通常学級における特別支援教育

通常学級における特別支援教育
ユニバーサルな対応と
個別支援への段階的な対応
Niigata Univ.-Nagasawa Labo.
1.特別な支援を必要する
子どもたち
発達障害、
二次的な問題・二次障害
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子どもが抱える困難
<主な発達障害>
SLD:特異的学習障害
ADHD:注意欠陥多動性障害
ASD:自閉症スペクトラム障害
ADHD
SLD
ASD
「発達障害」でなくても、困難さを抱える子どもが存在する
発達障害とは
• 特異的学習障害(SLD)
– 知的な遅れは見られないが、読み書き計算に困
難さを示す
• 注意欠陥多動性障害(ADHD)
– 不注意、多動、衝動性を示す、行動抑制の障害
• 自閉症スペクトラム障害(ASD)
– 対人関係など社会性の困難さと、こだわりなどの
同一性保持を示す
M:1.9%,F:0.4%(CDCP,2012)
発達障害: 病気<個性
治療<教育、支援
発達障害と二次障害・二次的な問題
虐待・不適切な養育
成功体験の少なさ
自己肯定感の低下
二次的な問題
学習困難・不登校
いじめ・問題行動
対人関係の困難さ
障害の
ない子
発達障害
(一次障害)
二次障害
反抗挑戦性障害
行為障害
反応性愛着障害
外傷性発達障害
適応障害
パーソナリティー障害
専門機関の対応が必要
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反応性愛着障害(RAD)とは
• 生後五歳未満までに親やその代理となる人と
愛着関係が持てず、人格形成の基盤におい
て適切な人間関係を作る能力の障害
• 二つの群
– 抑制型:他者に対して無関心。ASDに類似
– 脱抑制型:部分的な愛着関係の状態に取り残さ
れ、他者に対して無差別に薄い愛着を示す。
ADHDに類似
予後
自制能力の欠如、人間関係構成能力の障害
発達障害にそっくり・・・(第四の発達障害)
RADへの対応
• 疑わしきは児相に通報を
虐待は違法であり、止める義務がある
• 児相と連携して対応
学校が中心ではない。教育には限界がある
• 学校ができることを実施する
子どもができることを認め、自己肯定感を育てる
ADHDへの対応とは違った対応が必要です
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外傷性(複雑性)発達障害(岡田、2006)
• 母親の精神的な問題(うつ、双極性障害、適応
障害、境界性パーソナリティー障害など)が、子
どもの心や行動、発達に問題を起こす
– 多動と学習上の問題、攻撃行動、反抗、いじめ、不
登校、虚言、盗癖、非行、うつ、不安、依存症、性
的逸脱
産後うつ。出生前のうつも関係しているかも?(Leis,2013)
• 子どもの年齢が小さいほどその影響は大きく、
後の人格形成に重大な影響を及ぼす
心理的虐待のようであるが、虐待とはいえない
母親のメンタルヘルスへの支援の必要性(US)
Dougherty(2013);Dubois-Comtois(2013)
境界性パーソナリティー障害
•
•
•
•
•
•
•
•
見捨てられることへの極端な不安
対人関係が両極端で不安定
めまぐるしく気分が変わる
怒りや感情のブレーキがきかない
自殺企画や自傷行為を繰り返す
自己を損なう行為に耽溺する
心に絶えず空虚感を抱く
自分が何であるかわからない
岡田(2009)
カウンセリングが効かない。深入りせず専門機関へ
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パーソナリティ障害を支える(一部)
• 同じスタンスで向かい続ける
同じペース・距離を保ち、関心を注ぎ続ける
• 本人の主体性を重視する
自己決定、自己責任が基本
• 目的と枠組みを明確にする
方法にこだわるのではなく、目的を追求すること
• 穏やかで冷静な態度をとる
過剰反応しない(「そういう言い方はしない方がいい」)
ルールをきめ、ルールに従ってのみかかわってゆく
特別支援教育の体制
連携
・保護者
・関係機関
校内体制
特別な場での教育
個別計画
通級指導教室、特別支援学級、特別支援学校
支援会議
特別な対応
合理的配慮
障害特性に
応じた指導
通常学級での基本的対応
自己決定と自己肯定感の育成
