飽和圧縮ベントナイトの力学特性と遮水性能 - 名城大学理工学部

飽和圧縮ベントナイトの力学特性と遮水性能
平手寿大 1) 寺本優子 1) 小高猛司 2)
Mechanical Characteristic and Sealing Performance of Saturated Compacted Bentonite
Toshio HIRATE1),Yuko TERAMOTO2),Takeshi KODAKA3)
Abstract
The aim of the present paper is to study the mechanical characteristics and the sealing performance of the saturated
compacted bentonite, which is planned for use as the buffer material in the geological disposal project. A series of the
constant volume direct shear tests was performed to observe the mechanical behavior of the saturated compacted bentonite.
At the same time, developed shear bands were observed during the direct shearing using the PIV image analysis. Also,
inside of the specimens were observed by using a μ-focus X-ray CT scanner. From these observations, it seems that there
was no change of density at the shear bend. In addition, as a results of the permeability test using the sheared specimen, it
can be confirmed the maintenance of sealing performance.
ん断帯を含む供試体を用いて,透水試験を行い,遮水性
1.
はじめに
能の維持について検討した結果を示す.
2.
わが国の高レベル放射性廃棄物の地層処分において
飽和供試体作製方法及び試験方法
は,ガラス固化された放射性廃棄物をオーバーパックと
呼ばれる金属製容器に封入し,
その周りを緩衝材で覆い,
粉末状のベントナイト(クニミネ工業(株)製 Na 型
地下 300m 以深の岩盤に埋設することを基本方針として
ベントナイト・クニゲル V1)を 70%,三河珪砂 6 号を
いる.使用される緩衝材に必要な条件として,オーバー
30%の質量比で配合した試料を,圧縮成型後に所定の乾
パックを恒久的に安全に支持するとともに,地盤からの
燥密度になるように計量し,Photo 1 に示す直径 80mm,
長期的クリープ変形や地震などの外力から守ることに加
高さ 20mm の高剛性圧縮リングに投入し,油圧ジャッキ
えて,地下水環境内から隔離することが重要である.こ
を用いて圧縮成型する.Photo 2 に示すように圧縮リング
れらを満たす材料として高圧で圧縮したベントナイトが
を飽和供試体作製用モールドに設置した後,Photo 3 に示
有力である.圧縮ベントナイトは,不飽和状態で締固め
す 4 連載過フレームに鉛直軸を固定して設置し,両面注
られ製造された後,埋設されるため,地下処分場の閉鎖
水によって試料を飽和させる.この際,ロードセルによ
後,地下水の浸潤により緩衝材は飽和状態になる.飽和
って膨潤圧を計測することにより飽和化の目安とする.
状態になると,ベントナイト自身による膨潤圧の増加,
今回の実験では,圧縮ベントナイトを約 3 ヶ月飽和させ
オーバーパックの腐食膨張,周辺岩盤からのクリープ変
た.飽和後,モールドを解体して試料を取り出し,50mm
形の長期的な作用などと不飽和状態に比べると周辺環境
角のガイドカッターを用いて50×50mm の正方形断面で,
が変化する.
厚さ 20mm の供試体に成形する.高拘束圧一面せん断試
本研究では,急激な地殻変動や長期的なクリープ破壊
験機に供試体を設置し,水平変位速度 0.4mm/min,上下
によって周辺岩盤にせん断帯が発生し,緩衝材にも破壊
せん断箱間隔 1mm で,水平変位 6mm になるまで定体積
が伝播してせん断帯が形成された場合,緩衝材の基本性
条件で一面せん断試験を開始した.なお,飽和供試体の
能が維持されるか検討を行っている.本論文では,飽和
含水比から飽和度を計算したところ,飽和モールド内で
圧縮ベントナイト供試体を用いて一面せん断試験を実施
拘束されていた時点では飽和度が 100%に達していたこ
し,破壊時の力学特性を調べるとともに,せん断中に発
とが確認できたが,モールドから取り出した直後に
生したせん断帯についてPIV 画像解析やマイクロフォー
1.9mm 程度膨張したことにより,一面せん断試験時には
カス X 線 CT を用いて観察して結果を示す.さらに,せ
飽和度は 91%程度まで低下していたと考えられる.
