埋戻し土の分類と埋戻し特性の評価に関する簡易判定技術 - 早稲田大学

421
D - 09
第40回地盤工学研究発表会
(函 館) 2 0 0 5 年 7 月
埋戻し土の分類と埋戻し特性の評価に関する簡易判定技術の開発
関東ローム
コーン指数
埋戻し
東京ガス(株) 正会員
早稲田大学 国際会員
早稲田大学 学生会員
吉崎
赤木
○直江
浩司
寛一
久永
南形
英孝
土田
真嗣
1.研究目的
建設工事で地盤を掘削した際に発生する建設発生土は地下水を含んで軟泥化する,または硬さや粒度が埋戻しに適さ
ない場合がある.このとき,発生土は埋立て処分または土質改良プラントで処理される.このため,建設発生土の処分
地の不足と遠距離化が,処分費,運搬費のコスト増につながり不法投棄等の問題が生じている.
建設発生土は本来ならば,そのまま原位置に埋戻すことが望ましい.しかし,各種の行政機関によって埋戻し土に対
して厳しい基準が設けられている.本研究では,関東ロームを含む土のコーン指数を計測することによって,埋戻し土
に関する基準を満足しうるような簡易判定技術を開発した.
2.試料と調製方法
首都圏における比較的浅深度での地下埋設管設置のための掘削埋戻しを想定して,首都圏の現場から採取した関東ロ
ームと山砂との乾燥質量による配合割合(10:0,8:2,6:4,5:5,4:6,2:8,0:10)を変化させた試料を用いた.以下,ロー
ム含有率(R)を用いて,それぞれ 100,80,60,50,40,20,0(%)と表す.関東ロームは 110℃で炉乾燥すると組成が
大きく変わる 1)ため,ロームと山砂を湿潤状態で混合した.含水比を低下させることが必要な場合は,自然乾燥または
50℃以下で炉乾燥した.
3.コーン指数試験
建設発生土の第 2 種改良土の土質区分上,
表 1 自然含水比,基準を満たす最大含水比の関係
コーン指数 800(kN/m2)以上という基準が設
2)
100
80
60
50
40
20
けられている .ここでは,これを発生土の ローム含有率 (%)
最大含水比 (%)
96
79
49
46
43
37
埋戻し管理基準と見なし,各ローム含有率
の試料に対してコーン指数試験を行い,こ
自然含水比 (%)
110
82
60
51
43
29
の基準を上回る条件を実験的に調査した.
締固めた土のコーン指数試験方法(JIS A1228:2000)に則って,試験を
行った.
実験結果から,関東ロームを含む土は,含水比が高くなるにつれて
コーン指数は減少し,上記の管理基準を下回ることがわかった.
R=0(%)の場合は,含水比に無関係に管理基準を満足した.表 1 に,
各ローム含有率に対する自然含水比と,管理基準を満たす試料の最大
含水比の関係を示す.各試料について,自然含水比が最大含水比を下
回ったとき,そのまま埋戻し可能であると判断できる.図 1 に埋戻し
可能領域を示す.試料の自然含水比が埋戻し可能領域以下にプロット
埋戻し可能領域
されるのは,R≦40(%)のときである.
4.発生土の埋戻しに関する簡易判定方法
(1)自然含水比状態における埋戻し判定
ここでいうコーン指数とは,土にコーンを 5,7.5,10(cm)貫入させた
ときの貫入抵抗をコーンの底面積で除した値である.図 2 から図 4 に
コーンを 5,7.5,10(cm)貫入させたときの各試料のコーン指数の変化を
図 1 埋戻し可能領域
示す.ここで,図中の凡例数字は含水比を表す.
ローム含有率が小さくなるほど,5(cm)貫入したときのコーン指数
18000
9000
15000
2
49.7(%)
61.2(%)
68.3(%)
77.6(%)
81.5(%)
109.6(%)
55.8(%)
64.1(%)
70.9(%)
73.3(%)
85.9(%)
15000
12000
2
11.5(%)
16.1(%)
21.1(%)
コーン指数(kN/m )
7.8(%)
15.2(%)
17.0(%)
コーン指数(kN/m )
2
コーン指数(kN/m )
12000
12000
6000
3000
9000
6000
3000
0
0.05
0.075
貫入量(m)
図2
0.1
0
0.05
R=100(%)
0.075
貫入量(m)
図3
R=50(%)
Classification and evaluation of geomaterial for refilling
0.1
33.2(%)
39.7(%)
44.6(%)
52.9(%)
40.3(%)
49.3(%)
37.4(%)
42.2(%)
45.5(%)
37.8(%)
46.2(%)
9000
6000
3000
0
0.05
0.075
貫入量(m)
図4
HISANAGA, Naoe
HIROKAZU, Akagi
- 843 -
0.1
R=0(%)
Waseda University
Waseda University
変化率
変化率
変化率
q10/q5
q5 と 10(cm)貫入したときのコーン指数
100000
8
q10 間の変化率が大きくなることがわか
最大値
90000
7
最小値
る.
