0 激変するペルー、ボリビア等 4カ国の資源開発環境と JOGMECの取り組み 平成20年11月4日 JOGMECリマ事務所 西川 信康 [email protected] 目 次 1.4カ国の鉱業事情 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 2.ペルーの資源開発環境 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 (鉱山生産、反鉱山運動、中国の攻勢、金融危機の影響等) 3.ボリビアの資源開発環境 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28 (鉱業政策の動向等) 4.エクアドルの資源開発環境 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 34 (新鉱業法の行方等) 5.コロンビアの資源開発環境 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37 (銅資源を巡る動き等) 6.まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38 1 1.4カ国の鉱業事情 4カ国のマクロ経済 −資源価格の高止まりで経済は好調− 2 4カ国とも資源エネルギーに依存した経済構造のため、資源価格が高水準で推移していることもあり、高い成長率を 持続。特にペルーでは、堅実な財政マネージメントが評価され、米国の格付け機関が投資適格級に引上げ。 ペルー ボリビア エクアドル コロンビア 主要産業 鉱業、水産業、農牧業 鉱業、農業 農業、石油 石油、農業 GDP 1,091億ドル(2007年) 103億ドル(2006年) 384億ドル(2006年) 1,720億ドル(2007年) 3,886ドル(2007年) 1,100ドル(2006年) 2,910ドル(2006年) 3,612ドル(2007年) GDP成長率 9.0%(2007年) 4.6%(2006年) 3.9%(2006年) 7.5%(2007年) 物価上昇率 1.78%(2007年) 12.2%(2006年) 4.2%(2007年) 5.7%(2007年) 失業率 8.5%(2007年) 8.2%(2005年) 9.3%(2005年) 11.1%(2007年) 一人当たりGDP 総貿易額(2007年) 輸出:279.6億ドル 輸入:196.0億ドル 輸出:銅、金、原油、魚粉 主要貿易輸出品目 輸入:工業用原材料・中 間財、工業用資本財 輸出:42.3億ドル(06年) 輸入:26.3億ドル(06年) 輸出:138億ドル 輸入:125億ドル 輸出:300億ドル 輸入:329億ドル 輸出:天然ガス、亜鉛、 大豆 輸入:石油、化学品、 自動車 輸出:石油、バナナ 輸入:車両部品、フィルム 輸出:石油、石炭、 フェロニッケル、コーヒー 輸入:工業用原材料・中 間財、工業用資本財 出典:外務省ホームページ 1.4カ国の鉱業事情 4カ国の鉱業生産 − 鉱物資源の宝庫 − 3 ・ペルーは、鉱産物資源が多様で、多くの鉱種で世界の主要な鉱山生産国。 ・ボリビアは、埋蔵量では、リチウム世界1位、アンチモン世界3位、タングステン世界5位などレアメタル資源が豊富。 ・エクアドル、コロンビアは、ポーフィリーカッパー鉱床の開発が期待。 4カ国の鉱産物生産量(2007年) ペ ル ー 鉱山生産量 生 産 量 地金生産量 ボ リ ビ ア 鉱山生産量 地金生産量 241.8千t 銅 銅 1,190千t (世界2位) 銅 亜鉛 1,444千t (世界2位) 亜鉛 162.4千t 亜鉛 214千t 金 15.5t 鉛 329千t (世界4位) 鉛 116.8千t 鉛 22.8千t 石炭 70百万t 金 170t (世界5位) 錫 36.0千t 金 8.8t 銀 3,494t (世界1位) 銀 525t 錫 39.0千t (世界3位) 錫 16.0千t モリブデン 16.8千t (世界3位) タングステン 1,395t アンチモン 鉱産物 輸出額 17,328百万ドル (鉱産物輸出の割合:62%) 606t 錫 コロンビア 鉱山生産量 エクアドル 鉱山生産量 9.4千t 金 10t ニッケル 49.3千t 3,881t 1,385.9百万ドル (鉱産物輸出の割合:29%) − 6,339百万ドル (鉱産物輸出の割合 :21.2%) 1.4カ国の鉱業事情 4ヶ国の鉱業政策 − 課税強化の動きが顕在化 − 4 ・ペルー:鉱業ロイヤルティ(2004年)、自発的拠出金制度(2006年)など、企業に税負担を求める動きが強まっている。 ・ボリビア:所得税とロイヤルティとの相殺不可、追加所得税の導入など、課税強化の動きが鮮明化。 ・エクアドルも、新鉱業法でロイヤルティを復活させる見通し。 所得税 ロイヤルティ 輸入関税 輸出関税 付加価値税 その他の税制 税制の安定化契約 政府の持分要求 鉱業権の有効期限 探鉱権の 年間維持費 ペ ル ー ボリビア エクアドル コロンビア 30% 25% 25% 33% なし (新鉱業法では導入の方向 :3∼8%) 総精鉱価格 60百万ドル以下 :1 % 最大7%(鉱種毎、価格毎に設定) 60∼120百万ドル:2 % 金:4∼7%、銀:3∼6%、 120百万ドル以上 :3 % 亜鉛:1∼5% など 金銀:4%、金属鉱物:5% 12%、支払い延期の適用あり なし 資本財については5%、その他は10% なし(還付廃止の可能性) 鉱業用機材は最低関税率 なし 免除 なし 19%、即時還付の適用 輸出製品については免除 12%、鉱業関係では優遇措置あり 16% 追加所得税12.5%(金属高価格時) Sur Tax利益の25%(廃止の方向) なし なし なし なし(新規鉱区はCOMIBOLとのJV) なし なし なし 30年 20年 なし 30年 自発的拠出金 (利益の3.75% 等) 10∼15年 なし 20年 ・3US$/ha。但し、鉱業権設定後10 年目満了までに年間3,500S/./ha以 上の生産を行わないと11∼15年目 ・1∼5年目:約0.65US$/ha、 以降罰金年間350S/./ha、16年目: ・6年目以降:1.3US$ 失効(但し、不可抗力あるいは、罰 金の10倍以上の投資を証明できる 場合、5年間延長できる)。 ・∼3年:1US$/ha ・4∼6年: 2US$/ha、 ・7∼9年:4US$/ha ・10∼12年:8US$/ha ・13年目以降:16US$/ha 年間ヘクタールあたり1日の 最低賃金に等しい 1.4カ国の鉱業事情 4カ国の投資環境評価 5 − ペルーは、鉱業政策評価が大きく改善 − ・カナダのFraiserレポート(2008年版)によると、 4カ国とも、地質ポテンシャル面では高評価も、鉱業政策面では、低迷。 但し、ペルーは、前年の52位から28位に大きく順位が上昇。これは、現政権が、外資促進政策を掲げていることや鉱業 税制強化の議論が沈静化していることなどが好感。但し、チリとは依然大きな開きがあり、頻発している地域住民による 反鉱山開発運動の動向や政府の対応等が大きな課題。 ペルーの投資環境評価の推移 大きく 上昇 スコア 100 80 ボリビア スコア 100 80 60 40 20 60 0 2004 40 20 2004 2005 2006 2007 2008 2006 2007 2008 エクアドル スコア 100 0 2005 80 60 鉱業政策指標 地質ポテンシャル指標 40 スコア 100 20 0 80 2004 2005 2006 2007 2008 60 チリ コロンビア 40 100 20 80 0 2004 2005 2006 2007 2008 *Fraiserレポート:カナダのFraiser研究所が世界のメジャー、ジュニア企業を対象に行った世界 68カ 国・地域の鉱業投資環境に関するアンケート結果(2008年版:372社)を ベースにとりまとめた各国の鉱業投資評価レポート。 60 40 20 0 2004 2005 2006 2007 2008 1.4カ国の鉱業事情 4カ国の探鉱開発投資の推移 6 −各国とも増加傾向も、ペルー以外は低水準− ・カナダのMetals Economics Groupによると、世界の探鉱開発投資(初期探鉱∼F/S)は、 2002年以降、金属市況 の回復、高騰に伴い、大幅に増加。2007年はついに100億ドルを突破し、2008年は140億ドルに。 ・ペルーもこの5年間で、4倍強拡大して、2007年は4.75億ドルに(世界6位、南米1位)。 ・ボリビア、エクアドル、コロンビアも増加傾向にあるが、ペルーの1/10前後の規模に留まっている。 4カ国探鉱開発投資予算の推移 (世界予算額) 500 450 400 350 300 250 200 150 100 50 0 12 ペルー ボリビア エクアドル コロンビア 世界予算 10 8 6 US$ bil US$ mil (各国予算額) 4 2 0 2002 2003 2004 2005 2006 2007 出典:Metals Economics Group 2007年探鉱投資投入国ランキング 順 位 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 21 31 47 国 名 カナダ 豪州 米国 ロシア メキシコ ペルー チリ 南アフリカ 中国 ブラジル エクアドル コロンビア ボリビア 探鉱予算 (US$ mil) 1,911.9 1,183.2 763.0 612.8 604.0 475.1 357.4 356.5 314.3 297.8 73.3 48.8 22.5 2.ペルーの資源開発環境 ペルーの鉱山生産量の世界ランク 7 −銅、亜鉛がランクを上げ世界2位に− ・ペルーは、鉱産物資源が多様で、多くの鉱種で世界の主要な生産国。 ・特に、2007年は、主要鉱種である銅が米国を抜いて、亜鉛が豪州を抜いて、それぞれ、2位に躍進。 ・ビスマス(埋蔵量2位)、セレン(同4位)、インジウム(同2位)等のレアメタルのポテンシャルも高い。 