1)大学院理工学研究科修士課程建設システム工学専攻 2) 建設システム工学科
1) Master Course of Civil Engineering 2) Department of Civil Engineering
163
飽和圧縮ベントナイトの力学特性と遮水性能
名城大学理工学部研究報告 No.50 2010
生させた間隙水圧がベントナイトの強度特性に影響を及
ぼすか検討するために,初期垂直荷重を 1.3MPa まで負
High rigidity ring
荷させた試験も行った.以上の一連の試験ケースを正規
圧密供試体とした.Table 1 の供試体名には乾燥密度を示
す数字の後に N と示している.
一方,
乾燥密度 1.55Mg/m3
の供試体については,初期垂直荷重を与えずにせん断す
る試験も実施した.これを過圧密供試体として,乾燥密
度を表す数字の後に O と示している.
Table 1 Test conditions
Photo 1 Saturation mold for the compacted bentonite
Specimens
Dry
consolidation/Over
density
consolidation
(Mg/m3)
1.55N-1
1.55N-2
1.60N
vertical
stress
(MPa)
0.6
1.55
Normal consolidation
1.70N
1.55O
Initial
Normal
Over consolidation
1.3
1.60
0.6
1.70
1.2
1.55
0
0.25
1.55N-1
1.60N
Shear stress[MPa]
0.20
Photo 2 Complete view of the saturation mold
Load cell
1.55N-2
1.70N
0.15
0.10
0.05
0.00
0.0
1.0
2.0
3.0
4.0
5.0
6.0
Lateral displacement[mm]
(a) Shear stress – lateral displacement relations
1.55N-1
1.55N-2
1.60N
1.7N0
0.30
17°
Shear stress[MPa]
0.25
Photo 3 Loading frame
3.
3.1
飽和供試体による一面せん断試験
試験条件
Table 1 に一面せん断試験の試験条件を示す.今回の試
験では,乾燥密度 1.55 および 1.60Mg/m3 の供試体には,
初期垂直荷重を 0.6MPa,乾燥密度 1.70Mg/m3 の供試体に
14°
0.20
0.15
0.10
0.05
0.00
0.0
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
1.2
1.4
1.6
Vertical stress[MPa]
(b) Stress paths
Fig. 1 Shear test results of normally consolidated specimens
は,初期垂直荷重を 1.2MPa を与えて試験を行った.こ
れらの垂直荷重は,飽和供試体作成時の膨潤時に観察さ
れた最終的な膨潤圧を同じ値とした.また,乾燥密度
3
1.55Mg/m の供試体については,供試体内に強制的に発
3.2
正規圧密供試体の試験結果
Fig. 1 に(a)せん断応力~変位関係,(b)応力経路を示す.
Fig. 1(a)より,いずれの乾燥密度でも水平変位 1mm 前後
164
飽和圧縮ベントナイトの力学特性と遮水性能
名城大学理工学部研究報告 No.50 2010
0.20
で最大せん断応力に達して,その後緩やかな軟化をして
1.55N-1
1.55O
ている.Fig. 1(b)より,どの乾燥密度でも同じ様な形状の
挙動を呈しており,せん断直後から垂直応力が減少して
いき,ピーク強度に達してからひずみ軟化をして最終状
態になっている.1.55N-1,1.60N および 1.70N の最大せ
んだ応力からせん断抵抗角を求めるとそれぞれΦ’=17°
および 14°である.これは過去に行った不飽和状態の圧
Shear stress[MPa]
いる.また,乾燥密度が大きいほど軟化幅が大きくなっ
0.15
0.10
0.05
0.00
0.0
縮ベントナイトを用いて一面せん断試験を行って求めた
1)
応力が低下したと考えられる.