80000
平均値
6
図 5 に各ローム含有率に対する q10/q5
埋戻し判定基準
70000
5
を示す.ローム含有率 40(%)を超えた
60000
4
場合には,q10/q5 の含水比に対応した最
50000
40000
大値,最小値,平均値のいずれも q10/q5
3
30000
はほぼ一定となっている.関東ローム
2
20000
の細粒分を多く含むこの領域では,コ
1
10000
ーン試験時のコーン先端部付近の試料
0
0
は局部せん断破壊を生じるため,q10/q5
0
20
40
60
80
100
20
40
60
80
100
120
はほぼ一定となる.一方, R<40(%)の
ローム含有率(%)
含水比(%)
とき,つまり山砂を多く含むほど,コ
図 5 q10/q5 とローム含有率
図 6 R=100(%)
ーン試験時のコーン先端部付近の破壊
200000
モードは全般せん断破壊に移行するた
80000
めに,q10/q5 は増加すると考察できる.
175000
70000
したがって,コーン試験時 q10/q5<2.5
150000
60000
の場合には,その発生土はローム含有
125000
50000
率 40(%)を上回る.図 1 よりローム含有
40000
100000
率 40(%)より大のとき,自然含水比状
30000
75000
態では埋戻し不可能可能である.一方,
コーン試験時 q10/q5≧2.5 であれば,発
20000
50000
生土のローム含有率は 40(%)以下であり,
10000
25000
自然含水比状態で埋戻し可能であるこ
0
0
とが簡便に判定できる.
20
30
40
50
60
0
10
20
30
含水比(%)
含水比(%)
(2)含水比変化を考慮した埋戻し判定
図 7 R=50(%)
図 8 R=0(%)
ここでは,含水比変化を考慮した埋
表 2 基準を満たす最小変化率
戻し判定方法について考察する.図 2∼4 のコーン
ローム含有率(%)
100
80
60
50
40
20
0
指数と貫入量の関係を線形近似する.
最小変化率
10780 5540 6800 2696 32640 33810 35000
qc = at + b ---(1)
ここに,qc :コーン指数(kN/m2),a:変化率(kN/m3),t:貫入量(m),
b:切片
図 6,7,8 にそれぞれ R=100,50,0(%)の試料の含水比と変化率 a の関
係を示す.R=0(%)を除いて,含水比が大きいほど変化率は小さくなる.し
たがって,この関係を直線近似すると,図中の赤線(太縦線)で示した図 1
の管理基準以下の含水比であれば埋戻し可能であると判断できる.一方,
R=0(%)では,含水比に無関係に埋戻し可能である.
さらに,図 6,7,8 の各試料の含水比と変化率 a の関係を最小二乗法で直
線近似して,表 1(図 1)に示された埋戻し可能である最大含水比との交点
から埋戻し基準を満足するコーン指数の変化率の最小値を求めた.表 2 お
よび図 9 に各ローム試料に対して埋戻し基準を満たす最小変化率を示す.
以上の結果を利用して,原位置におけるコーン指数試験結果をもとにし
て発生土の埋戻し可能性判定を簡便に行うことができる.たとえ
ば,q10/q5<2.5 のとき図 1 から R>40(%)であると判別できるため,図 9 より
図 9 基準を満たす最小変化率
a<5600 であれば埋戻し土としては適さないため,山砂で埋戻す必
要があるが,a≧33000 であればそのまま埋戻し可能である.一方,
路盤掘削
q10/q5≧2.5 のときは R≦40(%)なので,a<33000 のとき埋戻し土とし
ては適さないが,a≧35000 のとき埋戻し可能であると判定できる
(図 10 参照).
コーン指数試験
5.まとめ
関東ロームを発生土に含む場合の埋戻し再利用に関する原位置コ
q10/q5≧2.5∧a<33000
q10/q5≧2.5∧a≧35000
ーン試験による簡易判定法について調査した.
q10/q5<2.5∧a<5600
q10/q5<2.5∧a≧33000
1)コーン指数変化率は,関東ローム含有率とその含水比に依存す
る。
路床掘削
路床掘削
2)原位置でのコーン指数試験のみによって,簡便に埋戻し可能か
どうかを判定できる.
発生土で埋戻し
参考文献:1)関東ローム研究グループ:関東ローム,築地書館,2)
土木研究センター編:建設発生土利用技術マニュアル(第 2 版),
1997
- 844 -
山砂で埋戻し
路盤埋戻し
図 10
フローチャート