「InterBEE2016」で 注目を集めた衛星通信・衛星放送機器

「InterBEE2016」で
注目を集めた衛星通信・衛星放送機器
神谷 直亮 一 年 を 締 め く く る 恒 例 の「Inter-
ライブ試験放送を行って来場者を魅了し
現できる。つまり、衛星と携帯回線による
BEE2016」が、今年も 11 月 16 日から
た。受信は、展示会場正面エントランスと
ハイブリッドアップリンクシステムにする
18 日まで、千葉市・幕張メッセで開催さ
AZLAB 社のブースで行われ、相撲ファン
ことで、移動中も含め常時通信を行うこと
れた。日本の放送業界の近未来を占う絶好
を始めとする大勢の来場者がこの 8K 映像
ができるというのがメリットである。
の機会とあって、出展者数は 1,090 社・
に見入った。正面エントランスでは、シャー
同社は、これら 2 台の車載局の他に、イ
団体、総登録者数は 38,047 に達し、どち
プの特製 8K 受信機と 85 インチ 8K ディ
ンマルサットの GX サービスに対応するコ
らも過去最多を記録した。特筆すべき点は、
スプレイが使われた。一方、AZLAB 社の
ンパクトな可搬局「QCT90」
、SATCUBE
出展者の半数以上に当たる 593 社・団体
ブースでは、シャープの HD ディスプレイ
社製の超小型平面アンテナ、GETSAT 社製
が海外 34 か国・地域から集結したことで
16 台構成の超大画面で視聴ができ圧巻で
の超小型軽量衛星アンテナ、SiS ライブ社
ある。一方、海外からの来場者数は、わず
あった。映像フォーマットを聞いてみたら
製ウルトラポータブル可搬アンテナ「マン
か 794 名と、
非常に寂しい結果に終わった。
「4:2:0 10bit 60fps BT.709 SDR」との
パック」などを紹介して注目を浴びていた。
回答であった。
さらに、超小型低消費電力 SSPA と IP 伝
52 回目を迎えた今年のハイライトは、
NHK は、この大相撲生放送の他に、ルー
送装置を披露し、同社の積極的な衛星通信
スカパー JSAT による 4K ハイダイナミッ
ブル美術館と共同制作した「ルーブル 永
業界への貢献をアピールしていた。初出展
ク レ ン ジ(HDR) コ ン テ ン ツ の 配 信 と
遠の美」の 8K 録画映像も公開して人気を
となった超小型低消費電力 SSPA は、アメ
NHK による 8K 試験放送と言って良い。ど
博した。
リカのミッション・マイクロウェーブ社製
ちらもライブで行われ、InterBEE の歴史に
で、
Ku バンドに対応できる。IP 伝送装置は、
残る快挙であった。
上述した 2 件のデモに比べればやや地味
イスラエルの VideoFlow 社製で、衛星と
スカパー JSAT は、同社の東京メディ
ではあったが、エーティコミュニケーショ
インターネットの融合を図るために販売を
アセンタースタジオで撮影した「Jacob
ンズ、マウビック、日本無線、東芝、田中
手掛けることにしたという。
Koller Trio & 青木カレン」の音楽ライブ
電機、松浦機械製作所、日本アンテナ、DX
を JCSAT-3A 衛星で幕張メッセに生中継
アンテナが衛星通信・衛星放送関連の機器
した。この Hybrid Log-Gamma 方式によ
やシステムを出展して注目を集めた。
介した VISLINK 社製の超小型ポータブル
る 4K HDR コンテンツは、展示会場正面
エーティコミュニケーションズは、ブー
可搬局
「Mantis MSAT」
と最新鋭の4Kコー
エントランスホールと、ソニー、東芝、朋
スに 2 台の衛星中継車を持ち込んで来場
デック「ULTRA CODEC」に加えて、エ
栄、共信コミュニケーションズのブースで
者の意表を突いた。1 台は、4K SNG 車
リクソンの 4K コーデックとニューテック
公開され注目の的になった。ソニーのブー
で、車上には直径 120cm の CCT120DA
の DVB-S2X モデムを出展した。
スでは、この衛星伝送の 4K HDR 映像と
が 搭 載 さ れ て い た。 車 内 で は、NTT エ
「Mantis MSAT」は、中継現場に到着し
NTT ぷららの IPTV に同時に伝送された
レ ク ト ロ ニ ッ ク ス の HEVC エ ン コ ー ダ
て 10 分で衛星への送信を実現できるとい
2K SDR 映像の比較ができるようなアレン
「HC11000E」
、パラダイスデータコムの
う機動力満点の製品である。衛星補足サポー
ジがなされており、興味深くのぞき込んで
DVB-S2 モジュレータ―が目に付いた。も
ト機能が付いているので、スペアナがなく
いる来場者を多く見かけた。
う 1 台は、衛星自動追尾アンテナと LiveU
ても運用できるのもメリットである。つま
スカパー JSAT は、この音楽ライブの他
エクステンダーを搭載したエルグランド車
り、PC で入力信号を確認し、専用のアプ
に、映画、ドラマ、ビーチバレー、シャボ
である。衛星自動追尾アンテナは、ゼネラ
リケーションを使えば衛星から受信した映
ン玉をハイライトしたスーパースローモー
ル・ダイナミックス社製で Ku バンドに対
像信号も PC で確認できる。
「ULTRA CO-
ション映像など、収録済み 4K HDR 映像