3.3
過圧密供試体の試験結果
Fig. 2 に(a)せん断応力~変位関係,(b)応力経路を示す.
比較のために正規圧密供試体の試験結果も示している.
過圧密供試体は,初期垂直応力 0MPa としてせん断する
Shear stress[MPa]
れは供試体内に膨潤圧以上の間隙水圧が発生してせん断
4.0
5.0
6.0
0.20
Φ’=16.6°2)と比べると非常に近い値となっている.膨潤
になっているが,せん断応力が 0MPa まで減少した.こ
3.0
(a) Shear stress – lateral displacement relations
るが,JAEA が公開している三軸試験による内部摩擦角
見ると最大せん断応力をピーク強度は 1.55N-1 と同じ値
2.0
Lateral displacement[mm]
せん断抵抗角Φ’=33° と比べると小さい値を示してい
圧以上の初期垂直荷重を与えてから試験した 1.55N-2 を
1.0
1.55N-1
1.55O
0.15
0.10
0.05
0.00
0.0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
Vertical stress[MPa]
(b) Stress paths
Fig. 2 Shear test results of over-consolidated specimen
予定であったが,せん断準備中に供試体が膨張したこと
により垂直応力も若干増加し,最終的に初期垂直応力
0.05MPa で試験を開始した.
Fig. 2(a)より,正規圧密供試体,過圧密供試体両方とも
水平変位 1mm 辺りで最大せん断応力に達し,その後ひ
ずみ軟化している.最終状態は同じせん断応力となって
いる.Fig. 2(b)より,過圧密供試体は正のダイレンタンシ
ーの発現により,せん断応力の増加とともに垂直応力も
増加している.また,最終状態は正規圧密供試体と過圧
密供試体では非常に近い値を示している.
このことから,
Photo 4 Position for oservation
乾燥密度が同じであれば,初期の垂直応力が水浸・膨張
した観測窓から変位速度を計測し続ける解析手法である
時の膨潤圧以下であれば,発揮する最大せん断応力及び
ために,計測されるひずみ量は,実際の固体の変形から
最終応力状態は同一であるとわかる.
得られる本来のひずみ量には対応していない.
Fig.3(a)より,水平変位 1mm 辺りでは,下部領域の移
4.
画像解析結果
動速度はあまり大きくないが,水平変位 2mm を過ぎて
からほぼ同一で下部領域が移動しているのがわかる.ま
画像解析によるせん断帯の観察を,
3.2 で示した正規圧
た,水平変位 1mm でせん断帯が見られるが,せん断終
密供試体 1.60N について実施した.観察箇所は Photo 4
了の水平変位 6mm を見ても大きな崩壊の確認はできな
に示すせん断箱右側の赤い枠で囲った部分である.せん
かった.Fig. 3(b)より,せん断初期から観察領域全体にせ
断箱のエッジ部分から伝播してくるせん断帯を観察する
ん断ひずみの分布が見られる.
これは,
飽和供試体では,
のは,この近辺が最適だと過去の試験から判断した.
マイクロスコープで観察するためのアクリルガラス面が
Fig. 3(a)に速度ベクトルを示す.ベクトルの速度は色表
湿るために,デジタル画像が不明瞭になるのが一因とな
示に最大 12μm/s を赤色,最小 0μm/s を青色で評価した.
っている.しかしながら,せん断が進行するにつれて供
また,Fig.3(b)にせん断ひずみ分布図を示す.なお,固定
試体の中央部には明瞭にせん断ひずみが集中しているの
165
飽和圧縮ベントナイトの力学特性と遮水性能
名城大学理工学部研究報告 No.50 2010
水平変位 1mm
水平変位 2mm
水平変位 4mm
水平変位 5mm
水平変位 3mm
水平変位 6mm
(a) Displacement velocity distribution
水平変位 1mm
水平変位 2mm
水平変位 3mm
水平変位 4mm
水平変位 5mm
水平変位 6mm
(b) Shear strain distribution
Fig.3 Observation of shear band
がわかる.
