第 17 回 財団法人日本陸上協議連盟トレーナー - 日本陸上競技連盟

第 17 回 財団法人日本陸上協議連盟トレーナー研修会報告
去る平成21年 1 月12日(月・祝)、ナショナルトレーニングセンター大研修室に於いて、第17 回(財)日本陸上
競技連盟(以下陸連)トレーナー研修会を開催致しました。研修会は二部構成となっており、午前に「トレーナー
部総会」、午後今回のメインテーマである「アキレス腱」についての講義と討議を行いました。
1. トレーナー部総会
まず、「トレーナー部総会」においては、山澤文裕先生(陸連医事委員会委員長)よりドーピング関連の最新
情報をお話し頂きました。2009 年度、ドーピング防止規程改定点は、下記の通りです。
【2009 年のドーピング防止規程改定点】
・居場所情報の提供の違反居場所情報の提供を未提出 ⇒ 3 回で 1 年間~2 年間の資格停止
・特定物質による違反 ⇒ 警告のみ~2 年間の資格停止
・検査時の尿の量 ⇒ 75cc→90cc に変更
次に、曽我武史委員より北京オリンピックの活動報告があり、事前合宿をふくむ派遣期間でのチームの取
り組み、メディカルサポートについて報告がありました。
さらにオフィシャルサプライヤーである伊藤超短波株式会社より超軽量・コンパクト設計の「ATHLETEmini」の
商品説明がありました。
2. メインテーマ「アキレス腱」について
午後はメインテーマ「アキレス腱」についてドクター、理学療法士、トレーナー、選手それぞれの立場から講
義がありました。
まず、JISS 医学研究部 副主任研究員(整形外科医)で大阪世界陸上チームドクターを務めた奥脇透先生
から、「医師からみたアキレス腱障害の怖さ」と題して慢性障害および外傷の怖さ,そしてその対処方法やリ
ハビリテーションなどについて御講義頂きました。
【内容】
1)下腿後面の解剖
・アキレス腱外傷・障害に関与する筋およびその他の構造の解剖(画像にて紹介)
2)症例供覧
・MRI 画像と症状の関連性について
3)治療および予防
・部分損傷例もあるが、対応に注意することが必要。
部分損傷症例でも縫合手術を行う事がある。
・ステロイド注射は著効であるが、腱の変性につながるため頻回の使用は勧められない。
・競技動作を見直し、アキレス腱部に負担をかけない動きを身につけることが必要である。
次に、アキレス腱外傷・障害を抱える多くのトップ選手達のリハビリを担当している高嶋直美先生より、動画
を使用したトレーニングを見せて頂き、代償動作や動きを見るポイントなど、アキレス腱障害に対する障害は
その障害部位だけが原因で起こっているのではないことなどを御講義頂きました。
【内容】
1)アキレス腱外傷・障害の評価
・片脚立ち、片脚スクワットによる評価を紹介;体幹・下肢との運動連鎖に注目
2) リハビリテーション
・体幹、骨盤周囲筋を上手に使う・スタビリティーの獲得によりアキレス腱への負担が軽減する。
次に、本連盟曽我武史委員から、選手からの情報収集や選手とトレーナーの感覚のすり合わせが重要な
こと、触診の仕方、見る際のポイントなど経験を元に御講義を頂きました。
【内容】
1)アキレス腱の障害にならない為に
・選手の症状と状態を評価した上でケア・アスリハを行わなくてはいけない。
特に、どんな状況で痛みが出るかについては出来る限り細かく聴取することが必要
2)触診
・(圧痛・腫脹・関節と筋の動き等)と症状の変化を確認し、選手の感覚とトレーナーの感覚をすり合わ
せる
3) ケアの方法
・徒手療法(マッサージ・関節モビリゼーション)
・鍼
・物理療法・超音波・電気刺激療法等
4)特に注意するポイント
(ア) 足関節の動き(捻挫の受傷歴・不安定性・距腿関節のつまり等)
(イ) 足底の張り、下腿筋群の張り、足趾の使い方(クセ)
(ウ) 医師との連携をはかる
5) 初期の対応がカギ(普段から選手・スタッフとコミュニケーションを取るようにする)
① 患部の状態をよくする
② 痛みの原因となる要因を探る
6)患部に関連する局所へのアプローチ
さらに,今回は北京オリンピックに日本代表として出場した内藤真人選手に,競技者からみたアキレス腱外
傷・障害について選手の立場から講義いただきました。また、最後には4名での総合討議が行なわれ、この総
合討議では数多くの質疑応答が交わされ活気のある研修会でした。
この研修会は、毎年 3 月最終週に行われる、トレーナーセミナーの修了者で、当部への登録を継続されて
いる方対象の研修会です。
トレーナー部では、今年度も夏期・冬期の二回研修会の開催を検討し、準備を進めております。詳細が決
定次第、陸連 HP 上にてご案内いたします。皆様のご参加をお待ちしております。