茨城・学びの会 5月例会記録概要 平成24年5月27日(日) 土浦市立都和

茨城・学びの会
5月例会記録概要
平成24年5月27日(日)
土浦市立都和公民館
記録
1
小林・本橋
退職記念講話
前つくば市立吾妻小学校長
沼
平助
先生
(1)「学び合う学び」の可能性
子どものもっている「学びへの本質的な意欲」を喚起
(2)問題意識,学校課題の把握から組織目標の設定へ
アンケートにより「本校の課題はこれだ」
(3)中長期的な見通しをもった校内研修
事実を見て方法を変える柔軟性も必要
(4)校長からの発信とすり合わせ
校長の理念と教職員ひとりひとりの理念を丁寧にすり合わせること
(5)研修の足跡
研修で学んだことを書いて全職員で共有・教師も他から学ぶ
(6)学習課題の転換
先行知識で解ける課題
→思考を要する魅力的な課題,協同的な学びを要する課題で人間関係づくり
(7)学びたくなる課題
思考力とともに基礎的・基本的な知識も自然に習熟する
(8)子どもの言葉で説明することの大切さ
子どもの説明に子どもが反応「ああ!そうか!(思わず拍手)」
学校経営にひとつの軸を置くことで,学校や学級が変わってくる
○吾妻小学校で学び合いをすすめてきた経緯の概略
吾妻小学校に来る前,7年間管理関係の行政の仕事をしていた。学校を訪問し,授業を見る
機会もあったが,ここ十何年中学校の授業はかわらないなと思った。学びの会に出会い,子ど
もの興味を本質的に喚起する授業づくりだと感じた。
初年度の平成22年度は職員に普段感じている児童の問題点をアンケートしてみた。40人
中22人が児童が話を聞けないという指摘があった。そこで「聴く力を育て,友達と学び合う
学習指導のあり方」というテーマで研修をした。
全職員が授業を公開するという条件で研修を進めた。
授業はビデオに残し,全体で検討する。
全体研修で全学年の授業を検討すると,90分なので1学年15分しかできなかった。
2年目は全体研修はなしにしてブロックごとにした。全体研修を年3回にし,講師を招聘し,
提案授業を全員で検討した。佐藤雅彰先生などの講師から学んだこと,提案授業から学んだこ
とを文字に起こし,全職員で共有するようにした。
○平成23年度の最初の5月の校内研修
授業ビデオの視聴
6年算数「分数をかける計算を考えよう」永岡先生
分数×分数と分数-分数が同じ答えになるパターンを見つけ,帰納的にきまりをみつける学
習活動。文字式で方程式を解いていけば,簡単に一般化できる。しかし,それができない子ど
も達がどう解決するか。
分子の大きさは同じであることは全体で共有し,分母の差が分子の大きさになることに,個
人や小グループで試行錯誤してつくった式から,帰納的に推論して気がつけるかが授業のポイ
ントだ。
グループでの交流の様子
・分子が1じゃないとだめなんじゃん
・そうかも
・じゃ
やってみようか
たとえば・・・
・3分の2-5分の2は15分の10-15分の6で15分の4
・3分の2×5分の2は15分の4
・あれ?1じゃなくてもできるよ
・どうゆうことだろう?
・いろいろつくってみようよ・・・
○授業を見た後の参観者の振り返り
・課題がおもしろいですね。
・どこから見つけてきたのかな。
・こんな課題あるの。
・教科書にはないです。
・いろいろ調べているうちに発見できる課題だよね。
・最初の子が発表した後にあーっと拍手がおきて。2番目の子が発表した後も拍手が起きたけ
ど2番目の子の方が分かり易かったね。
・2年目でこんな授業ができるなんて,沼先生がさらに続けていたら,もっとおもしろい授業
ができると思った。
・沼先生が,慎重に導入している。自分の思いや理念があるけど,それをいわないでアンケー
トをとって,そこから入ったのがよかった。
・永岡先生(ビデオの授業者)は変わったんでしょうか。
・子どもがやりたくなるような課題作りは前から取り組んでいた先生。学び合いがそれにうま
くマッチしたのではないか。子どもの意見を取り入れて授業をすると,うまくいくんだと少
しなれてきたと思います。
2
石岡市立城南中学校の授業
○
社会科
中学1年
飯田英路先生
・からかさ連判状や百姓一揆について教科書や資料をつかって理解する。(一斉)
・グループ導入時の指示
いまからグループになります。こんな一揆が起こらないようにするには,みんなが幕府だっ
たらこんな政策をたてるっていうのをどんどんどんどん考えてって,じゃあグループになって
・・・
・生徒がグループになって政策を考える。一人でもくもくと考える生徒や,グループの仲間と考