学習のユニバーサルデザイン、スクールスタンダード、段階的な対応
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学校の法律
2.共通する対応
自己決定と自己肯定感の育成
学習のユニバーサルデザイン
スクールスタンダード
段階的な対応
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(1)自己肯定感を高めるかかわり
• 子どものやる気を高めるかかわり
親しく声をかける、子どもの話に関心を持つ
• できたという成功体験をあたえる
できることから始める、無理のない目標設定
• 自分はできるという自信を育てる
当たり前のことができたらほめる、みとめる
• 自分でも役に立つという体験を与える
子どもに仕事を与え、感謝する
係活動、ボランティア体験
できたことを認め、ほめてのばし、自分を好きになる
(2)自己決定を支援するカリキュラム
学習活動の自己管理
学習内容の自己評価
(事例:後述)
自己管理
自己主張
自己理解
自己肯定感
自己解決
問題への気づきと解決の意志
解決方法を知り、実行する
結果をふり返り評価する
自分の気持ちや意思を、ことばで
(社会的に受け入れられる表現で)
相手に伝える
してほしいことを訴える
自分の特性や能力を知る
自分を客観視する
自分にあった進路をきめる
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自己決定=自分の職業や将来の生活を自分できめること
(3)学習の
ユニバーサルデザイン
どの子も主体的に参加し、
わかりやすく学べる学習条件
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特別支援教育の問題点
• どの子が特別な支援が必要か、判断がむず
かしい
学習障害? 学力不振?
• 実態把握が困難、時間がかかる
• 要支援を受け入れない場合がある
– 保護者、本人
• 要支援の子どもが複数在籍する場合、教師
一人で対応困難
専門的な判断のむずかしさ、個別対応の難しさ
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問題に対応:UDL
• 一つの教室で、学力差・能力差への対応
• 一つの指導法で全員が学ぶことが困難
• Universal Design for Learning(UDL)
– 障害のある子どもを含む、全ての子どもがわかり
やすく、参加できる学び(授業)
個別対応の前に、
まずは全員を対象とした取り組みを
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UDLの条件
• 全員を等しく扱い、障害を区別しない
資料
• 3つの構成要素
– わかりやすい、参加しやすい、一人で学べる
• 必要とされる客観的な到達目標の設定
– 達成できない子へ、より強い介入を準備する
• 指導前後で全員をアセスメントし、指導の有
効性を確かめる
• ICTの積極的導入
UDLはインクルーシブ教育を実施するためのもの
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特別支援教育とUDL
• 特別な指導
アセスメント
(実態把握)
ニーズにあった
目標
指導
• UDLを取り入れた指導
評価
教えたことがわかっているかどうか、
全員対象に調べること
UDL
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プログレス
モニタリング
学習のユニバーサルデザイン
1. 誰もがわかる授業
– 多様な提示方法の提供
教師 → 子ども
2. 学習活動への主体的な参加
– 多様な表現方法の使用
子ども → 教師
3. 自己解決・自己評価
– 主体的な学びの保障
子ども自身で
UDL実施のための3つの構成要素(資料参照)
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授業のUDでよく使われる手法
• 学習参加を促進する
– クラス内の理解促進(学びあい)、ルールの明確
化、刺激量の調整(シンプルな環境)、場・時間の
構造化(見える化)
• 学習理解を促進する
– 焦点化、展開の構造化、視覚化、身体の活用(動
