独立行政法人国立科学博物館 (PDF:820KB) - 文部科学省

独立行政法人国立科学博物館の平成20年度に係る業務の実績に関する評価
全体評価
①評価結果の総括
標本資料の登録は中期目標を超えるペースで増加しており、博物館の資源を活かした学習プログラムの開発や、ユーザー視点に立ったホームペー
ジのリニューアルによるアクセス数の大幅な増加など、ナショナルセンターとして、科学系博物館のモデルとなる成果をあげている。また、企画展「標
本の世界」等、ナショナルコレクションの収集・保管・継承の重要性を国民に伝える取組が積極的に行われており、長年の懸案であった新収蔵庫の整
備が実現に向けて動き始めている。
常設展は展示の充実とともに、開館時間の延長等来館者サービスの向上の取組が行われ、入館者数は増加している。また、特別展については、
様々な工夫を加えた企画により、新たな入館者の層を開拓するなどの成果をあげている。研究活動では我が国の生物多様性に関する新たな研究に
着手し、また、国際的な活動では国際博物館会議アジア太平洋地域連盟(ICOM-ASPAC)日本会議の開催に対し主導的な役割を果たすなど、ナショ
ナルミュージアムとして積極的な事業展開が行われている。
業務の効率化については、経費の削減など確実に成果として現れているが、国立科学博物館の果たすべき役割を損なわない十分な配慮が必要で
ある。
<参考> ・業務運営の効率化: A
・業務の質の向上: A
②評価結果を通じて得られた法人の今後の課題
・財務内容の改善: A
等
③評価結果を踏まえ今後の法人が進むべき方向性
(イ)研究費の配分については、テーマにより傾斜配分するなど、
外部評価をさらに生かす方策について検討を進めるべきである。
(項目別-1参照)
(ロ)新収蔵庫の整備にあたっては、他の博物館のモデルになる
機能の整備を図ることが望まれる。また、ナショナルコレクション
の整備の観点から長期的な整備計画が求められる。(項目別-
14,15参照)
(ハ)特別展等の入館者数だけでなく、ターゲットとする層や目的
達成の成否を加味したモデル的な来館者分析手法を検討・開発
することが望まれる。(項目別-20参照)
(イ)研究活動の更なる強化を図る観点から、研究費の配分にお
ける外部評価の更なる活用についての検討が必要である。(項
目別-1参照)
(ロ)新収蔵庫の建設が進んだことは評価できるが、それを有効
に活用するとともに、将来を見据えた整備の在り方について検討
が必要である。(項目別-15参照)
(ハ)特別展については、入館者の層などをより細かく分析し、今
後の企画に生かして行くことが必要である。(項目別-20参照)
(ニ)多様な学習支援活動の実施、学習プログラムの開発を行い
成果を挙げているが、それをさらに広く普及することができる体
制の整備・充実が望まれる。(項目別-28参照)
(ニ)学習プログラムのモデルの普及を図るために、それに対応
できる組織体制について検討するとともに、全国の科学系博物
館、学校等、多様な主体との連携強化を進めるべきである。(項
目別-28参照)
(ホ)研究活動の外部評価が行われたことは評価できる。経営委
員会や外部の研究者等、引き続き多様な視点から、点検・評価
を行っていくことが望まれる。(項目別-37参照)
(ホ)業務の効率化を図ることは重要であるが、効率化のための
経営努力と博物館の本来の目標との関係にずれがないかを確
認する作業は常に必要である。(項目別-37参照)
④特記事項
独立行政法人整理合理化計画への対応が進んでいる。また、運営費交付金の執行状況が業務運営に与える影響についての把握を行ったとこ
ろ、中期計画の達成に向けて業務が適正に遂行されている。
全体-1
文部科学省独立行政法人評価委員会
社会教育分科会国立科学博物館部会委員名簿
(正委員)
柿崎
平
○ 山本 恒夫
株式会社日本総合研究所上席主任研究員
八洲学園大学長・筑波大学名誉教授
(臨時委員)
高木 尚
中川 志郎
林 良博
丸亀市教育委員会教育委員
ミュージアムパーク茨城県自然博物館名誉館長
東京大学総合研究博物館館長・東京大学大学院農学生命科学研究科
教授
堀 由紀子 新江ノ島水族館・岐阜県世界淡水魚園水族館館長
松野 康子 元全国公立小中学校女性校長会会長
村井 敞
株式会社日本人材開発センター主任講師
○・・・・部会長
(五十音順、敬称略)
全体-2
独立行政法人国立科学博物館の平成20年度に係る業務の実績に関する評価
項目別評価総表
項目名
中期目標期間中の評価の経年変化※
18年度 19年度 20年度 21年度 22年度
国民に対して提供するサービスその他の業務
の質の向上に関する目標を達成するためとる
A
べき措置
地球と生命の歴史,科学技術の歴史の解明
を通じた社会的有用性の高い自然史体系・
A
科学技術史体系の構築
自然史、科学技術史研究の状況
S
研究者等の人材育成の状況
A
国際的な共同研究、交流の状況
A
ナショナルコレクションの体系的構築及び
A
人類共通の財産としての将来にわたる継承
標本資料の収集・保管状況
A
標本資料情報の発信状況
A
標本資料及び情報に関するナショナルセ
A
ンター機能の状況
科学博物館の資源と社会の様々なセクター
との協働による、人々の科学リテラシーの
A
向上
展示公開及びサービスの状況
S
学習支援事業の実施状況
A
日本全体を視野に入れた活動の状況
A
知の社会還元を担う人材育成の状況
A
業務の効率化に関する事項
A
業務運営・組織の状況
A
経費の削減と財源の多様化の状況
S
財務内容の改善に関する事項
A
外部資金等の積極的導入と管理業務の効
A
率化
その他業務運営に関する事項
A
施設・設備の状況
A
人事管理の状況
A
※当該中期目標期間の初年度から経年変化を記載。
A
A
A
A
A
A
A
A
A
A
A
A
A
S
S
A
S
A
A
A
S
S
A
A
A
A
A
A
A
S
S
A
A
A
A
A
A
A
A
A
A
A
A
A
項目名
備考(法人の業務・マネジメントに係る意見募集結果の評価への反映に対する説明等)
本法人の業務は「文部科学省の使命と政策目標」の施策目標1-2「生涯を通じた学習機会の拡大」に該当する。
本法人の業務・マネジメントに係る意見募集をした結果、意見は寄せられなかった。
総表-1
中期目標期間中の評価の経年変化※
18年度 19年度 20年度 21年度 22年度
(単位:百万円)
【参考資料1】予算、収支計画及び資金計画に対する実績の経年比較(過去5年分を記載)
区分
収入
運営費交付金
施設整備費補助金
施設整備資金貸付金償還時補助金
無利子借入金
入場料等収入
計
16年度 17年度 18年度 19年度 20年度
3,384
1,422
5,259
2,948
442
3,379
1,032
0
0
529
3,244
2,764
0
0
644
3,222
0
0
0
831
13,455
4,940
6,652
4,053
区分
支出
業務経費
展示関係経費
研究関係経費
教育普及関係経費
施設整備費
借入償還金
一般管理費
3,803 計
3,125
30
0
0
648
16年度 17年度 18年度 19年度 20年度
2,110
1,141
698
271
1,422
5,259
2,208
10,999
2,258
1,086
792
380
1,032
0
1,967
5,257
1,706
726
712
269
2,764
0
1,783
6,253
1,867
779
742
345
0
0
1,858
3,725
1,728
715
697
316
30
0
1,682
3,440
備考(指標による分析結果や特異的なデータに対する説明等)
・H16年度の無利子借入金は、「日本電信電話株式会社の株式の売却収入の活用による社会資本の整備の促進に関する特別措置法」に規定する国からの借入金であり、新
館Ⅱ期展示工事を目的として平成13年度より借り入れたものである。H16年度に施設整備資金貸付金償還時補助金5,295百万円によって、これらの借入金の償還を行った。
H16~H18年度の施設整備費は上野地区本館改修工事にかかるもの、H20年度の施設整備費は筑波地区研究管理棟耐震改修等工事にかかるもの。
区分
16年度 17年度 18年度 19年度 20年度
費用
経常費用
博物館業務経費
一般管理費
減価償却費
2,559
1,022
178
2,833
712
191
3,185
1,159
198
2,740
625
224
計
3,759
3,736
4,542
3,589
区分
収益
経常収益
2,644 運営費交付金収益
580 入場料等収入
249 施設費収益
資産見返負債戻入
3,473 計
純利益
目的積立金取崩額
前中期目標期間繰越積立金取崩額
総利益
備考(指標による分析結果や特異的なデータに対する説明等)
参考-1
(単位:百万円)
16年度 17年度 18年度 19年度 20年度
2,919
628
106
116
3,013
538
88
144
2,648
627
1,102
187
2,597
811
0
186
2,620
644
0
210
3,769
10
0
10
3,783
47
0
47
4,564
0
0
2
2
3,594
▲1
0
1
0
3,474
1
0
1
2
区分
資金支出
業務活動による支出
投資活動による支出
財務活動による支出
翌年度への繰越金
計
16年度 17年度 18年度 19年度 20年度
3,773
4,939
60
1,321
10,093
3,551
1,388
50
1,437
6,426
4,735
1,807
28
1,048
7,618
3,521
1,089
38
1,336
5,984
3,506
186
38
1,631
区分
資金収入
業務活動による収入
運営費交付金による収入
その他の収入
投資活動による収入
施設費による収入
その他の収入
財務活動による収入
前年度よりの繰越金
5,361 計
(単位:百万円)
16年度 17年度 18年度 19年度 20年度
3,384
598
3,379
780
3,244
770
3,222
932
3,125
871
1,325
0
2,948
1,838
946
0
0
1,321
2,164
3
0
1,437
782
0
0
1,048
29
0
0
1,336
10,093
6,426
7,618
5,984
5,361
備考(指標による分析結果や特異的なデータに対する説明等)
【参考資料2】貸借対照表の経年比較(過去5年分を記載)
区分
16年度 17年度 18年度 19年度 20年度
資産
負債
流動資産
1,461 1,638 1,859 1,440 1,677 流動負債
固定資産
80,472 80,749 80,792 78,817 76,933 固定負債
区分
負債合計
純資産
資本金
資本剰余金
利益剰余金
(うち当期未処分利益)
資産合計
純資産合計