ペルーの鉱山生産量と世界ランク(2007年) 鉱種 2007年 2006年 ペルー ペルー 生産量 生産量 増減 2007年 2007年 世界 ペルー 生産量 世界シェア 銅(千t) 1,190.3 1,048.9 13.5% 15,302.3 7.8% 亜鉛(千t) 1,444.4 1,201.8 20.2% 11,019.9 13.1% 2007年 世界 順位 上位生産国(2007年) ( )は 06年順位 2(3) 1位:チリ(5,523.6)、3位:米国(1,058.6) 2(3) 1位:中国(3,012.9)、3:豪州(1,402.0) 鉛(千t) 329.2 313.3 5.1% 3,780.2 8.7% 4(4) 1位:中国(1,591.8)、2位:豪州(633.0)、3位:米国(399.2) 金(t) 170.1 203.3 -16.3% 2,203.7 7.7% 5(5) 1位:南ア(253)、2位:豪州(244)、3位:米国(241)、4位:中国(230) 0.7% 19,396.8 18.0% 1(1) 2位:メキシコ(3,083.7)、3位:中国(2,000.4) 3(3) 1位:中国(136.3)、2位:インドネシア(102.0) 銀(t) 3,493.9 3,470.7 錫(千t) 39.0 38.5 1.3% 330.5 11.8% モリブデン(千t) 16.8 17.2 -2.3% 214.9 7.8% 3(3) 1位:米国(60.3)、2位:チリ(44.8) 出典: ペルー生産量:エネルギー鉱山省 世界生産量 : World Metals Statistics: ( WBMS) 2.ペルーの資源開発環境 ペルーの鉱山生産量の推移 8 −この10年でペルー鉱業は大きく成長− ・90年代のフジモリ政権時代の民営化政策、外資促進政策で、ペルー鉱業 は大きく成長。 ・この10年で主要鉱種である銅、亜鉛、金は2倍前後に増加。銅、亜鉛は、こ こ数年伸び悩んでいたが、2007年は、過去最高を記録。金は、Yanacocha金 山の品位低下により減産傾向。 ・2008年も、8%台と高い成長を続けているが、亜鉛は7月(−1.26%)、銅は 8月(−0.85%)で前年比マイナスで、持続的な成長に陰りも。 ペルー・銅、亜鉛、金の鉱山生産量の推移 銅、亜鉛(千t) 1,600 1,400 1,200 金(t) 250 銅 亜鉛 金 200 1,000 150 800 2008年の鉱山生産量 1月∼8月累計(t) 銅 亜鉛 金 100 400 50 200 0 0 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 出典:エネルギー鉱山省 2007 伸び率 824,564 763,133 8.1% 1,065,576 985,086 8.2% 116.9 107.5 8.7% 過去の主な民営化案件 年/月 プロジェクト 買い手 落札額 1992/12 Hierro Peru S.A. Shougang Corporation 1994/3 Mina Cerro Verde Cyprus Minerals 35.4 1994/5 Proyecto La Granja Cambior-Billiton 7.0 1994/5 Refineria de Ilo Southern Peru Copper 1994/11 EME Tintaya S.A. 600 2008 BHP 128.3 66.6 275.2 1992/5 Refineria Cajamarquilla Cominco/丸紅 1996/9 Proyecto Antamina Rio Algom/Noranda/Teck 20.0 2001/3 Iscaycruz S.A.(25%) Glencore 18.6 2002/12 Alto Chicama Barrick Gold 38.5 2003/5 Toromocho Peru Copper 1.0 2004/8 Las Bambas Xstrata 2005/12 La Granja Rio Tinto 2007/4 Anglo American Michiquillay 154.5 121.0 22.0 403.0 2.ペルーの資源開発環境 ペルーの鉱産物輸出額の推移 −鉱業部門が貿易拡大に大きく貢献− 9 ・金属価格上昇で、鉱産物輸出額はこの5年で約5倍に拡大。2007年の鉱産物輸出額は全体の62%。鉱産物の 中では、銅、金、亜鉛の順で全体の8割強を占めている。 ・銅の輸出先は中国、日本等のアジア諸国に集中。亜鉛は、アジア、欧州、南北米等世界に分散。 ・2008年1∼8月では、20%増と高い伸び(銅:29%増、金:47%増、亜鉛38%減)も、金属価格の急落で今後、 暗転する可能性も。 百万US$ 30,000 鉱産物輸出額の推移 総輸出額 鉱産物輸出額 % 70 鉱産物比率 60 25,000 50 20,000 40 15,000 30 10,000 20 5,000 10 0 0 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 鉱産物輸出額の内訳 鉱 種 銅 金 亜鉛 モリブデン 鉛 銀 鉄 錫 その他 鉱産物合計 その他輸出品 輸出総額 2007年 2006年 輸出額 輸出量 増減 輸出額 輸出量 輸出額 輸出量 増減 19.6% 14.3% 7,241 1,121 6,054 981 3.8% -10.6% 4,157 5.9 4,004 6.6 27.3% 17.3% 2,535 1,270 1,991 1,083 16.9% -9.6% 982 16.1 840 17.8 44.9% 10.3% 1,033 417 713 378 11.9% -3.6% 537 40.3 480 41.8 11.7% 7.5% 286 7,200 256 6,700 46.5% -11.3% 507 35.2 346 39.7 117.4% 50 23 17.8% 17,328 14,707 21.9% 10,628 8,721 19.3% 27,956 23,428 輸出額:mil US$ 輸出量:千t、但し金、銀はmil oz <輸出先(銅)> (2007年) その他, 17.8% 中国, 39.0% ドイツ, 8.9% <輸出先(亜鉛)> (2007年) その他 20.0% スペイン 20.0% 中国 5.9% カナダ 6.4% 韓国, 9.0% ブラジル 6.8% 日本, 25.3% 出典:輸出促進庁(Prompex) 韓国 17.8% ベルギー 10.7% 日本 12.5% 2.ペルーの資源開発環境 我が国、ペルーからの銅、亜鉛精鉱輸入量 10 − ベースメタル供給国としてのポジションが大幅に向上 − ・2007年は、ペルーからの銅・亜鉛精鉱輸入量が大 幅に増加。これにより、精鉱輸入相手国として、ペルー は銅は3位(2006年5位)、亜鉛はトップ(2006年2位)に 躍進。 ・銅精鉱については、Cerro Verde鉱山からの精鉱生 産の約7割が日本向けで、大きく貢献。 ・相次ぐ日系企業の進出、2国間投資保護協定締結 の方向など我が国企業による投資は拡大傾向。 我が国輸入相手国シェア 2006年 <銅精鉱> その他 PNG 7% 5% カナダ 8% その他 ペルー PNG 7% 6% 5% 豪州 9% ペルーからの精鉱輸入量 の比較(06年,07年) 2007年 総量:463万t (精鉱量) チリ 43% 総量:505万t (精鉱量) 豪州 9% チリ 43% カナダ 10% ペルー 14% インドネシ ア 20% インドネシ ア 14% <亜鉛精鉱> 銅精鉱 その他 メキシ 13% 亜鉛精鉱 コ ボリビ 5% ア 8% 2007年 2006年 0 200,000 400,000 600,000 精鉱量(トン) 出典:World Metal Statistics 総量:113万t (精鉱量) トルコ 14% 800,000 ペルー 21% 豪州 39% トルコ 13% メキシ その他 コ 4% 7% 総量:111万t (精鉱量) ボリビ ア 18% 豪州 27% ペルー 31% 2.ペルーの資源開発環境 銅鉱山生産量 −メジャー企業の独占状態− 11 ・ ペルーの銅鉱山の供給構造の特徴は、上位5鉱山で全生産量の9割以上を占め、いずれも外資系企業が所有。 ・2007年の生産量は、Cerro Verde鉱山が精鉱生産を開始(2006年11月)したことなどにより、13.5%増と大きく拡大。 ・ペルー最大のAntamina鉱山及び第2位のCerro Verde鉱山とも日本企業が参画。我が国にとって、重要な資源供給基地。 ペルー・上位10銅鉱山の生産量(2007年) 順 位 2007年生産量(t) 鉱山名 操業企業 合 計 精鉱 2006年 生産量 (t) SX-EW 1 ANTAMINA BHP Billiton33.75%,Xstrata33.75%, Teck Cominco22.5%,三菱商事10% 341,324 341,324 0 390,774 -12.7% 2 CERRO VERDE Phelps Dodge53.6%,Buenaventura18.2% 住友金属鉱山16.6%, 住友商事4.2% 他 273,960 181,620 92,340 96,506 183.9% 3 4 5 6 7 8 9 10 CUAJONE TOQUEPALA TINTAYA COBRIZA CONDESTABLE CHAPI YAURICOCHA ATACOCHA 計 その他 総 計 Southern Copper Southern Copper Xstrata DOE RUN PERUS CIA.MRA.CONDESTABLE MRA.PAMPA DE COBRE S.A CIA.MRA.CORONA S.A CIA.MRA.ATACOCHA S.A 187,090 182,120 172,570 140,871 119,540 83,802 18,772 18,772 15,592 15,592 7,062 0 5,330 5,330 3,917 3,917 1,145,157 973,348 45,124 44,815 1,190,281 1,018,163 4,970 179,631 31,699 182,346 35,738 115,626 0 17,224 0 12,594 7,062 4,936 0 3,872 0 2,872 171,809 980,800 309 29,098 172,118 1,048,897 銅鉱山の供給構造 (上位5鉱山が占める割合) 増減 4.2% -5.4% 3.4% 9.0% 23.8% 43.1% 37.7% 36.4% 16.8% 55.1% 13.5% その他 8% TINTAYA 10% ANTAMINA 29% TOQUEPALA 14% CUAJONE 16% CERRO VERDE 23% ※モリブデンの鉱山別生産量(2007年) 1.ANTAMINA: 6,382t 2.TOQUEPALA: 6,228t 3.CUAJONE 3,821t 4.CERRO VERDE: 356t 出典:エネルギー鉱山省 2.ペルーの資源開発環境 亜鉛鉱山生産量 −中小のペルー企業が担い手− 12 ・ペルーの亜鉛鉱山の供給構造の特徴は、ペルーの民族資本系の企業が操業する小・中規模クラスの鉱山が大半。 ・2007年はAntamina鉱山をはじめとする主要鉱山で相次いで増産したため、過去最高を記録。 ・我が国企業(三井金属鉱業、三井物産)によるHuanzala鉱山は、40年にわたって操業。2006年3月に誕生したPallca 鉱山とともに、我が国への亜鉛精鉱供給拡大が期待。