河川堤防の電気探査と地盤特性 Electric Survey of River Levee and

河川堤防の電気探査と地盤特性
三村衛(京都大学),岩崎好規*(地盤研 GRI),中川康一(大阪市大),
城森明(ネオサイエンス),吉村貢(ソイル&ロック),藤原照幸(地盤研 GRI)
Electric Survey of River Levee and Geotechnical Characteristics
Mamoru Mimura(Kyoto Univ.), Yoshinori Iwasaki*(GRI),Koichi Nakagawa(Osaka City Univ.)
Akira Jomori(Neo Science), Mitsugu Yoshimura(Soil & Rock), Teruyuki Fujiwara (GRI)
Abstract: Electric survey was conducted as well as geotechnical in-situ test along levees
at two rivers of Kizu- River and Kinokawa River. At Kizu River that locates inland zone,
electric resistivity of ground was confirmed to depend type of soils. At Kinokawa River
near the river mouth near sea, the resistivity of ground becomes to depend upon the depth
and affected by water conductivity. It was confirmed that electric resistivity of soil
depends upon soil type and water conductivity. Intermediate soils under unsaturated
condition show such high resistivity values as for sand and gravel. It was confirmed the
electric survey needs additional in-situ geotechnical test to identify soil classification to
relate the resistivity values.
度の違いにより,地盤の比抵抗が大きく変化すること
1. 序
が最も大きな要因ではないかと推定される。
近年の温暖化に伴って来襲する集中豪雨は,
一方,地盤の特性の調査の手法として,統合型貫入試
堤防設計に想定していた河川水位をはるかに超えるよ
験が実用化されており,電気探査結果の連続量として
うになり,河川堤防の崩壊が多発するようになってき
の表示に対応して,各種の地盤特性が連続的な深度変
た。堤防を構成する地盤は均一ではなく,地盤構成を
化として与えられるから,電気比抵抗値の連続的変化
調査するために,簡易に実施できる電気探査などを用
と対応した相関性を検討することができる。
いた堤防表面探査が提案されている 1) が,得られる
以上のように,堤体の縦断方向の構造とともに堤体横
電気比抵抗の物理量と求められるべき地盤特質との間
断断面構造を得るための手法を確立するために
の関係が必ずしもユニークな関係にないために,実用
次のような目標を設定した。
化にはさらなる努力を要する状況にある。
これは,同じ土質であっても,土中水の比抵抗や飽和
第 1 図木津川調査位置図
①電気探査の結果から得られる電気比抵抗値分布図を
土質断面として表現する。
②堤体横断断面構造を地表面から能率よく探査する手
法を確立する。
③堤体横断断面構造の特徴から断面タイプごとに堤体
を縦断方向に分割して,類型グループの抽出を行う手
法を確立する。
2. 現位置調査
電気探査は,オームマッパーと称される牽引型を用
い,統合型の貫入試験は,コーン貫入とともに地盤の
密度や含水量検層も可能なソイルアンドロック社製を
用いた。
実施した堤防は上流域として木津川,下流域として紀
ノ川河口付近を選定した。
第 2 図 木津川川裏下小段における電気探査結果
木津川右岸4.0km 裏側下小段
qt(MPa)
GL-m 0 15 30
0
γd γ
Ic
Sr(%)
t
w.c.(%) void ratio:e
2
1 2 3 4
0 1 2 3x10 0 2 4x10 1.0 1.5 2.0
0 50 100
0 50 100
0 1 2
0
0
0
0
0
0
0
fs(kPa)
2
u(kPa)
1
1
1
1
1
1
1
1
2
2
2
2
2
2
2
2
3
3
3
3
3
3
3
3
4
4
4
4
4
4
4
4
5
5
5
5
γt 5
5
5
5
6
6
6
6
6
6
6
6
7
7
7
7