応する直径 45cm のものがレドームに入れ
DEC」は、次世代映像符号化規格 H.265/
も配信した。
て搭載されていた。ブースの説明員は、
「直
HEVC に対応しており 4K もサポートす
径 75cm タイプも要望によって搭載が可
る。特色としては、ASI・IP インターフェ
NHK は、 放 送 衛 星 シ ス テ ム(B-SAT)
能」
と説明していた。LiveU エクステンダー
イスを標準装備しているのと、拡張に備え
のア ップリンク機能と BSAT-3b 衛星を
は、最大 6 回線の LTE/4G/3G 携帯回線
た SFP+(光トランシーバー)を採用して
フル に活用して、大相 撲九州場所の 8K
をボンディングして高画質映像の伝送を実
いる点があげられる。
8
FDI・2017・01
マウビックは、
「CEATEC2016」で紹
展示されたエリクソ
ンの製品は、HEVC
4K/HD エ ン コ ー 写真 1 スカパー JSAT は、「Jacob Koller Trio & 青木カレン」の 写真 2 NHK は、大相撲九州場所の 8K ライブ試験放送を行って来
ダ「AVP2000」、
音楽ライブを 4K HDR で生中継して注目を集めた。
場者を魅了した。
HEVC 4K デコーダ「RX9004」
、
HD HEVC/MPEG-4/MPEG-2
マルチフォーマット IRD/ デコー
ダである。ブースでは、同社の
HEVC ハードウェア―コーデック
を実際に使ったテニスのデモ映像
が披露された。
ニューテックの製品として
紹 介 さ れ た の は、 衛 星 回 線 の
有効活用に貢献するデジタル
変 調 器「M6100」 と 変 復 調 器
写真 4 マウビックは、エリクソンの HEVC 4K/HD エンコーダ /
デコーダ、マルチフォーマット IRD/ デコーダを出展し、実際に
これらを使った映像の再生デモを実施した。
「MDM6000」である。いずれも
最新の DVB-S2X 規格に対応し
ている。
日本無線は、2 種の平面アン
写真 3 エーティコミュニケーションズは、自社
で艤装した 4K 車載局を会場に持ち込んで公開
して来場者の注目の的になった。
テ ナ、IP-SNG 可 搬 型 VSAT 局
(GSE-5221/5501) と IP-SNG 車 載 型
田中電機のブースには、東京計器と共同
VSAT (JUM-5700) を出展した。IP-SNG
で開発したという SNG アンテナ装置が展
可搬型 VSAT は、スカパ− JSAT が「ポー
示されていた。東京計器が得意とする高精
タリンク」と呼んで販売しているもので、
度 FOG(Fiber Optical Gyro)コンパスに
最大 9Mbps の伝送を実現する。IP-SNG
よる自動追尾機能が搭載されているのが特
車載型 VSAT は、新製品で 2017 年に販
色と言える。販売担当者は、
「報道特性の速
売を開始するという。衛星捕捉から送受信
報性に注目して開発した」と語っていた。
準備完了までの時間を聞いてみたら、3 分
松浦機械製作所は、同社特製のピークサー
以内とのことであった。また、最大 7 度の
チ雲台に IPStar 衛星対応のアンテナを搭
傾斜地でも、正確に衛星を自動捕捉できる
載して出展した。この PRO-080 型雲台は、
とつけ加えていた。
サーチポイントに設置し、電源を入れれば
東 芝 は、NHK と 共 同 で 開 発 し た 固 体
すぐに自動方調できるのが特色である。説
化 電 力 増 幅 器(SSPA) を 出 展 し た。 屋
明員によれは、
「パンは 360 度、チルトは
外 型 SSPA 240W、 屋 内 型 2U SSPA
40 度∼ 60 度」とのことであった。
ていると熱心に売り込んでいた。ブースの
説明員は、
「アンテナの鏡面に黒い粉体を焼
き付け塗装した限定版」と語っていた。こ
の他、同社のブースには、3.2GHz 対応の
BS・110 度 CS ブ ー ス タ ー「CSE45」
と CATV に対応できる「E407SS」ブー
スターが展示されていた。
DX ア ン テ ナ は、2 種 の 家 庭 用 BS・
110 度 CS ア ン テ ナ「BC453S」
(直径
45cm)と「BC503S」
(直径 50cm)の
PR に余念がなかった。共に 4K8K 右左旋
円偏波衛星に対応できる。ブースの説明員
は、
「これら 2 種の他に、共同受信用の直
径 60cm から 120cm の製品も用意して
いる。アンテナの方向調整時に最適な角度
を知らせるインジケータ付きもある」と付
け加えていた。
240W、屋内型 3U 350W の 3 種である。
ブースの技術者は、
「Ku 帯対応の屋外型
日本アンテナは、8 月から発売してい
SSPA は、防塵・防水を強固に施しており、
る高級感に満ちたブラックモデルアンテ
衛星通信車載局に最適」とアピールしてい
ナ「45SRLSTB」でブースを飾り、次世
た。
代 4K8K 右左旋円偏波衛星放送に対応し
Naoakira Kamiya
衛星システム総研 代表
メディア・ジャーナリスト
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FDI・2017・01