(2007年生産量 Huanzala:亜鉛28,744t、Pallca:亜鉛15,269t) 亜鉛鉱山の供給構造 (上位5鉱山が占める割合) ペルー・上位10亜鉛鉱山の生産量(2007年) 順 位 鉱山名 操業企業 2007年 生産量(t) 2006年 生産量(t) 1 ANTAMINA BHP Billiton33.75%,Xstrata33.75%, Teck Cominco22.5%,三菱商事10% 322,367 178,180 2 3 4 5 6 7 EMP.MRA.LOS QUENUALES(Glencore) 175,620 149,821 91,264 70,083 69,070 66,233 168,384 4.3% 119,816 25.0% 69,828 30.7% 61,105 14.7% 62,227 11.0% 79,595 -16.8% ISCAYCRUZ CERRO DE PASCO COLQUIJIRCA SAN CRISTOBAL ANIMON EL PORVENIR 8 ATACOCHA 9 SAN VICENTE 10 MARIA TERESA 計 その他 総 計 VOLCAN CIA.MINERA SOC.MRA.EL BROCAL VOLCAN CIA.MINERA EMP.ADMINISTRADORA CHUNGAR CIA.MRA.MILPO CIA.MRA.ATACOCHA CIA.MRA.SAN IGNACIO DE MOROCOCHA CIA.MRA.COLQUISIRI 59,375 37,954 35,479 1,077,266 367,088 1,444,354 59,795 30,926 36,893 866,749 335,045 1,201,794 ANTAMINA 22% 増減 80.9% -0.7% 22.7% -3.8% 24.3% 9.6% 20.2% その他 45% SAN CRISTOBAL 5% COLQUIJIRCA 6% ISCAYCRUZ 12% CERRO DE PASCO 10% ※上位鉛鉱山生産量(2006年) 1.Cerro de Pasco: 64,216t 2.Colquijirca: 38,653t 3.Animon: 29,215t 4.Atacoch: 14,684t 5.Porvenir: 14,432t 出典:エネルギー鉱山省 2.ペルーの資源開発環境 金鉱山生産量 13 −Yanacocha鉱山の減産で減少傾向が鮮明に− ・ペルー最大のYanacocha鉱山は、品位低下により2005年をピークに減産傾向。2007年は40%の大幅減。 ・2008年内にCerro Corona鉱山誕生やYanacocha鉱山の拡張などで、今後は、持ち直しの方向。 ペルー・上位10金鉱山の生産量(2007年) 順 位 鉱山名 1 YANACOCHA 2 ALTO CHICAMA 3 M.D.D 4 PIERINA 5 ORCOPAMPA 6 SANTA ROSA-COMARSA 7 ACUMULATION PARCOY 8 ARES 9 RETAMAS 10 FLORENCIA 計 その他 総 計 操業企業 Newmont 51.35%, Buenaventura 43.65%, IFC 5% MRA.BARRICK MISQUICHILCA MADRE DE DIOS MRA.BARRICK MISQUICHILCA CIA.DE MINAS BUENAVENTURA CIA.MRA.AURIF.SANTA ROSA CONSORCIO MRA.HORIZONTE S.A CIA.MRA.ARES MRA.AURIF.RETAMAS ARUNTANI S.A.C 2007年 生産量 (kg) 2006年 生産量 (kg) 金鉱山の供給構造 (上位5鉱山が占める割合) 増減 YANACOCHA 28% その他 27% 48,634 81,247 -40.1% 33,774 36,056 -6.3% 16,373 16,176 8,292 5,511 15,800 15,836 7,878 4,909 3.6% 2.1% 5.3% 12.3% 4,838 4,568 4,053 5,041 4,837 4,950 -4.0% -5.6% -18.1% 3,717 145,936 24,192 170,128 5,752 182,306 20,963 203,269 -35.4% -19.9% 15.4% -16.3% ORCOPAMPA 5% PIERINA 10% M.D.D 10% ALTO CHICAMA 20% ※上位銀鉱山生産量(2007年) 1.Antamina: 344.4t 2.Uchucchacua: 293.1t 3.Cerro de Pasco:238.8t 4.Colquijirca: 220.8t 5. Arcata: 200.2t 出典:エネルギー鉱山省 2.ペルーの資源開発環境 地金生産量 14 −世界シェア低いものの、今後地金生産が拡大の方向− Oroya製錬所 ・ペルー最大のIlo銅製錬所では、ストライキの影響で大幅減産。但し、現在の28万t体 制から36万t体制に増強する計画。 ・Cajamarquilla亜鉛製錬所で生産拡大の動き。2007年に16万t、2009年には32万t体制 に増強。インジウムも生産。それに伴い、Votorantimは、原料確保のためペルーを中心 に亜鉛鉱山投資拡大の動き。(ペルー亜鉛大手Milpo社に出資等) ペルーの地金生産量(2007年) 製錬所 操業企業 Ilo Oroya 銅 Cajamarquilla 合 計 Cajamarquilla 亜 鉛 Oroya 合 計 Southern Copper(ペルー) Doe Run Peru(米国) Votorantim(ブラジル) 鉛 Oroya 合 計 Doe Run Peru(米国) 錫 Funsur 合 計 Minsur(ペルー) Votorantim(ブラジル) Doe Run Peru(米国) 2007年 ペルー 生産量(t) 2006年 ペルー 生産量(t) 増減 180,906 59,339 1,543 241,788 119,885 42,490 162,375 273,054 59,075 1,710 333,839 134,240 41,010 175,250 -33.7% 0.4% -9.8% -27.6% -10.7% 3.6% -7.3% 116,774 116,774 120,311 120,311 -2.9% 36,004 36,004 40,495 40,495 -11.1% 注) 銅地金世界生産量については、SX-EW生産分(2,739.5千t)を除く 出典:エネルギー鉱山省、WBMS速報値 -2.9% -11.1% 2007年 世界 生産量(t) 15,022,900 11,229,400 8,164,900 351,300 ペルー 比率(%) 1.6 2007年 主要生産国(千t) 1位:中国(3,496.9) 2位:日本(1,576.8) 3位:チリ(1,094.4) 注)SX-EW生産除く 1位:中国(3,714.2) 2位:カナダ(802.1) 3位:韓国 (674.4) 1.4 4位:日本 (597.7) 1位:中国(2,753.3) 2位:米国(1,336.1) 1.4 3位:ドイツ(397.6) 1位:中国 (147.1) 2位:インドネシア(77.6) 10.2 2.ペルーの資源開発環境 今後の鉱山開発プロジェクト 15 −銅を中心に目白押し− ・エネルギー鉱山省によると、今後、鉱山開発が確実視されるプロジェクト(プレF/S以降のステージ)は、銅を中心に、 30件余りで、投資総額は239億ドルに及ぶ。これにより、今後、銅生産量が現在の倍の200万トンに達する可能性も。 また、地質ポテンシャルを有する地域のうち、約9割が未探鉱地域で、さらなる鉱量拡大が期待。 今後の鉱山開発プロジェクトの投資額 鉱種 企業名 Anglo American CHINALCO Southern Copper Xstrata Minmetal,Jiangxi Zijin Group Southern Copper Southern Copper プロジェクト名 Quellaveco Toromocho Tia Maria Las Bambas Galeno Rio Blanco Los Chancas Ilo, Toquepara, Cuajone拡張 銅 Rio Tinto La Granja Anglo American Michiquillay Xstrata Antapaccay Norsemont Mining Constancia Pan Pacific Copper Quechua Inca Pacific Magistral Chariot Resources Mina Justa Milpo Pukaqaqa Candente Resources Canariaco 調査ステージ (生産開始年) 投資額 (百万US$) F/S(2013) 開発準備中 開発準備中 (2011) 探鉱 探鉱 探鉱 探鉱 開発工事中 (2011) 探鉱 探鉱(2016) 探鉱(2010) 探鉱 探鉱 探鉱 探鉱 探鉱 探鉱 2,200 2,152 2,108 1,500 1,500 1,440 1,200 1,174 1,000 700 700 500 490 402 400 300 145 鉱種 企業名 Newmont, Newmont, Newmont, 金 Buenaventura Buenaventura Minsur Votarantim Metais 亜 鉛 Milpo 鉄 Strike Resources 鉱 Shougang 石 リン Vale プロジェクト名 Minas Conga Chaquicocha Yanacocha拡張 La Zanja Pucamarca Cajamarquilla拡張 Hilarion Hierro Apurimac Marcona Bayovar 合 計 調査ステージ (生産開始年) 投資額 (百万US$) 探鉱(2013) 探鉱 開発工事中 (2008) 開発準備中 探鉱 開発工事中 (2009探鉱 探鉱 開発工事中 (2011) F/S(2009) 1,500 400 270 60 46 500 226 1,500 1,000 490 23,903 出典:エネルギー鉱山省 2.