作化・作業化)、共有化(学びあい)
• 学習の習得を促進する
– スパイラル化(反復学習)
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小貫(2013)
授業におけるUDLの適用(例)
授業の展開
UDLの方法
(基本的な流れ)
(チェックリストより)
具体例
目標提示
授業の内容説明
学習スケジュール表(1提示)
教師の説明
大型ディスプレイ(1提示)
要点を視覚的に示し、わから
何でも言える雰囲気(2表現) ないときはすぐに聞ける体制
練習問題
問題の解き方プリント、ペア
学習・グループ学習(3学び)
練習問題を自分(達)で解ける
支援
発表
どんな意見でも発表できたこ
とを評価(2表現)
正誤は正しく伝えるが、ほめ
る点をしっかりほめる
本時の確認と評価
板書の工夫(1提示)
確認テストと自己評価(3学
び)
本時の重点について小テスト
し、わかったかどうか自己評
価する
授業の流れと、学習の目標
(ポイント)を示す
UDLに基づく自己管理の導入
• 導入
– 前時の確認
– 学習のルール・学習内容の提示
• 自己管理チェックリスト
• (授業)
• 自己管理チェックリスト+小テスト
– 学習のルール・学習内容の自己評価
学習活動の自己管理 → 学力の向上
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自己管理チェックリスト
小テストの成績
学習活動の自己評価
学習内容の自己評価
• 学習活動の明確化
• 学習内容の明確化
チェックリスト
わかりやすい提示方法
参加しやすい条件
一人でできるための支援
• 学習活動の自己評価
• 学習内容の自己評価
チェックリスト
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小テスト
学習の自己管理と見通しを持たせる授業(案)
導入
自己管理の
内容
学習内容(学力)
・本時の基本内容
・到達目標(身に
つける学力)
学習活動
・本時の主な活動
(書く、読む、聞く、
切る、吹くなど)
強化子の提示
・できたときの
対応(賞賛・ご
ほうびなど)
目標確認
板書、チェックリス 板書、チェックリスト
トなど
など
強化子の紹介
目標通りできたときにもらえるポイ
ントやバックアップ強化子
展開
セルフ
モニタリング
適宜モニタリングを
複数の目標があ
る場合や、途中確 促す、もしくは教師
がモニタリング
認が必要な場合
実施
学習目標到達
や活動参加を
強化(トークン
など)
終結
自己評価
・小テスト
・チェックリストに
よる自己評価
バックアップ強
化子の提示
・チェックリストによ
る自己評価
・教師の評価
(トークンと交換できる)教育的な
ごほうびや権利など
次回の
導入時
強化と目標
確認
小テストの結果
フィードバック
(略)
(略)
学習の自己管理と見通しを持たせる授業(例)
自己管理の
内容
学習内容(学力)
学習活動
強化子の提示
・1位数と1位数との
加法ができる
・計算する、ノートに書
く、発表する、話を聞く
・授業中と授業
後にトークン提
供
導入
目標確認
・○+○の計算問
題を10問正答す
ることを提示する
・板書を書くこと、計算
すること、答えを発表
すること、人の話を聞
くことを確認する
・授業中と授業
後に、学習活動
の実行に対して、
ポイントを与える
ことを告げる
展開
(セルフ)
モニタリング
・プリントの計算問 ・授業中1回、学習
題を実行したとき、 活動の実行を全児
チェックを入れる
童に確認する
・授業中1回、学
習活動の実行確
認後、ポイントを
与える
終結
自己評価
・代表的な○+○
の問題5問の小テ
ストの実施
・授業後、学習活
動の実行確認後、
ポイントを与える。
ごほうびは帰り
の会で提供する
ことを告げる
授業後
次回の授業でテス
ト返却と確認
・授業後、学習活動
の実行を全児童に
確認する
帰りの会で
シールを与え
る
UDLからの段階的な対応
1. あくまでも、失敗(学習困難)させない予防的対応
2. UDLで全員の学力を保障することはできない
3. 障害の有無にかかわらず、到達目標をクリアでき
なかった子には、より強い介入を
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学びの段階
学んだことを使う、自分から学ぶ
5.
