ヒト白血球における HAX-1 遺伝子発現に関する検討

42
ヒト白血球における HAX-1 遺伝子発現に関する検討
◎山内 唯 1)、百田 裕香 1)、前田 翔太 1)、髙木 良輔 1)、菊池 亮 2)
熊本保健科学大学保健科学部医学検査学科 4 年生 1)、熊本保健科学大学 2)
【目的】
【結果】
重症先天性好中球減少症(Severe Congenital
健常者の成熟白血球では陰性ないし弱発現
Neutropenia : SCN)の原因遺伝子として HAX-
であった。HL-60 細胞の ATRA による分化誘
1 遺伝子が報告された(Nat Genet 39 : 86-
導前後では発現量に明らかな変化は確認でき
92,2007)。SCN の骨髄血塗抹標本では前骨髄
なかった。
球段階での maturation arrest を示し、末梢血中
【考察】
に成熟好中球がほとんど存在しないため、幼
HAX-1 は骨髄性白血病細胞株で強発現して
少時より感染を繰り返すことを特徴とする常
いることは前回報告したため、急性リンパ性
染色体劣性遺伝形式をとる疾患である。HAX-
白血病細胞株(MOLT-4 細胞)を入手して、細
1 はアポトーシス抑制機能が知られており、
胞起源との関係も検討したい。また、健常者
HAX-1 に異常がある SCN 患者好中球は幼若な
末梢血の成熟リンパ球を mitogen または IL-
段階でアポトーシスを起こし、その結果、成
2 で刺激して細胞増殖を誘導した際の発現量も
熟好中球が減少するものと考えられている。
検討する予定である。さらに、健常者末梢血
我々は、SCN とは逆に白血病細胞では HAX-
から単核球(主としてリンパ球)と顆粒球
1 遺伝子が過剰発現しているためにアポトーシ
(好中球)を分画採取して、リンパ球と好中
スが起こらず、細胞増殖が亢進するのではな
球における発現も検討に加えたい。
いかと推論した。昨年(第 50 回)は急性前骨
【連絡先】
髄球性白血病細胞株(HL-60 細胞)、急性単球
[email protected]
性白血病細胞株(THP-1 細胞)、慢性骨髄性白
電話:096-275-2137
血病芽球転化細胞株(K562 細胞)で HAX-1 の
強発現を認め、報告した。今回は、HAX-1 は
未熟細胞に発現しているのか、成熟白血球で
の発現はどうか、未熟細胞が成熟細胞に分化
成熟すると発現量に変化があるのか、等を検
討した。
【試料及び方法】
健常者末梢血からデキストラン沈殿法また
は単核球分離法で成熟白血球を分離・採取し
た。HL-60 細胞(APL 細胞株)をオールトラ
ンス型レチノイン酸(ATRA)で分葉核球に分
化誘導する前後で発現量を比較した。これら
の細胞から total RNA を抽出し、HAX-1
mRNA 発現を RT-PCR 法で解析した。