ペルーの資源開発環境 主な鉱山・製錬所と鉱山開発プロジェクト位置図 TAMBOGRANDE ■ 16 RIO BLANCO ■ YANACOCHA LA GRANJA ■ CERRO CORONA MICHIQUILLAY EL GALENO ■ MINAS CONGA ● ■ ALTO CHICAMA ●● ISCAYCRUZ 開発プロジェクト 製錬所 ★ ATACOCHA PALLCA MILPO CERRO DE PASCO TOROMOCHO ■★ OROYA CAJAMARQUILLA CERRO LINDO HUANZALA ● ● ● ● PIERINA 鉱山 Antamina鉱山露天掘りピット遠景 ● MAGISTRAL ■ ANTAMINA ● LAS BAMBAS LOS CHANCAS■ ■ ● ■ MARCONA ■ TINTAYA QUECHUA CERRO VERDE ● CUAJONE ILO Cerro Verde鉱山選鉱所遠景 ●■ ★ ● QUELLAVECO TOQUEPARA Huanzala鉱山遠景 2.ペルーの資源開発環境 活発化するウラン探鉱 − 大手企業の参入も − 17 ペルーは、世界的には、ウラン資源の埋蔵国としては知られていないが、昨今のウラン価 格の高騰の中、マージナルであった低品位のウラン鉱床が注目。現在、カナダジュニア企業 等16社が探鉱を実施中。世界最大のウラン企業Camecoの参入も。政府は、ウラン採掘に関 する法律作りに着手。 <MACUSANI(プーノ県)での活動> Solex Resources (1)MACUSANI EAST 73鉱区・面積49,700ha。 2005年4月、Frontier Pacifficが 参入。5年間で400万ドルの投資を条件に権益の50%を 取得も、08年4月、El Dorado Goldが、 Frontier Paciffic を買収し、本プロジェクトから撤退。 (2)MACUSANI WEST IPENの探査結果をベースに、2006年に51鉱区(面積 43,500ha)を取得。アクセスが悪く本格的な調査はこれから。 Global Gold 2000haの鉱区を所有。投資額は2009年末までに900万ドルに 達する見通しのほか、これまでの探査で確認された埋蔵量は7 千200万トンにのぼる。 Vena Resources/Cameco 47,500haの鉱区を保有。このうち 14,000ha分は、IPEN から取得。IPE Nによると、U3O8品位0.2%∼12%で 200,000tの鉱量があると推定。 2007年1月、Camecoが参入、4つ の鉱区(Macusani, Munani, Lagunillas, Rio Blanco)でJVをスター ト。Camecoは、4年間で10百万C$を 投資。その後約5億ドルを投じてウラ ン選鉱プラント建設も視野 <その他、副産物として期待されるウラン鉱床> ‐BAYOBARリン鉱床(ピウラ県、ウラン推定埋蔵量2万トン) -TURMALINAタングステン鉱山(ピウラ県、ウランに関連性のある角礫パイプ) -COLQUIJIRCA鉱床(パスコ県、銅・鉛・亜鉛鉱床、ウラン鉱化:0.06∼3.55%のウランを含むカルノー石) -VILCABAMBA鉱床(クスコ県、銅・鉛・ニッケル・コバルトの鉱化作用に関連したウランが確認。ウラン品位0.05%∼2.0%) 2.ペルーの資源開発環境 石油・天然ガスビジネスの拡大−鉱業と同様、外資促進− ・世界の各地で資源ナショナリズムが台頭する中で、南米では、コロンビアと並んで 外資優遇策をとっている。 ・JOGMECは07年6月、Perupetroと探鉱開発等協力事業を推進する旨のLOIを調印。 ・9月の石油鉱区の入札で、不正が発覚し、エネルギー鉱山大臣の辞任、さらには 内閣総辞職に発展。 <生産中の主要鉱区> ・原油(重質油)・・・エクアドル国境付近のBlock 1-AB、Block08 ・天然ガス・・・リマの東約450kmのBlock 88(Camiseaガス田) → いずれも、アルゼンチンのPluspetrolが生産(ペルーの石油生産量の約70%、天然ガス生産 の約60%を占める)。 ・エクアドル国境付近沿岸部でPetrobras、PetroTechが生産。 ・Barret Resources は、2010年よりBlock67で、API比重12∼21度の原油10万b/dを生産する計画。 <我が国企業が参加するプロジェクト> 2007年8月に、丸紅がペルーLNGプロジェクトのSKエナジー(韓国)の持ち分30%のうち10%を取得 (HuntOil50%、RepsolYPF20%、SKエナジー 20%、丸紅10%)。2006年1月建設開始、2009年完成、 2010年第2四半期に輸出開始(メキシコ向け)の予定。Block88(Camiseaガス田)からガスを供給。能力 445万t/年。 <石油ガス田鉱区入札> ・Perupetroは、08年9月、17鉱区(内陸部、ペルー中部沖、南部プーノ県)の入札を実施。その結果、ペト ロペック(米)、ケドコム(韓)、ジンダル(インド)、Petroperuとの企業連合などが落札(日本企業の応札なし)。 ・10月、Petroperuのパートナーであるディスカバリー・ペトロリウム(ノルウェー)による不正工作が発覚し、エネル ギー鉱山大臣、 Petroperu総裁、Perupetro理事が辞任。内閣総辞職。 ・新大臣は元エネルギー鉱山大臣顧問 で、電力分野の専門家Pedro Sanchez氏 。 <タララ精油所近代化計画入札> PetroPeruが管理運営するタララ精油所の脱硫施設設備を含む近代化工事の入札が12月に実施予 定。現在、日本企業を含む11社が名乗り。総工費は15億ドル規模。 18 生産中の主要鉱区 2.ペルーの資源開発環境 ペルー、拡大する社会争議 19 −大きな社会問題・政治問題に − ・ペルーでは、社会争議が、全国規模で拡大を続けており、好 調な経済発展に水を差す動き。 ・争議拡大の背景としては、最近の急激な物価上昇、貧富の格 差拡大、環境汚染の広がりなど、昨今の経済発展の負の側面 が、国民の半分近くとされる貧困層に浸透し始めたことによる 表れと見られる。 ・争議の発生要因としては、社会環境争議、郡・区行政への不 満、労働争議など。 県別争議件数(近い将来予見されるものを含む) 括弧は顕在化している争議件数 Tumbes 3(3) Amazonas 1(1) Piura 8(7) Lambayeque 6(5) 250 総数 Loreto 11(8) Cajamarca 18(13) San Martin 6(2) オンブズマン登録数 La Libertad 11(9) 200 150 Ancash 13(10) Huanuco 6(5) 100 Cusco/Junin 1(1) Ucayali 1(0) Pasco 6(4) 50 Lima 28(25) 0 07/7 07/8 07/9 07/10 07/11 07/12 08/1 選挙 6件(3%) コミュニティ間 9件(4%) 県政府行政 12件(5%) 中央政府行政 21件(10%) 08/2 08/3 08/4 08/5 08/6 08/7 Junin 14(13) Callao 1(1) Cusco 12(9) Hyancavelica 7(3) Ayacucho/Hyancavelica 1(1) 領域 4件(2%)コカ違法栽培 3件(1%) Ica 2(0) 社会環境 86件(39%) 全国規模(Nacional)8(7) Madre de Dios 4(4) Apurimac Ayacucho 18(14) Puno 16(10) Arequipa 4(3) Arequipa/Moquegua 1(0) Moquegua 4(3) 発生要因別比率 労働問題 31件(14%) 郡・区行政 49件(22%) Tacna 6(5) 2.ペルーの資源開発環境 ペルー、鉱業関連争議の現況 20 −主要な鉱山及び鉱山開発プロジェクトサイトで発生 − 主な鉱業サイトでの争議内容 鉱業関連の争議は、全体の35%(2008年7月時点)。 鉱業関連争議の発生要因別では、社会環境を巡る争議 が支配的 で、その内の約7割が環境汚染問題に端を発 している。 10月、La Granja(Rio Tinto)で、住民による鉱山施設へ の占拠表明で試験プラント建設が中断。 労働問題 中央政府 10件 1件(1%) (13%) 鉱業関連 77件(35%) その他 144件 (65%) Michiquillay (Cajamarca) 社会環境 66件 (86%) 鉱業関連争議が占める割合 28 環境汚染 26 環境汚染への危惧 11 プロジェクト不履行 地域発展支援要求 9 利益還元・補償要求 9 0 社会環境争議の原因 2 市街地汚染 1 5 10 15 20 25 30 鉱山による約束の不履行と環 境汚染を指摘する住民が抗議 周辺地域住民らが、信託基金 管理委員会の再編成を要求。 周辺地区住民らが環境汚染を 理由に反対運動 Yanacocha (Cajamarca) Tintaya (Cusco) Toromocho (Junin) 鉱山周辺の不法採掘者らが、 鉱山に対して採掘権を要求 Morococha 住民が、村の移転 に関する条件面の協議を要求 Cajone (Moquegua) Cerro de Pasco (Pasco) IIlo 区住民らが、鉱山操業及び 環境汚染に対する補償を要求 同鉱山の露天拡張に対して Chaupimarca 村住民らが反 対。 Majaz による鉱業活動の違法 性及び環境汚染に抗議する住 民による反鉱山運動 地元住民らが、水資源利用を 原因とする Callazas 川水量減 少に抗議 4 不法占拠 社会環境争議の内容 周辺住民は、過去の操業を原 因とする鉱害対策と補償、社 会プロジェクトを要求 Quishuar 地区住民らが、鉱山 操業による水質汚染を抗議 Rio Blanco (Piura) 6 土地抗争 基金管理への疑惑 鉱業サイト (県名) Antamina (Ancash) Las Bambas (Apurimac) La Zanja (Cajamarca) Toquepara (Tacna) 最近の対話状況 (2008 年 7 月時点) 7 月 24 日に対話協議が実施、鉱山 側は道路修復計画書を提出。 住民らは、キャンプ地占拠による逮 捕令の取り消しを対話の条件に。 7 月 3 日に住民総会が開催、環境影 響評価が可決も、多数の住民が総会 への出席を阻まれたことが発覚 交渉中 鉱山労働者への危害が加えられたた め停止していた操業が、住民側によ る対話の呼びかけで再開。 交渉中 7 月 14 日に 2 度目の協議会が開か れた。 7 月 22 日に対話を実施、8 月 29 日 に次回協議予定 対話なし Chaupimaca 村移転が検討 対話なし 住民らと鉱山の間で発生した暴力事 件に関して検察局が捜査中 7 月 21 日に協議が実施されたが合 意に至らず次回協議日も決定されず 2.ペルーの資源開発環境 ペルー、新たに既得権抗争が表面化 21 −限られたパイを巡ってのペルー人同士の抗争に発展− 最近の争議の傾向として、地元住民による反鉱山運動や労使対立に留まらず、カノン税や鉱 山労働者への利益配当の配分問題を巡る地方対地方、地方対鉱山労働者といったペルー人 同士の内部抗争に発展、ペルーの鉱業争議は、ますます、複雑化、混迷化の様相。 