えを交流しながら考えている。
・グループのまま,黒板をむき,考えを発表して共有し合う。発言の内容がよくまとめらずクラ
スに緊張が走り,困った様子が見られたとき,先生が「だれかつないで」と仲間に考えをつな
ぐ。ほかの生徒が言い換え,理解できたのでその後の発言が活性化される。笑顔や笑い声が増
える。
・じゃあこの実際に幕府がとった政策や改革を書いた紙を配るから,実際に幕府は一揆に対して
どんなことをしたのかっていうのをばぁーっと書いてって。
生徒はグループで紙に幕府がとった政策を国語辞典や社会の教科書,資料集,配られた紙を使っ
て調べ,書いていく。もくもくと個人作業をすすめている生徒がふえた。
言葉の意味がわからない男子生徒が,女子に国語辞典を引いて調べてもらい,ふむふむと聞き入
っている様子。しきりにその生徒は国語辞典の箱をくるくる回している。先生がそのグループに支
援に入ると,それでも思い出したかのようにグループの学習に参加することもある。先生がはなれ
るとペンまわしをはじめ,対面の女子がたしなめると,国語辞典の箱が回転しながら女の子の方に
とぶ。集中力のない男の子をこの女の子がフォローしている様子。
授業から学んだことを生徒が表現したり,共有しないまま先生の講話で授業はおわる。
参観者から
・授業を参観された先生からはどんな話がでたのか
・この授業は授業後の先生達の話し合い(リフレクション)はしていない。
・よく社会科で調べ学習といって調べさせて終わっていたけど,本当はそこからが大事で,たと
えば,幕府がとった政策はどうだったのかという評価が必要だ。
・子ども達が考えた政策を弾圧関連と農民救済関連などに分類し,もうすこし討論させたほうが
よかった。
・紙を配ってノートに写しているだけであの時間は無駄な時間とおもったが,社会の先生は書か
せるのすきなんだよな。
・段取りがおかしくなっちゃって,物を出さなきゃいけないという思いから,始めに出した資料
を十分に生かしていない。
・ただ,資料がでてきただけ偉い。からかさ連判状(名前が寄せ書きのように丸くなっている)
を作らざるを得なかった農民の境遇を知るための資料がもう少しほしかった。
・この先生自身がどうゆう歴史観をもっているのかな。起きた背景は違うのにいろいろな一揆を
いっしょくたんに扱っているところもある。改革は一揆を起こさないためにしたのではなく武
士である自分たちの利益のためにやった。
・一生懸命考えさせようとすることは,いいのだけど取り上げるべき時適切な歴史事象をとりあ
げないと授業から学ぶことは少ない。
・支配者の視点でみていこうとする発想がおもしろかった。このあとの歴史につながる。明治の
農民支配,GHQの農民支配につながっていくのでは。
・おもしろいけど,生徒は考えられないよね。その時代のことをよく分かっていないのに考えよ
うがない。
・それは本人もわかっていた。単元を通してどうやって学習計画をくんでいくのかはむずかしい
よね。
・はじめに知識をあたえないと学び合うのは難しい。
・社会では単元毎に課題をつくって,学び合っていくということを通して,暗記から歴史のおも
しろさを知る学習になっていく。そんなことをやっていては終わらないといわれてしまえばお
わりだけど。そういう意味で飯田先生の取り組みはいいなと思った。
・小中一貫を考えたときに,小学校では人物を中心に年代毎に知識を得ていく。中学校ではそれ
が現代の自分たちの生活とどう関係しているのかを考える。そういう意味で飯田先生のこの授
業はよかった。小学校で一回勉強したことを中学校でもう一回同じことをやりるというのはど
うか。
・東大付属でやっていた,はじめに子ども達が年表をどんどんつくちゃって,あとは仲間と疑問
点を話し合っていく授業がいいと思った。自分たちで得た基礎的な知識があるから話し合える。
・ていねいな入り方
個々のつぶやき,まわりとの確かめ合いが保障されている。
・考える時間が確保されいている
教師の言葉に無駄が少ない,追加指示もない。思考を妨げないことに敏感。
・安心感のある教室
置いて行かれる生徒がいない,いつでもきけるやわらかい関係がある。
・教科書を音読することの再評価
小学校では慣れ親しんだ学び方,中学校の学習でどれだけ実践されているだろうか
・教材観の問題
歴史観,教材観を磨くことが必要。高い専門性が質の高い学びをつくる。
・授業デザインの妥当性
課題提示の順序やモノの導入は妥当だったか。生徒の思考の流れから検討が必要。
・この授業のように,信念をもってチャレンジしている授業からは学ぶべきことが多い。