繊維混合による乾湿繰り返し抵抗の向上効果 香川高等専門学校 学生会員 ○松岡 賢樹 香川高等専門学校 正会員 小竹 望 香川高等専門学校 学生会員 宮脇 史恭 1.はじめに 一軸圧縮試験後の供試体を用いた。損傷の少ない範囲 固化処理土は降雨や地下水位の変化による乾湿繰 で3箇所を選定し毎分3mmで12mmまで貫入し、10mm り返し作用を受けると材料劣化を生じやすい。本研究 貫入時の抵抗値から貫入勾配Np(N/mm)を求めた。 では、繊維補強が固化処理土の乾湿繰り返し抵抗を向 3.実験結果と考察 上させる効果を検討した。粘性土及び砂質土を母材と 3.1 乾湿繰り返しによる供試体の状態変化 する固化処理土及び繊維補強固化処理土の供試体に乾 乾湿サイクルによる供試体の状態変化は、表-2 に示 湿繰り返し作用を与え、健全度を評価し、一軸圧縮試 す健全度評価指標 1)を用いて評価した。図-1 に乾湿サ 験を行った。また、針貫入試験を実施して乾湿繰り返 イクルの経過に伴う健全度評価結果を示す。 しの影響を受けた時の針貫入力と一軸圧縮強さの関係 ①粘性土では、固化処理土は 1 サイクル後に供試体 を評価した。 全体が崩壊した。一方、繊維補強固化処理(v=0.5,1.0%) 2.実験方法 は 3 サイクルで供試体表面の剥離が局部的に表れたが、 本実験で使用した土質材料は、①カオリン粘土(粘 全体の崩壊には至らなかった。 性土)、②硅砂8号80%とカオリン20%の混合土(砂質 ②砂質土では、固化処理土(v=0%)は乾湿サイクルの 土)である。土質材料の物性値を表-1に示す。固化処 2 サイクル後に欠落が発生したが、以後のサイクルで 理土は、固化材として普通ポルトラントセメントを使 は欠落は生じなかった。また、の繊維補強固化処理土 3 用し、 C=50, 100, 150kg/m を混合した。繊維補強固化 (v=0.5,1.0%)は 15 サイクル後も供試体表面にクラック 処理土は、繊維材料として径26μm,長さ20mmのPVA や欠落などの劣化は確認されなかった。 繊維を使用した1)。繊維添加量は固化処理土に体積比 でv=0.5%, 1.0%を混合する配合とした。 土質材料によらず固化材量を増加すると供試体表 面の劣化進行を抑制する傾向を示した。 供試体は,JGS0821-2000「安定処理土の締固めをしな 表-2 健全度評価指標 1) い供試体作製方法」に準じて径50mm×高さ100mmの円 柱供試体を作製した。作製後20℃の水中で養生し、28 A B C 日後に脱型して乾湿サイクルを開始した。 D E F 乾湿繰り返しにおける1サイクルは、1)60℃の乾燥 炉内で72時間の乾燥課程、2)室内にて1時間冷却、3) 20℃の水槽に24時間浸水させる湿潤過程とした。なお、 1)乾燥過程において供試体はほぼ絶乾状態となった。 本文では9~15サイクルまでの結果を報告する。1サイ クルごとに一軸圧縮試(JIS A 1216)を実施した。石膏 クラック状況 欠落状況 外見上、ほとんど変化なし 微細クラック、局部クラック発生 表面剥離が局部的に発生 明瞭なクラックが一部に発生 供試体の一部が僅かに欠落 明瞭なクラックが全体に発生 供試体がより大きく欠落 供試体の一部または全体が崩落 (~20%程度) 供試体全体的に崩壊、崩落、供試体としての形は存在 G 供試体全体が崩壊し、片々は塊状 H 供試体全体が崩壊し、片々は細粒化~泥状化 ラ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 ン ク 乾湿乾湿 乾 湿乾湿乾湿乾湿乾湿乾湿乾湿 乾 湿 乾 湿 乾 湿 乾 湿 乾 湿 乾 湿 A を用いて上部端面にキャッピングを行い、載荷速度毎 分1%で軸ひずみεa=15%まで載荷した。