非火山灰農地土壌での耕盤検知型採土器の実証 Applicability of soil sampler automatically detecting plow pan for non-volcanic ash arable soils 佐野修司 1・内山知二 1・松本清治 2 1(地独)大阪府立環境農林水産総合研究所・2 京都府農林水産技術センター 要旨(Abstract) 貫入式土壌硬度計の硬度検知部とライナー採土器の採土管を組み合わせた耕盤検知型の採土器 を開発した。この機器は作土深を適切に測定できた。また、採取した土壌の理化学性は試掘法で 採取した土壌の値と高い一致性を示し、本耕盤検知型採土器が、農地の土壌診断に利用できるこ とを確認した。 テーマ:土壌物理研究の最前線 Trend in Soil Physics キーワード:耕盤、採土器、作土深、土壌診断、非火山灰土壌 Key words: depth of plow layer, non-volcanic ash soil, plow pan, soil sampler, soil test 1.はじめに 適切な施肥や土壌改良には作土部分の土壌 診断が必要であるが、現状では、作土深を考慮 せず採取した土壌を測定している場合が多い。 にプローブを付け、ほ場の表層から垂直に押し 込み検知した。検知する硬度は、山中式硬度計 の 21 に相当する硬度の範囲とした。 試作 1 の実証は剪定枝堆肥や木炭の施用量 特に、耕盤の存在する水田転換畑や造成土ほ場 が異なる低地造成土施設ほ場(18 地点)で、 では、うね立てなどの影響で作土部分の変動が 試作 2 は灰色低地土水田転換畑と褐色森林土 大きく、作土深を考慮した採土が望まれる。そ 造成露地畑(13 地点)で行った。開発した採 こで、ライナー採土器の採土管に硬度検知器を 土器により測定した作土深と採取した土壌の 組み合わせることにより、耕盤を検知して作土 一般理化学性を、試掘法での測定値と比較した。 部分を正確に採取できる採土器を開発した(内 山・佐野 2015) 。本報告では、開発した採土 器をほ場に適用し、試堀して作土深を測定して から採土する方法(以下、試掘法)と比較する ことで、その実用性を検証した。 2.材料および方法 圧力検知する土壌硬度計とライナー採土器 を組み合わせた採土器を試作した。採土部分が 1 本(以下、試作 1)のものに加えて、一回の 図 1 試作した採土器(左:試作 1、右:試作 採土量を増やす目的で採土部分が 2 本(以下、 2) 試作 2)のものも作成した(図 1) 。採土部分 はステンレス製の円筒を加工し、土壌採取後に 3.結果および考察 取り外して試料を取り出せるようにした。土壌 図 2 に、試掘法と開発した採土器により測定 硬度は、バネを内蔵した差し込み型のセンサー した作土深の関係を示す。両者の級内相関係数 は有意で、0.87(試作 1) 、0.97(試作 2)と高 た土壌のトルオーグリン酸含量(左:試作 1、 く、開発した採土器で作土深を正確に測定でき 右:試作 2) ると判断された。 図 3、4、5 に、試掘法と開発した採土器に より採取した土壌の、pH、トルオーグリン酸 含量、全炭素含量での関係を示す。両者の級内 相関係数は、いずれも有意で、試作 2 の pH や 全炭素含量でやや低かったものの、それ以外で は高く(0.93~0.99)、両者の方法がほぼ同質 の土壌を採取していたと判断できた。 以上より、本課題で開発した耕盤検知型採土 図 5 試掘法と開発した採土器により採取し た土壌の全炭素含量(左:試作 1、右:試作 2) 器は作土部分を正確に採取可能で、非火山灰農 地の土壌診断に利用できると考えられた。 4.謝辞 本研究は、農林水産省「農林水産業の革新的 技術緊急展開事業」(うち産学の英知を結集し た革新的な技術体系の確立)により行われた。 参考文献 内山知二・佐野修司(2015):非火山灰土地帯で有効な耕盤 検知型採土器の発明.日本ペドロジー学会講演要旨集、10. 図 2 試掘法と開発した採土器により測定し た作土深(左:試作 1、右:試作 2) 図 3 試掘法と開発した採土器により採取し た土壌の pH(左:試作 1、右:試作 2) 図 4 試掘法と開発した採土器により採取し
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