サギソウの大 量 増 殖 と自 生 地 の再 生 生 物 工 学 科 3年 高田 宙希 片山 秀祐 森 翔太朗 10月後半~11月 11月 無菌播種 1 はじめに サギソウ(学名 Habenaria radiata)は,本 州から九州の湿地に自生するラン科の多年生植 物である。夏にはシラサギの飛んでいるような 美しい花を咲かすのでこの名前がついた。 写真―1のような花が咲く。 写真―2 明鏡池 過去の先輩たちが行っていた研究をもとに活 動を行った。明鏡池に行ったときは,先輩たち が定植したサギソウの位置に印がついた割り箸 を挿し,サギソウがどこにあるか分かるように してあった。私達はそれを目印に移植を行った。 写真―1 サギソウの花 しかし,ラン科の植物であるため,自然界に おいて種子による繁殖は困難な植物である。以 前は,湿地に多く自生していたが,都市開発に よる湿地の減少により数が減少している。環境 省や広島県のRDB(レッドデータブック)で は,絶滅危惧Ⅱ類に指定されており,保護する 必要のある植物である。 昔,西農の近くの明鏡池にはサギソウが多く 自生していた。しかし,現在では環境の変化に より個体数が減ってきている。どの植物にも, 有用な遺伝子を持っている可能性があり,貴重 な遺伝資源である。一度絶滅してしまえば取り 戻すことはできず,サギソウのような絶滅に瀕 している植物は保護していく必要がある。 私たちは,生物工学科で学んだ大量増殖技術 を利用すれば,以前あったようなサギソウの自 生地を再生できるのではないかと思い,研究に 取り組んだ。 2 種子の採取 3 実施内容 (1)順化 過去の先輩が繁殖に成功していた苗と私た ちが無菌播種した苗を順化した。根に付着した 寒天を洗い流し,最初はバーミキュライトに移 植した。その後,明鏡池での現地調査を行い, 移植場所の土壌に近いものを配合して,移植し 栽培した。 移植土壌 赤玉土,鹿沼土,川砂,腐葉土を配合 また,観賞用として,水苔にも移植した。 実施計画 平成21年 3月 無菌播種,サギソウの順化 6月 移植先決定 7月 明鏡池の除草作業 8月~10月前半 観察管理 写真―3 13 サギソウの順化 (2)自生地の調査 明鏡池では,背丈の高い雑草や野バラが多く 生えていた。サギソウは日が当たる場所を好む ので,除草が必要だと感じた。明鏡池には大き な湿地があり,これならば定植して成長するこ とができると考えた。 私たちはバナナ,リンゴを加えた天然培地に 変更した。 図―1 写真―4 明鏡池の管理(湿地) (3)自生地の管理 明鏡池にはサギソウを定植する前に多くの雑 草が生い茂っていたため,そのためサギソウが 生育しやすい環境にする必要があった。サギソウ は日光を好む植物なので背丈の高い植物や付近 の木々の枝を整備した。 (4)明鏡池への定植 順化した苗30本を明鏡池の整備した場所に 移植した。また,昨年,先輩方が移植したサギソウ も無事発芽し,順調に生育した。8月下旬には,写 真-5のようにサギソウの花が開花した。 写真―6 培地組成 無菌播種用培地とサギソウの発芽 5 無菌播種 (1)さやを火炎滅菌する。 (2)さやを半分に割って種を出しやすくする。 (3)種をフラスコの上から落とす (4)アルミ箔でふたをする (5)25℃に設定した培養室で培養した。 6 成果と課題 (1)サギソウを明鏡池周辺に定植し,栽培管 理を行った結果,順調に生育し,開花させ ることができた。 (2)昨年,定植した個体も発芽し,開花した ことから,明鏡池周辺はサギソウの生育に 適していると考えられる。 (3)今後も環境整備を進め,定植地を広げて いきたい。 (4)冬季も効率的に増殖させるため,順化し た個体の球茎から増殖させる方法も研究 していきたい。 (5)先輩方は人工授粉を行っていたが,私た ちは行わなかったため種子の収量が悪か った。 後輩にはぜひ人工授粉を行ってほしい。 写真―5 開花したサギソウ 4 サギソウの無菌播種(未熟種子) 花が咲き種子をつけたサギソウからさやを採 取し,無菌播種を行った。フェノール化合物に よる生育阻害を防止するため,培地1㍑あたり 活性炭を0.3g加えた。 14
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