4.理解している
3.活動している
2.参加している
1.問題行動はない
インクルーシブ教育でもUDLを導入し
-1~∞ 問題行動
どの子も「理解できる」教育を提供すべき
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UDL導入の手続き
1. クラス(学年)の数値目標をきめる
各教科。ミニマムエッセンシャルズ
2. UDLの具体的な方法や手立てを選択する
チェックリスト、様々な実践、文献など
3. 指導後に全員のアセスメント
到達度テストなど、数値化を図る
4. 到達できなかった子ども(NR)を特定
5. NRへの段階的な支援
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授業中の個別指導、放課後、能力別編成、家庭学習、長期休暇
段階的な学習支援
• 段階1(全児童生徒)
基準は学校独自に設定
– 通常学級にてUDLを取り入れた教育
– 指導とアセスメントを同時進行
一斉
• 段階2(段階1で基準に達しない児童生徒)
– 小グループによる補習(基礎的内容)
– 指導とアセスメントを同時進行
• 段階3(段階2で基準に達しない児童生徒)
– 個別指導、検査の実施、教育措置変更の検討、
専門機関との連携、合理的配慮
Niigata Univ.-Nagasawa Labo.
個別化
検査の実施
専門機関と
の連携(保護
者への説明)
段階的な介入(例)
特別編成
支援学級
3:個別指導
繰り返し学習、継続的な評価
合理的配慮
放課後
通級
2:少人数指導
繰り返し学習、継続的な評価
学級
1:UDL
事前、事後テスト
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学びと学習のユニバーサルデザインの比較
学びのユニバーサ
ルデザイン
学習のユニバーサ
ルデザイン
対象
障害のない子・発達障害
(の可能性のある子)
障害のない子・障害のある
子(すべての障害種)
教育の場
通常の学級中心、特別支
援学級・特別支援学校
通常の学級
内容・方法
主に教師サイドの提示方
法の工夫
提示方法、表現方法の自
己解決などの3要素
学力向上の有効性
データが示されているわけ データとして示されている
ではない
(おおむね80%に有効)
段階的な対応
設けられていない
基準に到達できない子へ
の3段階の対応
教育理念
特別支援教育
インクルーシブ教育
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(4)スクールスタンダード
全員を対象とした生徒指導から
段階的な対応へ
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段階3:個別対応
基準に達しない生徒・一対一対応
段階2:特別な指導
基準に達しない生徒
段階1:スクールスタンダード
通常学級で全員を対象
罰を与える
特別な指導をする
Niigata<
Univ.-Nagasawa
Labo.
スクールスタンダード(関戸、2010)
学校の法律
• すべての児童生徒にとって、生活しやすく学
びやすい環境の提供
• 児童生徒に求めること(ルール)を共通に
• 児童生徒の視点で学校生活を見直す
• 学校、学年で支援方法を統一する
• 障害の有無を問わない
統一ルールと、ルールに従わない場合の対応手続き
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期待される成果
• 問題行動を起こしそうな子どもを早めに発見
する
• 当たり前のことをしている子どもが評価される
• 学級崩壊になる前に、早めに対応する
• 診断されていない子どもにも適用できる
• 支援が必要な子どもが複数いても、担任一人
でも、ある程度特別な対応ができる
多様な実態に早期に対応できる予防措置
組織的予防プログラムの有効性(Debnam,2013)
手続き
一斉
• 段階1(SS)
– クラス全員が守るべき(守れる)目標をきめる
– チェックリストで自己評価する
– できている子ども全員を評価する(ご褒美)
• 段階2(3)
個別化
– 2:基準に到達できなかった子どものニーズにあ
った対応(例:セルフモニタリング)
– 3:包括的対応(学習支援、保護者連携、障害特
性への対応、自己肯定感など)
Niigata Univ.-Nagasawa Labo.
段階1:SS
自分で毎日振り返り(自己評価)、
担任が、できていることをほめる(叱らない)
段階2:セルフモニタリング
• 話し合って約束をきめる
約束「手をあげてから発言する」にします!
• 実行したかどうか、記録する
チェックリストを用い、記録することを教える
記録することが行動抑制になります
• できたことを評価する
「手をあげながら言えたね!」
自分で行動を監視(モニタリング)→行動抑制
約束を守る → ほめてもらえる → 自己肯定感
段階2:セルフモニタリング(中)
• 自分たちで守れる目標、態度をきめる
実行可能な、当たり前の目標
• 実行したかどうか、生徒が記録する
チェックリストを用い、記録することを教える
記録することが行動抑制になります
• 一日1回、できたことを評価する
「ちゃんと約束を守っているね!」
自分で行動を監視(モニタリング)→行動抑制
約束を守る → 評価される → 自己肯定感
(参考)問題行動の自己解決
• 感情的にならず冷静に聴く
「何があったか、ゆっくり話してごらん」
• 何が悪いのかを本人に気づかせる
「それはいいことかな」「どんな約束だったの?」
• どうすればよかったのか(次どうするか)本人
と考える
「『やめて』って言う、がまんする、先生に相談する、どれができそう?