には密度変化は見られない.よって,大変位のせん断帯
が発生しても密度変化は生じないと考えられる.
5.
X 線 CT によるせん断帯の観察
次に,正規圧密供試体 1.55N-1 について Photo 5 のよう
に供試体の中心部から円柱供試体を取り出し,観察領域
マイクロフォーカス X 線 CT 装置を用いてせん断破壊
を小さくすることにより解像度を高くして X 線 CT 撮影
時の供試体内部の状況について観察を行った.装置は,
を行った.結果を Fig. 5 に示す.上下に入っている黒い
京都大学工学研究科が所蔵する KYOTO-GEOμXCT(東
2 本線は,せん断方向がわかるようにカッターナイフで
芝製 TOSCANER-32250μHDK)を用いた.一面せん断試
付けた溝である.また,供試体に混合している珪砂 6 号
験を行った後,供試体をせん断後の状態を保つように専
の最大粒径は約 0.4mm であり,画像内に分布した白い斑
用の治具を用いてせん断箱から慎重に取り出し,供試体
点のものが珪砂にあたる.これだけ解像度を高くしても
を真空パックして京都大学に搬入した.
せん断変形に伴う密度変化は見られない.よって,処分
Fig. 4 に X 線 CT 画像を示す.図中の数字は 3.1 で示し
場が再冠水した後,緩衝材が飽和状態であれば,環境の
た正規圧密供試体を示している.どの供試体も多少の密
変化によってせん断帯が発生しても遮水機能は維持され
度のばらつきがあるが,せん断帯が存在するはずの部分
ると推察される.
166
飽和圧縮ベントナイトの力学特性と遮水性能
名城大学理工学部研究報告 No.50 2010
(a) 1.55N-1
(c) 1.70N
(b) 1.60N
Fig. 4 X-ray CT images
Cylindrical specimen
Shear
zone
Photo 5 Cylindrical specimen for high resolution X-ray CT
6.
6.1
band
Fig. 5 X-ray CT image of saturated cylindrical specimen
超低透水性材料用透水試験
透水試験装置
X 線 CT による観察では飽和供試体はせん断変形に伴
う密度変化が認められなかったが,実際にせん断帯が発
Double pipe burette
生しても遮水性能が維持されているか確認するため,透
水試験を行い,遮水性能について検討した.
本研究では,極めて透水性の低い圧縮ベントナイトの
透水係数を計測するために,超低透水性材料用の透水試
験装置を作製した.Photo 6 に透水試験装置の全景を示す.
試験装置は,供試体用小型モールドとその中を透過する
Small mold
水量を計測する二重管ビュレットで構成している.二重
管ビュレットは,最大 1MPa まで加圧できるアクリル円
筒製の圧力室に微量の透水量を計測できる内径約1.8mm
Photo 6 Permeability test apparatus
のガラス細管を入れたものである.4 本あるビュレット
管についてキャリブレーションを行って断面積を計測し
た.その結果,水面 1cm の変動で 0.00265m3 の水量が移
Upper circle
Porous metal
Lower circle
動すると確認した.ベントナイト供試体は,Photo 7 に示
す直径 1.5mm,厚さ 0.3mm の供試体リングに設置する.
直径は一面せん断試験の供試体の大きさに依存しており,
厚さは現実的に計測可能な時間スケールを勘案して決定
Ring
Cutter
した.小型モールドは,供試体の上下にポーラスメタル
が付いており,底盤から入った水が供試体を透過して上
盤にある穴から流出するようになっている.
Photo 7 Very small mold
ん断面を含んだ供試体と含まない供試体を取り出す.
