プレッシャークッカ試験

発行:エスペック株式会社
プレッシャークッカ試験
題
題
名
題名
名
キーワード
加速性,アレニウス,HAST
●プッレシャークッカ試験とは(1)
プレッシャクッカ試験(以下,PCT)が一般の耐湿性試験と異なる点は,温湿度に関わる環境が 100℃
以上の領域であり,しかも高密度な水蒸気雰囲気の中での試験であることである。また,その目的は,
試験槽内の水蒸気圧力を試料の内部の水蒸気分圧よりも極端に高めることにより,試料の内部への水
分の浸入を時間的に加速することで,その耐湿性を評価する。
PCTにおいて,不飽和プレッシャクッカ試験(USPCT;Unsaturated Press. Test)は HAST(Highly
Accelerated temperature and humidity Stress Test)と呼ばれ IEC 68-2-66 で規格化されており,電
気・電子機器,部品などの環境試験方法の一つとして実施されている。
●試験方法(IEC 68-2-66 より要約)(2)
① 試験の概要
・ 試料は小型の電気・電子部品で,主に非気密封止部品であること。
・ 試料の外部に生じる腐食や変形は対象外とする。
・ 通常バイアス印加を行って試験する。
・ 試験条件の選定は,故障モードとの相関を確認し実施する。
・ 封止材料の臨界温度(ガラス転移点など)には十分注意する。
② 試験装置・加湿水
・ 温湿度分布は±2℃,±5%rh以内とする。
・ 凝縮水が試料上へ落下しないこと
・ 槽の構成部品により,試料を劣化させたり,加湿水質を劣化させないこと。
・ 加湿水は蒸留水または脱イオン水を使用
・ 加湿水は導電率 0.5MΩ/cm 以下,pH6.0∼7.2(at 23℃)であること。
③ 試験条件
表1 IEC68-2-66 による試験条件
さらし時間(Hr)
温度
(℃)
相対湿度
(%rh)
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
条件A
110
85
96
192
408
条件B
120
85
48
96
192
条件C
130
85
24
48
96
●高度加速寿命試験装置(HAST CHAMBER)
(仕様)
型
式
: EHS-411(エスペック製)
温度制御範囲 : +105∼162.2℃
湿度制御範囲 : 75∼100%rh(温度による)
圧力範囲 : 0.020∼0.196Mpa (0.2∼4.0kg/cm2)
試験室内寸 : W255×H255×L318
写真1.試験器外観
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●評価事例
(3)
(1) 加速係数の考え方
アレニウスモデルより加速寿命推定式は、以下の式より求められる。
加速係数(A.F.)=exp {Ea / R (1/Tr-1/Ta)}
Ea = 活性化エネルギー(eV), R=ボルツマン定数=1.380710-20 (J/K)
Tr = 基準温度 (K), Ta = 試験実施温度 (K)
市場環境(35℃85%rh)を基準とした場合の加速係数を表1に示す。
表1. 35℃85%rhを基準とした場合の加速係数
Ea
0.6
0.8
1.0
1.2
50℃85%rh
(eV)
2.9
4.1
5.7
8.2
70℃85%rh
10.0
21.6
46.7
100.7
90℃85%rh
30.7
96.1
300.8
941.7
110℃85%rh
83.5
365.1
1595.8
6975.5
120℃85%rh
132.6
676.3
3448.9
17587.7
130℃85%rh
205.8
1215.1
7174
42355.9
(2) プリント配線板の絶縁劣化
・
・
・
・
温湿度 :+110℃87%rh,300時間
印加電圧 :50VDC
試料 :くし形基板(導体間隔=0.165mm),基材=紙フェノール
評価装置 :HASTチャンバー
陽極
電極
表面
陰極
電極
表面
基材
陰極
陽極
基材
基材中のマイグレーション
陽極→陰極
写真2.基材中に発生したママイグレーション
(写真は,基板の断面を観察した)
●参考文献
(1)
(2)
(3)
ESPEC 技術情報 No5,技術レポート「HAST における湿度計測と制御」
,1996
ESPEC 技術情報 No1,技術レポート「IEC 68-2-66 発行について」
,1995
植草源三,機器・部品の寿命と超加速試験,日刊工業新聞,1991
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