• 少しでもできたことを誉めてのばす
「よく我慢できたね」「今度ははっきり言おうね」
個別に約束をし、教師が評価する(褒める)
段階3:包括的な対応(個別)
事前の約束
リハーサル
SST
望ましい行動
悪くない状態
ほめる
トークン
問題行動
教育的無視
教育的罰
大人 発達の 自己 障害
の支援 遅れ 肯定感 特性
基本的な問題・対応
NiigataUniv. - Nagasawa Labo
親の
しつけ
検査の実施
専門機関との連携
保護者と学校との協働作業
• 保護者に現状を認識させ、危機感を持たせる
• 学校と定期的に話し合う
• 家庭で子どもと約束をし、結果を定期的に振
り返る
– 親が子どもをコントロールする
– 親が子どもをコントロールできるように支援する
• 必要に応じて専門機関と連携する
– 児相、警察、家裁、教育センターなど
Niigata Univ.-Nagasawa Labo.
段階3:個別対応
基準に達しない生徒・一対一対応
段階2:特別な指導
基準に達しない生徒
段階1:スクールスタンダード
通常学級で全員を対象
ルールと手続きの説明責任。有効性の証明
Niigata Univ.-Nagasawa Labo.
SSからの段階的な対応
• ルールと手続きの確認
– 学習の個人目標と教育的ご褒美設定
• 逸脱行動への対応(第1段階)
できているこ
と、問題を起
こしていない
ことを強化
– 活動しない→要観察(声がけなし)
– 軽微な問題→ルールか活動の提示
– 軽微な問題もしくは重大な問題→警告、タイムア
ウト
• タイムアウト(第2段階)
– クールダウン、本人の話を聴く
– 今後の行動の自己選択
説教せず、振
り返りと今後
のことを冷静
に考えさせる
(2)
• 特別な活動(第2段階)
– ルール違反ではなく、通常学級の授業に入れな
い場合
– 本人のニーズに合った学習を別室で実施
• 保護者対応(第3段階)
– タイムアウトでも対応できないとき、保護者に連
絡し、家庭で指導する
家庭訪問の実施等
• どの段階でも、できていることをしっかり評価
する
– 個別に教育的なご褒美を与える
Niigata Univ.-Nagasawa Labo.
授業展開の工夫(例)
個別課題の設定
実行できた
実行しない
問題行動
トークン
観察
警告
好きな活動
ルールを繰り返す
タイムアウト
大事なこと
•
•
•
•
•
当たり前のことができていたら認める
問題を起こしていない状態を評価する
当事者以外の生徒も、同じように評価する
それぞれにあった「ほめことば」を準備する
多少の逸脱は見ないふりするが、叱るときは
「ルール違反」「約束違反」で責めること
あくまでも、叱る<ほめる、認める
Niigata Univ.-Nagasawa Labo.
重要:子どもの気持ちを聴く
問題行動
意思
感情
ストレス
本人の訴えをよく聴く
本人の訴えを「翻訳」し、再提示して、一緒に考える
Niigata Univ.-Nagasawa Labo.
子どもの気持ちに添った対応
保育園に登園し、玄関で先生に
あった。「おはよう」と言わなけれ
ばならない。しかし、
お外に出たい
(子どもの気持ち)
「おはよう」
でしょ!