6.2
透水試験用供試体の作製方法
Photo 8 に示すようにマイターボックスと固定器具を取
供試体は,一面せん断試験を行った後の飽和供試体を
り付けてカッターナイフで縦断面に 3 分割にする.マイ
使用する.せん断後の供試体から Fig. 6 に示すようにせ
ターボックスから取り出した供試体を Photo 9 に示す円
167
飽和圧縮ベントナイトの力学特性と遮水性能
形にガイドカッターを押し当て,くり抜くことによって
名城大学理工学部研究報告 No.50 2010
測するには,大気圧下でのガラス細管内の水の自由落下だ
せん断面を含んだ円柱供試体を作製する.ガイドカッタ
けでは透過量に限度がある.そこで,Fig. 7 のように圧力
ーに入れた円柱供試体をエポキシ樹脂の止水剤を湿布し
室内に空気圧を作用させて,あらかじめ大きな水頭を加え
た供試体リングに挿入して,止水剤が固まるまで 1 日静
ておく.ここでは,あらかじめ負荷する圧力を p0 とする.
置する.その後,供試体の両面を形成する.成形後の供
この場合, H 0
試体を Photo 10 に示す.供試体とリングをモールドの底
p0 / J w の水頭が負荷されることになる.
よって,透水係数 k は
盤に設置し,上盤を載せてキャップボルトで固定するこ
k
とによって変位を固定する.組み立てたモールドを透水
試験装置に繋ぎ,試験を開始する.
h H0
aL
ln 1
A(t 2 t1 ) h2 H 0
(1)
0.3cm
Air pressure
p0
Fig. 6 Position of cut out a specimen
Section area a
Section area A
H 0 ˜ Jw
dh
h1 H 0
h2 H 0
L
Fig. 7 Schematic permeability tester
Photo 8 Cutting a specimen with special instrument
6.4
再構成粘土による透水試験装置の検証
飽和供試体による透水試験に先立ち,あらかじめ透水
Shear band
係数が判明している再構成粘土を用いて透水試験を行い,
透水試験機の検証を行った.作用空気圧は 0,10,30,
50,100,200,300kPa とした.Table 2 に結果を示す.別
途,同じ再構成粘土で定ひずみ速度圧密試験を行い,計
測した透水係数も記載している.どの作用空気圧におい
Photo 9 A specimen containing shear band
ても同じような値となっている.また,圧密試験の結果
と比較しても大きな違いはないので,本試験機は,低透
1.5cm
水性の材料においても透水係数が計測するのに有効であ
ると確認できた.
Table 2 Coefficient of permeability of reconstituted clay
Photo 10 A specimen for permeability test
6.3
透水係数の算出方法
Photo 7 に今回使用した透水試験装置の概要を示す.ベン
トナイトの様な極端に透水性の低い材料の透水係数を計
Air pressure(kPa)
Coefficient of permeability (cm/s)
0
5.08×10-8
10
5.34×10-8
30
5.20×10-8
50
5.00×10-8
100
4.49×10-8
200
4.95×10-8
300
5.66×10-8
consolidation test
5.24×10-8
168
飽和圧縮ベントナイトの力学特性と遮水性能
6.5
名城大学理工学部研究報告 No.50 2010
Fig. 9 を見ると,どの作用空気圧でも最初の透水係数
透水試験の結果
Fig. 8 に透水係数~計測時間関係を示す.使用した供
にばらつきが見られるが,全ての供試体の透水係数は,
試体は乾燥密度 1.70Mg/m3 である.凡例は,A~C がせん
最終的に 1.0~1.7×10-10cm/s となっている.せん断後の経
断面あり,D~F がせん断面なしとなっている。また,作
過時間によってせん断面の有無による透水係数に有意な
用空気圧も示している.実験データは,実験開始時点か
違いは生じないことがわかった.
