特定地番に係る分収育林の契約に係る分収育林台帳の一部開示決定

諮問庁:林野庁長官
諮問日:平成19年3月23日(平成19年(行情)諮問第148号)
答申日:平成20年2月18日(平成19年度(行情)答申第426号)
事件名:特定地番に係る分収育林の契約に係る分収育林台帳の一部開示決定に
関する件
答
申
第1
書
審査会の結論
四国森林管理局において,特定地番に係る分収育林の契約に係る分収育
林台帳(以下「本件対象文書」という。)につき,その一部を不開示とし
た決定は,妥当である。
第2 審査請求人の主張の要旨
1 審査請求の趣旨
行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)3
条の規定に基づく本件対象文書の開示請求に対し,平成18年11月13
日付け18四国第174号により四国森林管理局長(以下「処分庁」とい
う。)が行った一部開示決定(以下「原処分」という。)について,その
取消しを求める。
2 審査請求の理由
審査請求人の主張する審査請求の理由は,審査請求書及び意見書の各記
載によると,おおむね以下のとおりである。
(1)審査請求書
分収育林契約書15条1項には,分収木について各契約当事者の住所,
氏名及び持分割合を記載した台帳を作成,保管し,これを閲覧に供する
ものとなっているので,平成18年11月8日付けで,四国森林管理局
長に対し,閲覧を請求した。当該開示請求文書については,分収育林契
約者の氏名,住所,生年月日,郵便番号,法定代理人の氏名及び連絡人
の氏名が記録されており,特定の個人を識別することができる情報であ
り,法5条1号に該当し,同号ただし書イに該当しないという理由から
不開示になったが,個人情報保護法の施行により不開示であれば,個人
情報保護法は分収育林契約時より17年後に施行されたものであること
から,契約書優先になるので,契約書どおりの閲覧をさせていただきた
い。法により開示及び閲覧ができないのは理解できない。
分収育林契約書第7条2項「分収木の主伐及び間伐等に係る販売代金
-1-
の分収については・・・・・分収木の買受人から直接各契約当事者に速
やかに支払わせるものとする。」とあることに関して,先般,私は個人情
報保護上の関係より,販売代金は管理局を通じて支払うようにしてほし
いと要請したところ,契約書が優先するので契約書どおりであるとの回
答であった。したがって,今回の分収育林台帳の閲覧も契約書に従って
実施していただきたい。
台帳の閲覧により得られる情報は次のように考えている。
緑のオーナーの方との情報交換をする。オーナーは分収育林に出資を
している。木材価格の下落により損失を受けることもある。価格下落は
どうすることもできない現実においても,国有林野について林野庁に対
しての要望が大きい。価格についてはオーナーの理解が必要である。こ
のため,オーナーとの懇談会を開催したり,情報交換をして理解をして
もらうことが必要である。このことにより,森林整備,緑の育成,林業
についての提言も出てくるであろう。分収育林で損失を出したでは駄目
ではないか。素直な,真しな姿勢でお互いに交換することがよいと思う。
せめてオーナーの方々に緑についての推進役を担ってもらうようにした
いものである。私はオーナーと林野庁国有林野事業との橋渡し役ができ
ればと思っている。
以上によって,不開示の取消しを求める。
(2)意見書
ア 特定地番に係る分収育林(平成元年1月19日契約)についてのオ
ーナー間の情報交換のために分収育林台帳の閲覧,交付,開示を求め
た。なぜなら,分収育林についての,疑問点や問題点が多い。四国森
林管理局から各オーナーに情報公開や,通知で,諸々の事項を連絡し
てくれればいいのであるが,四国森林管理局の都合の悪いことはすべ
て内部で隠し公開されないので,各オーナーとの情報交換をするため
に台帳を見たいのである。
イ 分収育林の契約書15条1項には,
「分収木について各契約当事者の
住所,氏名及び持分割合を記載した台帳を作成,保管し,これを閲覧
