームの研究に関連する報告がなされました。これら
物処理土の利用技術や土のうの性質を利用した技術な
の情報の収集により、今後の研究の発展に寄与できる
どが報告されていました。
と考えています。
このシンポジウムは論文投稿者が全員口頭発表する
また、中国に分布する黄土は北海道に分布する風化
というコンセプトで実施されており、休憩時間、朝食、
火山灰と地盤工学的特性が非常に類似しています。筆
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者は、過去、地盤工学会北海道支部で実施した「火山
灰の分類とその利用法に関する委員会」で、火山灰を
盛土材として使用する場合の問題点に関しての検討を
行っていました。このとき、北海道大学に勤務してい
た中国の楊
(ヤン)
先生と、黄土と北海道の火山灰につ
いて特徴やこれに対応した利用法を討論したことがあ
りました。その後先生が中国に戻られてからも、幾度
かメールを通じて情報交換をしてきたところですが、
今回のシンポジウムで再会でき、引き続き今後も中国
と日本、特に北海道の地盤をはじめとする特徴ある地
盤に関して情報交換を続けるとともに、新工法の適用
などについて情報交換することを確認しました。
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シンポジウムのクロージングには、小三峡地方の岩
が風化により落下し危険な状態にあることが話題提供
されました。北海道にも柱状節理の美しい風光明媚な
ところがたくさんあり、
その風景が思い出されました。
最後に、次回の第4回日中地盤工学シンポジウムが
2年後の11月に沖縄で開催されることが発表され、盛
会に終わりました。
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シンポジウムの中で聞いたり見たりした話を紹介し
ます。
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①物価 タクシー 30㎞→1300円、大卒初任給1か月
→40000円
②マンション 水回りと柱、壁のみであとは入居者が
建設
③携帯電話 どんな山奥でもアンテナ塔が建っている
④電気 どんな山奥でも電線あり
離の長短に関わらず1個80円
⑥高速道路 追い越すときはクラクション必須
⑦買い物 値札が無く値切って買う
⑧交通 外国人に優しい交通機関はあまりない
(タク
シーが多く、空港で客引きしているタクシーは危険)
⑤個人荷物の船への積み込み 荷物の大小、軽重、距
佐藤 厚子*
寒地土木研究所 寒地基礎技術研究グループ
寒地地盤チーム
主任研究員
技術士(建設・総合)
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