いる.また,図中の各線は,同条件で同時に計測した 4
つの実験データを計測時間毎に平均して算出した値を結
A-100kPa B-200kPa C-300kPa 4.0
D-100kPa
E-200kPa
F-300kPa
3.0
A B(3weeks)
8.0
a
b(3weeks)
7.0
6.0
5.0
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
0
50
100
150
200
250
300
350
400
Elapsed time[min]
2.0
(a)Applied air pressure, 100kPa
C D(3weeks)
1.0
0.0
0
50
100
150
200
250
300
350
400
Elapsed time[min]
Fig. 8 Result of permeability test
Fig. 8 を見ると,作用空気圧が 100,200kPa の場合は,
せん断面ありのAとBのほうが低い値の透水係数を示し
ているが,作用空気圧が 300kPa となると,せん断面なし
の F のほうが低い透水係数を示している.
しかしながら,
Coefficient of permeability[×10-10cm/s]
Coefficient of permeability[×10-10cm/s]
んだものである.
-10
時間が長くなるほど透水係数も低下し,収束に向かって
Coefficient of permeability[×10 cm/s]
らそれぞれの計測時間で計測した透水係数であり,計測
4.0
3.5
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
0
50
名城大学に持ち帰って,透水試験を行ったので,せん断
後かなりの時間が経過している.したがって,せん断後
の時間の経過によってせん断面の有無による透水係数の
違いが生じるか検討するために,せん断直後に成形した
供試体とせん断後 3 週間経過した後に成形した供試体を
用いて透水試験を行った.
Fig. 9 に透水係数~計測時間関係を示す.使用した供
試体は乾燥密度 1.60Mg/m3 である.凡例は,A~F がせん
断面あり,a~f がせん断面なしとなっている.また,せ
ん断後の経過時間を示している.また,グラフの値は,
Coefficient of permeability[×10-10cm/s]
値に有意な差は見られない.したがって,せん断帯が発
ん断試験後,京都大学に移送して X 線 CT を行ってから
150
200
250
300
350
400
350
400
(b)Applied air pressure, 200kPa
となっているのでせん断面の有無によって,透水係数の
Fig. 8 の結果を得た試験で使用した供試体は,一面せ
100
Elapsed time[min]
どの作用空気圧を見ても透水係数は,1.4~2.1×10-10cm/s
生しても遮水機能は維持されると考えられる.
c
d(3weeks)
4.0
E F(3weeks)
e
f(3weeks)
100
250
3.5
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
0
50
150
200
300
Elapsed time[min]
(c)Applied air pressure, 300kPa
Fig.9 Results of permeability test
Fig.8 と同様に 4 本のビュレットの平均値である.
169
飽和圧縮ベントナイトの力学特性と遮水性能
7.
名城大学理工学部研究報告 No.50 2010
まとめ
処分場の再冠水により,緩衝材が飽和状態になると不
飽和状態の時と比べるとせん断強度が低下することがわ
かった.
また,
膨潤圧以上の垂直荷重が加わらなければ,
圧密状態に拘わらず最大せん断応力と残留強度を示すこ
とがとわかった.X 線 CT による観察や透水試験により
飽和後の緩衝材に大変位のせん断帯が発生しても密度変
化は起こらず遮水機能は維持されることが確認できた.
今後の課題として,より高密度の供試体について一面せ
ん断試験を行っていくとともに,透水試験について精度
向上と間隙流体の塩分濃度による透水係数の検討を行っ
ていく必要がある.
謝辞
本研究は,
(財)原子力環境整備・資金管理センター
による処分重要基礎技術研究調査として実施したもので
ある.また,本研究の一部は,中部電力基礎技術研究所
の研究助成の補助も受けて実施したものである.また,
X 線 CT の観察に関し,京都大学の岡二三生教授,肥後
陽介助教,元大学院生の佐名川太亮氏にご協力賜わりま
した.記して謝意を表します.
参考文献
1) 小高猛司・寺本優子:不飽和および飽和条件下での圧
縮ベントナイトのせん断破壊特性,地盤工学ジャーナ
ル,Vol.4,No.1,59-69,2009.
2) 高治一彦・鈴木英明:緩衝材の静的力学特性,核燃料
サイクル開発機構報告書,JNC TN8400 99-041,1999.
(原稿受理日 平成 21 年 9 月 18 日)
170