InterBEE2013 で期待される 衛星通信・衛星放送分野の動向

InterBEE2013 で期待される
衛星通信・衛星放送分野の動向
神谷 直亮 今年も世界各国で開催されて賑わった
車 上 に は 直 径 40cm の パ ラ ボ ラ ア ン テ
近エーティコミュニケーションズ社が販売
「CES」
「NAB Show」
「BroadcastAsia」
ナ、GPS コ ン パ ス、80W SSPA な ど が
に力を入れているアイデレクト社のエボリ
「IFA」「IBC」がすべて終了し、締め括り
搭載される。レドームに入ったパラボラア
ューション X5 ルーターが搭載される予定
となる「InterBEE2013(国際放送機器
ンテナは、仰角が 15 度から 75 度、方位
である。同ルーターの特色は、Ku、Ka、
展 2013)」を迎えることになった。
角は 360 度をカバーする性能を誇る。今
X バンドいずれにも対応でき、SCPC と
1965 年 に 始 ま り、49 回 目 を 迎 え
や HDTV が主流となり 4K が視野に入っ
TDMA の両方式による伝送が可能という点
る「InterBEE2013」 は、11 月 13 日
てきたことで伝送速度が課題であるが、80
にある。
から 15 日まで千葉市美浜区の幕張メッ
W SSPA を搭載しているので、スカパー
小 型 可 搬 局 に 関 し て は、 お 馴 染 み の
セで開催される。期待は、これに先立ち
JSAT の JCSAT やスーパーバード衛星を
SWE-DISH CCT シリーズ、同 IPT スーツ
10 月 1 日から 5 日まで、同じ幕張メッ
使えば、最大 15Mbps の伝送を達成でき
ケースに加えて、アンテナ直径 60cm の新
セで行われた「CETEC2013」を踏まえ、
るという優れものである。今回さらにどの
型「ウルトラポータブル」とヘリコプター
関係各社がどのように 1 年間を締め括る
ような新機能が追加されたのか期待に胸が
搭載用アンテナ「VMT-1220 HE」が紹介
のかにかかっている。特に、勢いが見ら
膨らむ。
される。
れる 4K とやや低調になりつつある S3D
三菱電機の専売特許となっているヘリサ
「ウルトラポータブル」は、
「バックパッ
に対する各社の対応が注目される。
ットムは、ヘリコプターによる上空からの
ク(BACKPAC)
」とも呼ばれ、折りたた
ハイビジョン撮影映像を、衛星を使ってリ
み式フリップ型アンテナ、GPS、磁気セン
本稿の主題である衛星通信・衛星放送の
アルタイムに全国に配信できる通信システ
サー、ビーコン受信機、電子傾斜計、モデ
分野で出展を決めているのは、三菱電機、
ムである。災害時における活躍が期待され、
ムで構成されている。総重量は 12kg と超
エーティコミュニケーションズ、マウビッ
今年 3 月末に 1 号機が総務省消防庁に納入
軽量で、大人が一人で背負って運べるし、
ク、KDDI、松浦機械製作所、理経、東芝で
されている。
長距離輸送の場合は、旅客機の手荷物とし
ある。出だしから余談になるが、10 月 17
コ ー デ ッ ク に つ い て は、4K8K 用 の
て扱ってもらえるのが特色だ。伝送速度に
日から 19 日まで東京ビッグサイトで開催
HEVC/H.265 に準拠する最新機器が披露
ついては、
「自社の東雲テレポートに設置さ
された「危機管理産業展 2013」には、ス
されると思われ期待が高まっている。
れているインテルサット用ハブ局を使うケ
カパー JSAT が大きなブースを構えていた。
ースで 2 ~ 3Mbps は出せる。もっと性能
東日本大震災以来、同社には、衛星放送よ
エーティコミュニケーションズ社は、米
の良い衛星にアクセスできれば、それ以上
り危機管理ビジネスという方針が出ている
ロックウエル・コリンズ社傘下の SWE-
のスピードが出る」という。衛星の捕捉は
ように思われた。昨年の「InterBEE2012」
DISH 製品の総代理店としてよく知られる
手動調整であるが、特筆すべき点は、LCD
では、ソニーの 4K 映像配信に JCSAT-5A
が、その後、アメリカのアイデレクトとバ
パネルに表示されるデジタル・インジケー
衛星の中継器を貸して間接的に関与してい
イアサット、イギリスのギガサットなどの
ターが捕捉までのガイドをしてくれる。一
たが、ブースを設置してもっと積極的に参
製品も扱うようになった。今回、同社は、
切付属品なしで、
「バックパック」だけを持
2 台の車載局と 3 基の可搬局を出展する。
っていけば、どこからでも通信ができ、携
車載局の 1 台は、日産エルグランド車の車
帯電話のように手軽に開いてすぐ使えると
今年の何よりも良いニュースは、昨年出
上に走行中でも通信が可能な自動追尾アン
いうのが設計思想である。つまり、衛星通
展を取りやめた三菱電機がカムバックする。
テナを搭載しているのが特色だ。アンテナ
信も携帯電話並みに便利にしようという意
同社は、今年、衛星自動補足 VSAT、ヘリ
のメーカー名がまだ公開されていないが、
図がにじみ出ている製品と言ってよい。
サット通信システム、最新鋭のビデオコー
今回どのような報道がなされるのか楽しみ
バイアサット社の Ku バンド対応「VMT-
デックを 3 本柱にして出展するという。
である。
1220 HE」移動体アンテナは、まだプロ