6月のMoquegua県での暴動では、一時的に供給不安が広がり、銅の国際価格に影響も。 <カノン税配分を巡る地方同士の対立> Moquegua県 Cuajone銅山 生産量:187千t カノン税 225百万s/. 暴動に発展 適正な配分を 求めて、住民約2 万人が6月、10日 間に渡り抗議行 動。幹線道路の 封鎖、投石や車 両放火、鉱山施 設への襲撃など で、一時的に精鉱 流通がストップ。 対立 (Southern Copper社) 中央政府 政府は、この差は 粗鉱量に基づいて 算出したと説明(?) 複数の県で操 業する鉱山の会 計を個別化する 制度を設けること で沈静化。現在、 法案化に向け国 会で審議中。 Tacna県 Toquepara銅山 生産量:173千t カノン税 715百万s/. 抗議行動 自県への配 分が減少すると して、法案に反 対。Moqugua県 と同様の抗議行 動を示唆。他県 にも飛び火する 動きも。 <利益配当金上限の撤廃法案を巡る対立> 鉱山労働者側 鉱山会社からの8% 利益配当の対象を 正社員だけでなく派 遣労働者に拡大す ること、労働者1人 当りの年間利益配 当上限を現在の18 か月分から80か月 分に引上げることを 主張 中央政府 鉱山労働 者側の主張 を組み込ん だ利益配当 改正法案が、 国会で審議 中。 断続的な全国ストライキ (07年5月、11月、08年7月) 8%の 利益 配当 地方政府 対立 道路封鎖等の抗議行動 地方政府分 (法改正により) 18ヶ月 労働者分 労働者への配当 後の余剰金額につ いては、鉱山が存 在する地方政府の インフラ事業に充当。 県知事や地方出身 の国会議員らは、 県への余剰利益の 配当が失われると して本法案に対して 強く反対 80ヶ月 2.ペルーの資源開発環境 鉱業税制を巡る議論 −余剰利益を狙った様々な動きも、政府は法的安定性を強調− 22 ペルーでは、昨今の国際金属価格の高騰・高止まりで企業業績が著しく向上している中、ロイヤルティ徴収の強化、 自発的拠出金(Aporte Voluntario)及び余剰利益税(Sobreganancia)導入など企業側に対して追加的な利益還元を求 める様々な議論が噴出。06年12月に自発的拠出金制度導入で企業側と合意。08年に入っても、余剰利益税法案を 国会に提出す動きもあるが、政府は、法的安定性を保証し、投資を促進する立場を強調。 <ロイヤルティ徴収強化法案> 06年6月、トレド政権末期の国会で安定化契約を締結し ている企業も鉱業ロイヤルティを課すという内容の法案が 成立も、政府は憲法違反として再審議を求め、06年12月、 鉱山エネルギー委員会及び国会で否決され、廃案に。 <自発的拠出金制度の概要> 目 的 条 <自発的拠出金> 06年8月、ガルシア大統領の公約に基づき、企業側に対 し、新たな課税制度は設けないとの条件で、貧困問題解 決のため、地元に自発的寄付金を拠出するよう求めたも の。企業側も早くから理解を示し、06年末、企業との間で 完全合意。 <余剰利益税法案> 06年9月、左派UPP党から提出された余剰利益税に関す る法案が提出されたが、06年12月、鉱山エネルギー委員 会で否決され、廃案。 件 運 用 ①幼児と妊婦を対象にした栄養プログラム ②初等教育及び 教育プログラムへの援助 ③健康改善プログラム ④地方公 務員研修(カノン税等の資金利用を促進)等 ・期間:5年間(2007年から2011年まで) ・支払いの基準となる金属価格の下限 :銅1.79US$/lb、亜鉛0.778US$/lb、金537US$/oz 等 ・各企業は、自らが直接運営・管理する信託基金に拠出金を 振り込む。 ・年間純利益の3.75%分を拠出。 ・ロイヤルティを納付している企業は、純利益の1.25%を拠出 ・具体的な使途は、鉱山会社、地方自治体、地域住民代表か らなる調整技術委員会で審議し、信託基金機関が実行。 08年8月、野党より国会に再提出の動きも。 2.ペルーの資源開発環境 ペルー鉱業法の改正、最近の動き 23 − 最近の社会情勢等を踏まえ、探鉱許認可制度を厳格化− 環境問題や地元住民とのトラブルを未然に回避するため、エネルギー鉱山省は、2008 年4月、環境対策や地元住民との合意形成の徹底などを求めた探査許認可に伴う環境規 則を改正 。実態は、省内の実施体制、人材不足により、審査が大幅に遅れ、運用面での 問題が露呈。また、鉱区の流動化を促すため、今まで無期限であった鉱区取得年数を最 大20年に。なお、取得済みの鉱区は2009年からカウント。 <探鉱許可に関する環境規則改定> 「地質調査」 エネルギー鉱山省による認可は必要ないが、土地所有者の許可を 取得を義務化。 「カテゴリーⅠ」 (ボーリング調査20本まで) 環境影響申告書(DIA)のエネルギー鉱山省への提出をもって自動 承認。(但し、ウラン探査や、鉱害発生箇所の探査等を除く) 「カテゴリーⅡ」 (ボーリング調査21本以上) エネルギー鉱山省へ環境影響調査概要報告書(EIAsd)を提出し、 地元住民の承認や同省による審査を経て、最初の申請提出から55 日(ワーキングデイ)以内に申請者に回答が通知。回答が無い場合 申請者に次の行動をとる権利を与え、当局に審査の迅速化を促すこ とができる。 ・申請者は申請が否認されたとみなし、鉱業審議会に再申請。鉱 業審議会は30日以内に審議し、結論を出さなければならない。 ・引き続き当局からの回答を待つ(当局は、申請者が鉱業審議会 に再申請しない場合、審査を継続し、結論を出す義務)。 <鉱区取得年数の制限> ・鉱区取得の翌年から起算して10年満了時までに 最低生産を履行できない場合、11年目から15年 目まで鉱区1haにつき350ソーレス(約120US$;最 低生産額の1/10)に相当する罰金が課せられる。 不可抗力による最低生産不履行が証明可能な場 合は5年間の延長可能(再延長不可)。 ・従って、鉱業権を取得した翌年から起算して20年 目の時点で投資が継続していたとしても、最低生 産量が履行できていない場合、鉱業権は失効。 ・既に取得済みの鉱業権に関しては、鉱区期限の 年数は2009年1月1日からカウント。 <投資家への要望(イサシ鉱山次官より)> ・投機目的でない生産的な投資 ・環境への配慮 ・社会的責任の遂行 (プロジェクトへの最初のアクセスは、 地質ではなく、地元住民に) 2.ペルーの資源開発環境 ペルーの鉱害対策 − 政府による本格的な取り組み始動 − 24 ペルーでは既に、操業中の鉱山・製錬所については環境適正化計画(PAMA)や 閉山法を制度化し、多くは環境改善に向け取り組み中。 これに続き、閉山後の環境対策と環境汚染の元凶となっている廃鉱に起因する 環境汚染対策に着手。これらの問題は、現在頻発している地域住民問題発生要 因の一つとされ、政府も本腰を入れて取り組む構え。 日本にも、鉱害防止対策や閉山法審査への技術協力を要請。 ①休廃止鉱山の鉱害対策 ・義務者不存在の休廃止鉱山については、 国が対応。 ・エネルギー鉱山省によるインベントリー マップによると、現在、ペルー国内には、 850か所に鉱害問題が存在。 ・課題は、体系的な鉱害発生鉱山のリス クの規模や優先順位、具体的対策、予算 等のロードマップ作り。 ・2007年7月、鉱山省内に鉱業技術部を 新たに設置し、本格的な取り組みを開始。 ②FONAM による鉱害対策 FONAM (国家環境基金)は、約530 万ドルの政府基金及び300万ドルの民 間基金をベースに最も鉱害被害が深 刻なカハマルカ県において、先行して 実施中。 ・ジョウカノ川流域の環境被害の優先 順位の特定 ・エル・シンチャオ渓流酸性水処理施設 ・エル・ドラド尾鉱堆積場の鉱害対策 ・再緑地化プログラム ④金の不法採掘の規制強化 ペルー北部・南部で国際価格上昇に伴い金の不法採掘が、 急増。シアン・水銀汚染の深刻化、児童労働問題が拡大。特に、 南部のマドレ・デ・ディオス県は、不法採掘者1万2千人、不法採 掘による年間の金生産は15.8トンという数字も。政府は規制を 強化する構え。 エル・ドラド堆積場 ③旧国有鉱区における鉱害対策を開始 2006年9月、国営公社ACTIVOS MINEROS を設立、かつてCentromin国有鉱区を中心に、 環境修復を開始。2010年まで総額4270万ド ルの予算を確保。 2007年は19のプロジェクトを予定。 ・オロヤにおける汚染土壌の修復作業 ・カヤオ港の汚染源調査 ・セロデパスコにおける鉱さいや酸性水など環 境負荷の軽減 ・ミチキジャイにおける河川・土壌汚染の修復等 ⑤鉱害・保安監督強化(→将来的に環境省に移管の方向) 2007年1月、鉱害・保安監督がエネルギー鉱山省からエネル ギー鉱業投資監督庁(OSINERGMIN)に移管、Volcan社鉱山、 Oroya製錬所等に対し、環境規制違反を理由に罰金の支払いを 命令。今後、罰則を強化。 2.ペルーの資源開発環境 銅資源確保を目指した中国企業の攻勢 25 − 相次いで大型銅開発案件を獲得 − <Rio Blancoの獲得> ・07年2月、中国・Zijingグループ(紫金鉱業、銅陵有 色金属公司、Xiamen )は、Rio Blancoを保有する Monterrico Metals社(英国)を約186百万ドルで買収。 ・9月、 Zijingグループが保有している株式89.9%のうち、 10%を韓国LS-Nikkoに約20百万ドルで売却。 ・現在、F/S中で最低投資額は14.4億$、年間生産量は 銅22万t、2011年生産開始予定。 ・地元住民による反対運動で活動停止。 <El Galenoの獲得> 07年12月、五鉱集団公司、江西銅業集団公司が、加 Northern Peru Copper(NOC)社を、総額455百万C$で買収 提案。同社が所有しているGalenoトは、現在、FS中で、鉱 量803百万t、銅品位0.63%(カットオフ品位0.4%)、マインライ フは20年以上で、銅精鉱144千t/年の生産予定。 中国の銅地金生産量とペルーからの精鉱輸入量 4000 3500 地金生産量(金属量) ペルーからの輸入量(精鉱量) 3000 (千トン) 昨今、中国国内の相次ぐ銅製錬所の増強に伴い、ペルーから中国向け 銅精鉱への輸出量が急速に拡大 (2002年:30.4万t →2007年は100万t超え:精鉱量)。 2007年に入り、中国企業が大型銅鉱山開発案件を所有するジュニア企 業を相次いで買収するなど中国企業がペルーでの活動を本格化する動き が加速化。 2500 2000 1500 1000 500 <Toromochoの獲得> 07年6月、中国のアルミ大手 であるChinalcoが、Toromocho プロジェクトを所有するPeru Copper社(カナダ)を790百万ド ルで買収。 2009年から開発工事開始。 2011年生産開始予定。投資額 は21.5億ドル。操業期間は30 年で最初の10年間に銅10万t を生産予定。 ・直接雇用:2,500人 ・間接雇用:7,500人 周辺部に亜鉛鉱床も確認。 