に供するものとする。」とある。この条文では台帳の開示は,できるこ
とになっている。
第3 諮問庁の説明の要旨
1 国有林分収育林制度について
(1)国有林分収育林制度の概要
国有林分収育林制度は,国民参加による国有林野の整備の促進等を目
的として昭和59年度に創設された制度で,契約により,生育途上の国
-2-
有林の森林を国と持分の対価及び保育・管理費用を負担する費用負担者
(以下「分収育林契約者」という。
)との共有とし,契約期間(おおむね
20から30年程度)満了後,その森林の樹木の販売代金を国と費用負
担者が持分に応じて分収する制度である。
(2)分収育林台帳について
ア 分収育林台帳は,分収育林契約者の権利関係を正しく反映し,分収
木の共有持分の履歴簿としての役割を果たすことを目的に,森林管理
局長(甲)と費用負担者(乙)が締結した分収育林契約書15条に基
づき,森林管理局長が分収育林契約を締結したときに作成し,保管す
るものである。また,この閲覧については,契約当事者(分収育林契
約者,法定代理及び連絡人をいう。以下同じ。)からの閲覧の申出があ
る場合に,その契約当事者の現実の権利関係を確認できるようにする
ため,分収育林契約に基づき各契約当事者に係る分収育林台帳につい
て閲覧を実施しているものである。
イ なお,分収育林台帳の様式には,第1号様式「分収林履歴表」
,第2
号様式「分収林個別表」,第3号様式「費用負担者個別表」及び第4号
様式「費用負担者一覧表」
(以下,それぞれ「第1号様式」
,
「第2号様
式」,「第3号様式」及び「第4号様式」という。)がある。
2 原処分における不開示理由
本件対象文書については,分収育林契約者の氏名,生年月日,郵便番号,
法定代理人の氏名及び連絡人の氏名が記録されており,特定の個人を識別
することができる情報であり,法5条1号に該当し,同号ただし書イに該
当しないことから,これらの情報が記録されている部分を不開示とした。
3 不開示理由該当性について
(1)本件対象文書の特定について
ア 開示請求時に不服申立人は,本件対象文書についての閲覧及び写し
の交付を求めており,処分庁は,本人に係る部分については契約に基
づき閲覧させ,行政サービスにより写しの交付を行うとともに,本人
以外の契約当事者に係る部分については,法に基づく開示請求を実施
することとした。
イ また,本件対象文書のうち,第3号様式については,分収育林契約
者ごとに作成しており,分収育林契約者の人数分の枚数が存在するた
め,任意の一枚でよいことを不服申立人との電話で確認し,本件対象
文書を特定して原処分のとおり一部開示決定を行った。
(2)不開示部分の妥当性について
ア 法5条1号柱書きの検討について
-3-
審査庁(林野庁長官)において審査したところ,本件対象文書には,
分収育林契約者,法定代理人及び連絡人の氏名,生年月日,郵便番号,
住所及び電話番号が記載されており,これらについては,法5条1号
に規定する個人に関する情報であって,特定の個人を識別することが
できるものに該当すると認められる。
イ 法5条1号ただし書イの検討について
分収育林台帳については,契約当事者に対して閲覧させることとし
ているが,法令の規定又は慣行により何人に対しても等しく公開して
いるものでないこと,また,公にすることも予定していないことから,
ただし書イに該当しない。
以上のことから,分収育林契約者,法定代理人及び連絡人の氏名,生
年月日,郵便番号,住所及び電話番号については,個人に関する情報で
あって,特定の個人を識別できるものであり,法5条1号に該当し,か
つ,同号ただし書イに該当しない。
なお,本件については,平成18年11月13日付け行政文書開示決
定通知書に基づき,同月20日に開示の実施を行っているところである
が,開示の実施において不開示とした部分のうち,分収育林契約者の「電
話番号」が,行政文書開示決定通知書の「不開示とした部分とその理由」
欄に記載されておらず,同欄には,分収育林契約者の氏名,住所,生年