81,933 82,387 82,651 80,257 78,610 負債純資産合計
(単位:百万円)
16年度 17年度 18年度 19年度 20年度
1,442
879
1,592
2,474
1,827
1,283
1,408
1,348
1,643
1,292
2,321
4,066
3,110
2,756
2,935
73,943 73,943 73,943 73,943 73,943
5,664 4,326 5,593 3,553 1,726
5
52
5
5
6
5
47
2
0
2
79,612 78,321 79,541 77,501 75,675
81,933 82,387 82,651 80,257 78,610
備考(指標による分析結果や特異的なデータに対する説明等)
・H20年度の流動負債のうち、H21年度に繰り越す運営費交付金債務については、(1)補正予算の成立に伴う計画変更によるもの、(2)大型研究設備導入やシアター36○コン
テンツ整備等その性質上年度をまたぐような事業等にあてるものが中心である。
参考-2
【参考資料3】利益(又は損失)の処分についての経年比較(過去5年分を記載) (単位:百万円)
区分
16年度 17年度 18年度 19年度 20年度
Ⅰ 当期未処分利益
当期総利益
11
47
2
0
2
前期繰越欠損金
6
0
0
0
0
次期繰越欠損金
0
0
0
0
0
Ⅱ 利益処分額
積立金
独立行政法人通則法第44条第3項により
主務大臣の承認を受けた額
5
5
2
0
2
0
0
0
0
0
備考(指標による分析結果や特異的なデータに対する説明等)
【参考資料4】人員の増減の経年比較(過去5年分を記載)
(単位:人)
職種※
16年度 17年度 18年度 19年度 20年度
定年制研究職員
82
81
78
77
74
任期制研究系職員
0
0
1
1
1
定年制事務職員
62
61
59
55
51
任期制事務職員
0
0
0
0
0
再雇用職員
0
0
0
0
2
※職種は法人の特性によって適宜変更すること
備考(指標による分析結果や特異的なデータに対する説明等)
参考-3
独立行政法人国立科学博物館に係る業務の実績に関する評価
◎項目別評価<国民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上に関する事項>
(参考)
中期目標の各項目
中期計画の各項目
国民に対して提供するサービス
その他の業務の質の向上に関す
る事項
国民に対して提供するサービスそ
の他の業務の質の向上に関する目
標を達成するためとるべき措置
指標又は
評価項目
A
評価基準※1
B
C
指標又は評価項目に係る実績
評定
A
1 地球と生命の歴史,科学技
術の歴史の解明を通じた社会的
有用性の高い自然史体系・科学
技術史体系の構築
1 地球と生命の歴史,科学技術
の歴史の解明を通じた社会的有用
性の高い自然史体系・科学技術史
体系の構築を目指す調査研究事業
A
(1)自然史・科学技術史の中核的
研究機関としての研究の推進
1-1 標本資料に基づく実証的・
継続的研究の推進
科学博物館は自然史及び科学
技術史に関する中核的研究機関
として,自然科学等における世
界の中核拠点となることを目指
し,研究を推進すること。推進
すべき研究は,人類の知的資産
の拡大に資するとともに,生物
多様性の保全や生活の豊かさを
支える科学技術の発展の基盤と
なるべく,自然物あるいは科学
技術の歴史的変遷の体系的,網
羅的な解明を目的とすること。
さらに大学等の研究では十分な
対応が困難な,体系的に収集・
保管している標本資料に基づく
自然史に関する科学その他の自
然科学及びその応用の研究におけ
る世界の中核拠点になることを目
指し,これに相応しい研究テーマ
を設定する。
具体的には,動物研究分野は,
あらゆる動物群を対象として,種
分類学,系統分類学,動物地理
学,形態学等の研究を行い,種の
多様性及び類縁関係の解明を進め
る。
植物研究分野は,植物に関する
系統分類学と種分化等その応用分
野(自然保護を含む。)に関する
研究を行い,種の多様性及び類縁
自然史,科学技
術史研究の状況
○動物研究部
すべての脊椎動物群と海生および陸生無脊椎動物群を対象に標本
を収集し,それらの形態比較や分子系統解析などによる分類学的,
生物地理学的研究を通じて,動物の進化と多様性に関する諸問題の
解明に努めた。
脊椎動物では,日本産イボオコゼ科およびクサウオ科の魚類 2 新
種の記載のほか,フィリピンとインドネシアのナガスクジラ類の形
態比較,マレーシア産モグラの分類学的再検討,皇居のタヌキの食
性とその季節変化,日本初記録のクロアゴヒメアオバトとトゲアワ
セイソハゼ,齋藤報恩会魚類コレクションの目録などに関する論文
を公表した。
項目別-1
◎いわゆる社会教育三法の見直しが
行われ、博物館関連の規定も整備さ
れた。これらのなかで強調されたの
は博物館、図書館、公民館等の連携
強化、また、家庭、学校、地域とを
結ぶ社会教育施設の新たな機能の充
実である。求められているのは、貴
重な収集資料とそれに付随する高度
な研究成果を市民に還元する方策と
それを実現する関係職員の資質の向
上である。この方向性は既に科学博
物館が取り組んできた従来の方向性
に一致し、ナショナルミュージアム
としての先見性が高く評価されよ
う。
◎ナショナルミュージアムとしての
役割は、国際レベルでの活動と国内
施設に対する活動を通してのリーダ
ーシップの発揮ということができよ
う。その意味で、外部評価委員会に
おける研究活動に関する分析評価は
当を得たものであり、これを活用す
ることが重要である。また国際的活
動の一環としてICOM-ASPAC開催を視
野に入れたことは高く評価されよ
う。
◎経常研究、プロジェクト研究とも
着実に実施されている。
経常研究の取組状況
経常研究は,各研究員が単独あるいは少数の共同研究者とともに実
施する研究であり,当館の研究活動の根幹をなすものである。平成20
年度の主な研究状況は以下のとおりであり,これらの成果は内外の学
術誌に発表するほか,展示や学習支援活動に反映される。
留意事項等
A
◎研究活動に関する外部評価を実施
し、その公平な評価と問題点を明ら
かにしたことは、今後の研究活動の
方向性を策定する上で極めて重要な
ステップということができよう。今
後は、折角の評価を生かす方策に真
剣に取り組んでほしい。また、この
評価等に配慮し、テーマにより傾斜
配分を考えるべきではないかと思わ
れる。
◎中期計画に即した研究活動が着実
に推進されている。科研費新規採択
率、一人当たり論文数などの指標が
実証的な研究,国の施策に基づ
いた分野横断的なプロジェクト
型研究,長期・安定的に継続し
て行う研究を実施すること。
自然史分野については,主と
して日本,アジアを中心に自然
物を記載・分類して,それらの
相互の関係や系統関係を調べ,
過去から現在に至る地球の変
遷,人類を含む生物の進化の過
程と生物の多様性の解明を進め
ること。
自然科学の応用については,
主として人類の知的活動の所産
として社会生活に影響を与えた
産業技術史を含む科学技術史資
料など,保存すべき貴重な知的
所産の収集と研究を行うこと。
これらは科学博物館の基盤を
なす研究であり,新たな知を産
み続けるものとして,長期的・
継続的な視点から推進するこ
と。
また,これらの基盤的研究の
成果を踏まえ,大学等様々な研
究機関との協力により,プロジ
ェクト型の総合研究,重点研究
を推進すること。今中期目標期
間中においては,①日本列島の
インベントリー(一定地域の自
然物の網羅的な調査に基づく目
録)の整備②形態分類と分子系
統を統合する多様性研究基盤の
確立③日本の科学技術史資料の
評価及び系統化研究の基盤形成
を目標に実施すること。
なお,研究の実施にあたって
は,各種競争的研究資金制度の
積極的活用,適時・的確な研究
評価の実施など,研究環境の活
性化を図ること。
関係の解明を進める。
地学研究分野は,岩石の成因と
地質帯の形成過程や鉱物の生成条
件の解明を進める。また古生物の
系統進化,比較形態,古生物地
理,古生態の解明を進める。
人類研究分野は,人類に関する
進化学的研究を行い,人類の進化
や分布の過程及び日本人の形成に
ついて解明を進める。
理工学研究分野は,欧米諸国に
比べ体系的な収集・保管が遅れて
いる産業技術史を含む科学技術史
資料に関する研究を行い,その発
展の歴史の解明を進める。
海生無脊椎動物については,沖縄産のタコの 2 新種とイカの 1 新
種,熱水噴出孔周辺に生息するヒザラガイの 3 新種,日本産エビジ
ャコ科およびカクレガニ科の 2 新種を記載した。また,ベトナム浅
海域のタコ類の分類学的再検討,黒潮・親潮移行海域のアカイカの
食性と性成熟,太平洋産 2 種のイソカイメンの遺伝子構造などに関
する研究を行った。
陸生無脊椎動物では,東アジア産チュウレンジバチ属 3 新種の記
載とこれらの生活史,生物地理,分子系統などに関する一連の研
究,日本および東南アジア産アリツカムシ類の分類と生物地理に関
する一連の研究,マレーシア産コケムシ類の 3 新種の記載を含む分
類学的研究,日本およびベトナム産クモ類の 9 新種の記載を含む分
類学的研究などを行った。
○植物研究部(筑波実験植物園)
日本,アジア等の維管束植物(種子植物・シダ植物),コケ植
物,藻類,菌類,地衣類の多様な生物を対象に,野外調査および分
子系統解析,形態比較,フラボノイド等成分分析,微細藻類の走査
電子顕微鏡観察,各生物の培養などの方法を用いて植物誌的,系統
学的,分類学的,生物地理学的および多様性生物学的研究を行っ
た。各分類群に関する研究の他,藻類-菌類共生,植物-菌類共
生,ラン科・ツツジ科の樹上着生,被子植物の二次的な水生にかか
わる進化学的研究も行った。また,筑波実験植物園では,ラン科な
ど生きた植物を対象にして多様性解析・保全研究を行い,研究用お
よび展示用の植物を収集した。琉球列島,亜高山・高山帯,水域に
生育する種をはじめとする植物調査を日本各地で行った他,台湾,
中国,モンゴル,ブータン,タイ,ラオス,インド,イギリス,ド
イツ,クロアチア,フェロー諸島などで海外調査を実施した。
調査研究により明らかになったキク科11新種,ラン科4新種を含む
20新種,3新組合せ,2日本新産種を発表した。成果として,約70編
の論文,著書(分担)8編を発表した。
○地学研究部
鉱物・岩石分野では,レアアースを含む新鉱物,wakefieldite(Nd)および変成岩の造岩鉱物である角閃石グループの中で新鉱物,
potassic-ferropargasite を産業技術総合研究所の研究者と共同で発
見・研究した。また,九州を中心に日本で初めて産出が確認された
レアメタルや重金属の二次鉱物を研究した。さらに,超苦鉄質岩に
取り込まれた花崗岩の変質過程を明らかにするとともに,深海底の
火成岩の変質過程におけるホウ素や塩素の挙動が明らかにされた。