0 2001 2002 2003 ★ Rio 2004 2005 2006 2007 Blanco ★Galeno <Michiquillay政府入札への参加(07年4月)> Jinchuan Group(金川集団有限公司)、Zijin Mining Group(紫金鉱業) が応札 → 結果はAnglo Americanに敗退。 2.ペルーの資源開発環境 ペルー、電力不足問題が顕在化 26 −ペルー鉱山各社、相次いで水力発電事業への参入を検討− 昨今の経済発展に伴い、ペルーの電力需要は予想以上に増加(2007年に10%増、2008年も12%増の見通 し)。供給設備の増強が追いつかないため、深刻な電力不足に陥る懸念。加えて、供給の約半分を占める水 力発電は今年、降雨量の減少で発電量が低下。天然ガス発電も頭打ち。このため、鉱山会社独自の電力事 業への投資計画が相次いでいる。 エネルギー鉱山省によると、今後7年間にわたる鉱山開発プロジェクトで、2,600MWの追加電力が必要。 8月2日、ETEVENSA発電所のタービンがメンテナンスに入ったことを理由に、全国の8鉱山会社に対して15時から22時まで の間の電力使用が制限(需要全体の4000メガワットのうち160メガワットが制限)され、一部の鉱山では、生産に影響も。 対象鉱山:Antamina、Cerro Verde、Cajamarquilla、Shougang、Doe Run、Southern Peru、Yanacocha、Cementos Lima <既存の主な電力拡張計画事業> 2010年の完成を目標に進行中の 500メガワットの南部電力増幅計画 2009年完成予定のカミセアガス輸送拡張 事業(2億2千万→4億5千万立方フィート/日) Pucallpa、Chilca、Santa Rosa 等の新規火力発電所建設 <鉱山会社の電力事業への参入の主な動き> Southern Copper 現在同社のIlo製錬所 は205メガワットの電力を 使用しているが、拡張後 にはさらに220メガワット が必要となるとし、安定的 な電力確保のために電力 事業への投資を検討。 Buenaventura Freeport Macmoran Atacocha Huanuco県及びLima県 内で少なくとも3基の水力 発電所プロジェクトを計 画。合計発電量は 200MWで、合計投資額 は3億ドルとなる見通し。 Arequipa県を中心とした ペルー南部における水力 発電への投資を検討中 であることを明らかにし、 Cerro Verde鉱山の増産 計画をバックアップしたい との考え。 Ancash県のQuitaracsa水 力発電プロジェクトの92% を取得。建設終了は2011 年。投資額は1億ドルで初 期段階で114メガW、最終 的に228メガWを発電予定。 2.ペルーの資源開発環境 ペルー、金融危機の影響 −世界経済の減速がペルー鉱業に大きな打撃− 10月10日のリマ証券取引所(BVL) は、世界的な金融危機を原因と する株価の下落により終値は前日比10.81%安となり、今年最大の下 げ幅を記録。今年に入ってからの鉱業株は49%の下落率。 今後、直接投資、輸出、生産への影響は必至。 27 ペルー、この1年の株価推移 <ペルー鉱業協会の見方> (直接投資への影響) 世界金融不安によってペルーにおける探鉱開発向 けの投資30億ドルの資金調達が遅れる懸念。今後の 国内の鉱業活動の動向は、資金がどの国に由来する かに左右。中国が資金源である場合は大きな問題と はならない。新規案件に関しては、金融機関による融 資の滞りでマイナスの影響を受ける一方、ステージの 進んだ案件は予定通り実施されるとの見方。 (輸出への影響) ペルーにとって米国は30%を占める鉱物輸出相手国 であることから、同国の経済危機による影響は避けら れないとしつつ、日本や中国を中心としたアジア向け の鉱物輸出が35%を占めることが安心材料になって いる。 <鉱山会社の見方> Buenaventura:世界経済の危機による銅や亜鉛といった金属の需 要への影響は避けられない。国内の鉱山企業はより収益性の高いプ ロジェクトを優先し、相対的に収益性の低いプロジェクトに関しては適 当な時期が訪れるまで見送る可能性。 Souhtern Copper:米国発の金融危機の影響は少ない。2011年まで に計画するペルー向けの投資21億ドルを予定通り実施。一方、原油 等の値上がりによって生産コストは1ポンドあたり1ドル増加しているこ とに加え、銅価格の急落によって減収は免れないと言明。 (生産、企業業績への影響) Chinalco:Toromocho銅開発プロジェクトについて、金融危機の影 響による資金調達に困難は生じていないとし、2011年の生産開始に 向けて、今後22億US$を投資する計画。 金融危機を原因とした金属価格の暴落は、国内鉱業 へ大きな打撃。2009年も価格の低下傾向が続くとの 見方。今後、生産減、企業収益は悪化の方向。 Xstrata: Las Bambasと Antapaccayの2大銅開発プロジェクトについて、 金融危機によって市場における資金の調達が60%から70%減少、大 きな影響を受けていると言明。 3.ボリビアの資源開発環境 ボリビアの鉱山・鉱床ポテンシャル 28 −2008年の鉱業投資額は4億ドルに− 主要な投資プロジェクト案件 ボリビアには、大きく分けて3つの鉱床地帯が存在。 ①アンデス山脈造山地帯で、ボリビア国土の42%を占 め、 2200箇所の探査地区および鉱山(銀、錫、タングステ ン、アンチモン、鉛、亜鉛、銅、ビスマス、金など)が存在。 ②先カンブリア紀の地質地帯でボリビア国土の18%で、 100箇所の探査地区(金、白金、ニッケル、鉄など)が存在。 ③ボリビア国土の40%を占めるチャコ地区・ベニ地区平 原で、金、錫、タングステンなどの鉱床の存在が期待。 鉱床名 9億ドル 鉛、銀、亜鉛 エル・ムトゥン鉱床 鉄 21億ドル サンバルトロメ鉱床 銀 1億3500万ドル サラル・デ・ウユ二鉱床 リチウム、ホウ素ほか 2∼3億ドル コルキリ鉱床 亜鉛、錫 2000万ドル サンビセンテ鉱床 亜鉛、銀 3500万ドル ドンマリオ鉱床 金 5000万ドル アマヤパンパ鉱床 金 2500万ドル カラチパンパ製錬所 鉛鋳造事業、銀鋳造事業、 亜鉛精錬事業 1億4000万ドル 主要な鉱物鉱床 アマゾン河流域金鉱床地区 アララス鉱床(金) クラトンデパラグア (CORDILLERA ORIENTAL) (CRATON DEL PARAGUA) 周縁部分の 多金属鉱床地帯 金・マンガン鉱床地帯 ティプアニ鉱床(金) ヤニ・アウカパタ鉱床(金) ラパス 錫地帯 (米ドル) サンクリストバル鉱床 図1 ボリビアの金属資源賦存地区 東山脈 投資金額 鉱物資源名 スンサス(SUNSAS) 多金属鉱床地帯 コチャバンバ オルロ セロ・リコ・デ・ポトシ鉱床 ポトシ 高原地帯(ALTIPLANO) および 東山脈(CORDILLERA ORIENTAL) 多金属鉱床地帯 ムトゥン・タクバカ (MUTUN-TUCAVACA) 鉄鉱石・マンガン 鉱床地帯 ミゲラ鉱床(金、銅) コリ・コリョ鉱床(金、銀) コリ・チャカ鉱床(金) サンタクルス サンシモン鉱床(金) (銀、亜鉛) ドンマリオ鉱床(金、銅) リンコン・デル・ティグレ 鉱床(PGE、ニッケル) サラル・デ・ウユニ鉱床 (リチウム、ホウ素、マグネシウム、カリウム) エル・ムトゥン鉱床(鉄、マンガン) サンクリストバル鉱床(亜鉛、銀) ・アンデス山脈造山地帯:ボリビア国土の42% 、2200箇所の探査地点および鉱山 (銀、錫、タングステン、アンチモン、鉛、亜鉛、銅、ビスマス、金など) ・先カンブリア紀:ボリビア国土の18%、100箇所の探査地点(金、白金、ニッケル、鉄など) ・チャコ地区・ベニ地区平原:ボリビア国土の40%(金、錫、タングステンなど) サンビセンテ鉱床(銀、亜鉛) サンバルトロメ鉱床(銀、錫) 最近15年間に開発した鉱床 : コリ・コリョ鉱床(金、銀)、サンクリストバル鉱床(亜鉛、銀)、ドンマリオ鉱床(金、銀、銅)、コリ・チャカ鉱床(金)、 プキオノルテ鉱床(金)、サンバルトロメ鉱床(銀、錫)、サンベルナルディノ鉱床(金)、サンシモン鉱床(金)など 3.ボリビアの資源開発環境 ボリビア・San Cristobal鉱山生産開始へ 29 − 日本への亜鉛精鉱の安定供給に大きく貢献 − ボリビア鉱業振興の象徴的プロジェクトであるSan Cristobal鉱山は、07年8月に生産 開始、10月、チリのメヒリョネス港から亜鉛精鉱がアジア向けに初出荷。世界有数の 亜鉛鉱山へ。我が国の亜鉛精鉱輸入量の10%強を供給。 <San Cristobal鉱山の概要> ・権益比率:Apex Silver65%、住友商事35%。 ・位置:ポトシ県に位置し、世界最大のウユニ塩湖の近く。標高は3800−4500m。 ・鉱量:2.5億トン(亜鉛1.54%、鉛0.53%、銀550t) ・年間平均生産量:銀550t、亜鉛168千t、鉛64千t、マインライフ:16年 ・最近の動向:07年8月より生産開始、9月22日、亜鉛、鉛、銀のバルク精鉱がチリのメ ヒリョネス港から初出荷。10月18日亜鉛精鉱約9,100トンがアジアの製錬所向けに出荷 08年第2四半期の稼働率:85%。 2008年の亜鉛生産量190千tの見込み。 <地域社会への貢献> ・数百名の住民の移住に伴う学校、病院 等の建設、インフラ整備 ・雇用創出(直接 700名、間接 2100名) ・職業訓練、大学進学への奨学金制度 ・水質汚染、粉塵汚染のモニタリング、環境対策 San Cristobal鉱山 世界の10大亜鉛鉱山(2007年) 順 位 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 鉱山 Red Dog Century Rampura-Agucha Antamina Brunswick Mount Isa Zyryanovsky Tara Iscaycruz Lisheen 国 米国 豪州 インド ペルー カナダ 豪州 カザフスタン アイルランド ペルー アイルランド 生産量 (千t) 575.0 526.9 455.0 322.0 251.8 226.5 200.0 190.9 175.6 164.7 オペレーター Teck Cominco Zinifex Vedanta BHP.B, Xstrata他 Xstrata Xstrata Glencore Boliden Glencore Anglo American 3.ボリビアの資源開発環境 ボリビア、国家管理強化に向けた様々な動き − 07年12月税制強化を柱とする鉱業税制改正法案が成立 − 30 07年5月に発表されたCOMIBOLの管理・権限を強化する内容の大統領令に続き、12月には、税制強化を柱と した鉱業税制改正法案が成立するなど、国家管理強化の動きが鮮明化。