576. 抗 原 抗 体 反 応 の 研 8. 097. 08 究 第1編 U字 管 に 依 る沈 降 反 応(重 層 法,混 合 法)の 比較 研 究 岡山大学医学部衛生学教室(指 導:緒 方益雄教授) 中 居 幸 三 〔昭和32年6月10日 受稿〕 つ た. 第1章 緒 論 第2章 従 来沈 降 反 応 に於 け る沈 降 素価 の 測 定 に は 逓 降的 に 稀釈 した抗 原 に 不 稀 釈沈 降 素 血 清 を 実 験材 料 及び 実 験 方 法 第1節 実 験 材 料 重 層 し,反 応 陽 性 な抗 原 の 最 高 稀釈 度 を 以 て 第1項 免 疫価 を 現すUhlenhuth氏 使 用 抗血 清 は 人 血 清,卵 白 アル ブ ミンの 家 法1),或 は 一定 稀 釈 の抗 原 に逓 降 的 に稀 釈 した 沈 降 素血 清 を 重 層 す るCollier u. Knoller2)の 方 法 が 用 い られ た. 1927年 緒 方 教 授3)が 抗 原 抗 体 稀釈 法 を 考 案 さ れ,抗 原 と 同 時 に抗 体 も稀 釈 し重 層 を 行 い結 合 帯及 び稀 釈沈 降素 価 を 検 出 し抗 血 清 の特性 を 知 る と共 に定 量的 抗 体 測定 が 可 能 に なつ た.更 に1936年Heidelberger u. Ken dall4)は原 抗 血 清に 各 濃 度 の抗 原 を 混 じて 生 じた沈 降 物 の窒 素 量 を 測定 す る定 量的 沈 降 反 応 に よ り沈 降 素価 の化 学的 定 量 を行 つ た. 沈 降反 応 に於 け る重 層法 の抗 体 価 は 混合 法 の抗 体価 よ りほぼ2倍 勝つ て い た.然 るに 抗 原,抗 体 反応 系に 於 て,反 応 術 式 の 相 異 に よ る抗 原価,抗 体価 の変 動 につ いて 教 室 に於 て は幾 多 の研究 がな され た.即 ち 大 城5)は 抗 原 の上 に抗 体 を 重層 す る逆 重層法 を発 表 し,井 免 疫血 清 兎抗 体 であ る. 第2項 免 疫 方法 抗 原 の注 射 は 次 の如 く行 つ た.人 血 清 の注 射 量 は生 理 的 食塩 水 で人 血 清 を1:10に した もの5.0ccを1回 量 と し,卵 稀釈 白アル ブ ミン注 射 量 は1.0cc(1.5mg)を1回 量 とし 3∼4日 健康 な 間 隔 で 体 重2000∼2500gの 家 兎 の耳 静 脈 に 注 射 し,何 れ の 場 合 も最 終 注 射 日 よ り1週 間 後 全 採血 し血 清 分 離 を行 い氷 室 に 保 存 して実 験 に 供 した. 第3項 反応 用 抗 原 人血 清 は56℃30分 非 働 化 した もの を 原 液 とした.そ の濾 紙電 気泳 動 に よる組 成 は 第1 図及 び 第1表 に 示す. 第1表 濾 紙 電 気 泳 動 法 に よ る人 血 清成 分 組 成 上6)は10倍 濃 厚抗 原 を1/10量 注 入す る新 混 合 法 を考案 し多大 の成 果 を残 した.又 宮 川7)は U字 管底 部 を通 じて両 側 に沈 降 原 と沈 降 素 血 清 を 接触 せ しめ るU字 管法 を発 表 し,術 式 の 簡 便 な る事 を提 唱 した. 著 者は 後述 のU字 管 を使 用 し人 血 清 系,卵 卵 白 ア ル ブ ミ ン はKekwick8)の 法 に よ り3回 結 晶 し て 精 製 し た も の を 使 用 し 白ア ル ブ ミン系に 於 て 結合 帯 を 中心 に して 沈 た.そ 降 反 応を 行 い 重層 法,混 合 法 に よる抗 体 価 を び 第2表 比 較 検討 した.併 せ て沈 降物 の電 気 泳 動 を 行 脱 水 芒 硝 の 濾 紙 電 気 泳 動 に よ る組 成 は 第2図 及 に 示 す. 即 ち 人 血 清 ばAlb. 58.5%, α1-Glob. 5.2 1534 中 第1図 居 幸 三 溶 液 を 用 い,成 人 血 清 濾 紙電 気 泳動 図 績 判 定 は 重 層 後15分 以 内 に 白 輪 の 生 じ た も の〓, 30分 以 内 〓, 〓, し た. 2時 間 以 内+と 2)混 合法 抗 原,抗 後37℃ 体 容 量 の 等 量 混 合 法 を 用 い,混 孵 卵 器 に2時 間 放 置 し,更 24時 間 置 い た 後 成 績 を 判 定 し,溷 〓, 1時 間 以 内 〓, 〓, はgross, +と mittel, 合 に氷 室に 濁度に より し沈 降 物 の 量 の 著 明 な も の feinの 順 にgF, mF, fF と記 録 し た. 3) U字 管 法 第3図 第2図 卵 白 アル ブ ミン濾紙 電 気 泳 動 図 第3図 の 如 きU字 管 を 使 用 し,抗 原,抗 体 第2表 濾紙 電 気 泳 動 法 に よ る卵 白 稀 釈 は 何 れ も生理 的 食 塩 水 を用 い,抗 原,抗 ア ル ブ ミン成 分 組 成 体 容量 は 等 量 に して,重 層 法 の術 式 に よ り沈 降 反 応 を行 う.