古生物分野では,南米パタゴニアと東アジアの第三紀植物群の検
討を行い,特に東アジアに固有の植物属の化石記録を整理してその
植物地理変遷を学術誌に公表した。また,ウサギ科,イノシシ科,
裂歯類,および鰭脚類の系統進化と生物地理特性,日本の前期白亜
紀から発見された世界最古の植物食トカゲ(新種)などについて,多
くの成果が得られ,学術誌に発表した。さらに,深海底コアを用
い,太平洋におけるプランクトン化石珪藻群集の時空分布と海洋大
循環変遷史との対応関係を解析した。湖沼掘削コアを用いて,琵琶
湖の優占種スズキケイソウの成立過程と系統関係を明らかにした。
東南アジア熱帯島嶼の調査から,中新世の示準化石のビカリアの時
空分布と分類の再検討,微化石によるボホール島の後期新生界の層
項目別-2
高水準で維持するなど、具体的なア
ウトプットに結びついている。ま
た、外部評価を受ける等により、研
究活動のさらなる強化を図ろうとし
ている。これらのことより、科博に
おける研究への取り組みは妥当なも
のであったと判断できる。
序の再検討,フィリピン産新生代化石甲殻類の分類研究をおこなっ
た。ロシア・南プリモーリエの下部三畳系,アラスカと北海道の上
部白亜系を調査し,層序と化石群を研究した。
○人類研究部
人類の進化過程や日本人の形成過程を明らかにするために,ヒト
や類人猿の形態的特徴ならびにDNAによる研究を進めた。
現生人類・類人猿大臼歯の比較研究では,薄い咬合面エナメル質は
チンパンジー属の共有派生形質である,という仮説を提唱した。ジ
ャワ原人化石の研究では,最古のグループの頭骨形態について解析
を行い,群内変異がかなり大きいことを明らかにした。日本の更新
世人骨である港川人の下顎骨についても詳しい検討を行い,縄文人
とは形態的に異なる面があることを示した。現代日本人の脳頭蓋形
態の多変量解析では,短頭化現象の一要因として後頭部の変異もか
なり貢献している可能性を示した。頭蓋形態から性を判定するこれ
までで最も信頼の置ける方法を,300個体を越える性別既知の近代日
本人頭蓋骨に基づいて確立した。与那国島潮原遺跡出土人骨のDN
A分析では,先島地域のグスク時代以降の集団の遺伝的な特徴を明
らかにした。また,ペルー北海岸と南部山岳地域の古人骨のDNA
分析も行い,集団の系統関係を考察した。
○理工学研究部
科学技術史に関する史資料(産業技術史資料を含む)の収集,調
査研究を中心に,さらに関連する分野における調査・研究を行っ
た。
世界遺産となった石見銀山及び世界遺産暫定リスト候補となった
佐渡金銀山,九州山口の近代産業遺産について調査を行い,資料保
存や活用等について報告書などにまとめた。我が国最古級の蝋管音
声再生に関わる調査,実験を行った。電気通信分野では,明治初期
の電気通信史料である大北電信関係資料について,文化庁と共同で
調査を行い文化財指定に向けた検討を行った。電力分野では,電力
技術発達初期の史料群の調査を行った。所蔵する歴史的煉瓦等資料
について整理を行い,標本資料 DB 掲載データとして提供した。また
新たに収集した「江戸城図面」についての研究を開始した。0 系新幹
線について,その意義や保存について調査を行った。医学文化館の
資料受け入れにつき,その資料の確認作業を行った。
狭山隕石中のコンドルールの Ba 同位体分析により,太陽系初期の
水質変成について年代学的研究を行った。地球の沈み込み帯に存在
する含水鉱物のタルクについて,高圧下の熱的性質を岡山大と共同
で調べた。教育用簡易分光器「DVD 分光器及び分光方法」が特許登録
された(特許第 4126375 号,発明権者:当館)。Ia 型超新星の観測
画像を教育に応用する試みとその効果に関する調査を行った。
○昭和記念筑波研究資料館
生物学御研究所からの移管標本類並びに総合研究プロジェクト等
の調査研究により新たに収集した標本類について,最新の分類学的
な知見に基づいた研究を行った。
○附属自然教育園
自然教育園及び他の自然地域において,環境と群集の変遷・個体
項目別-3
群の維持機構・行動生態の進化に関する生態学的研究を行った。ま
た,自然教育・自然保護教育に関する研究を行った。
・これまで園内で記録された動物を網羅する自然教育園動物目録を
出版した。
・自然教育園及び近隣の都市緑地を対象として蝶類群集の調査を行
った。
・2004 年から園内で大発生しているキアシドクガと食草であるミズ
キの枯死状況を調査した。また,キアシドクガの体サイズの経年
変化から個体群の動態を推定した。
・シュロをはじめとする各種樹木の個体数,成長量の調査を行っ
た。
・植物のフェノロジー調査を行い,過去との比較を行った。
・隔離された都市緑地における果実食鳥類の種子散布効果に関する
調査を行った。
・都市の騒音環境が鳥類の音声コミュニケーションに及ぼす影響に
関する研究を行った。
・身近な自然の材料を用いた工作を通じて自然に親しむ教育活動と
その効果の検証を行った。
1-2 分野横断的・組織的なプ
ロジェクト型研究の推進
上記の基盤的研究の成果を踏ま
え,科学博物館として行うべき,
分野横断的・組織的なプロジェク
ト研究を設定する。
分野横断的・組織的な総合研究
を「アジア・オセアニア地域の自
然史に関するインベントリー構
築」など4テーマ程度,重点的・
組織的に行うべき重点研究を「ス
トランディング個体を活用する海
棲哺乳類の研究」など4テーマ程
度実施する。
(1)総合研究
総合研究は,次のように実施す
る。
①「アジア・オセアニア地域の自
然史に関するインベントリー構
築」は,平成18年度より開始
し,アジア地域及びオセアニア地
域の動物,植物,古生物,岩石・
鉱物を対象として,それらの存在
様式を解明する。当該地域との比
較により日本列島の形成並びにそ
こに生息する動植物の起源を探る
とともに,35年にわたって実施
してきた「日本列島の自然史科学
プロジェクト研究の取組状況
基盤的研究の成果を踏まえ,当館として行うべきプロジェクト研究
として,分野横断的・組織的総合研究である「総合研究」と重点的・
組織的研究である「重点研究」を行った。
○総合研究
①「アジア・オセアニア地域の自然史に関するイベントリー構築」
4つのサブプロジェクトグループにより日本列島を含むアジア・
オセアニア地域を対象に,そこに生息する現生の生物のほか岩石,
鉱物,古生物などの自然物の存在様式を網羅的に調べ,それらの目
録を作成して生物相や地質を明らかにした。
ア.深海動物相の解明と海洋生態系保護に関する調査研究
第 4 期は,調査海域を東北太平洋岸とし,日本海溝へと下る大
陸斜面で研究を行っている。平成 20 年度は 3 隻の調査船によって
採集調査を実施した。7~8 月には独立行政法人水産総合研究セン
ター所属研究調査船「蒼鷹丸」に乗船し,東北太平洋岸沖合の深
海域の 9 地点(水深約 800~5300 m)でベントスネットおよび籠網
によって底生性の無脊椎動物および魚類の採集を行った。10~11
月には水産総合研究センター所属研究調査船「若鷹丸」に乗船
し,水産総合研究センター東北区水産研究所との共同で,常磐~
東北太平洋岸沖の約 170 地点(水深約 150~1500m)でオッタートロ
ールによって魚類を中心とした底生生物の採集を行うとともに,
CTD による海洋環境の調査を行った。11 月初旬に独立行政法人海
洋研究開発機構所属研究調査船「淡青丸」に乗船し,東北沖太平
洋の 9 地点(水深約 1500~3000m)で ORI 式 3m ビームトロールによ
って底生生物の採集を行った。得られた標本は,動物群ごとに,
当館職員ならびに他機関の研究者の協力によって詳細な研究を進
めている。またこれらの生物標本への汚染物質の蓄積についての
項目別-4
◎プロジェクト研究は、科博の専門
性が発揮できている。
的総合研究」の成果との経時的な
比較により環境の変遷について検
証を行う。
分析調査が,愛媛大学の共同研究者によって行われている。
第 4 期の最終年度にあたり,4 年間の調査研究で得られた成果
を論文集(英文の原著論文 18 編)としてとりまとめた。
イ.相模灘地域の生物相の起源探究に関する調査研究
海洋生物研究班では,従来の八丈島近海での調査に加え,東京
都小笠原水産センターの協力を得た父島周辺海域での調査により
収集した標本に基づき,底生海産無脊椎動物相の比較研究を実施
した。本年度特筆すべきことは,父島周辺海域の 26 地点でドレッ
ジ調査した結果,島の東西で底生海産無脊椎動物相が異なり,西
側の動物相が貧弱である傾向が示唆されたことである。藻類につ
いては,鎌倉沿岸,八丈島で調査を実施し,これまでに 32 種の褐
藻を確認した。
沿岸生物研究班では,相模湾沿岸および伊豆諸島御蔵島で維管
束植物を,小田原市真鶴町にて菌類を調査した。御蔵島では同島
の固有種キク科植物ミクラシマトウヒレンを見出し,また,核
ETS 領域での系統解析によって,ヒトツバショウマとハチジョウ
ショウマ・フジアカショウマの単系統性を示すことができた。菌
類については,アオキに関わる菌を中心に調査し,内生菌類相の
季節変動調査,葉面菌類相,立ち枯れの原因菌を調査した。クモ
類では伊豆半島南部において現地調査を実施したほか,南硫黄島
産の標本の検討結果から,シボグモ科の日本未記録の属の新種を
見いだし分類学的に研究した。
地質研究班では,相模灘北端の富士山,箱根火山および東伊豆
単成火山群において地質調査と火山岩資料の採取を行った。採取
した資料について蛍光X線分析装置を用いた全岩化学分析を行い,
噴火前のマグマ温度の推定を行った。また小笠原諸島の父島およ
び聟島で採取されたボニナイトの全岩化学分析も行い,マグマ生
成時の温度や含水量を見積もった。
ウ.西太平洋地域の生物多様性インベントリー
平成 20 年度は調査対象地域をインドシナと中国南部及び第 1,
2 期の調査地域に設定し,日本列島を含む西太平洋の熱帯・亜熱
帯・温帯域における動植物の多様性の起源及びインドシナの地質
発達史に関する以下のような研究・調査を行った。
インドシナでは,ベトナム科学技術アカデミー,ベトナム国立
生物資源生態学研究所,ハノイ大学,インド鉱山大学,チェンマ
イ大学等の研究機関の協力を得て,ベトナムにおける小哺乳類の
分類学的研究,メコン川流域のクモ類相の研究,ベトナムとバン
グラデッシュにおけるスンダランドと他の大陸との境界領域の年
代測定に関する地質学的研究を実施した。中国南部では,中国科
学院昆明植物研究所の協力を得て雲南省西部におけるコケ植物の
分類学的及び植物地理学的研究を実施した。また,華南農業大学
と共同で広東省の蛾類調査を実施した。台湾では東海大学(台中
市)の協力を得て国立自然科学博物館と共同で蛾類調査を実施し
た。モンゴルではモンゴル大学の協力を得て日本の珪藻植生との
類似性に関する研究を実施した。また,マレーシアではサラワク
州森林研究センターの協力を得てカメムシ類のインベントリー調
査を実施した。
これまでに①インドシナと中国南部及び台湾,モンゴル,マレ