衛星自動補足 VSAT については、一昨
も う 1 台 は、 車 上 に SWE-DISH 社
トタイプとのことであるが、ヘリコプター
年注目を浴びた小型衛星通信車載局を出展
製 の CCT120 ド ラ イ ブ ア ウ ェ イ( 直 径
が飛行中でもブロードバンド IP 接続を可能
し、新機能を PR するものと思われる。ベ
120cm)とカメラ付き伸縮ポールを搭載
にする。アンテナサイズと伝送速度につい
ースとなる車体はトヨタ・バンガードで、
した「スマート SNG」だ。車内には、最
ては、
「直径わずか 30cm。双方向 4Mbps
加して欲しいものである。
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FDI・2013・11
InterBEE2013
【写真 01】 エーティコミュニケーションズ社は、今回も衛星自動追尾 【写真 02】 エーティコミュニケーションズ社の新兵器として期待されるバックパック型
可搬衛星通信システム。
アンテナを搭載した車載局を出展する。
の伝送を実現できる」という。ミソは、ブ
レードの回転によるデータロスを修正する
ソフトにあるようだ。
浜松市に本社を構え、東京・東五反田に
東京営業所をオープンしているマウビック
社は、イギリスのアドベント社の衛星地球
局設備、オランダのニューテック社の変復
調器、スウェーデンのエリクソンのコーデ
ックなどの販売代理店になっている。さら
に、これらの機器を駆使する随時衛星映像
伝送サービス事業者としてもよく知られる。
今回同社は、アドベント社の新製品として
【写真 03】 マウビック社のブースでは、M-SAT の最新版に
注目が集まる。
【写真 04】 理経は、イスラエルのノベ
ルサット製のモデムを出展する予定。
ア ン テ ナ 直 径 90cm の「M-SAT」 を 出
LAN システムは、松浦機械製作所特製の 2
9100S」を訴求していたが、昨年は衛星伝
展する。一昨年紹介されたニューズライト
軸雲台で稼動し、地上系と衛星系との接続
送機器が姿を消していた。今年は、どのよ
を実現する。
うな最新鋭の機器が紹介されるのかブース
(NewsLite)をさらに発展させた小型可搬
局だ。
を訪れるのを楽しみにしている。同じこと
ニューテック社の製品としては、M シリ
KDDI は、 イ ン マ ル サ ッ ト 社 の イ ン マ
が、芙蓉ビデオエイジェンシー(FVA)に
ーズの変復調器とクリーン・チャンネル・
ルサット 4 シリーズ衛星に対応する多様
ついても言える。一昨年テレビ埼玉に納入
テクノロジー(CCT)が目玉となる。
な通信システムを例年通り出展するとい
した車載局を初出展して以来、音沙汰無し
エリクソンのコーデックに関しては、最
う。昨年紹介された上り、下りともに最
だ。今年は、どのような工夫を凝らした車
近インテルサットやユーテルサットによ
大 492Kbps の 伝 送 が で き る と い う ヒ
載局が出展されるのか、ぜひ立ち寄ってみ
る 4K 衛星伝送トライアルで脚光を浴びて
ューズ・ネットワーク・システムズ社の
たいブースである。
い る「AVP2000」 と「RX8200」 が 紹
「HNS9201」型 BGAN ターミナルに加え
介 さ れ る。2 台 で 4K (1080p、4:2:2、
て、イギリスのコブハム社製の「エクスプ
アプリケーションの面では、今年もサテ
10bit) の符号化、4 台で復号化を実現する
ロアラー 710」を 2 台ボンディングする
ライト・コミュニケーションズ・ネットワ
サイマルシンク機能を有しているのが特色
ことで 1.2Mbps の伝送を可能にする新兵
ーク(SCN)とミハル通信のデモが注目さ
である。
器が登場する。
れる。SCN は、JCSAT-3A 衛星を使った
徳島市に本社を置く松浦機械製作所は、
理経は、イスラエルのノベルサットとア
独創性のある地域情報の全国配信と、IP の
特殊な雲台メーカーとして知られる。同社
ルバリオンの両社の代理店で、今年もこの
特性を生かした全国エリア向けコンテンツ
は、カナダの C-Com 社製「iNetVu1200」
2 社の製品を売り込む。一昨年から販売を
の流通に依然として力を入れている。ミハ
Ku バンドアンテナと、イスラエルのアルバ
行っているノベルサット社の変復調器の性
ル通信は、今年もスカパー HD チューナー
リオン社製「Breeze Access」無線 LAN
能がどこまで改善されているか、4K の伝
内蔵 OFDM 変調機で、華やかな映像デモ
システムを搭載したユニークな車載局を出
送を視野に入れているユーザーにとっては
を行うと予想され、最も楽しみなブースの
展する。トヨタのハイエースの車上に搭載
見逃せないデモになると思われる。
一つである。
された直径 1.2m のアンテナは、タイコム
東芝は、一昨年 HDTV 対応の車載局用
社が所有するアイピースター衛星の日本ス
屋 外 型 SSPA「SSS-9100W」 と、 屋 内
ポットビームを使って通信ができる。無線
用に 3U サイズに仕上げた SSPA「SSS-
Naoakira Kamiya
衛星システム総研 代表
メディア・ジャーナリスト
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FDI・2013・11