月日,郵便番号,法定代理人の氏名,連絡人の氏名に加え,電話番号に
ついても記載すべきであった。
第4 調査審議の経過
当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,調査審議を行った。
① 平成19年3月23日
諮問の受理
② 同日
諮問庁から理由説明書を収受
③ 同年4月18日
審査請求人から意見書を収受
④ 同年7月26日
本件対象文書の見分及び審議
⑤ 平成20年2月14日
審議
第5 審査会の判断の理由
1 本件対象文書について
本件対象文書は,特定地番に係る分収育林契約(平成元年1月19日契
約)に関する契約書15条1項に基づき,四国森林管理局長が作成した特
定地番に係る分収育林台帳である。
処分庁は,本件対象文書のうち第1号様式及び第2号様式の全部を開示
するとし,第3号様式及び第4号様式については,分収育林契約者,法定
代理人及び連絡人の氏名,生年月日,郵便番号,住所及び電話番号が記載
-4-
されており,これらは,特定の個人を識別することができる情報であり,
法5条1号に該当し,同号ただし書き各号に該当しないことから,これら
の情報が記録されている部分を不開示とする原処分を行った。諮問庁も同
旨の理由説明をしていることから,以下,本件対象文書の不開示情報該当
性について検討する。
2 不開示情報該当性について
当審査会において本件対象文書を見分したところ,第3号様式には,①
森林管理局名,②森林管理署名,③契約年度,④契約番号,⑤契約者番号,
⑥契約者氏名,⑦契約者生年月日,⑧契約者住所,⑨契約者電話番号,⑩
契約年月日,⑪契約口数,⑫費用負担額,⑬保険料額,⑭公募の種類及び
⑮当初契約年月日が記載されており,また,第4号様式には,①森林管理
局名,②森林管理署名,③契約番号,④分収育林価格,⑤総口数,⑥国の
持分口数,⑦契約者の持分口数,⑧契約者番号,⑨契約者氏名,⑩公募の
種類,⑪契約者住所,⑫契約口数,⑬法定代理人氏名,⑭連絡人氏名及び
⑮契約年月日が記載されている。
このうち,原処分において不開示とされた第3号様式の⑥契約者氏名,
⑦契約者生年月日,⑧契約者住所及び⑨契約者電話番号並びに第4号様式
の⑨契約者氏名,⑪契約者住所,⑬法定代理人氏名及び⑭連絡人氏名につ
いては,全体として各契約者に係る法5条1号本文前段の個人に関する情
報であって,特定の個人を識別することができるものであると認められ,
同号ただし書きイないしハに該当する事情は認められない。
次に,法6条2項の部分開示について検討すると,契約者の氏名,生年
月日,住所及び電話番号は,一体として各契約者を識別することができる
こととなる部分であり,部分開示をすることはできない。
また,⑬法定代理人氏名及び⑭連絡人氏名は,それぞれ法5条1号本文
前段の特定の個人を識別することができる情報であって,上記のとおり,
いずれも同号ただし書イないしハには該当しない。
以上のことから,これらの情報は,法5条1号の不開示情報に該当し,
不開示とすることが妥当である。
3 審査請求人の主張について
審査請求人は,分収育林の契約書15条1項には,分収育林台帳を閲覧
できることになっていると主張するが,契約書上,当該契約に係る共有者
が誰であるかについての契約当事者の閲覧請求権が存在するとしても,何
人に対しても等しく公開することを前提としている法3条に基づく開示請
求に対しては,法5条1号の不開示情報を開示することはできないことか
ら,審査請求人の主張は採用できない。
-5-
審査請求人は,その他種々主張するが,当審査会の上記判断を左右する
ものではない。
4 本件不開示決定の妥当性について
以上のことから,本件対象文書につき,その一部を法5条1号に該当す
るとして不開示とした決定については,妥当であると判断した。
(第4部会)
委員 鬼頭季郎,委員 園 マリ,委員 藤原静雄
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