ーシアの動植物の多様性に関する新知見,②ベトナムの砂中鉱物
項目別-5
の年代測定からのスンダランドと他の大陸の起源に関する新知見
など,西太平洋の生物多様性の起源や島孤発達史を考察する上で
重要な成果が得られている。本年度の成果は,平成21年度に国立
科学博物館専報で公表する予定である。
エ.東アジアにおけるホモ・サピエンスの移動・拡散と変異に関す
る調査研究
旧石器時代:沖縄の港川遺跡出土の更新世人骨群のうち,下顎
骨に焦点を当てた詳しい形態解析を行った結果,本土の縄文人と
は異なる独特の特徴があることが判明した。更新世に遡る可能性
があるとされてきた葛生“人骨”群について再検討を行ったとこ
ろ,1 点はニホンカモシカの脛骨であったこと,ヒトの尺骨およ
び大腿骨は縄文時代人と似た特徴を示すことがわかった。
縄文時代以降:岡山県などから出土している前期以降の縄文時
代人骨群の比較を行ったところ,縄文時代人の中にも様々な時
代・地域変異があることが判明した。日本列島各地の縄文~古墳
時代の人骨の形態解析を行った結果,地域ごとに異なる時代変化
傾向が検出された。これらが日本列島内での複雑な移住パターン
を示すものか環境の地域差によるものかは,さらに検討を要す
る。
DNA 解析:琉球列島人と台湾先住民の関係を解明する目的で,
日本列島の最西端の与那国島の近世人骨と,国立台湾大学が所蔵
する台湾先住民(ブヌン族)人骨から DNA を抽出し,ミトコンドリ
ア DNA の一部領域の配列を比較した。結果として両者は異なって
おり,近世以降の琉球集団の形成には本土日本からの影響が大き
かったことが示唆された。
②「変動する地球環境下における
生物多様性の成立と変遷」は,平
成18年度より開始し,植物園を
活用した実験的研究と古生物標本
に基づく研究,古生物と現生動植
物標本との比較研究などを主体
に,生物種の形態・形質変化の過
程,遺伝的隔離の成立過程,古生
物相にみる多様性創出の経時的変
遷の解析を行う。
②「変動する地球環境下における生物多様性の成立と変遷」
多様性創出の経時的変遷研究グループでは,1)琵琶湖底コア試料
の解析による琵琶湖優占珪藻種スズキケイソウの起源,2)極東ロシ
ア・沿海州の前期三畳紀の軟体動物と生痕化石によるペルム紀末の
大量絶滅後の生物多様性回復,3)日本および東南アジア熱帯島嶼地
域の中新世巻貝化石ビカリアの分類および後期新生代甲殻類化石
相,4)化石記録と分子系統の統合によるアシカ科鰭脚類の適応進化
と系統地理,5)中国産後期新生代ウサギ科 Pliopentalugus 属の 2 新
種の認定とアジアから北アメリカへの拡散,6)太平洋深海底堆積物
コ ア 試 料 の 解 析 に よ る 始 新 世 ~ 更 新 世 海 生 珪 藻 Cavitatus,
Thalassionema2 属の時空的形態変化と太平洋表層大循環との関係,
7)粟国島の後期中新世植物化石群中にモクマオウ属や小型革質葉の
広葉樹で特徴づけられる海浜性群集の確認など,多くの成果が得ら
れた。
一方,形態・形質変化の過程と機構研究グループは,1)マダガス
カル産絶滅鳥類エピオルニスや現生鳥類の脳函内壁構造の CT スキャ
ンによる三次元モデル化から走鳥類の脳形態の進化,2)乗鞍岳のオ
オバコ,ならびに同じオオバコ科高山植物のハクサンオオバコの紫
外線防御物質としてのフラボノイドおよび関連物質の変動とその成
分の化学構造,3)共生菌の分子同定技術を用いたラン科アオスズラ
ンの分布と菌根菌相の関係,4)沖縄島と喜界島の留鳥ならびにダイ
トウウグイスの繁殖生態,などについての多数の新知見が得られ
た。本年度は成果を 16 編の論文として学術雑誌に,また関連する学
項目別-6
会等で発表するなど,当初の目的をほぼ達成することができた。
③「全生物の分子系統と分類の統
合研究」は,平成18年度より開
始し,「生物多様性研究資源保存
センター(仮称)」を設置し,生
物間の系統関係を明らかにする分
子系統と,生物の種特性を明らか
にする形態分類を,生物群横断的
に比較し,分子系統と形態分類の
統合を目指す。
④「日本の『モノづくり』資料の
収集と体系化」は,平成18年度
より開始し,江戸期のモノづくり
に関する歴史的研究を発展させ,
明治,大正,昭和まで時代を広げ
て,産業技術史分野も含め,国内
外に分散している日本の「モノづ
くり」資料及び資料情報の収集と
体系化を進める。
③「全生物の分子系統と分類の統合研究」
3 年計画の最終年に当たる本年度は,研究分担者が研究対象とする
個別生物群の分子系統解析と分類・地理解析の統合研究を行い,分
子系統解析を昨年度に続き一層進展させることに重点を置いた。各
成果は中間報告会で発表するとともに,「分子生物多様性研究資料
センター」の事業と密接に関連づけて,DNA 資料の収集保管,証拠標
本の保存,DNA データの作成と蓄積を進めた。
平成 20 年度に得られた成果は次のとおりである。
霊長類・鯨類・鳥類・軟体動物・昆虫類・クモ類・線虫類を含む
動物,ユキノシタ科・ラン科・アマモ科・カワゴケソウ科等の種子
植物,ゼンマイ科・オシダ科シダ植物,ハイゴケ科コケ植物,計約
300 種を対象にして,CO1 遺伝子,16SrRNA 他のミトコンドリア DNA,
matK,trnL-F,rbcL 他の葉緑体 DNA,28SrRNA, SSR 他の核 DNA を解
析した。収集した 2500 以上のサンプルデータを分子生物多様性研究
資料センターに登録した。得られた分子系統と形態分類・形態進化
を各生物群で比較し,系統地理,系統関係,形態進化,社会構造な
どに関してこれまで個別研究では解明が困難であった課題について
解析を行い,新しい知見を得た。
3 年間の研究により,当館における生物多様性研究の中に分子系統
解析を定着させるという当初の目的は達成されたと判断でき,次期
の研究に向けてさらなる発展が期待できるよう準備を行なうつもり
である。
④「日本の『モノづくり』資料の収集と体系化」
第 2 回「日本のモノづくり資料の収集と体系化」研究会-学界・
産業界における歴史資料調査研究の現状と展望-を開催し,各学会
での産業遺産に対する考え方の整理,遺産認定の進め方について議
論を深めた。情報処理学会や原子力学会が,新たに遺産の認定を開
始している。
また「江戸のモノづくり」の今後の展開を議論するため,研究会
を開催した。佐賀大学を中心とした「19 世紀日本における西洋科学
の受容と在来知の再編について」と,九州大学・早稲田大学等の
「先導的デジタルコンテンツ創成支援ユニット」について報告があ
り,議論を行った。また「江戸のモノづくり」の今後の連携のあり
方について議論した。
研究面では,戦後の火力タービン発電機技術の調査の中で明らか
になった破壊靱性の推定式の物理的根拠について考察した。また我
が国の双眼鏡製造技術につき,明治から現代まで系統的に調査し,
その発達史をまとめた。昭和 30 年代に日本の双眼鏡技術が格段に向
上したことが明かとなった。
本研究の成果は,佐渡や九州・山口の世界遺産関連の活動等に活
かされている。
○開館130周年記念研究プロジェクト
「生物多様性ホットスポットの特定と形成に関する研究」
生物進化の過程で形づくられた日本の生物多様性ホットスポット
を特定しその変遷を解明することを目的とし,データベース活用と
項目別-7
◎「生物多様性ホットスポットの特
定と形成に関する研究」は、生物多
様性保全に寄与することが期待され
るものである。標本の形態解析や分
子系統解析等を活用して行う実証的
分子系統解析により,生物多様性地形図と固有種系統樹を作成する
とともに,固有種の起源を解明する研究を行う。本年度は,以下の
課題について研究を行なった。成果の一部は,企画展「絶滅危惧植
物展」(筑波実験植物園)において公開した。
1)生物多様性地形図の作成
狙いは,主要な生物群について生物多様性地形図を作成し,日本
の生物多様性を鳥瞰することである。本年度は,陸上維管束植物を
対象として,データベースを完成し,絶滅危惧種の生物多様性地形
図および模型図を作成した。次年度以降,全種地形図,固有種地形
図を作成し,他生物群にも広げる予定である。
2)生物系統樹の作成
系統関係は,生物多様性の歴史的構造を明らかにする上で必須で
あるという観点から,日本産生物の分子系統樹を作成する。本年度
はシダ植物固有種について解析した。それに基づいて,新固有,古
固有,遺存固有など固有種の進化的特性を明らかにしていく予定で
ある。
3)固有種形成から見たホットスポットの形成に関する研究
ホットスポットの有力候補である琉球列島,中部山岳地域などで
固有種誕生や成因に関する調査研究を行った。次年度以降これらの
結果をまとめて,日本におけるホットスポットの形成を解析する。
成果を「日本の固有種」(初巻は植物について)として出版公表す
る。
4)生物多様性変遷の古生物学的研究
ウサギ科化石等を対象にして,実証的な化石調査研究を行い,過
去の環境変動に伴った日本および周辺地域の生物多様性の地史的変
遷を明らかにする研究を行った。
(2)重点研究
「ストランディング個体を活用す
る海棲哺乳類の研究」「日本列島
のレアメタルを含む鉱物の調査研
究と年代学への応用」「ジャワ原
人化石の形態学的および年代学的
研究」「日本における絶滅危惧植
物に関する研究」の4つの研究テ
ーマについて重点的に資源を投入
し,平成18年度より順次,プロ
ジェクト型研究を実施する。
○重点研究
①「ストランディング個体を活用する海棲哺乳類の研究」
16 道県において,ヒゲクジラ 1 科 3 個体,ハクジラ 6 科 61 個
体,鰭脚類 2 科 2 個体の計 66 個体の調査,標本採取を行った。こ
れらの調査にあたっては,各自治体の他,各地の博物館,水族館,
大学,研究機関等多数の組織と個人の協力を得た。これらの個体に
ついては,生物学的データ,骨格標本,分子生物学や汚染物質の分
析用サンプルなどを採取し,病理学的解析,DNA 解析による個体群
解析,分子生物学的手法によるウイルス疾患解析,環境汚染物質の
蓄積とその影響調査,水中生活への再適応の経過を明らかにするた
めの生物学的調査研究などを進めている。それぞれの研究内容は内
外の学会,学術誌などで公表した。
北海道,宮崎,長崎におけるストランディングネットワーク活動
の支援,学会あるいは大学や水族館などの研究計画に協力し,講義
と実習などの開催や卒業研究の指導などを行うことにより,ネット
ワークの構築と啓発活動に努めた。
国際協力としては,国際学会やワークショップの開催,台湾や韓
国における講義・実習などアジアにおける海棲哺乳類ストランディ
ングに関する教育的な活動を行った。
さらに,情報・サービス課の協力を得てウェブサーバーの更新を
行い,海棲哺乳類ストランディングデータベースの拡充を進めてい
る。
項目別-8
な研究であり、科博として実施すべ
きものである。
②「日本列島のレアメタルを含む鉱物の調査研究と年代学への応