即 ち 先づU字 管 の右 脚 よ り抗 体 を人 れ,次 に 同 一 容 量 の抗 原 を右 脚 よ り重 層 す る,反 応 は 第4図 の如 く左 脚 に溷濁 とし %多, α2-Gtob. Glob. 5.8%, 15.5%の β-Glob. γ- あ り, 93.6%の 70.1%, て 現 わ れ る.判 定 そ の他 は 混合 法 と同一 とし た. 組 成 を 示 す. 又 卵 白 ア ル ブ ミン はA1 23.6%で 14.8%, A2+A3 純 度 を 示 す. 第4図 第2節 実験方 法 同 一 免 疫 血 清 に つ き 沈 降 反 応 の 重 層 法,混 合 法, U字 管 法 の 各 々 に つ き 緒 方 氏 抗 原 抗 体 稀 釈 法 を 用 い,結 合帯 を 中心 に し て抗 体 価 を 比 較 した. 1)重 層 法 免 疫 血 清 の 稀 釈 に は1%ア ラ ビヤ ゴ ム食 塩 水 抗 原 抗 体 反 応 の 研 究 1535 稀 釈強 く重 層法 の抗 体価 に 殆 ん ど一致 す る. 第3章 実 験 成 績 次 に結 合 帯 を 中 心 に して 重 層法,混 合 法, 緒 方氏 抗原 抗 体 稀釈 法 に よ る各 々 の成績 は 第3表,第4表 U字 管法 を 比較 し,更 に混 合 法, U字 管 法 の 各 々 を 反応 終 了後沈 降 管 に入 れ遠 心 沈 澱 器 で の 如 くで あつ た. 第3表 人 血 清 系(抗 体価:結 合 帯500: 500)重 層 法 混 合法U字 管 法 に 1分 間1500回 転 で15分 間 遠 心沈 澱 し沈 降 物 の 量 を 比 較 した 成 績 は第5表,第6表 の如 く で あ つ た. よる沈 降 反応 の比 較 第5表 人 血清 系(抗 体価:結 合帯500: 1000)混 合 法U字 管 法 の沈 降量 の比 較 第6表 卵 白 ア ル ブ ミ ン 系(抗 合 帯500:500)混 体 価:結 合 法U字 管法 の沈 降 量 の比 較 第4表 卵 白 ア ル ブ ミン 系(抗 合 帯1000:2500)重 体 価:結 層 法混 合法 U字 管 法 に よ る 沈 降 反 応 の 比 較 第5表,第6表 の 成績 の 示す 如 く人 血 清 系, 卵 白ア ル ブ ミン系 の何 れ に於 て もU字 管 法 の 沈 降 物 は 混合 法 に比 し著 明 で あ る. 次 に 重 層 法,混 合 法, U字 管 法 に よ る沈 降 反 応 の 結合 状 態 を残 存 抗 原,残 存 抗体 測定 に よ り比 較 した.即 ち 第7表 の 示 す 如 き抗 体 価, 結 合 帯 を 有 す卵 白 アル ブ ミン抗 体 を使 用 し, 抗 体1:10,抗 原1:1000, 1:2500, 1:5000 を 用 い 重 層 法,混 合 法, U字 管 法 に て 反応 を 行 い,反 応 終 了後 各 々を 遠 心 沈 澱 器 で1分 間 第3表,第4表 の成 績 の示 す 如 くU字 管 法 1500回 転10分 間 遠 心 し,そ の上 清 を 抗 原 と に於 け る抗 体 価 は人 血 清 系,卵 白 アル ブ ミン し稀 釈 し,抗 体 原 液 に 重 層 し た成 績 は 第8表 系 の何れ に於 て も混 合 法 の抗 体価 よ り約2倍 の如 くで あ り,又 上 清 を抗 体 と して稀 釈 し, 1536 中 居 第7表 卵 白 アル ブ ミン系(緒 方 氏 抗 原 抗 体 稀 釈 法 に よる沈 降 反 応) 幸 三 第8表,第9表 の 実 験 成 績 で は 反 応 後2時 間 以 内 に 白 輪 の 生 じ た も の を+と 第8表,第9表 記 録 した. の 実 験 成 績 の 示 す 如 く残 存 抗 原 は 抗 原1:1000の 上 清 中 に 多 く,又 残存抗 体 は 抗 原1:5000の 上 清 中 に 多 い.こ の事 は 抗 原1:1000で は 抗 原 過 剰 で あ り,抗 原1: 5000の 上 清 は 抗 体 過 剰 で あ る 事 を 示 す.又U 字 管 法 に よ る 残 存 抗 原,残 比 し て 少 く,換 言 す れ ばU字 第8表 残 存 抗 原 存 抗体 は重 層法 に 管 法 に よ る抗 原, 抗 体 の 結 合 が 良 好 で あ る様 に 思 わ れ る. 