第1回 国際資源開発人材育成検討会 1.日時:平成19年5月23日(水) 議事概要 10:00~12:00 2.場所:経済産業省別館10階1020会議室 3.議題:資源開発人材の現状と課題、資源開発教育の現状と課題 4.出席者: 岩田哲郎(三菱商事㈱)、大関真一(日本鉱業協会)、大野健二(JOGMEC)、込山雅弘(双日㈱)、近藤 敏(JOGMEC)、佐藤光三(東京大学)、庄司太郎(石油鉱業連盟)、杉田隆(石灰石鉱業協会) 、合田圭 吾(新日鐵㈱)、平島剛(九州大学)、松井紀久男(九州大学)、山富二郎(東京大学)(以上が委員)、 佐々木詔雄(三井石油開発㈱)、沖嶌裕芳(NEDO)、飯田健治(NEDO)(以上がオブザーバー)、資 源エネルギー庁 石油・天然ガス課、石炭課、鉱物資源課(以上が事務局) 5.議事概要 1.教育界からの意見 ○ 以前は4年生で教育は完了ということだったが、90 年代から大学院でより専門的なことを学 ぶ学生が増えてきた。当時は、大学院修了後に資源開発企業に行く学生もいたが、最近は減少 しており、状況は悪化。 ○ 夏期実習として、海外鉱山に長年学生を送り出しているが、海外では仕事がきつく事故の心配 もある。保険をかけるが、企業からは事故があった時に道義的責任があるため受入れ難いと言 われることがある。送り出す側も気を遣う。 ○ 資源開発企業に学生を就職させようと思っても、採用する企業が積極的でなかった。Mining Engineer の良さを授業でアピールしているが、学生から見ると、魅力がない、将来がない、 給料がそんなに高くない、と受け取られている。 ○ 海外の資源大学に社員を送り込む場合、基本的なものがないと講義を理解できない。(1)日本 で専門教育を受けて、(2)現場に出て、(3)そして海外の大学に行けば、かなり理解できるし吸 収できる。日本の中に資源を教えていく機関は必要であり、各企業、経産省の協力が必要。 ○ 海外から資源を輸入しているという状況において、「海外の事情」と「マイニング技術」を理 解していないとまともな議論ができない。もはやお金を出せば資源が買える時代ではない。 ○ 海外に日系企業があれば学生を受け入れてもらいやすいし、面倒を見てもらいやすい。最近は 日系企業も人手不足のため、実習を受け入れてくれる先を見つけるのに苦労する。資源ブーム の中、事情は深刻。 ○ 何年か前に鉱山系会社に就職をお願いしたがほとんど断られた。今は欲しいということだが、 人材戦略に対して100年の計をもって設計する必要があるのではないか。 2.産業界からの意見 (求める人材像について) ○ 生きるために資源を獲得しなければならない国々があり、日本はその隣に住んでいるという地 勢学的な背景がある中、これらの国々に勝とうとして資源人材を育成しても日本は勝てない。 資源獲得対策として人材育成を行うというのではなく、人の国にある資源を使わせてもらう (権益を買う、操業させてもらう)にあたって何が必要かという視点で議論をする必要がある。 ○ 国内よりも海外が主体だが、マネージメントクラスなら英語、現場クラスでは現地語が必要。 ○ 教育する側、輩出する側である大学で教育カリキュラムがどんどんなくなっているため、石灰 石鉱業においても現場で操業する人材の確保が困難。ある社では資源系でなく土木系でも電気 系でも技術者であれば何でも良いというところまできている。 ○ 非鉄金属関係は、金属価格の高騰、資源メジャーの台頭で上流志向が強まっており、海外鉱山 開発に本格的に取り組むには年間20人ぐらい資源系の新卒者を取らなければとの試算もあ る。エキスパートの養成方策に早急に取り組む必要がある。 ○ 天然ガスをLNGに代えて日本に持ってくるには1兆円程度の投資が必要。これを一緒に行う メジャー、オーストラリアや中東の技術者はマスターコースや Ph D を持っている人が多い。 現場をコントロールする技術者というよりは、質の高い人材が少数でもいいので必要。 ○ 資源関係の人材不足、資源系大学における学部学科の統廃合は世界中で起こっている現象。