用」
特別展「金 GOLD 黄金の国ジパングとエル・ドラード展」のための
砂金調査と資料収集を行った。採集地域は,関東と東北地域を中心
にし,多くの砂金資料で水銀が含まれていることが判明した。ま
た,同時に金鉱石中の金も分析し,2 つの鉱山から水銀を含むものが
あったが,それ以外の殆どは金と銀の合金であることが判明した。
そのほか,福岡県での調査において発見した,Se を含む新鉱物,宗
像石 Munakataite と,中国の研究者と共同研究をおこなった内モン
ゴル地域から発見した Ba と F および Cl の化合物である新鉱物,
Zhangpeishanite が学会誌に公表された。
ウラン,トリウム,鉛の分析から年代を求める方法では,九州地
域及び沖縄の年代が求められた。これらの年代は,閃ウラン鉱では
誤差を 100 万年に抑えることができ,今までの年代値より高い精度
の結果が得られた。沖縄の年代不明の流紋岩からモナズ石を発見
し,年代が新第三紀のものであることを明らかにした。また,東北
地方のかこう岩の閃ウラン鉱から,今までに日本で報告されたこと
のない 3 億年の年代が得られた。日本列島の形成史を考える上での
重要な発見である。
③「ジャワ原人化石の形態学的および年代学的研究」
インドネシアのバンドン工科大学が所蔵する保存のよいジャワ原
人頭骨化石について,歪んでいた復元を修正した。頭骨化石は発見
時点で割れており 30 以上の破片となっていた。我々による再復元前
の状態では,これらの破片がエポキシと思われる硬い接着剤で接合
してあったが,復元はかなり歪んでいて化石の形態評価が困難であ
った。作業は 7 月と 12 月の 2 回に渡って,当館研究者 2 名と現地研
究者・技官と共同で行った。接着剤を慎重に取り除き,各破片をク
リーニングして再び接合した結果,ほぼ完全に元来の頭骨の形に復
元し直すことに成功した。この化石は顔面部も残存しており,貴重
な研究資料となる。またジャワ原人の脳形状を知るために必要な頭
蓋腔エンドカストを東京大学総合研究博物館へ運び,CT スキャンを
行って表面データを採取した。
野外調査活動として,8 月にサンブンマチャン地域にて調査を実施
した。昨年予備的に採取した火山灰資料が,年代測定には量が不足
であることが判明したので,有望な火山灰層に絞って年代測定用資
料を大量に採取して持ち帰った。現在,金沢大学にてジルコンの抽
出と年代測定を行っている。また現地で昨年に引き続き,川底から
の化石採取を行った。昨年に比べると少量であるが,スイギュウな
どの絶滅動物の化石を採取することができた。
④「日本における絶滅危惧植物に関する研究」
20 年度は北琉球地区を主対象地域として調査研究を進め,フラボ
ノイド,DNA,染色体,形態など多岐にわたる保全基礎データの蓄積
に努めた。特筆すべき成果として,屋久島におけるスノキ属,トカ
ラ列島におけるマルバニッケイなどの絶滅危惧植物の現時調査及び
採集,そして,琉球列島固有種ヒメミヤマコナスビの系統地理学的
研究,シダ植物(フイリリュウキュウイノモトソウなど)の分類学
的研究,スナヅル属・シュウカイドウ属のフラボノイド化学分類学
的研究などがあげられる。また,先行調査として,シビイタチシダ
項目別-9
の現状とその起源に関する研究,ラン科絶滅危惧クモキリソウ属の
系統・分類学的研究,水生植物の系統学的研究も行った。これらの
調査・研究を行うとともに絶滅危惧植物を筑波実験植物園に積極的
に導入,保全することに努めた。
本重点研究から得られた成果を絶滅危惧種カザグルマの保全と展
示(筑波実験植物園,4 月),企画展「絶滅危惧植物展」(筑波実験
植物園,10 月),科博コラボ・ミュージアム in ひとはく「絶滅の
恐れのある植物」(兵庫県立人と自然の博物館,7 月),企画展「琉
球の植物」(上野本館,3 月)における展示の一部として反映させ,
絶滅危惧植物と生物多様性に関する情報の社会発信に努めた。
1-3
研究環境の活性化
適時・的確な研究評価の実施
や,館長裁量により研究者の能力
を最大限発揮できるような競争的
環境を整えるなど,研究環境の活
性化に努める。
また,科学研究費補助金等,各
種研究資金制度を積極的に活用
し,科学研究費補助金については
全国平均を上回る新規採択率を確
保するよう努める。
研究環境活性化の状況
研究活動等の強化及び効率的推進を図るため,外部評価委員会を
設置して,研究活動に関する外部評価を実施した。評価結果につい
ては,平成21年3月に『外部評価委員会報告-国立科学博物館の研究
活動-』としてとりまとめた。
◎研究活動等の強化を図るため、外
部評価委員会による評価が行われて
いる。評価に対応して、経常研究・
プロジェクト研究の推進等に向けた
取組を進めることが重要である。
館長支援経費・その他の資金の活用状況
動物研究部5件,植物研究部8件,地学研究部3件,人類研究部2
件,理工学研究部1件,筑波実験植物園8件,昭和記念筑波研究資料
館2件,産業技術資料情報センター1件,標本資料センター3件,経営
管理課1件,展示課9件,合計43件の研究テーマ等について館長支援
経費を重点的に配分した。これにより,寄贈・受入標本資料の整
理・登録,タイプ標本を含む標本資料データベースの整備,特定の
地域や生物についての調査研究を推進した。
また,科学研究費補助金及びその他の競争的資金についてもその
獲得に努め,科研費40件(165,730千円),競争的資金2件(26,400
千円)の研究プロジェクトを推進した。
科研費については,全国平均を上回る新規採択率を達成した。
科研費新規採択率
◎科研費新規採択率は、全国平均を
上回っている。
20年度実績 23.6%
(全国平均 22.7%)
1-4 様々なセクターとの連
携・協力
総合的・組織的な研究を推進す
るために,大学,研究所,産業界
との共同研究を促進し,研究者の
交流を行うなど,外部機関との連
携強化を図る。
共同研究及び受託研究等,外部機関との連携の状況
寄付金12件,共同研究3件,受託研究3件を受け入れ,積極的な外
部との連携を図って研究活動を推進した。なお,資料同定は56件実
施した。
(前年度
寄付金8件,共同研究3件,受託研究6件,資料同定64件)
項目別-10
◎国内外との連携が確立している。
(2)研究活動の積極的な情報発信
研究成果について,学会等を
通じて積極的に外部に発信して
いくこと。また研究現場の公開
や,展示や学習支援事業におけ
る研究成果の還元など,科学博
物館の特色を十分に活かし,国
民に見えるかたちで研究活動の
情報を積極的に発信していくこ
と。
2-1 研究成果発表による当該
研究分野への寄与
◎研究成果が広く国民に還元できる
よう方法と場の工夫が見られる。
研究成果の公表状況
平成20年度に科学博物館が刊行した報告書類は以下の通り。
国立科学博物館研究報告 13冊(前年度11冊)
自然教育園報告第40号
技術の系統化調査報告書第13・14・15集
研究成果については,論文や学
会における発表,研究報告等を充
実し,当該研究分野の発展に資す
る。論文については,展示活動へ
の集中的な寄与などの特殊要因を
除き,一人あたり年間2本程度の
論文を発表するように努める。
◎他機構と比較して適当と思われ
る。
一人あたり平均論文数
平成20年度実績
2本以上
若手研究者の育成
ポストドクターや大学院学生
等の受け入れにより,自然史研
究者等の若手研究者の人材育
成,後継者養成を進めていくこ
日本学術振興会特別研究員や独
自の特別研究生など,いわゆるポ
ストドクターの受入を行うととも
に,連携大学院制度による学生の
19年度:2.8本
18年度:3.1本
17年度:3.8本
16年度:3.3本
15年度:2.7本
平成18年に斎藤報恩会自然史博物館から受け入れ,整理・登録,
データベース化してきた多数の自然史標本の一部を公開し,東北地
方の自然史研究の現状と斎藤報恩会が学術研究に貢献してきた足跡
を紹介する企画展「東北地方の自然史研究-斎藤報恩会の足跡とコ
レクション-」をはじめ,科博NEWS展示,「私の研究-国立科学博
物館の研究者紹介-」「ホットニュース」等により調査研究の成果
を発信した。
新宿分館,筑波実験植物園,植物研究部において,オープンラボ
を実施した。普段一般の来館者は目にすることのできない研究室や
収蔵庫を公開し,実演・実習や,研究者による調査研究に関するエ
ピソード紹介などを実施することにより,研究活動の積極的な情報
発信に努めた。
また,学会等と連携してシンポジウムを開催したほか,一般公開の
国際シンポジウム「海に還った四肢動物研究の最前線」をはじめ,
学会や研究機関等と共催でシンポジウムを開催するなど,多様な形
態で研究成果の還元を行った。
当館の研究員の研究成果等に関し,新聞・テレビ・雑誌等に約490
件の掲載があった。
研究活動についての理解を深め
るために,シンポジウムの開催や
オープンラボの実施,ホームペー
ジの活用等により,積極的に研究
活動を発信していく。また,科学
博物館の特色を活かし,研究成果
を展示するとともに学習支援事業
に適宜反映させていく。
3-1
1.4本
未満
研究成果の展示・学習支援事業への反映状況
2-2 国民に見えるかたちでの
研究成果の還元
(3)知の創造を担う人材の育成
1.4本
以上
2本未満
3.5本
研究者等の人
材育成の状況
若手研究者の育成状況
日本学術振興会特別研究員だけでなく,大学と連携した連携大学院
制度,当館独自の制度である特別研究生,外国人共同研究者等の受入
制度で若手研究者を受入・指導することにより,大学等他の機関では
研究,教育が縮小傾向にあり人材育成が困難となった自然史科学等,
項目別-11
A
◎自然史分野等の基礎研究分野に関
する大学での教育機能が縮小傾向に
ある中、継続的に若手研究者を受け
入れている。
と。
また全国の科学系博物館職員
等の資質向上に寄与すること。
◎科博のリソースを活かし、若手研
究者を継続的に受け入れている点は
高く評価できる。
自然科学に関する基礎研究分野について,その後継者の養成を図っ
た。
指導に努め,知の創造を担う人材
を育成する。
○連携大学院
・東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻の修士課程2名,博士
課程3名,計5名を受け入れた。(前年度4名)
・茨城大学大学院農学研究科資源生物科学専攻の修士課程3名を受
け入れた。(前年度2名)
・東京農工大学大学院連合農学研究科生物生産学専攻の博士課程
2名を受け入れた。(前年度3名)
○特別研究生
2名を受け入れた(前年度8名)
○外国人共同研究者・外国人研修生
外国人共同研究者2名,外国人研修生2名を受け入れた。
(前年度 外国人共同研究者2名,外国人研修生1名)
○日本学術振興会特別研究員
3名を受け入れた。(前年度4名)
博物館職員に対する研修の実施状況
3-2 全国の博物館等職員に対
