パラグアイ経済報告(2010年9月~10月)

パラグアイ経済報告(2010年9月~10月)
1. 概要
(1)国家財政に関する動き
個人所得税導入延期法案は8月に大統領の拒否権行使により国会で再審議されることとなって
いたが,上院にて再度承認され下院に送付された。右状況に対し,ボルダ蔵相は,財源確保のた
め法人税率の引き上げなどを検討し始める旨発表した。
両院予算委員会で審議されていた2011年国家予算案は10月末下院に送付された。なお,議
員給与引き上げなど人件費増加により歳出が拡大している。
(2)為替・物価
4月以降,1ドル4,700グァラニー代後半で推移してきた対ドル為替レートは,9月末よりドル高
傾向で推移し始め4,900グァラニー代前半で安定推移した。同傾向に対し,中央銀行は「パラグ
アイ石油公社(Petropar)が債務返済のために継続してドルを購入していることが要因」と分析し
介入しない方針を示していたものの,10月中旬以降総額62百万ドルのドル売り為替介入を実施
した。
9月の月間インフレ率は液化石油ガス供給安定に伴う価格引下げ及び乳製品の価格安定によ
り▲0.4%とデフレ推移したが,10月には牛肉価格及び青果価格の上昇により2.2%の上昇と
なり,累積インフレ率は5.2%となった。右インフレ傾向に伴い,中銀は2ヶ月間で4度にわたり金
融調整手形を発行している。
(3)経済成長及び貿易取引額の増加
9月,2010年第2四半期経済成長率が発表され,同期の経済成長率は12.2%を記録した。
また,9月末までの貿易収支額は▲3,135百万ドル(前年同期比58%増)を記録。好調な輸出
と国内経済活性化に伴う輸入の増加は,国内インフラの未発達(穀物貯蔵庫の不足,道路インフ
ラの未発達,水位の低下による輸送の遅れ)の問題を浮上させている。
2. 経済関係の主な動き
(1)
財政・政策
● 10月1日,政府はタバコ及びアルコール飲料に対する選択的消費税(ISC)の税率を品目ごと
にそれぞれ1~3%引き上げる政令5,158号を発出。なお,右によって生じた収入はスポー
ツ開発基金に充てられることとなる(政令4,045号にて規定)。
● 10月3日,大蔵省は2010年9月末までの税収を8.2兆グァラニー(約1,692百万ドル,前
年同期比22.7%増)と発表した。また,2010年税収予測を12兆グァラニー(約2,524百
万ドル,前年比18%増)と予測。
● 11月1日,大蔵省は2010年10月末までの歳入を9.3兆グァラニー(前年同期比24.1%)
と発表した。
(2)
個人所得税導入延期法案の国会再審議
● 10月7日,8月に大統領が拒否権を発動したことで再び審議されていた「個人所得税導入延
期及び細則改正法案(政令4,064号)」が再び上院で承認され下院に送付された。右状況に
対し,大蔵省は財源確保のための代替案として法人税を 20%に引き上げる可能性を検討し
ている旨発言。
(3)
経済指標
● 9月2日,中銀は2010年上半期における短期経済指標 IMAEP が前年同期比13.8%増と
なった旨発表した。
(4)
9月28日,中銀は2010年第2四半期経済成長率を発表。生産・支出両部門における成
長に支えられ,前年同期比12.2%増,前期比1%増,累積で11.7%の成長を記録し
た。また,好況に支えられた建設部門の成長は資材等の輸入増加につながっている。
(5)
景気予測
● 9月14日,プライスウォーターハウス・クーパーズは2010年経済成長率を当初の9%から1
0.5%に上方修正。なお,2011 年は干ばつによる農業生産不振により1.5%程度と予測。
● 9月20日,大蔵省は2010年の経済成長率及びマクロ経済指数予測を以下のとおり発表。
2009 年
2010 年
2011 年
2012 年
2013 年
GDP(10 億グァラニー)
70,705
82,428
90,669
98,419
107,675
GDP(百万ドル)
14,235
17,441
18,625
19,905
21,437
-3.8%
9.0%
3.5%
3.7%
4.1%
インフレ率
1.9%
4.8%
5.0%
5.0%
5.0%
対ドル為替レート
4,967
4,726
4,868
4,959
5,023
輸入額(百万ドル)
6,497
8,620
9,214
9,753
10,416
実質 GDP 成長率
● 10月6日,IMF は南米諸国の 2010 年経済成長見通しを発表,パラグアイの2010年経済成
長率を9%に引き上げた。
● 10月30日,民間コンサルタント MCS 社は,2010年パラグアイの経済成長率を11.2%と
予測した旨発表。
(6)
金融政策・海外送金受取額
● 9月4日,中銀は2010年上半期の海外送金受取額を130.6百万ドル(前年同期比32%
増)と発表。なお,最も送金額が多かったのはスペインで76.4百万ドル,続いて米国が33.