オ ーストラリアにおいては、日本よりも資源系大学、資源系学生は残っているものの、学生数は 20年前の半分程度。本当の専門家、例えば石炭鉱山で操業する時、ミドルマネジメントにな り得る人間がだんだん足らなくなっている。 ○ かなり厳しい問題であり、100年、200年という長いスパンで、腰を据えて骨太に考えて いく必要がある。 (資源系大学の取組について) ○ 今、大学で教えていることを極めたとしても資源国で仕事をさせてもらえない。技術オリエン テッドではなく、よりマネジメントオリエンテッドとして考え、どのように資源をおさえ、運 営、経営していけるのかという捉え方をすべき。技術に特化した教育では資源確保には繋がら ない。 ○ 資源分野は特殊であり、自然との対話、工学的な知識、幅広く広範な知識が必要。 ○ 「環境」と聞いてコースを選択したが何をしていいかわからない、産業をどう選んで良いか分 からないと悩んでいる学生がいた。インターンシップ等現場を経験したところダイナミックで 楽しいと納得していた。インターンシップ等経験者は、業界への定着率もかなり高いようだ。 ○ インターンシップは、クウェートやサウジアラビアは国の規則により、毎年石油会社に100 人単位で送り込んでくる。日本のインターンシップ制度に、海外の制度も取り込みながらモデ ィファイして制度化してみてはどうか。インターンシップは海外では当たり前だが、日本は未 だそれぞれの先生にゆだねるところがある。 ○ 大学院レベルでいえば、縦割りではなく分野を拡げ「資源大学院」といった考えが効果的では ないか。「資源大学院」を出れば企業も採用するということなれば、明確な目標を持った大学 院になる。入学したら業界に入っていけることが確実であるというモデルを示すことが必要。 ○ 特にここ数年、上流、山元に入っている。10年前ぐらいまでは技術系の人間をかなり抱えて いたが、今はおらず、上流に入ろうとしても分かる人が少ない。企業、産業の趨勢なので、(人 の不足は)仕方ない面もあるが、資源は世界でも確実に使用され、むしろ増えている。資源系 人材の確保は必要であり、ある定数を継続的に輩出して頂くことは重要。 (産業界による協力等について) ○ 今まで会社に余裕があった時は、学生を採用して、毎年3,4人をテキサス大学やインペリア ルカレッジの大学院や博士コースに入れ、海外の人脈構築、語学、資格取得などを行っていた。 ○ 海外の産油国、産ガス国から学生の教育訓練を義務づけられるが、産業界からの講師若しくは 資金の協力や、政府側からの協力があっても良いと考える。 ○ 資資源分野は要素技術(この場合の要素技術とは、地質、物理探鉱、掘削など石油・天然ガス に限らず、非鉄や石灰山でも共通の技術であり、全部まとめて教育できる。)があり、要素技 術を共通項で括っていくと、大きな枠の中で共通するものがある。石炭とか業界毎に縦割りで 人材を確保する考えは無駄が多い。 ○ 石油会社は24社が7社に統合合併。その過程で大人が大量解雇される姿を子供が見ていて、 こういう職業には就きたくないと考えるなど、企業が行ったことが今ツケとなっている。10 年も学生をとらなければ、学生は来なくなる。 ○ 将来的に、石灰石鉱業も国内現場では合理化が進み閉山が進む。働く場が与えられず、技術を 発揮する場がどんどん狭くなっていく中、企業の中でも人材を維持していくことが厳しい。企 業の枠をこえた大きな枠での人材をプールするようなスキームが必要ではないか。 ○ お金のないときに人を採用するのは一企業としては難しい。業界全体として人材をプールする とか、夢をもたせるようなことが大事。 ○ 学生が資源を嗜好するための提言として、学生のサービス業志向を利用し、つなぎとめていく ことが一つの手段かと思っている。サービス業の中に、例えば商社の中に、資源分野を認知さ せる組織を作るのも一つの手段ではないか。オーストラリアでは投資銀行の中に資源の専門部 局がある、コンサルタントも現場にはいないがサービス業としての資源家として存在する。 ○ 石油・天然ガス業界では海外がメイン。海外では契約次第。長期の雇用はアメリカの準メジャ ー規模の余裕をもった会社ではないと困難。新卒から退職まで雇用する日本の雇用慣行と、国 際的な雇用条件の異なりについて考えなければならない。 ○ 日本は職業、人の流動化が進みキャリア採用が進んでいる。資源系を出ても、マイニングカン パニーのみを考えなくてもいい。間違いなく他産業でも仕事はできる。人材が自由に動けるシ ステムについて、自ずと出来ると思うが、考えてみる必要がある。 ○ 脱石油、脱石炭的な考えが当たり前となり、我々は悪者的な集まり。人材を獲得するには、環 境制約が相当強いので、イメージアップする必要がある。 ○ 石油産業は30年で終わるというピークオイル論等な考えが蔓延し、間違った印象で夢が無く なっている。エネルギーのベストミックス論にたち、それぞれのエネルギーソースが重要であ るとのアピールが必要。 ○ 学生には伝わりにくいが、マイニングはやってみると面白い仕事。これを分かってもらうこと が必要であり、産業側でも考えるべき。海外でインターンシップ行うことは重要だが、そもそ も、我々が働く場は「海外」だとアピールする必要がある。 ○ 日本企業の採用は新卒が多いが、世界では半分以上中途採用がおり、それが当たり前。日本人 の40代の技術者の例だが、サウジアラビアの企業から非常に高額なオファーを受け会社を移 っていった。中東では給与も高騰化している。夢がないが、能力を身につければ世界では手取 りで 2,000 万円くらい儲かる。 ○ 産業界においても、ビジョンを長続きさせる仕掛け、経営方針に依存した採用や流出に歯止め をかける仕掛けが必要。秋田の資源大学校の経営に対しては、骨太な財政支援を考えている。 ここは非鉄系のユニークな社会人教育の場であるが、石灰石、石炭にも門戸を拡げたい。 3.海外の状況 ○ 人材不足の理由としては、日本では、かつての資源開発会社が国内鉱山を閉山したため、活躍 の場がなくなったということが大きな原因と考えられるが、オーストラリアでは現場がいくら あっても人材は減っている。世界中でサービス業志向が進み、資源は、仕事がきつい、現場が 厳しいというように、若い人から見て discourage するようなものになっているのではないか。 ○ 豪州は、業界団体、政府も含め、国を挙げて積極的に人材育成への取り組みを実施。豪州3大 マイニングスクール(NSW大学、QLD大学、WA大学)では、3者がジョイントベンチャ ーとして国立資源大学を設立し、カリキュラム、単位の与え方を共通化するなどの取組が今年 から始まっている。 ○ カナダでは産学協同で、クイーンズランド大学が新しい社会人大学院コースを開こうとしてい る。技術そのものより、持続可能な開発ということで、地元原住民、ローカルの人達との交渉 を実践的に学ばせる動きがある。また、コロラド大学は先端的な鉱業大学になって、実習に鉱 山系会社も入っており、鉱山開発の機会をつくってどんどん研修をしている。ロンドンではイ ンペリアルカレッジ(昔のロイヤルスクールオブマイン)で資源系のビジネススクールを立ち 上げているという動きがある。 ○ インターンシップについては、カナダ、オーストラリアでは大学、大学院の夏季休暇の間、学 生を現場で働かせ、単位とすることがどこでもやっていて常識となっている。安全の問題もあ るが、企業が雇用するため、雇用者として当然のリスクカバーがあるというだけ。 ○ 採用については、企業に就職した卒業生とのネットワークがあって各大学に募集がかかる。給 与については、オーストラリアはかつては歯科医と医者が最高の給与だったが、昨年から資源 系技術者の給与が歯科医と医者をついに抜いた。技術系エンジニアの給与が高騰していて、役 員、部長クラスに近い給与がいきなり出ている、給与面でも、日本企業はハンデを負っている。
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