する専門的な研修の実施
◎今回の博物館関係規程の改正の中
でも取り上げられているが、研修機
会の増加や若手職員の育成は、極め
て重要な課題である。しかし、特段
の進展はなく、ナショナルミュージ
アムとしての国策的取り組みを文科
省と一体になって推進すべきであろ
う。
全国の自然科学系博物館に勤務する中堅学芸員を対象に,一層の
資質向上を目的として,当館の研究者がそれぞれの分野に応じた高
度な内容の研修を実施した。
平成20年度は,動物(昆虫)コースを開講した。昆虫及びクモ類に
ついて,野外での採集から博物館の収蔵庫へ至る様々な研究法につ
いて実習を行った。研究全般についての概論講義の後,標本の作成
と管理,実体顕微鏡等を使用した観察や検索表を用いながらの同定
等について実習した。さらに昆虫を含む動物分類学一般や国際動物
命名規約についても解説した。
全国の自然科学系の学芸員を対
象とし,科学博物館の標本資料・
研究成果等の知的・人的・物的資
源を十分に活用した専門的な研修
を実施する。
動物(昆虫)コースには22名の応募があり,12名が受講した。な
お,人類コースは応募者が1名のため中止した。歴史・考古系博物館
への情報提供等が課題である。
(4)国際的な共同研究・交流
4-1
海外の博物館との交流
海外の博物館との協力協定の
締結等に積極的に取り組むな
ど,自然史研究等の国際交流・
国際協力の充実強化を図るこ
と。
特にアジア・オセアニア地域
における中核拠点として,自然
史博物館等との研究協力を実施
し,この地域における自然史系
博物館活動の発展の上で先導的
な役割を果たすこと。
海外の博物館等の求めに応じた
技術支援などの国際交流を促進
し,相互の研究活動等の発展・充
実に資する。
特にアジア及び環太平洋地域の
自然史系博物館等との研究協力を
積極的に行い,これらの地域にお
ける自然史系博物館活動の発展に
先導的な役割を果たす。
国際的な共同研
究・交流の状況
◎国際シンポジウムや交流等は、昨
年同様の取り組みがなされている。
海外の博物館等との国際交流の実施状況
自然史科学等のそれぞれの分野において,アジア,環太平洋地域を
はじめ,海外の博物館や研究機関の研究者との共同研究を積極的に推
進した。
また,海外の博物館関係者,研究者等を招へいして国際シンポジ
ウムを開催するとともに,国際的な博物館関係会議への協力活動
や,海外の博物館,教育・研究機関等からの視察等受入を積極的に
行った。特にアジア及び環太平洋地域については,アジア太平洋地
域科学館会議(ASPAC)を通じて交流を深めたほか,ブータン国ロイヤ
ル植物園,インドネシアボゴール植物園との共同研究等を進めた。
主な取り組みは次の通りである。
○国際シンポジウムの開催
国際シンポジウム「海に還った四肢動物研究の最前線」は,四肢
項目別-12
A
◎ICOM-ASPAC日本会議を科博で開催
することは、科博の取組を含めてア
ジア太平洋地域の博物館活動を広く
世界に発信するとともに、日本の博
物館関係者とアジア太平洋地域の関
係者が交流を深める有意義な機会と
なる。
◎国際的な研究と発表報告分野での
活動は活発に行われており、特にア
ジアの中核拠点としての取組は受動
から積極的な取組への変化が求めら
動物(爬虫類・哺乳類)が陸上から水中へと二次的に水生適応する
進化のパターンとプロセスについて,内外の古生物学者,解剖学
者,地球化学者,生態学者等を参集し,系統学,形態学,生物地理
学,生理学,生態学,古環境学など多岐にわたる学際的な研究の最
新の成果を発表する機会を設け,国際的にはもちろんのこと,日本
及びアジアでのこの分野の発展を図ろうとするものである。初日は
一般公開のシンポジウム,2 日目以降は学術的なシンポジウムを開催
した。初日のシンポジウムでは,国外招聘研究者 5 名と国内研究者 3
名による 8 題の講演が行われ,一般申込 61 名を含む内外の研究者
118 名が出席した。2 日目以降は,シンポジストを含む 23 名の国外
研究者と 33 名の国内研究者による 47 題の研究発表が行われ,内外
57 名の研究者により,学際的な研究交流がなされた。また,研究集
会中,内外研究者 40 名の参加により当館所蔵の鯨類液浸標本の顎関
節と胃の解剖を実施し,実際の標本を前に有意義な意見交換がなさ
れた。
第 4 回 国際シンポジウム「アジアのランの多様性と保全」では,
アジア諸国のラン科研究者が集まり技術と情報の交換を行い,当該
地域での調査推進の契機とすることを意図するとともに,日本にお
いて,市民,技術者,研究者の広範な協力を得るきっかけとするこ
とをねらいとして開催した。中国,ロシアなどから研究者を招へい
し,講演,討論等行った。
この他,国際シンポジウム「日本の技術革新-理工系における技
術史研究-」,国際稚魚ワークショップを実施した。
○国際的な博物館関係の会議等
・国際博物館会議(ICOM)
当館館長が,ICOM日本国内委員会の委員長として,国内活動の取
りまとめを通じた活動を行うとともに,「国際博物館の日」に関す
る各種記念行事を実施し,博物館事業の普及に協力した。また,平
成21年12月に日本で開催予定のICOM-ASPAC(国際博物館会議アジア太
平洋地域連盟)日本会議について,日本博物館協会等と協力して実行
委員会を立ち上げ,テーマ設定,運営方法などについて検討した。
・アジア太平洋地域科学館協会(ASPAC)
タイで開催された2008年次総会に当館職員が出席し,各国の科学
技術博物館関係者らと情報交流を行った。
・友好協定等を締結する各館との協力
友好協定を締結しているオーストラリア国立科学技術センター
(クエスタコン)の開設20周年記念プログラム「日豪サイエンスパ
フォーマー交流事業」において,当館および全国科学博物館協議会
より職員を派遣し,「地球・大気・火・水」をテーマに日本・豪州
の参加者が共同で新しいパフォーマンス(サイエンスショー)を作
成,一般に公開する事業に協力した。(平成20年9月14~19日)
また,10月15日には当館コレクションディレクターが日豪科学協
力20周年記念式典に出席するとともに,クエスタコンとの協力協定
の延長を確認した。
その他,世界各地区との情報交流等に努めた。
項目別-13
れよう
◎ICOM-ASPAC日本会議の開催に向け
た科博のリーダーシップは高く評価
できる。また、国内外の博物館関係
者等との一層の交流が図られてい
る。
○研究協力
ブータン国ロイヤル植物園の立上げの技術協力・共同研究のため
に,研究者の招へい,派遣を引き続き行うとともに,交流協定を締
結しているインドネシアボゴール植物園と熱帯樹林に関する共同研
究を実施した。
○海外の博物館および教育・研究機関から視察・調査・意見交換等の
ために16件,64人の博物館関係者が来訪し,積極的に受け入れた。
アジアの中核拠点としての機能を果たす取組状況
4-2 アジアの中核的拠点とし
ての国際的活動の充実
○国際深海掘削計画の微化石標本・資料に関する活動
国際深海掘削計画で採取された微化石標本の全ての標本を保管す
る国際共同利用センター(Full MRC:世界の 5 ヶ所に設置)として
の役割を果たしている。
平成 20 年度においては,微化石標本のプレパラートを 3,200 枚作
成し,各センターで交換しつつ保管・管理(交換標本数 200)し,国
際ガイドラインに沿って,62 の微化石標本の貸出を行った。また,
各種機器を整備するとともに,当館所蔵の標本・資料を利用するた
めに来訪した研究者の研究活動を支援した。
国際深海掘削計画におけるアジ
アを代表する微古生物標本資料セ
ンターとして,あるいは地球規模
生物多様性情報機構(GBIF)の日
本ノードとして等,アジアの中核
的研究拠点として,積極的な国際
貢献を行う。
○地球規模生物多様性情報機構(GBIF)に関する活動
日本から GBIF へ情報発信を行うため,全国の自然史系博物館等が
所有している生物多様性に関する標本情報を,インターネットを利
用して検索できるシステムにより,公開データをさらに充実させる
とともに,GBIF に掲載されている生物多様性情報のより効果的な活
用を目指して,東京大学,国立遺伝研究所と共同でワークショップ
21 世紀の生物多様性研究「環境・生物多様性関連の大規模情報ネッ
トワークの構築と利用」を当館講堂において開催した。また,昨年
度に引き続き,当館コレクションディレクターが GBIF 副議長を務め
た。
2 ナショナルコレクションの
体系的構築及び人類共有の財産
としての将来にわたる継承
2 ナショナルコレクションの体
系的構築及び人類共有の財産とし
て将来にわたり継承するための標
本資料収集・保管事業
A
(1)ナショナルコレクションの構
築
1-1 ナショナルコレクション
の収集・保管
科学系博物館のナショナルセ
ンターとして,自然史及び科学
技術史の研究に資するコレクシ
標本資料の収集・保管について
は,ナショナルセンターとして保
管・継承されることが期待されて
標本資料の収
集・保管状況
標本資料の収集状況
・ 動物関係では,脊椎動物,海生無脊椎動物,昆虫やクモ等陸生
無脊椎動物について,日本各地のほか中国,ベトナム,タイ,マ
レーシアなど主にアジア各地で調査と標本収集を行った。それに
基づく分類学的研究により25新種を記載し,約100点のタイプ標本
項目別-14
S
◎博物館の最も大きな特徴は、資料
の収集、調査、保存であり、それが
あって初めて研究、教育普及が充足
される。収集の点数目標は概ね達成
されているが、絶対数もさることな
がら、収集目的を定めた目的別収集
達成率のような方策も加味されるべ
きであろう。また、収蔵庫スペース
については具体的計画が進行してお
り、他のモデルになれる機能を具備
したものにしてほしい。
◎数的コレクションの達成率は高
く、公私を分かたず寄贈、寄託の件
数も多い。科博が中心となって構築
しているセーフティネットの構築は
大いに評価され、今後のナショナル
ョンの構築を行い,これらを適
切な環境のもとで保管し,将来
へ継承できるようにすること。
標本資料の収集・保管にあた
っては,各分野に応じた目標を
設定し,着実な充実を図ること
とし,科学博物館全体として5
年間で20万点の増を目指すと
ともに,適切な保管体制の整備
をするために,資料庫の建設と
コレクションマネージャーの導
入についての検討を進めるこ
と。
また科学博物館で所有してい
る標本資料の情報のデータベー
ス化・公開について,5年間で
15万件の公開件数の増を図
り,他の研究機関が利用しやす
いコレクション環境を整えるこ
と。
いる標本資料について,適切に収
集・保管する。
第2期中期目標期間中において
は,各分野毎の計画に基づき着実
な充実を図ることとし,科学博物
館全体として5年間で20万点の
標本資料数増加を図るとともに,
質的な面においては,DNA情報とそ
の証拠標本を統括的に蓄積し生物
多様性研究基盤に資するなど,質
