ダウンロード - 社会保険労務士 サザンフラックス労務室

平成 21 年 4 月 6 日
いよいよ新年度が始まりましたが、例年より桜の開花が遅れたので、桜花爛漫の下で春らしい
入学式が各地で開催されております。
新入社員を迎えて花見の宴を予定されている会社も多いと存じますが、お酒にまつわる小話を
ひとつ。
上等なウィスキーの新しいボトルを開ける。封印を解き、栓を抜くと、芳醇な香りが鼻腔をくす
ぐる。グラスに氷を入れ、その上からトクトクと琥珀色の液体を注ぎこむと、辺りにウィスキーの
香りが漂いだす。なぜか慌てて、グラスに口をつけ、冷たくなった液体を飲み込むと、五臓六腑に
アルコールが滲み渡る。この感覚が酒飲みには堪らない。1 杯目は一気に飲み干して、2 杯目を作
る。そして 3 杯目。今日はこれくらいにしようか。ボトルを明かりにかざすと、まだたっぷり残っ
ている。また明日が楽しみである。こうして、2 日目も 3 杯飲んで、残りを確認し、まだまだ沢山
残っていると安心する。
ボトルに残った酒の量を見て、まだ半分残っていると思うか、もう半分しか残っていないと思う
かは、心の持ちようだとは言うものの、やはり残りの量が気になるものです。
ところが、ボトルの残りの量が半分を切った辺りから、減り方が急に大きくなるということに、あ
るときふと気がついたのです。理屈は簡単、毎回グラスに注ぐ量が変わらなければ、残量に対する
注ぐ量の割合はだんだん大きくなるからです。大事なウィスキーが減っていくのは寂しいものです
が、お酒なら酒屋に行けばまた買えます。
しかし、これが老後の蓄えであるお金だったらどうでしょう。寂しいどころか精神的にも追い込
まれて、かなり辛い心境になるのではないでしょうか。
先日、知り合いの行政書士さんから、中国人の王さん(仮名)の話を聞きました。
王さんは大正3年生まれで、戦前台湾に住んでいましたが、太平洋戦争中に妻子と生き別れにな
ってしまいました。戦後日本に渡って事業を興し、成功され一財産を築かれましたが、妻子の行方
はわからないまま還暦を向かえ、悠々自適の生活に入られました。
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王さんは一生食べていくだけの蓄えは充分にあると安心していたのですが、現在95歳となり、予
想以上の長生きで、財産の残りが心細くなってしまいました。
王さんは、若いころ国民年金に加入していなかったので、無拠出の老齢福祉年金がもらえないも
のかと区役所に相談にいきましたが、国民年金の保険料を納めた期間と、保険料を免除された期間
の合計が受給要件に不足していて、老齢福祉年金を受給することはできなかったそうです。
実は王さんが事業から引退してしばらくして、生き別れた子どもさんがアメリカで暮らしている
ことがわかり、交流が続けられていましたが、親子関係を証明する公文書が何もないので、DNA
鑑定で親子関係を証明して、渡米して子どもさんと一緒に暮らすことになったそうです。
日本を離れるにあたって、王さんの世話になった人たちが大勢集まって、お別れ会を開催したの
ですが、王さんは生活に困窮していることはおくびにも出さず、全部自分で費用を出して、大見得
を切ってお別れしたそうです。
日本には、世界に冠たる皆年金制度がありますが、昨今の年金への不信感が国民に蔓延して、年
金制度は崩壊すると本気で論じられていることから、ご老人たちは財布の紐を固く結んで「そのと
き」に備えているのが実情です。
人間の寿命は、自分ではわからないものだから、一生分の生活費を生きているうちに決めること
はできません。だから王さんのように、想定外に長生きしたせいで、毎月減っていく預金通帳を眺
めながら、不安におののき、己の長寿を恨めしく思いながら暮らさなければならないのは、とても
辛いことです。
このウィスキーの小話と、王さんの逸話から、日本の年金制度が頼りないからといって、やみく
もに自助努力に走る(最近は若い人でも、遊びのためではなく、老後のために貯金していると聞き
ますが)のではなく、国の制度としての老齢年金を、自分たちの力できちんと作り直していかなけ
ればならないと思います。
国民がお上にお任せするのではなく、自分たちで国民年金制度を作り上げていくという意識と気
概こそ自助努力ではないでしょうか。
<4月から、「ねんきん定期便」がはじまります。>
4月から、社会保険庁による「ねんきん定期便」の発送が始まります。2007年の年末から昨
年秋にかけて送付された「ねんきん特別便」とは違います。
「ねんきん特別便」は該当者不明の約5000万件の年金記録の持ち主を探すことだったので、現
在保険料を払っている被保険者だけでなく、既に年金を受け取っている人でも年金記録が漏れたま
ま少ない年金を貰っている可能性があるので、その人たちも含めて約1億900万人に送付されま
した。
これに対して、今回から始まる「ねんきん定期便」は、現役の被保険者に年金加入記録や年金見
込み額などの情報を伝えることが目的です。「定期便」を受け取ることにより、将来受け取る年金
のことに関心をもってもらうとともに、記録の漏れや誤りを防止する効果も期待されます。
送付の時期は、毎年誕生月に送付されますが、1日生まれの人は、前月に送付されます。
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定期便の内容は、平成21年度は次のとおりです。
①年金加入期間
②年金見込額
50歳未満の人
加入実績に応じた年金見込額
50歳以上の人
「ねんきん定期便」作成時点の加入制度に引き続き加入した
場合の将来の年金見込額(ただし、既に在職老齢年金を受給中
か、全額支給停止されている人には、年金見込額は通知されま
せん。)
③保険料の納付額
④年金加入履歴
⑤厚生年金のすべての期間の月毎の標準報酬月額・賞与額、保険料納付額
⑥国民年金のすべての期間の月毎の保険料納付状況
平成22年度以降は、35歳、45歳、58歳の節目年齢時に、平成21年度と同じ内容の記録
を更新して通知されます。
節目年齢以外の歳の人には、上記①~③については、記録を更新し、⑤と⑥については直近1年
分が通知されます。
今年度の「ねんきん定期便」は、特に重要です。自分のほとんど全部の記録が網羅されています
から、年金加入履歴や、標準報酬月額の推移をしっかり点検しましょう。
とは言っても、年金のしくみは説明文を読んでもわかりにくいものです。都道府県社会保険労務
士会では、「ねんきん定期便」に関するお問い合わせに対し、年金相談センターにて無料相談を実
施しております。
(http://www.tokyosr.jp/sodan/other.html)
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