(ここでの課題)
「外に出たいんだ~」
「お外に出たいよね~」
「お外に出たい?」(望ましい表現)
泣くことが減少
外に出る(強化)→あいさつ(課題に戻る)
子どもの訴えを十分聴いてあげる。
状態が変化したら強化する。
問題行動は「問題」ではない
• 問題行動に至るまでの本人の経験や想いを
知る
• 「相手」に対する感情や想いを聴く
• どのような内容、表現も受けとめる
• 「相手」に対する否定的感情を受けとめる
その過程・結果から「相手」の気持ちを理解し、
「何がいけなかったか」の気づきにつなげる
「反省」を急がせない。
Niigata Univ.-Nagasawa Labo.
3.特別な対応
合理的配慮
障害特性に応じた指導
Niigata Univ.-Nagasawa Labo.
(1)合理的配慮
• 障害のある子どもが、他の子どもと平等に 「教育を受
ける権利」を享有・行使することを確保するために、学
校の設置者及び学校が必要かつ適当な変更・調整を
行うことであり、障害のある子どもに対し、その状況に
応じて、学校教育を受ける場合に個別に必要とされる
もの(文部科学省)
障害のない子どもと、同じスタートラインに立つための支援
障害者基本法にも明記されている
Niigata-Univ. Nagasawa-Labo.
(2)基準の変更(Modification)
小
1. 教育方法の変更
– 教育内容の提示方法の変更、答え方の変更
2. 教育内容の変更
– 到達目標の変更、難易度の変更
3. 個別のカリキュラムの作成
– 下学年の教育内容
– 機能的スキル、生活スキル、社会的スキル
– 領域教科をあわせた指導
大
学習障害
知的障害
実態に合わせ、指導内容や目標を
変更(modification)
合理的配慮の例(一部)
• 言語障害:代替手段によるコミュニケーション
(ICT機器の活用)
• 視覚障害:点字の教科書
• 肢体不自由:車いすの使用
• 学習障害:音声やコンピューターによる読み
上げ、漢字にふりがな、資料の拡大
• 自閉症:視覚情報の活用
文部科学省
Niigata-Univ. Nagasawa-Labo.
ICTの積極的活用
• 読み上げソフト、漢字にカナを振る
• 情報を制限する:特定の音や声を選択する
• キーボード入力、音声入力:紙と鉛筆による
書字からの開放
大事なことは印刷物と紙、鉛筆活動ではなく、
「学習すること」「内容を理解すること」
「あなただけ特別なことはできない」は、
差別になる可能性があります
Niigata Univ.-Nagasawa Labo.
テストの合理的配慮
参考
(Test Accomodation)
• プレゼンテーションの仕方
読み上げ、手話、点字、仮名ふり、拡大
• 反応の仕方
パソコン、口頭、特別な筆記具、手話
• セッティング
別室、個別、付き添い
• 時間延長
鳥取大学:ワープロ小論文回答を認める(合格)
奈良県:高校入試で代読を認める
(2)障害特性に応じた指導
Niigata Univ.-Nagasawa Labo.
特異的学習障害(SLD)
学習のつまずきへの対応
Niigata Univ.-Nagasawa Labo.
学習の困難さ
特性の把握:WISC-Ⅳ、DN-CAS、KABC-Ⅱ
注意
(Attention)
見通し
(Planning)
自己管理の指導
認知特性への配慮
振り返り
心理的安定
(Self-management)
理解に必要な知識
(Knowledge)
読み書き計算
意欲
個別学習支援
(Literacy)
理解能力
(Comprehension)
知的能力
(Intelligence)
LDへの特別な支援
Niigata Univ.-Nagasawa Labo.
特別な教育
学習支援
• 学習への動機付け(興味関心)を高める
• できることから始める
• 子どものペースに合わせ、繰り返し教える
• 個別指導の保障
授業の中で個別に教える、実態に合わせたグループ編成
補習など授業時間以外に時間を確保
通級指導教室や特別支援学級の活用
資料:算数(1年)チェックリスト
学習支援の過程
教科ごとのアセスメント(資料)
実態に合わせた指導
自己評価
カード
(達成したら
シール・スタン
プ)
授業の中での個別指導
授業以外の個別指導
結果のモニタリング
単元ごとの
達成度評
価カード
(単元ごとに合
格した日にちを
記入)
アセスメントと評価・系統的な指導、個別指導
4.教育の体制
チームアプローチ
保護者連携
個別計画
Niigata Univ.-Nagasawa Labo.