の高いコレクションの構築に努め
る。
を登録した。また,個人コレクションとして日本産甲虫類約500点
を受け入れた。新しく収集した標本およびこれまでの未登録標本
から哺乳類570点,鳥類970点,爬虫・両生類170点,魚類3,300
点,軟体類450点,昆虫類17,000点,昆虫以外の節足動物2,300
点,腔腸類150点および棘皮類500点を登録,データベース化し
た。
・
植物関係では,維管束植物(種子,シダ),コケ植物,藻類
(大型,微細),菌類,地衣類について日本各地の他,海外のア
ジア(台湾,中国,モンゴル),イギリス,ドイツ,クロアチ
ア,フェロー諸島などで調査・標本収集するとともに,エキシカ
ータ等による世界的な標本交換,寄贈標本受入れを行って,維管
束植物約2.8万点,菌類・地衣類約1.2万点など計5.4万点近い標本
を登録保管した。標本に基づく分類研究および標本交換により,
84点のタイプ標本を追加保管した。
・
岩石関係では,東京大学地震研究所から約 1,200 点の火山岩資
料の寄贈を受けた。その多くはインド・デカン高原およびフラン
ス領・レユニオン島の火山岩であり,過去に大規模な環境変動を
起こした超巨大な火山が活動した際に地下から噴出したマグマが
固化したものである。これら資料は,その研究成果がいくつもの
国際的科学雑誌に掲載された重要な標本である。また,中国の巨
大なレアアースの鉱床,Bayan Obo を調査し,25 点の稀産鉱物を
採集・登録した。
古生物関係では,カナダのデボン紀からのプロトタキシーテス
をはじめ,秋田県の台島層植物化石60点を収集した。また宮崎県
産の新種シルル紀サンゴ化石のタイプ標本が寄贈された。さら
に,チャレンジャー海淵(1万メートルを越える深海)からの有孔
虫タイプ標本8点を収集した。
・
人類関係では,古墳人骨6体,中世人骨5体,近世人骨約500体の
同定をおこなった。受入人骨標本は,墨田区本仏寺跡墓地,護国
寺門前町遺跡などから出土した主に近世の人骨,約380体である。
新宿区崇源寺・正見寺出土近世人骨約2,000体については引き続き
整理作業を進めている。
・
理工学関係では,航空関係資料として戦前・戦後の航空計器 6
点,風船爆弾計器,整備資料,航空事故用 FDR 解析機など,特許
資料としてイギリスやフランスの初期公開特許明細書一式,産業
技術史博物館設立委員会が所蔵していた舶用タービン,陸用デー
ゼルエンジンなどを収集,寄贈を受けた。
世界最速の計算速度を記録したスーパーコンピューター地球シ
ミュレーターの2ユニットを受け入れ保存した。また,国際原子時
の校正に使われたセシウム一次周波数標準器を受け入れた。第二
次大戦後の日本における多彩な光学工業の様相を示す双眼鏡4点の
実機を含む設計図等の資料を収集した。日本初の化学書「舎密開
宗」全巻一式を収集した。
・
筑波実験植物園では,多様性解析・保全研究用および展示用と
して生きた植物957分類群1574個体を国内外から導入した。その中
で特記すべきものとして,既に保有する稀少植物種の系統保存を
継続しておこなうとともに,229分類群397個体の日本産絶滅危惧
種(環境省版レッドデータブック掲載種)を導入・系統保存し
項目別-15
コレクションの維持の基盤になると
思われる。
◎長年の懸案であった新たな収蔵庫
の建設が決定し、設計の検討が進め
られている。これは、標本資料の登
録が目標を上回って進むとともに、
標本資料の収集・保管・継承の重要
性を国民に訴える取組を積極的に行
ってきた成果を反映したものであ
り、高く評価できる。新収蔵庫の整
備により、標本資料の保管体制の充
実とともに、標本に基づく研究の充
実が期待される。
◎コレクションの構築は順調に推移
している。収蔵庫の建設が決定され
たことは、科博の実績に対する社会
的評価の一つの現われと言える。そ
れをいかに活用できるか、今後問わ
れていくことになる。さらに、将来
を見据えた長期的な整備の在り方に
ついて検討を続けていくことが必要
であろう。
◎標本資料が精力的に収集・保管さ
れており、ナショナルセンターとし
ての期待に応えている。
◎日本・アジア地域を中心に、コレ
クションの構築が進んでいる。
た。外国産稀少植物種についてもアジアのラン科などの生植物な
どを導入した。
平成20年度末現在,登録標本数 3,790,011点
(前年度3,695,007点)
登録標本増加数
20年度実績
95,004点
中期目標期間 累計増加数
1-2
保管体制の整備状況
標本資料保管体制の整備
収集,保管にあたっては,ナショナルコレクションとして質の高
い標本資料の登録,保管に努めるとともに,DNA情報とその証拠標本
を統括的に蓄積し,生物多様性研究基盤に資するなど,高次のコレ
クションの構築に努めた。
また,コレクションの戦略的充実を図るため,標本資料センター
が中心となって,館外の研究者に協力を得てコレクションを戦略的
に構築する「コレクション・ビルディング・フェローシップ」事業
を継続し,標本の収集・充実を行った。
収蔵庫ではそれぞれの標本に適した温度湿度の管理を行うととも
に,防虫作業,定期的な標本資料の点検を実施するなど,最適な保
存状態の維持に努めた。また,タイプ標本は一般標本から明瞭に区
別して適切な保管に努めた。DNA資料は分子生物多様性研究資料セン
ターに設置されたディープフリーザーに保管するとともに,DNAのバ
ウチャー(証拠標本)を標本室に収納した。
全館の標本資料を統合的に管理するために全館共通のデータベー
スシステムを導入し,本格稼働に向け運用を開始した。このシステ
ムの導入によって,標本データの入力を全館的な標準フォーマット
を利用して行えるようになった。また,入力した標本データの活
用,標本の貸し出しを始めとする標本管理,そして標本データを科
学博物館 web サイトに掲載して公開する作業を効率的かつ一元的に
行えるようになった。
また,筑波地区に建設する収蔵庫の設計案を検討した。
所有している標本資料を将来にわ
たって適切に継承するために,一
部公開が可能な収蔵庫建設やコレ
クションマネージャーの導入な
ど,標本資料の保管体制の整備に
ついての検討を進める。
1-3 標本資料情報の発信によ
るコレクションの活用の促進
所有している標本資料等に関す
る情報の電子情報化を進めデータ
ベース化を推進することにより,
新たに5年間で15万件の標本資
料情報についてweb等を通じて公開
し,他機関で行う研究・展示など
への活用を促進する。
※中期目標期間評価基準
A:20万点以上
B:14万点以上20万点未満
C:14万点未満
304,397点(目標に対し 152.2%達成)
標本資料情報の
発信状況
情報の発信状況及び標本資料の活用状況
・情報発信状況
科学博物館の所蔵する様々な分類群や分野の標本資料の情報をデ
ータベースとして公開をしている。データベースには採集地等の属
性情報や画像を収録しており,研究者の他,児童生徒や一般の方々
の学習資源としての活用等広く利用に供している。
平成20年度は,約1万5千件の標本資料のデータを公開し,その結
果絶滅危惧種などの所在情報や研究中のデータを除いた公開データ
件数は約98万件となった。なお,全館共通データベースシステムに
関連して,データ移管や入力を進めた。
平成20年度末公開件数:976,573件
(前年度:961,930件)
項目別-16
A
◎資料のWEBサイトを通しての一般公
開や全国の科学博物館をむすぶサイ
エンスミュージアムネットの構築な
ど、ナショナルミュージアムとして
の資料情報の提供、利用の内容は充
実したものになっている。今後も此
のペースを維持したい。
◎20年度は新規公開件数がやや少な
かった。これは全館統合データベー
スのデータ入力に注力したためであ
り、中期計画の達成に向けて順調に
進んでいると考えられる。
特に,タイプ標本データベースには,標本資料の属性データ,新
種が記載された際の書誌情報,分類学的な特徴を把握できる高解像
度の写真が付されており,国内外の研究者等が分類学的な特徴を把
握できるようにしている。
・標本資料活用状況
所蔵する標本資料については,国内外の研究機関等における研究
目的の利用に供し学術研究の進展に資するように努めるだけでな
く,全国各地の博物館等に展示目的で貸し出すなど活用を図ってい
る。
平成20年度の貸出は,262件・5,520点(ロット)であった。
(前年度:301件・5,020点(ロット))
※中期目標期間評価基準
A:15万件以上
B:10万5千件以上15万件未満
C:10万5千件未満
標本資料情報公開増加数
平成20年度実績
14,643件
中期目標期間 累計増加数
(2)標本資料の収集・保管に関す
る新しいシステムの確立
2-1 標本資料のセーフティネ
ット機能の構築
科学系博物館のナショナルセ
ンターとして,科学博物館で所
有している標本資料のみなら
ず,全国の科学系博物館等で所
有している標本資料について,
その所在情報を的確に把握し,
情報を集約し,国内外に対して
積極的に発信していくこと。そ
のために,今中期目標期間中に
全国の博物館等が所有する標本
資料情報等の横断的検索システ
ムの構築と公開を行うこと。
また,大学等で保管が困難と
なった標本資料を受け入れるな
ど,貴重な標本資料の散逸を防
ぐ方策を確立すること。
大学や博物館等で所有していた
貴重な標本資料が散逸することを
防ぐために,それらの機関で保管
が困難となった標本資料につい
て,科学博物館が安全網としての
役割を果たし,標本資料の受入を
行う。
2-2 全国の科学系博物館所有
の標本資料情報の把握
全国の科学系博物館等との連携
のもと,標本資料の所在情報を横
断的に検索できるシステム(サイエ
ンスミュージアムネット(S-Net))
を構築し,国内研究者の自然史科
学等の研究に寄与する。
2-3 標本資料情報発信による
国際的な貢献
地球規模生物多様性情報機構
(GBIF)の日本ノードとして,科学
標本資料及び情
報に関するナシ
ョナルセンター
機能の状況
82,691件(目標に対し 55.1%達成)
◎国内の博物館等と連携したサイエ
ンスミュージアムネットの取り組み
は着実に進行している。
セーフティネット機能の検討・構築状況
大学や博物館等で所有していた貴重な標本資料が散逸することを
防ぐために,それらの機関で保管が困難となった標本資料の受入に
ついて,当館が中心となって安全網を形成することを検討した。本
年度は一部の大学や博物館から標本を受け入れるとともに,他省庁
機関の標本保全についても引き続き検討を進めた。
A
◎GBIFの日本ノードとしての役割分
担や国内産業技術資料などの保存は
重要であるが、保存面積に限りがあ
り、いかに産業団体との連携が進展
するかがかぎとなろう。現計画の着
実な実施を図りたい。
サイエンスミュージアムネットの構築及びGBIFとの連携状況
平成18年度よりサイエンスミュージアムネット(S-net)において