08年 2007年 (COMIBOL権限強化) 新たな鉱区はボリ ビア鉱山公社 (COMIBOL)が管理 し、民間企業単独に よる鉱業権取得は認 めないとする内容の 大統領令を公布。こ れにより、今後の新 規鉱区での鉱山活動 は、すべて COMIBOL単独ある いはCOMIBOLと国 内外の民間企業との JVが基本。 5月 12月 (鉱業税制法案) 税制強化を柱とした 鉱業税制改正法案が 成立。 ・金属価格高騰時に、 所得税と鉱業ロイ ヤルティ両者の納 税が義務化 ・追加所得税として、 12.5%が課税 ・鉱業ロイヤルティ の税率は変更なし も、新たに、レアメ タル、また、精鉱中 の銀などの品目が 追加。 2008年 4月 6月 (鉱区売買禁止法案) 下院議会は、鉱区売買を禁止する 旨の鉱業法の一部改正法案を承認。 改正された場合、鉱業法第4条は、鉱 業権は鉱業権者が一時的に有する権 利であること、不動産の所有権とは異 なり譲渡や売却、相続、抵当の対象と はならないことを規程。 現在、上院で審議中。上院は保守 派が多数を占め、ボリビア国内企業の 反発もあることから、何らかの修正が 加わるものとの見方。 (鉱物輸出登録サービス局) 鉱物輸出登録サービス局 (Senarecom)を設置。これによって、 同局は、120日以内に、国内の全 ての鉱山リストを作成し、各鉱山は、 鉱産物輸出に必要な登録番号を 受けることになる。なお、登録作業 は、La Pas 県、Oruro県、Potosi県 で行われる。同局設置の狙いは、 不法な国内流通を排除し、適正な 金属価格を保証するとともに、鉱 産物の輸出統計を整備。 ウユニ塩湖リチウム開発について、パイロットプラント建設は、国主導で行 うことを決定。その後、年間2万t規模の商業プラントを建設する予定であるが、 この段階で、外資を呼び込みたい考え。パイロットプラント建設に向けたラボ ベースでの研究テーマについて、海外から専門家を募り、研究会を立ち上げ、 技術的なアドバイスを受ける用意。 3.ボリビアの資源開発環境 ボリビア・鉱業税制改正のポイント 31 −亜鉛鉱山は価格低迷で適用対象外の方向− 金属価格高騰時に税負担が増加。但し、最近の亜鉛価格下落で、亜鉛鉱山は適用除外の可能性も。 鉱業税制新旧比較 (1)所得税と鉱業ロイヤルティ両者の納税が義務化(金属 高価格時) (2)追加所得税として、12.5%が課税(金属の高価格時) → 但し、Cooperativas(共同組合系鉱山)など国内鉱 山会社は免除。また、地金等の付加価値製品の生 産企業については、7.5%に低減。 (3)鉱業ロイヤルティの税率は変更なしも、新たに、ビスマ スやアンチモン、インジウム等のレアメタル、また、精 鉱中の銀などの品目が追加。 → 但し、国内取引の場合、ロイヤルティは規定の 60%の税率に緩和。 (4)炭化水素資源一次産品、精鉱、炭化水素加工品、鉱 物加工品の輸出におけるIVA(付加価値税)、ICE(特 別消費税)、関税の還付制度は存続。 (5)年間3千万ドル以上の利益を計上した際に課せられる Sur Taxは廃止の方向。 (6)ロイヤルティの85%は生産拠点の所在する県に、残り の15%は、生産拠点所在市町村に配分。配分額の 85%は公共投資に充当。 旧税制 新税制 鉱業補完税 (ICM) ・金属価格により変動 ・法人税との相殺可能 ・名称がロイヤルティに変更 ・金属価格による変動 ・新たにレアメタル等が追加 ・法人税と相殺不可(金属価格 高騰時の場合) 法人税 25% 25% 追加法人税 なし 12.5% (金属価格高騰時の場合) 付加税 25% 廃止の方向 ロイヤルティ税率(一例) 鉱種 金属高価格時の定義(一例) 金 US$400/oz以上 銀 US$5.55/oz以上 亜鉛 US$0.53/lb以上 鉛 US$0.30/lb以上 錫 US$2.90/lb以上 銅 US$1.04/lb以上 金 ($/oz) 銀 ($/oz) 亜鉛 ($/lb) 価格 率(%) 700以上 7 400∼700 0.01×(価格) 400以下 4 8以上 6 4∼8 0.75×(価格) 4以下 3 0.94以上 5 0.475∼ 8.43×(価格) 0.94 -3 0.475以下 1 3.ボリビアの資源開発環境 ボリビア、新興国の攻勢 32 − インド、韓国、中国が相次いで進出 − 資源の国家管理が強まる中、欧米企業が、及び腰で距離を置いている一方、中国、インド、韓国等の新興国が、 資源獲得に向けた鉱山開発投資を活発化。特に、最近、韓国勢の攻勢が目立っている。 <インド:鉄鉱石> <韓国:銅> <中国:基礎調査> ボリビア政府は、2007年7月、イ ンドのJINDAL STEEL AND POWER社とEl Mutun鉄鉱山プロ ジェクトに関する契約を締結。 本契約締結により、JINDALは今 後21億$を投資してEl Mutun鉱床 の50%を40年間にわたって開発す る権利を持つことになったほか、 政府は2007年以降40年間の法的 安定性を保証。 なお、本鉱山開 発によって新たに2万人以上の直 接・間接雇用が創出される見込み。 El Mutunは約400億tの鉄鉱石と約 100億tのマンガンが埋蔵。 ボリビア鉱山公社(COMIBOL)は、 2008年6月、大韓鉱業振興公社 (KORES)とCorocoro銅鉱山共同開発 に向けた協定書に調印。 協定書では、COMIBOLが55%、 KORESが45%の権益比率で、KORES が10百万ドルを投じて1.5年間で周辺探 査を行うとともに、200百万ドルを投じて、 15∼20年間の鉱山開発を行うもの。年 産、銅カソード3∼5万tが見込まれてい る。将来的には、製錬所建設も視野。 モラレス大統領は、本プロジェクトを ボリビア鉱業再興の象徴的なプロジェ クトとして位置づけ。現在、国会での承 認待ちの状態。 今後、亜鉛プロジェクトへの参入も。 エチャス鉱業冶金大臣は、2007年 12月、中国を訪問し、ボリビアでの鉱 物資源開発促進に向けた2つの協定 書に署名。 ・ボリビアの鉱業冶金省傘下の地質 鉱山技術サービス局(Sergeotecmin)が 計画しているボリビア国内の地質図幅 作成調査に対し、中国の江西省地質 鉱物資源探査開発局が、60百万$を 融資するというもので、探査、環境調 査、ベータベース化、研修制度なども 対象。 ・中国開発銀行とのオルロ分析セン ター設立に向けたもので、中国側350 万ドル、ボ側150万ドルを出資し、 Sergeotecminの敷地内に本格的な化 学分析所を設立するもの。 3.ボリビアの資源開発環境 ボリビア鉱業冶金大臣のメッセージ − 法律を遵守する企業の投資拡大を期待 − 33 08年2月、JOGMECの招聘で来日したボリビア・エチャス鉱業冶金大臣は、一連の国家管理強化の 動きに関する見解を表明。 ・利益を国・地域。企業に公平に分配し、Win-Winの関係構築が基本。 ・日本には、探査、鉱山開発、製錬、環境技術等幅広い分野の協力・投資を期待。 <基本方針> 鉱業再興に向けた新たなシナリオとして、ボリビア鉱 業の立て直し、持続的発展に向けて、国家の関与を強 め、計画的・組織的な鉱業振興計画のもと、国家、企業、 地域社会が共に鉱山から得られた利益を公平に分配し、 同国の最大の懸案である貧困問題を解決することを最 終目標。 <鉱業税制改正について> ボリビアは南米の中で最貧国であり、国民が豊かにな るために、様々な経済改革、社会改革を断行しているが、 まだまだ改革半ば。鉱業税制の改革は、決して企業いじ めを意図しているわけではなく、国家と企業と地域社会が Win-Winの関係を構築することが目標。税率はアップされ ているが、制度の透明性、安定性が高められ、また、地方 にも還元される仕組みになっており、長い目で見れば、投 資家にも魅力的なものと確信。 <サンクリストバル鉱山について> サンクリストバル鉱山は、今後のボリビア鉱業発展を 占う試金石となる大規模事業であり、この事業が失敗 すれば、ボリビアの鉱業に明日はない。また、同鉱山 が、地域住民に対する社会開発やインフラ整備等で、 地域コミュニティに多大な貢献をしていることを高く評 価。企業側とは、今後も対話を継続し、未解決の問題 について、双方の考え方を理解し調整して、双方が納 得のいく結論を出していきたい。 <日本への期待> ボリビアは過去数十年に渡り、組織的な探鉱活動が ストップしたため、鉱業が低迷してきた。そのため組織 的・計画的な探鉱が何よりも大事。また、鉱山開発、廃 さい回収、製錬プロジェクトなどにも、日本の投資、技術 協力を求めたい。 4.エクアドルの資源開発環境 エクアドル、資源の国家管理強化の動き −鉱業指令(Mandeto Minero)成立で鉱業界に暗雲− 34 南米で銅資源のフロンティア国と呼び声の高いエクアドルではあるが、環境保全に対する意識の高まり、頻発 する反鉱山運動に加え、Correa政権による資源の国家管理強化の動き等、ビジネス環境が悪化。 そのような中、08年4月、制憲議会において新鉱業法の骨格となるMandeto Minero(鉱業指令)が成立し、休 眠鉱区の権利取り消しや鉱業権取得件数の制限、さらに、新鉱業法公布まで探鉱開発活動を凍結することなど 鉱業活動を大きく制限。鉱業界は、これに一斉に反発。 新鉱業法については、9月、新憲法承認で審議が加速化。焦点のロイヤルティは3∼8%になる見込み。 <鉱業指令の内容> ・2007年12月末時点で、探査活動を行っていない、環境影 響評価書を提出していない、鉱区料を支払っていない全 ての鉱業権を無効。 ・自然保護区、森林保護区、緩衝区内で認可された鉱業権 を無効。 ・個人及び法人ともに、認可される権益数は、3件までとす る。 なお、1鉱区面積の上限5,000ha。 ・新鉱業法発布まで、新規の鉱業権認可を停止。また、手 続き中の鉱業権申請も却下。 ・全ての鉱業活動は、新鉱業法が発布されるまで、凍結。 但し、家内鉱業や共同組合鉱業などの零細・小規模鉱業 は例外。 ・新鉱業法は本鉱業指令の発布から180日以内に発布。 ・鉱業活動を総合的に管理する鉱山公社を設立。 ・鉱業権益の無効、取り消し、鉱業活動の凍結に対して、 政府は一切の経済的補償の義務はない。 → 全鉱区面積の46%にあたる208万ha(1138件)が無効に <新鉱業草案の概要> ・鉱業権期間:30年(更に30年の延長可) ・探査期間:鉱業権益取得後4年間、申請により4年延長可、 F/S期間2年 ・鉱区維持費 探査期間: 10US$ /ヘクタール 採掘期間:20 US$ /ヘクタール ・鉱区面積:各鉱区は最大5,000 ヘクタール ・鉱山労働者:鉱業操業において、最低80%のエクアドル 人雇用の義務化。 ・ロイヤリティ:生産量により3∼8% ・ロイヤリティの配分:鉱山が存在する地域40%、閉山後の 自然復旧基金25%、零細・小規模鉱山改善基金20%、 国庫納付10%、基礎探鉱プログラム実施費用5% ・国による鉱物資源探査・採掘地域指定は、政府が経済 的・社会的必要性を勘案し、国家開発計画に沿って決定。 ・政府が行う鉱山開発は鉱山公社(Empresa Nacional Minera)或いはその合弁会社が実行。 4.エクアドルの資源開発環境 今後の鉱業発展を占う2大銅開発プロジェクトの動向 35 − 鉱業指令で凍結状態 − エクアドルの鉱業振興の試金石となるMiradorとJunin銅開発案件とも、環 境保全問題や地域住民の反鉱山開発運動の激化に加え、鉱業指令により 活動停止の状態。 但し、鉱区返還により、Mirador 周辺等が新たなターゲットになる可能性も。 <Mirador(Corriente Resources 社)> ・2005 年4 月にF/S 終了、政府による EIA承認後、開発工事着手の予定であっ たが、地元住民による反対運動が激化、 2006年12月、政府から、鉱業活動の一 時中断を求められた。 ・2007年5月、エネルギー鉱山省より、拡 張分のEIAにつき、ピット計画や廃さい ダム計画に重大な不備があったとして 却下され、活動停止に。現在、会社側が 指摘された事項について、計画を練り直 し中。 ・初期投資額は399百万ドル、日産 30,000t(銅0.62%、金0.20g/t、銀1.63g/t) で、マインライフは20年とされる。年間の 金属生産量は、最初の10年間で平均銅 62千t、金34千oz、銀394千ozになる見込 み。内部収益率(IRR)は銅価格 US$1.75/lbで17.7%。 <Junin (Ascendant Copper社)> Junin ★ ・1997年、JICA/MMAJによる資源開発協力 基礎調査により発見。その後、環境汚染を 懸念する地元の反対で、中断。2004年より Ascendant Copper社が、プロジェクトを再開。 ・その後も、鉱山反対派によるサイト施設の 放火事件等数々の地元住民との紛争が断 続的に発生。同社は、地元との合意を前提 に2006 年内にプレF/S 開始を目指していた が、進展見られず。 ・2007年9月、 石油・鉱山省は同社に対して、 地元住民との交渉を含むすべての鉱業活 動の停止を命令。大臣は、同社は事業活動 開始前に地元住民との合意を取り付けてお らず違憲行為があったとするとともに、本権 益の取り消しもあり得ると警告。 ・推定鉱量982 百万t (銅0.89%、モリブデン0.04%) 4.エクアドルの資源開発環境 エクアドル、最近の動向 36 −政府、民間からポジティブな動きも− コレア大統領は、開発と環境保護の共生を目指した鉱山開発を推進を表明。ポスト石油と しての政府の期待は高い。探鉱開発解禁に向けて民間企業活動も始動しつつある。 10月、石油開発が停滞しているとの理由から、石油・鉱山大臣が解任。今後、開発推進の 加速化が期待。 <政府のメッセージ> コレア大統領:「政府が目指すのは、経済的・社会的利益、 環境への配慮が伴った責任のある鉱業。 」と強調。大型露天 掘り鉱山開発についても、「自然環境破壊を最小限に食い止 める方策を講じた露天掘り鉱山を認めていく」と言明。 チリボガ鉱山・石油大臣:「石油の可採年数は25年を超 えることはない、従って、ポスト石油資源として、金属資源開 発に国の将来を賭けているとし、大規模鉱山開発を国家プ ロジェクトとして推進していく」との考えを表明。 政府は2月、石油依存から脱却するために、鉱業部門において、国家の最優先事業として以下の8プロジェクトを指定。 ①Mirador(銅 、Corriente Resources) ②Fruta del Norte(金 、Aurelian Resources) ③Rio Blanco(金 、International Metals) ④Quimsacocha(金 、IamGold) ⑤Amazonas(石灰石) ⑥Unacota(石灰石)⑦Ishimanchi(大理石 )⑧Reventador(リン) <開発始動の動き> メジャー企業が銅案件に参入の動き 9月、Xstrata、Codelco、Tongling(中国) 各社がCorriente Resourcesが所有する Panantza-San Carlos銅プロジェクトへの 参画について検討中。同プロジェクトは、 現在、F/S段階にあり、鉱量(Inferred)は 678 百万t、銅品位0.62% Cu, 金0.05g/t 銀1.3 g/t モリブデン0.008%。 Kinrossが金プロジェクトに参画 9月、ブラジルやチリ等で金鉱山を生産 しているKinross(加)が、Fruta del Norte 金プロジェクトを保有しているAurelian Resourcesの80.8%に当たる108,524,181 株を9.6億ドル取得。Fruta del Norteの鉱 量は、58.9百万oz(金7.23g/t、銀11.8g/t)、 開発投資額は約5億ドル。 イランとの技術協力 9月、イラン政府と鉱物資源に関す る2つの2国間協力協定に調印。 ①地質、鉱山、環境に関する包括 的な研究協力 ②リモートセンシング技術を用いて、 エクアドルの金属、非金属資源の ポテンシャルマップ作成 5.コロンビアの資源開発環境 活発化の兆しを見せるコロンビア鉱業 37 −ビジネス環境改善で非鉄メジャーも注目− コロンビアでは、親米派のウリベ政権の下、順調な経済発展が続いているととも に、同国の最大の投資阻害要因である治安状況も、著しく改善。エネルギー鉱山省 によると、国の9割は未探鉱地域で、2019年までに、南米で有数の鉱業国になるこ とを目指しており、そのけん引役は、石炭、金、銅。こうした中、最近、メジャー企業 によるポーフィリーカッパー鉱床などを対象とした探鉱活動が活発化する兆し。 金属資源ポテンシャル地域 5 1 6 2 <生産量> ・世界最大の露天掘り炭鉱(Cerrejon鉱山:BHP Billiton33%、Xtrata33%、Anglo American33%)があり、有数の石炭輸出国。2007年の石炭生産量:7,000万t。 ・Cerromatoso鉱山(BHP Biliton 、2007年ニッケル生産量49.3千t)は世界有数のニッケル鉱山。 ・2007年の金生産量:15.5t。(多くは砂金鉱床) ・2007年鉱産物輸出額:63.5億ドル(全体の21% )、鉱業への直接投資額:1,047百万ドル。 <最近の銅鉱床探査の状況> ・07年、地質鉱業研究所(INGEOMINAS)が実施した入札で、GlencoreがAcandi(Choco県) を、Anglo AmericanがPantanos Pegadorcito (Antioquia県)の銅鉱区を獲得。 ・カナダのジュニア企業B2Goldが、Mocoa (Putumayo県)で銅鉱床探鉱を実施中。 ・Rio Tinto、Valeなども銅鉱区を保有。 7 4 3 Zonas potenciales priorizadas Minerales 1. Nordeste Antioqueño 銅・金・モリブデン 2. Cañón del río Cauca 金・ベースメタル 3. Departamentos de Nariño y Putumayo 金・ベースメタル 4. Oriente Colombiano 金 5. Serranía de San Lucas 金 6. Zona montañoso de Santander 金 7. Departmentos de Tolima yHuila 金・ベースメタル <治安情勢> ウリベ大統領は、2002年の就任以降、FARC等の非合法武装勢力に対し討伐作戦な どの強硬政策を実施。その結果、治安は著しく改善(テロ件数は 2002年:1,526件 → 2007年:387件、誘拐件数は 2002年:2,986件→ 2007年:521件)。コロンビア鉱業会議所 による会員アンケートの結果、安全問題が投資阻害要因と回答した企業は1%以下。こ れは、政府の全面的な支援の下、国家警察・軍を動員し鉱業活動の安全確保に努めて いるあらわれ。また、地元住民との良好な関係構築も治安対策上、重要なポイント。 コロンビア鉱産物輸出額 6.まとめ 4カ国の資源開発環境 5つのポイント 38 ①昨今、ペルー、ボリビアは、日本への資源供給国としてのポジションが急速に上昇。 ②ペルー、ボリビアでは、価格高騰で、従来のベースメタル資源に加え、レアメタル、ウラ ン資源も、今後新たなビジネスチャンスに。エクアドルやコロンビアも、銅フロンティア国 として注目。 ③ポリティカルリスク、社会的リスクなどカントリーリスクは高まる方向。ペルーでは、政府 による許認可プロセスの遅れ等、運用面での課題が多い。 ④ペルー、ボリビアでは、中国企業等の攻勢が強まっており、我が国との資源獲得競争 が激化。 ⑤金融危機及び世界経済の減速による影響がこれら鉱業国に及ぶのは必至。 このように資源開発環境が大きく変化している中、我が国企業による鉱山開発投資が活 発化する方向にあり、JOGMECを含めた官の役割が一層重要になると思われる。今後、 我が国民間企業の円滑な活動に向けて、資源外交の強化、権益獲得支援、及び鉱山開 発に伴う経済協力・技術協力等、戦略的な取り組みを積極的に検討、推進していく必要が あろう。 6.まとめ 資源開発環境の変化を踏まえたJOGMECの 具体的な取り組みと課題 39 ペルー、ボリビアでは、探査、環境の両面からアプローチし、日本企業活動を側面から支援するとともに、大使館、 JICAとも連携し、両国政府に対し日本の資源外交をアピール。今後、エクアドル、コロンビア南米鉱業新興国に対して は、JOGMECの先導的な役割が期待。 <現在の取り組み> <ペルー> ①日本企業への継承を目指したJOGMEC探鉱 プロジェクトの推進 ②JOGMEC鉱害政策アドバイザー派遣 ③鉱害防止技術支援( JICA開発調査)(21年度) ④JOGMEC探査地域の地元住民対策として、草の根 無償資金(大使館予算)の活用したプロジェクト形成 ⑤メタルサルーンの開催(9月鉱山次官来日時) <ボリビア> ①鉱業冶金大臣の招聘(2月) ②政府機関(SERGEOTEMIN)との広域調査実現 に向けた交渉 ③鉱業冶金省へのJICA政策アドバイザー派遣(21年度) ④鉱害防止情報交換会開催の提案 ⑤日本企業による探鉱やリチウム開発への支援 <エクアドル、コロンビア等> ・資源開発環境関連の情報収集に留まっている。 <今後の課題> ①ペルー、ボリビアでは、現在の良好な 関係をベースに、さらに、継続的な対話 推進が重要(例えば、鉱山開発に係る諸 問題を討議するための定期的な政府との 官民対話 等) ②南米鉱業新興国(エクアドル、コロンビア) へのアプローチ検討 ③優良探鉱案件の発掘強化(→金融不安 は、参入側にとってチャンス) ④日本企業への営業強化 ・継続的なニーズ調査 ・JOGMEC支援スキーム(探査、技術等) の活用促進 ⑤金融危機による鉱業への影響を注視
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