第4章 1)沈 U字 管 法 に よ る電 気泳 動 降 物 の電 気 泳 動 Phosphate Bufferに てpH 7.6弱 性 に せ る 人 血 清 系 の 抗 原1:1000抗 を 使 用 しU字 行 つ た.実 体1:100 管 法 に て 沈 降 反 応 を 行 い, 間 後 左 脚 に 形 成 せ る沈 降 物 を 第5図 脚 を 陰 極,右 アル カ リ 2時 の 如 く左 脚 を 陽 極 と し15分 間 電 気 泳 動 を 験 結 果 ば 左 脚 に あつ た沈 降物 は第 6図 の 如 く右 脚 に 向 い 移 動 し た. 第5図 第9表 残 存 抗 原 第6図 2)沈 そ れ に 抗 原 の1:1000の は 第9表 ものを 重 層 した 成 績 に 示 す 如 くで あ つ た. 降 物 の濾 紙電 気 泳 動 法 並 に泳動 図定 量 法電 気 泳 動 に よ り移動 した沈 降 物 の性 質を 更 に詳 し く検 討 す るた め 濾 紙電 気 泳 動を行つ 抗 原 抗 体 反 応 の 研 究 た.即 ち,こ の 沈 降 物 を 遠 心 沈 澱 器 に て1分 間1500回 転10分 間 遠 心 沈 澱 し,冷 塩 水 で 数 回 洗 滌 し,次 に て非 結 合色 素 を脱 色 して 乾燥 した.こ の濾 紙 を 流 動 パ ラ フ ィン法 に て 半透 明 と し光 電 比 法9)を 基 礎 と し た ソー ダ,醋 酸 ソー ダ,醋 イ オ ン 強 度0.045の の 電 流 で6時 実 験 結果 は 第7図 の 如 くで あ る.対 照 とし 動 用 の濾 紙 は 東 て行 つ た 人血 清 家 兎抗 体 の 濾紙 電 気 泳 動 図 の 衝 液 は ベ ロ ナー ル 第8図 に於 け る γグ ロブ リ ンの易 動 度 と一 致 酸 緩 衝 液 でpH 8.5, ロ ム フ ェ ノ ー ル ブ ル ー,昇 す る成 分 を 認 め た. この事 実 は 抗原,抗 体 反 応 沈 降物 は 主 と し も の を 用 い, 0.3mA/cm て γグ ロブ リンで あ る事 が 推 定 され る. 間 電 気 泳 動 を 行 つ た. 泳 動 図 定 量 法 と し て はDurrum11)の 従 い,ブ 色 計 に よ り直 接 法12)で定 量 し た. 源 とし て 定 電 流 整 流 器 を 使 用 し,泳 51を 使 用 し,緩 酸液 張食 塩 水 小 林 式 濾 紙 電 気 泳 動 装 置10)を 用 い,電 洋 濾 紙No. 混 合 液 にて 蛋 白 質 を固 定 染 色 し, 2%醋 却 生理 的 食 い で8.5%高 で 溶 解 さ せ, Grassmann氏 1537 方法に 汞,醋 第5章 酸 第7図 抗 原 抗 体 反 応沈 降 物(抗 原1:1000) 総 括 考 案 著 者 は 緒 方氏 法 に よ る 抗 原 抗 体 稀 釈 法 を用 い 人 血 清 系,卵 白 アル ブ ミン 系 につ い て 重 層 法,混 合 法, U字 管 法 に よ り沈 降 反応 を行 つ て,そ の 抗 体価 を 比 較 し,又U字 管 法 に よ り形 成 せ る 沈 降物 の性 状 を 検 討 した.混 合 法 に於 け る抗 体 価 が 重 層 法, U字 管法 よ り劣 るの は井 上 氏 も述 べ て い る如 く比較 的 大 容量 の反 応 相 内 で あ る た め沈 降 物 が 反応 媒 に分 散,か つ 一部 溶 解 す る もの で,一 方 重 層 法 で は 反応 が狭 い界 面 部 で起 るた め沈 降物 の拡 散 が 殆 ん どな い た め強 く現 わ れ る もの と考 え られ, U 第8図 抗 人 家 兎 血 清 字 管 法 で は左 脚 に反 応 が 現 わ れ るた め 混 合 法 に 比 較 し1/2容 量 の 反応 媒 で沈 降 物 の分 散 が 少 く,か つ 反 応媒 に溶 解 す る事 が少 いた め と考 え られ る. な おU字 管 法 に て 生 成 した沈 降 物 の 性状 を知 るた め弱 ア ル カ リ性 液 中で 電 気 泳 動 し,更 に 濾紙 電 気 泳 動 法 に よ り 沈 降 物 の 泳 動 図 と原 抗 血 清 の泳 動 図 と を比 較 検 討 し,抗 原,抗 体 反 応 沈 降 物 が γグ ロブ リン と等 し い易 動 度 を 有 す る事 を認 め た. 第6章 1) 結 論 U字 管 法 に よ る緒 方 氏抗 原抗 体 稀 釈 法 を 用 いた 沈 降 反 応 を 考案 した, 本 法 に よれ ば,結 合 帯 を 中 心 に して 抗 体価 が混 合 法 に よ り2倍 稀釈 強 く現 わ 1538 中 居 幸 三 5)沈 れ,重 層法 の抗 体価 と殆 ん ど一 致 した. 2)重 層 法 に 於 け る抗 体 稀 釈 の 如 く抗 体 稀 グ ロ ブ リ ン と等 し い 易 動 度 を 示 し た. 