熱水鉱床開発のための海洋環境影響調査 -KY13-E03

熱水鉱床開発のための海洋環境影響調査
-KY13-E03, KR13-E01, NT13-E04 航海の概要と生物分布-
後藤浩一、大西庸介、福原達雄、前田亘宏、近藤俊祐(環境総合テクノス)、○三輪哲也、藤森英俊、
中野善之、福場辰洋、小栗一将、野口拓郎、Roxana Hoque(海洋研究開発機構)、成田光好、大鹿淳也、
岡本信行(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)
独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の海底熱水鉱床の開発に係る調査・研究
事業計画では、資源量評価、環境影響評価、採鉱、揚鉱、選鉱、製錬技術の4つの分野において、要
素技術の開発に取り組むことが示されている。このうち、環境影響評価の分野においては、海洋環境
基礎調査、環境影響予測モデルの開発、そして環境保全策の検討を 3 本柱として事業が実施されてき
た。株式会社環境総合テクノス(KANSO)と独立行政法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)は、平成 20 年
度から JOGMEC から委託を受け環境ベースライン調査を実施してきた。さらに、平成 24 年度に海底熱
水鉱床の採掘要素技術試験が実施され、その環境影響調査、モニタリング調査を KANSO、JAMSTEC そし
て深海資源開発株式会社が3者共同で実施した。本発表では、環境に配慮した海底熱水鉱床の採鉱シ
ステム構築と海底熱水鉱床開発を行うための環境影響評価手法の確立を目標とし、平成 25 年度に実施
された採掘試験の環境調査航海(KY13-E03, KR13-E01, NT13-E04)の概要を報告する。
航海においては採掘試験に対する環境影響調査と保全策を検討するための大型生物等調査、さらに
環境影響評価のための調査手法の検討を実施した。また、環境影響調査では採鉱試験機の試験と連動
し、採掘試験時における発生源負荷、採掘点近傍と海穴内及び海穴外の対照点への採掘影響を把握す
ることを目標とした。調査海域は沖縄トラフの伊是名海穴周辺であり、採掘試験が実施される HAKUREI
サイト鉱床周辺に調査点を配置した。発生源負荷と採掘点近傍での採掘影響を把握するためには、確
実に採掘試験の影響が及ぶ範囲において環境調査をおこなう必要がある。平成 24 年度に JOGMEC が実
施した数値モデルによる環境影響予測によると、1 日 7 時間の採掘影響の範囲(SS の水産用水基準で
ある 2mg/L 以上の範囲)は水平方向で 40m~130m 程度と予測され、この範囲内で観測をおこなう必要
が生じた。またこれまで使用経験のあるセジメントトラップ係留系は海底からの高さが約 15m あり、
採掘試験機や監視用 ROV の作業の妨げになった。そこで、可能な限り海底に近づける形状と係留方式
の検討をおこない、近底層を監視する高さ約 2m の低頭型プラットホーム等を開発し、展開した。採掘
試験エリアの中心より半径 50mの範囲にモニタリング係留系を設置することが可能となり、モニタリ
ング観測をおこなった。また、採掘試験中の発生源負荷を把握するために、採掘試験機本体に集音機
と濁度センサを搭載し、採掘試験中の直近の騒音と濁度を観測した。3 種類のマーカー板を用いて採
掘屑や巻き上げた堆積物の沈降粒子、再堆積の観測を試みた。ROV ではビデオカメラで海底映像を記
録し、採掘影響を評価するためのデータとした。さらに、採掘点近傍と海穴内と海穴外の対照点への
影響を把握するために ROV によるセンサ計測、ビデオ観測、海水や底生生物を含む堆積物のサンプリ
ングをおこなった。大型生物等調査いついては、採掘試験後の事後調査の中で実施し、ROV による海
底ビデオ撮影による生物分布とベイトトラップを用いた非熱水性の底生生物の採集を試みた。
尚、本報告は、経済産業省からの委託事業として、JOGMEC が実施している平成 25 年度海底熱水鉱床
採鉱技術開発等調査に係る環境影響調査業務の成果である。