コンバースの法則 - 日本マンパワー

∼2006年1次対策 ポイント講義∼
運営管理
「店舗施設管理」
主任講師 坂田
敬三
Q1.ライリーの法則がよく分からないので、どうしてあの公式になるのか教えてください。
A.1 ライリーやコンバースの法則は、公式でみると難しそうにみえますが、実は同じことを言ってい
ます。どちらの法則も、
「お客さんは、距離が遠くなるほど、お店や町に行くのを嫌がり(距離の二乗に
反比例)、お店や町の大きさが大きくなるほど、お店や町に行きたがる(町の人口やお店の面積に正比例)
」
というものです。実はこれだけのことなのです。
この考え方でお店や町の吸引力(集客力)を測ろうとしたのが「ライリーの法則」で、この考え方で
どこまでの距離のお客さんが自分たちの商圏となるのかを測ろうとしたのが「コンバースの法則」です。
では実際に数字を入れて考えてみましょう。
第1問 ライリーの法則:
A市は人口20万人、B市は人口5万人であり、両市の距離は36km離れている。またA市から12kmB市側にC町があり、
人口は1,700人である。このC町から買い物に行く場合、何人がA市に行き、何人がB市にいくと考えられるか。
12km
A市
人口
20万人
24km
B市
人口
5万人
C町
1,700人
第2問 コンバースの法則:
A市は人口20万人、B市は人口5万人であり、両市の距離は36km離れている。このとき、A市を基準とした商圏分岐点
(図の?の位置)の距離は何kmとなるか。
36km
A市
人口
20万人
?
B市
人口
5万人
第 1 問では、A∼Cの距離とC∼Bの距離の比は、1:2となっています。またA市の人口とB市の
人口の比は、4:1となっています。商圏パワーは、距離の二乗に反比例し、人口に正比例しますので、
人口または面積
2
(距離)
4
1
∴A市の商圏パワー:B市の商圏パワー=
: 2 =16:1
2
(1)(2)
それぞれの市の商圏パワー =
となります。従って今回の設問の場合、C町から 1,600 人がA市に行き、100 人がB市に行くと考え
られます。
次に第 2 問です。
「商圏分岐点」とは、2つの市のパワーがちょうど1:1になる地点だと考えられま
す。ここで、商圏分岐点の地点(図の?の位置)を仮にX地点とすると、X地点における両市の商圏パ
ワーは、
A市の商圏パワー:B市の商圏パワー=1:1
1
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*無断転載を禁じます
日本マンパワー『中小企業診断士受験ニュース』第 43 号
exam-info-shin 2005.11.24
となるはずです。A市とB市の人口(上記の式で言えば分子)の比は4:1でしたので、A市とB市
の距離の二乗(上記の式で言えば分母)も、4:1となれば良いわけです。二乗して4:1になる、と
いうことは、X地点からA市までの距離と、X地点からB市の距離の比は、2:1になるはずです。従
ってX地点は、A市を基準とすると(つまりA市からの距離は)
、24kmの地点となります。
以上のように、ライリーやコンバースの法則は「距離の二乗に反比例し、人口や面積に正比例する」
ということさえ理解していれば解けますので、公式を無理に覚える必要はないのではないかと思います。
Q2.CRM、FSP、RFM分析、ワン・トゥ・ワン・マーケティングの違いや関連性が分からない
ので教えてください。
A.2 いずれの考え方も、
「顧客関係性」に関する内容だということは共通していますが、それぞれの
違いが分かりにくいですね。それぞれのキーワードのきちんとした定義については、テキストやインタ
ーネットなどで検索して理解を進めることとして、ここではこれらのキーワードについて、概念的に理
解をしておきましょう。
CRM:1人ひとりの顧客と強力かつ長期的な関係を築くことで企業の競争力を高めていこうとする、
顧客中心型の「経営戦略」のこと。
ワン・トゥ・ワン・マーケティング:1人ひとりの顧客と強力かつ長期的な関係を築くことを目的とす
る「マーケティング・コンセプト」のこと。
FSP:購入履歴などの顧客データをもとに、顧客の企業への貢献度を算定し、それに応じたサービス
を提供する「しくみ」のこと。
RFM:FSPを実践する際に、R(最終購買日)・F(一定期間内購買頻度)・M(一定期間内購買金
額)の3つの購買実績にもとづく変数によって、優良顧客なのかそうでないのかを分析する「手
法」のこと。
概念を整理すると、以上のようになります。これらの関係を、ある1つの企業を想定して考えてみま
しょう。
A社はこれまで、立地の良さもあって、特に顧客管理などを行っていなかった小売業でした。しかし
近年、顧客数が減少し始め、売上もどんどんと下がってきてしまいました。そこでA社の社長は、今後
はお客様1人ひとりを大切にして、優良顧客に対しては、割引などの還元措置も行う、というCRMに
もとづく戦略を立案することとしました。これまでのA社は、顧客還元バーゲンなども行っていたので
すが、バーゲンのときだけやってくるお客さんが多く(これをチェリー・ピッカーといいます)、本当の
意味での顧客還元はできていなかったのです。
そこでA社の社長は従業員全員に対して、
「今後はお客様1人ひとりを大切にする販売を行う」という、
ワン・トゥ・ワンのマーケティング・コンセプトを話し、従業員の意識改革の徹底を図るとともに、実
際に、優良顧客に対して割引が行えるようにと、ポイントカードの導入などの、FSPのしくみ作りに
着手しました。FSPでは実際に「優良顧客」を特定しなければなりません。そこでA社の社長は、ポ
イントカードの導入後、1年間データを取り続け、このデータを、R・F・Mに分解してそれぞれを数
値化し、優良顧客のランキングを作成していきました。
以上のように(あくまで概念的なものですが)
、まずCRMという「戦略」があり、これをワン・トゥ・
ワン・マーケティングという「コンセプト」にして、さらに優良顧客に対して還元を行うためにFSP
という「しくみ」を構築して、最後に優良顧客の選別のために、RFM分析という「手法」を活用する、
と考えれば良いのではないかと思います。
なお、上記の考え方は一面的なものであり、実際には各キーワードの定義もさまざまにあるため、こ
のとおりに解説を行っていない場合もあります。今回の事例はあくまでも、皆さんの理解が進むように
と、一例を挙げたに過ぎません。その点に御注意ください。
では引き続き、がんばって学習に取り組んでください。
―以上―
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