全教員
生徒
保護者
(1)支援会議
(高等学校の例)
コーディ
ネーター
教員
個別の教育支援計画
生徒指導
保健室
支援チーム
行政
医療・福祉
機関
ハロー
ワーク
生徒本人を入れ、話し合いをし、結果を書面にまとめる67
支援計画作成の手続き
1. 要支援児童生徒の認定
気になる子、自己申告など。診断にこだわらない
2. 支援チーム組織と支援会議の開催
コーディネーター、必要なメンバー、本人参加、協働作業
3. 支援計画作成
自己決定支援。合意できた内容を書面にまとめる
4. 実践と評価
できたことを認め、次につなげる。データの活用
Niigata Univ.-Nagasawa Labo.
発達障害の専門機関
• それぞれの特性を知る
• 必要な情報を整理する
• 主訴を明確に
• できれば保護者と一緒に
• 資料の入手
• わからないことは質問
専門機関
県教育センター
教育事務所(専門相談員)
市町村教育センター
特別支援学校
児童相談所
発達障害(者)支援センター
障害者就業・生活支援センター
地域生活支援センター
専門機関の特性を知り、有効活用を
生徒指導の校内連携
• 生徒指導主任+教師
– SSに基づき毅然と対応
• 養護教諭+SC
– 生徒の聴き役
– 訴えを聞き流す
役割分担で統一された校内支援体制
Niigata Univ.-Nagasawa Labo.
効果を継続させるために
• 学校として取り組む課題の優先順位をつける
こと
• 実行のためのチームを編成し、実行の記録を
とり、記録を次の指導に活用すること
• 関係機関と連携し、外部の支援を受け入れる
こと
• 実践の積み重ねにより職員の力量を向上さ
せること
McIntosh(2013)
Niigata Univ.-Nagasawa Labo.
(2)保護者と連携=協働作業
• 相手の立場を尊重する
• 一緒に考え、一緒に指
導する
• 問題の原因追及より解
決を目指す
• それぞれの立場ででき
ることを考える
• 話し合いを継続する
「お子さんのことで悩んでいるんじゃないですか?」
Niigata Univ.-Nagasawa Labo.
ペアレントトレーニング(PT)
• 家族を包括的に支援することと、「親は最良の
指導者」という考えに基づく
• そこで、保護者を子どもの最良の養育者に育
てることをPTという
• そのための理論や技術、そしてそれらを学ぶ
学習会をPTプログラムという
親が自信を持ち、子どもの将来に期待を持てば、
予後は良好(Doren,2012)
人的支援
検査・行動観察
認知特性、IQ
行動特性・問題行動
社会的スキル・対人関係
補助教員、ピアチューター
座席、クールダウンの部屋、
学習場所
教示の仕方
教材・機器
願い
理解のための支援教材、
ICTの活用
本人の願い
保護者の願い
教師の願い
カリキュラムの修正
(学習への支援)
個別の年間指導計画
補習・補講
各教科の習熟度
学習の遅れ
実技系教科の得意不得意
(最小限の内容)
物理的支援
指示、説明、提示の工夫
学力の実態把握
個別の教育支援計画
個別指導
問題行動
SST
日常生活の指導
評価
支援の有効性
継続、打ち切り、新設
評価
学力向上
問題行動の改善
子どもの成長発達
指導の有効性
個別の指導計画
まとめ
• UDLの目的は学力向上
「わかる」ことが意欲につながり、自己肯定感が高まる
• スクールスタンダードの目的は「良き人」に育
てること
ペナルティーより、できていることをほめ、自信を持たせる
• まずは全員を等しく扱い、段階的にサービス
を提供する
診断にこだわらない、しかし説明責任を果たすこと
Niigata Univ.-Nagasawa Labo.
長澤研究室
http://www.ed.niigata-u.ac.jp/~nagasawa/
メールマガジン、特別支援教育・発達障害の情報、資料
Niigata Univ.-Nagasawa Labo.