針貫入試験は、 z B C 表-1 土質材料の物性値 D E 土質材料 粒土(%) 砂 シルト 粘土 ρ PL LL (%) 調整 含水比 F (g/cm ) (%) (%) G ① カオリン100% 0 31.4 68.6 2.73 - 64 128 H 8号硅砂20% カオリン80% 24 13.7 2.61 NP - 35 ② 62 3 Soil C(kg/m3 ) v(%) Soil C(kg/m3 ) v(%) ① ① ① ① ① ② ② ② ② ② 100 0 100 50 100 150 0.5 1.0 1.0 1.0 100 0 100 50 100 150 0.5 1.0 図-1 乾湿サイクルの経過に伴う健全度評価 1.0 1.0 一軸圧縮強さqu(kN/m2) 1000 粘性土 Soil C(kg/m3) 100 ① 50 ① 100 ① 150 ① 800 600 v(%) 0.5 1.0 1.0 1.0 400 200 0 0cyc 10cyc 15cyc 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 サイクル 一軸圧縮強さqu(kN/m2) 写真-1 劣化状況(粘性土,v=0.5%,C=100kg/m3) 3500 Soil C(kg/m3) 100 ② 100 ② 50 ② 100 ② 150 ② 砂質土 3000 2500 2000 v(%) 0 0.5 1.0 1.0 1.0 1500 1000 500 0 0cyc(ε=15%) 10cyc(ε=15%) 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 サイクル 15cyc(ε=15%) 写真-2 破壊状況(粘性土,v=0.5%,C=100kg/m3) 3.2 一軸圧縮試験結果 図-2 乾湿サイクルと一軸圧縮強さ qu の関係 全ケース 回帰式Y=0.812 X + 2.473 相関係数R=0.914 粘性土 回帰式Y=0.772 X + 2.460 相関係数R=0.729 砂質土 回帰式Y=0.8124X+2.478 相関係数R=0.562 10000 写真 1~2 に供試体の乾湿繰り返し前後の劣化状況お 初期と比べて同様の破壊形状であった。 図-2 に①粘性土と②砂質土を用いたケースの一軸圧 縮強さ qu の乾湿繰り返しによる影響を示す。 図-2 に示す通り、乾湿繰り返しの増加に伴って一軸 圧縮強さ qu の変動が見られたが、繊維補強により一軸 圧縮強さ qu を保持する傾向を示した。この傾向は、繊 一軸圧縮強さqu(kN/m2) よび破壊状況を示す。15 サイクル経過後の破壊形状は 1000 Soil C(kg/m3) v(%) 0.5 ① 100 1.0 50 ① 1.0 ① 100 1.0 ① 150 0.5 ② 100 50 1.0 ② 1.0 ② 100 1.0 ② 150 100 維添加量と固化材量を増加すると明瞭に現れた。変形 係数 E50 は、①粘性土のケースでは、9~15 サイクル経 10 0.1 過後に初期の 10%~40%に低下した。②砂質土のケー スでは、初期の 50%~80%程に低下し、①粘性土と比 べると剛性を保持しやすい傾向を示した。乾湿繰り返 しにおいても繊維補強による靱性向上効果が発揮され たと言える。 3.3 針貫入試験結果 図-3 に一軸圧縮強さ qu と針貫入勾配 Np の関係を示 す。粘性土では、固化材量、繊維量によらず比較的高 い相関を示す傾向にある。砂質土では、固化材量によ 1 10 100 針貫入勾配Np(N/mm) 図-3 一軸圧縮強さ qu と針貫入勾配 Np の関係 4.総括 本研究では、繊維補強により乾湿繰り返しによる材 料劣化を抑制し、強度変形特性と靱性向上効果が保持 され抵抗力が向上することが確認された。また、針貫 入試験により繊維補強固化処理土あるいは劣化した固 化処理土の強度を推定できることが確認された。 って貫入勾配が大きい値を示し集中分布する傾向が見 られる。 参考文献 1) 森雅人・高橋弘・熊倉宏治:繊維質固化処理土の乾湿繰り 返し試験による耐久性に関する実験的研究, 資源と素材 (Shigen-to-sozai) Vol.121, p37-43, 2005.
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