WL=6.0m
7
7
7
7
8
8
8
8
8
8
8
8
9
9
9
9
9
9
9
9
10
10
10
10
10
10
10
10
11
11
11
静水圧 11
11
11
11
11
12
12
12
12
12
12
12
12
13
13
13
13
13
13
13
13
14
14
14
14
14
14
14
14
15
15
15
15
15
15
15
15
γd
Wp(kPa)
砂質土
中間土
砂質土
粘性土
1 2 3 4
Ic
Kizugawa-Right Bank3.8km
第 3 図 統合型貫入試験 at 3.8km Kizu
第 4 図 統合型貫入試験結果 at 4.0km, Kizu
第 5 図 電気比抵抗,電気検層と土性柱状図 3.8km
第 6 図 電気比抵抗,電気検層と土性柱状図 4.0km
電気探査は,土中水の電気比抵抗の違いをみるため
に,河川の上流域と海水の影響があると思われる下流
側の 2 地域で実施した。
河川の上流域としては,木津川距離標 3.6kP~4.2kP 間,
河川の下流域としては紀ノ川河口付近 0.8kP~1.2kP 間
を選定し,牽引型電気探査とともに,統合型貫入試験
を実施した。
3.調査結果
3.1 木津川
木津川における電気探査は,距離標の 3.6kP4.2kP の
右岸堤防で,断面位置として,堤防表のり尻部, 表
側天端付近,裏側天端付近,裏小段(上部)
,裏小段(下
部)
,および堤内地堤防沿い農道の 6 断面位置を通る 6
測線を実施した。第 1 図に木津川調査平面図および断
面図で各測線に A,B,C,- -,F として示した。
ここでは,このうち,右岸 3.8kP および 4.0kP 地点にお
ける統合型試験による結果と電気探査による電気比抵
抗値の結果について述べる。第 2 図に電気探査結果を
示したが,比抵抗値の低い方が粘性土で,高い方に砂
質土が相当する。矢印で統合型コーンの試験位置を示
した。第 3 図と第 4 図に統合型コーンの 3.8kP 地点お
よび 4.0kP 地点の結果を示した。
第 7 図 紀ノ川河口付近
調査位置図
第 8 図紀ノ川電気探査結果
紀ノ川河口付近電気探査
さらに土を砂質土,中間土,および粘性土に分類して
これらの結果から,Ic を計算 2)して,第 5 図と第 6 図
の左端に Ic の深度変化を示した。土性柱状図として示
している。第 5 図と第 6 図においては,第 3 図と第 4
図の 2 地点における比抵抗値の深度分布を抽出し,電
気検層による比抵抗とともに示した。
これらの 2 地点においては,地表付近は砂質土が卓越
するが,
粘性土が3.8kPと4.0kP地点でそれぞれ,
GL-5m
と GL-7m で出現する。電気探査の結果をみると,
粘性土
400-1000Ωm
砂質土
1000-5000Ωm
に対応している。電気検層の結果も示しているが,ほ
ぼ対応していることが分かる。
3.2 紀ノ川
紀ノ川(第 7 図)においては,地盤は砂質土系が卓
越していたが,電気探査の結果は,砂質土も粘性土も
1000m 以下であった。第 8 図に電気比抵抗値の深度
変化を示す。第 9 図に 1.0km 地点付近の電気探査,第
10 図に電気比抵抗および電気検層値と土性柱状図を示
した。砂質土であるが 1000Ωm 以下を示している。
土中水の比抵抗を調べてみると,木津川においては,
70Ωm 紀ノ川においては 0.2Ωm と求められ,140 倍の
違いがあることが判明した。
第 9 図紀ノ川 1.0km
電気探査断面
第 10 図 紀ノ川
貫入試験による土性柱状図電気比抵抗値
第 11 図 紀ノ川における電気比抵抗値と深度
第 12 図 木津川における
土性別の電気比抵抗値-深度
4.結論
第 11 図にみられるように,地表面付近は雨水浸透など
により,若干高い比抵抗を示すが,地下水位以下にな
ると,非常に低比抵抗値となって,粘性土も砂質土も
区別は困難となる。第 12 図に木津川における土性と電
気比抵抗値の関係をしめした。砂質土と粘性土は,ほ
ぼ,R=1000Ωm を境界として判別できるが,中間土は
砂質土と同じ範囲に属している。中間土の高い比抵抗
値は飽和度や締固め度などとの関係があるとみられる。
電気探査の地盤工学的評価には,統合型コーン試験な
どの土性確認試験を同時に実施する必要がある。本研
究は平成 25 年度河川技術評価委員会で採択された委
託研究「電気探査および統合型貫入試験による堤防断
面土質モデルの構築に関する技術開
発」の成果である。
文
献
1)土木研究所,物理探査学会編著(2013):河川堤防の
統合物理探査-安全性評価への適用の手引き-,愛智
出版
2) Robertson, P.K.: Soil classification using the cone
penetration test, Canadian Geotechnical Journal, Vol.27,
No.1, pp.151~158, 1990.