7百万ドルであった。
● 9月10日,中銀は総額3,570億グァラニー(約75百万米ドル)の金融調整手形(IRM)を発
行。
● 10月4日,中銀は2010年1-7月の海外送金受取額を152百万ドル(前年同期比31.4%
増)と発表した。
● 10月8日,中銀は総額3620億グァラニー(約73百万ドル)の金融調整手形(IRM)を発行。
● 10月20日,中銀は景気回復とマクロ経済安定にともない,銀行及びフィナンシエラの最低資
本金を100%引き上げる意向がある旨表明。
● 10月22日,中銀は45百万ドルのドル売り介入を実施,その後1週間立て続けに介入し,総
額62百万ドルに上った。
● 10月23日,中銀は総額3,910億グァラニー(約80百万ドル)の IRM を発行。
● 10月29日,中銀は総額2,415億グァラニー(約49百万ドル)の IRM を発行。
3. 対外部門
(1)輸出入(全体)
● 9月6日,中銀は1-8月貿易統計を発表。同期間中の輸出額は3,133百万ドル(前年同期
比38.7%増,内大豆輸出額1,436百万ドル,牛肉輸出額572百万ドル),輸入額は5,7
77百万ドル(同47.7%増)となった。なお,貿易赤字は2,646百万ドル(前年同期比60%
増)。
● 9月7日,税関局は2010年1-8月期輸入業者ランキングを発表。燃料輸入業者(パラグアイ
石油公社,Copetrol,Esso)及び輸送業者が上位を独占。
● 10月5日,中銀は1-9月貿易統計を発表。同期間中の輸出額は3,473百万ドル(前年同期
比39.7%増,うち大豆輸出額1,935百万ドル,牛肉輸出額は657百万ドル),輸入額は6,
609百万ドル(同47.3%増)となった。
● 10月11日,税関局は2010年1-9月期輸出業者ランキングを発表。穀物メジャー(カーギル,
ADM パラグアイ,Bunge)及び牛肉加工輸出業者(コンセプシオン冷凍工場,Frigomerc など)
が上位を独占した。
(2)対メルコスール
● 2010年9月末までの対メルコスール輸出額は全体の49.1%(内ウルグアイ48.3%,ブラ
ジル28.0%,アルゼンチン23.7%)となった。貿易収支は対亜▲640.7百万ドル,対伯
▲1,156百万ドル,対ウルグアイ722.4百万ドルとなり,対メルコスール貿易収支は▲1,
074百万ドル(前年同期比78.6%増)となった。
4. 国内部門
(1)
物価
● 9月の月間インフレ率は▲0.4%となり,累積インフレ率2.9%,過去12ヶ月インフレ率3.
8%となった(物価下落品目は,乳製品,液化天然ガス,物価上昇品目は,牛肉)。
● 10月の月間インフレ率は2.2%となり,累積インフレ率5.2%,過去12ヶ月インフレ率5.