釈 に ア ラ ビ ヤ ゴ ムを使 用す る必 要 が な い. 3)重 降 反応 に於 け る沈 降 物 は原 血 清 の γ 終 りに臨 み,終 始御 鞭 韃,御 指 導 を賜 りかつ御 校 層 法 に 比 し手技 が 簡 便 で 容 易 に本 法 閲 を 賜 わ りま した 恩師 緒 方教 授 に深 甚な る謝意 を表 を行 う事 が 出 来,か つ 比 較 的 観察 が 容易 で あ し ます. る. (本論 文 要 旨 は昭 和31年6月 4) U字 管 の洗 滌 が 簡 単 に行 え る. 並 に 第470回 岡 山医 学 会通 常 例 会に 於 い て発 表 した) 文 1) Uhlenhuth d. biol. 2) Collier u. Weidanz: Eiweissdiff. u. Bd. 86, Knoller: S. 505, Technik Zentb. 献 7) u. Methodik Verfahrens., 宮 川:日 頁,昭 1909. f. Bakt. 1921. J. 5) u. LX III, 大 城:岡 Kendall: Journ. f. 10) Exp. 227, 88頁,昭 和7 37, 397, K.. Naturwissen 1950. 紙 電 気 泳 動 法 の 実 際,南 11) Durrum, 2943, 医 雑,第66巻, Biochem. 江 堂, 1955. 医 雑,第44年,第1号, 井 上:岡 R. K.. 1936. W., Hannig, 小 林,森:濾 1936. 年. 6) 30, schaften, S. 819, 理 学 雑,第33巻,444 R. A., Cannan, 9) Grassmann, 合 学 会 講 演,昭 和2年. Med. 本 微 生 物 学,病 和14年. 8) Kekwick, Org. 3) 緒方 第1回 衛 生学,微 生 物学,寄 生 虫病 学 聯 4) Heidelberger 岡山 医学 会 臨 時総会 5号, 851頁,昭 和29 E. L.: J. Am. Chem. Soc. 72, 1950. 12) Rottger, H.: Klin. Wochschr., 31, 85, 1953. 年. I. A Comparative Study and Mixture of test) Precipitin with Reaction the Use of (Ring test U-tube. By Kozo Department of Hygiene, Okayama (Directer: By devising antibody are as the "binding test, and 2) affords In the ring reaction with and mixture test the precipitin reaction zone" has been tiler has almost This U-tube test relatively 3) The u-tubes 4) The ophoresis precipitin test, University Prof. Dr. the M. use test Medical School. Ogata) of U-tube have been and using compared, Ogata's the antigen. results of which follows: 1) it a dilution Nakai precipitate equivalent are the two times coincided suits better with found washed to ƒÁ-globulin of a more with convenience U-tube, dilute antibody to observation obtained use antibody titer that observed than titer manipulate of tnan centering in the ring test. the ring test, and around the mixture moreover, results. out by of easily the original than precipitin serum. capillary reaction tubes. has presented mobility by electr
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