2%となった(価格上昇品目は,牛肉,青果物)。
(2)
農牧畜業
● 10月,大豆播種開始に伴い,パラグアイ穀物・油糧作物輸出協会(CAPECO),MSC グルー
プなど国内企業が生産に関する見通しを発表。生産量は2009/10期とほぼ同水準となる旨
予測された。また,20日には2010/11期の大豆生産開始式典がカアグアス県にて開催さ
れた。
(3)
商業・投資
● 10月1日,リオ・ティント社は,公共事業通信省に対し,総額2,500百万ドルの投資(アルミ
精錬工場の設置)に加えて,今後国内に工業用地を取得したい意向を表明した。なお,同プ
ロジェクトは30~50年間で300百万ドルの投資を見積もっている由。
(4)
金融
● 中銀銀行監督局(SB)は,2010年1-8月期民間銀行純利益を発表。総額7,790億グァラ
ニー(約160百万ドル,前年同期比18%増)となり,内民間銀行6,830億グァラニー(前年
同期比14%増),フィナンシエラ650億グァラニー(同45%増),両替商(310億グァラニー
(同 82%増)となった。なお,最も高い収益を記録したのは,BBVA 銀行(1,720億グァラニ
ー),Itau 銀行(1,700億グァラニー),コンチネンタル銀行(1,280億グァラニー),Regional
銀行(650億グァラニー),アマンバイ銀行(320億グァラニー)。
● 9月末までの,国内銀行預金総額は34兆グァラニーとなった。内,銀行種別ごとの預金比率
は,外国資本100%:8.17%,国内資本50%以下:41.85%,国内資本50%以上:42.
56%,国立勧業銀行7.42%。通貨別預金比率はドル建42%,グァラニー建58%。
(5)
通信
● 9月28日,政府は通信法(法642/95号)を一部修正する政令5,134号(政令16,761/0
2号第15条「料金設定」を修正する政令)を発出した。同政令は料金設定の単一化を図るも
ので,これにより携帯事業者の自社間及び他社間の通話料金設定の統一化が義務付けられ
ることとなる。国内4社の携帯事業者のうち市場の6割以上のシェアを有する Milicom社(携帯
サービス名 Tigo)は右政令に反対する姿勢を示しているが,その他3社は現状で既に自社間
通話料金と他社との通話料金を同一にしているため反対の声は出ていない。エスキベル電信
電話公社(COPACO)総裁は,「政令により,各事業社が料金設定をどのように変更してくるか
は分かりかねるが,高値で統一することは無いであろうし,むしろ通信料金は今後低下してい
くであろう」と発言。なお,政令は11月15日以降適用予定。
● 10月22日,エスキベル COPACO 総裁は,南米海底ケーブル敷設プロジェクトにパラグアイ
も参加することが決まった旨発表。
(6)
エネルギー・インフラ
● 10月14日,政府は空港の民間移譲案を国会に提出。対象となっている空港は国内3空港
(シルビオ・ペティロッシ空港,グァラニー空港,マリスカル・エスティガリビア飛行場)で,増設,
改築,経営などほとんどの機能が移譲される予定。
● 10月24日,イタイプ-ビジャ・アジェス間の500kV送電網建設にかかる入札が開始。
5. その他
● 10月6日,センサス統計局は国家経済統計調査(Censo Económico Nacional)を開始する旨
発表。ソサ同局長は,国民経済計算に関するデータベースは複雑であるが,本統計はパラグ
アイ経済の全体像把握を可能にするようなシンプルなものである旨発言。
● 10月11日,青少年庁は,青年の雇用状況に関するアンケート調査結果を発表。調査を実施
した15~29才の2,000人中1,003人(50%)が失業中,962人(48%)が就業,0.9%
がその他,5%がどちらでもないと回答。また,就業している962人中769人(80%)が,正
規雇用契約を結んでおらず,雇用保険に加盟していないと回答した。