稼動させた,全国の博物館や大学が所蔵する動植物・菌類標本の横
断的な検索を可能にする「自然史標本情報検索システム」について
は,平成20年度末におけるデータ件数は約140万件となり,35博物
館,5大学が参加している(平成19年度末データ件数約130万件,35
博物館,5大学の参加)。
自然史標本情報検索システムにおいては,生物多様性に関する学
習や環境保全活動に資するため,標本採集地による分布図の表示も
できるようにしている。
また,平成 20 年度においても研究会を 2 回開催し,全国の博物館
等から担当学芸員等が参加し,標本収集・管理と標本データベー
ス,データベースを用いた研究等について,報告や意見交換が行わ
れた。
地球規模生物多様性情報機構(GBIF)の日本ノードとして,国内の
科学系博物館等が所有する生物多様性に関する自然史標本資料の所
在情報をとりまとめ,インターネットを通じて英語による情報発信
を行った。また,国内利用者の便宜を考慮して,日本語による標本
項目別-17
◎サイエンスミュージアムネットの
取組を通し、国内の大学、博物館等
のコレクション構築の支援が行われ
ている。
◎ナショナルセンターとして、全国
の博物館等と連携した取組(サイエ
ンスミュージアムネット)を展開し
ている等、科博のリーダーシップが
発揮されている。
博物館の標本資料情報のみなら
ず,上記サイエンスミュージアム
ネットによって把握された全国の
科学系博物館等が所有する標本資
料情報についても積極的に発信す
る。
データの提供を,サイエンスミュージアムネット(S-Net)を通じて
行った。
引き続き,当館コレクションディレクターが GBIF 副議長を務め,
日本が GBIF に円滑に貢献できる体制を確保した。
2-4
録
重要科学技術史資料の選定・登録状況
重要産業技術史資料の登
産業技術史資料情報センターが
中心となって,企業,科学系博物
館等で所有している産業技術史資
料の中でも特に重要と思われるも
のについて,重要産業技術史資料
としての登録を行い,各機関との
役割分担のもとに,資料の分散集
積を促す。
3 科学博物館の資源と社会の
様々なセクターとの協働によ
る,人々の科学リテラシーの向
上
◎重要科学技術史資料の登録は、継
続して実施している資料情報の収
集、系統化調査の成果等を踏まえた
ものとなっている。資料の登録と定
期的な確認、情報の公開を通して、
国民的財産の保存を図るとともに、
科学技術を担ってきた先人たちの経
験を次世代に継承し、更なる技術革
新に寄与することが期待される。
工業会等関連団体の協力の下に所在調査を行うとともに,貨車,
陸用大型ガスタービンなど11分野の技術について系統化調査を行っ
た。平成20年7月には,一般聴講者を対象として,19年度に実施した
系統化調査の成果報告会を当館講堂において開催した。
また,重要科学技術史資料の保存と活用を図るために昨年度開催
した「第 1 回 重要科学技術史資料登録委員会」(委員長:末松安晴
(国立情報学研究所))により登録が妥当と答申された 23 件の資料に
ついて,10 月にその所有者を招き登録証及び記念盾の授与式を行
い,重要科学技術史資料として登録した。
産業技術史資料共通データベース HITNET に,マツダミュージアム
等 21 機関の所蔵資料のデータを追加した。
3 科学博物館の資源と社会の
様々なセクターとの協働により,
人々の科学リテラシーの向上に資
する展示・学習支援事業
A
(1)人々の感性と科学リテラシー
の育成
1-1本館の整備等,常設展の計
画的な運用
生涯学習の観点から,科学博
物館がこれまで蓄積してきた知
的・物的資源や,現に有してい
る人的資源を一体的に活かすと
ともに,社会の様々なセクター
と協働した展示・学習支援事業
を実施すること。特に学習支援
事業については,他の科学系博
物館では実施困難な事業を重点
的に行うこと。さらに日本を総
括的に展望できる展示を展開す
るため,上野地区本館の整備・
公開を進めること。
上野地区本館の改修を計画的に
実施し,平成19年度には日本館(仮
称)として公開し,既に公開してい
る新館とあわせ,上野地区全体で
11,000 ㎡ 程 度 の 展 示 面 積 を 確 保
し,研究成果の社会還元の場とし
て,計画的に運用する。
日本館の展示については,35
年間に及ぶ「日本列島の自然史科
学的総合研究」の研究成果を踏ま
え,日本とそれをとりまく環境や
育まれてきた人間の営みなどにつ
いて総括的に展望が出来る日本全
展示公開及びサ
ービスの状況
常設展の整備・運用状況
入館者の要望に応え,展示資料・資料解説を改善及び追加するこ
とにより,魅力ある展示運用を行った。また,シアター36○につ
いては,オープンから2年を経過することもあり,新規映像の制作に
着手した。
○日本館
日本館を運営していく中で,詳細でわかりやすい展示解説を提供
するため,資料解説及び情報端末コンテンツを修正・追加するなど
充実を図った。
○地球館
入館者に良質な展示を提供し続けるため,展示資料(動物・植物・
人類)の補修・入替及び追加を行うとともに,見学動線をよりわかり
やすくするため,誘導・案内サインの改善を行った。
害虫駆除を目的とした消毒および展示資料の調整・清掃などを行
項目別-18
A
◎展示を通しての普及活動、学習機
会の提供は、その利用者数から見る
限り恒常的に世界的な規模に達して
いる。昨年度との比較で若干の減少
が記録されているが、その評価は絶
対数でのみ行なうべきではない。利
用者と企画展の展示目的、目的に照
らした観客層の分類的評価、詳細な
満足度調査を加味し、絶対評価と目
的達成度調査を併用したい。昨年と
の数の比較のみを取り上げるべきで
はない。
◎常設展の入館者数の着実な増加は
国民の科学リテラシーの根本の育成
につながるものであり、この展示努
力は高く評価できる。今年度の総入
館者数の減少は特別展による変動と
思われるが数の追求にとらわれず国
民のニーズに応えると共に、科博と
しての真価を地道に発信していく質
も大切にしていく姿勢を応援した
い。
◎ 企 画 構 成 、 PR 、 基 礎 的 研 究 の 容
量・背景など優れたものが多い。特
に、他施設、他大学とのコラボなど
より多くの人々に対する科学
リテラシーの振興のため,5年
間で600万人の入館者数の確
保を目標とし,広く国民の感性
と科学リテラシーの向上に資す
ること。
また,世代に応じた科学リテ
ラシーの涵養を図るための効果
なモデル的プログラムの開発な
ど,人々の科学リテラシー向上
を目指した新たな方策の開発を
行い,生涯にわたる学習の機会
の提供に資すること。
特に児童・生徒などについて
は,学校との連携を強化し,新
たな連携モデル的な事業の開発
に努めること。
体を視野に入れた総合展示を展開
する。
また入館者の満足度等を調査,
分析,評価し,改善を行うなど,
時代に即応し,入館者のニーズに
応える魅力ある展示運用を行い,
特別展等とあわせて5年間で60
0万人の入館者の確保に努める。
い,入館者に安全で魅力ある展示を提供した。
「科学技術の過去・現在・未来」コーナーにおいて,社会的に話
題となった技術や社会的評価の高い技術の内容等の紹介を適宜行っ
た。
・ロータリーエンジン 40 周年展(20.4.22~6.1)
・日本の先端技術の紹介(20.7.29~8.11)
・第一回「重要科学技術史資料(未来技術遺産)」パネル展示
(20.10.9~11.3)
・自動車殿堂展(20.11.11~11.30)
・「蘇る技と美 玉虫厨子」展(20.12.13~12.21)
会場:日本館中央ホール
その他,筑波実験植物園,附属自然教育園についても,植栽や解
説パネルの整備を行い,鑑賞環境の改善に努めた。
筑波実験植物園においては,平成20年10月に開園25周年を迎える
にあたり,植物多様性の恩恵により私たちのくらしが成り立ってい
ることを実感できるよう,衣食住,観賞など,生活に欠かせない植
物を植栽展示した新区画「生命を支える多様性区」をオープンさせ
るとともに,特別展示「筑波実験植物園-いま・むかし-」,開園
25周年記念講演会等を実施した。
平成20年9月30日~10月5日(6日間),来館者へのアンケート調査
を行い,その結果を分析・評価し,今後の展示改善の参考とした。
が成果を上げている。上野公園に位
置する施設との身近なコラボは一つ
の展示傾向を創出したものと言えよ
う。また、国際博物館の日にちなむ
上野の町を巻き込んだ活動は地域活
動の典型となりつつあり、高く評価
されよう。
◎入場者を分析し期待する成果等を
明確にし、わかりやすい魅力ある展
示の努力が理解できる。
◎筑波実験植物園において生物多様
性の重要性を広く喚起すべく、生物
多様性をテーマとした植栽展示区画
が新たに設けられている。
入館者数は特別展入館者数が減少したことにより,過去最高記録
を更新してきた17,18,19年度にはおよばなかったが,目標を上回
る数を確保した。
入館者数
20年度実績
1,610,348人
中期目標期間 累計5,279,431人(目標に対し88.0%達成)
19年度:1,907,826人
18年度:1,761,257人
17年度:1,618,886人
16年度:1,196,364人
15年度:1,088,652人
入館者数内訳
20年度
19年度
18年度
17年度
16年度
15年度
1-2 わかりやすく魅力的な特
別展等の実施
常設展のみ
1,001,303人
966,973人
825,577人
746,503人
700,401人
650,479人
特別展・企画展の実施状況
【特別展】
項目別-19
特別展
609,045人
940,853人
935,680人
872,383人
495,963人
438,173人
※中期目標期間評価基準
A:600万人以上
B:420万人以上600万人未満
C:420万人未満
◎目標を上回っている。
◎常設展の入館者数については微増
しており、総入館者数が減少した主
な要因は、特別展の観覧者数の変動
によるものと考えられる。
◎特別展は、歴史的・文化的視点等
を加味したテーマの場合、多くの観
覧者の獲得が見込まれるが、一方自
然科学を中心としたテーマの場合
は、既に興味関心を持つ人々等に観
覧者が限られる傾向があるため、 工
夫を加え、魅力的な展示を企画する
必要がある。
特別展については毎年2回(100
日~180日)程度,企画展について
は 毎 年 10 回 程 度 実 施 す る こ と と
し,それぞれ企画段階で意図,期
待する成果などを明確にし,科学
博物館がこれまで蓄積してきた知
的・人的・物的資源等を活かした
展示を行う。特に研究成果の社会
的還元という観点から,展示内
容,手法等に工夫を加え,一般の
人々にとってわかりやすい魅力的
な展示を実施する。またその実施
にあたっては,企業,大学等様々
なセクターと連携し,他の機関の
資源を活用しつつ多彩な展開をす
る。
企業,大学等他機関の資源を活用しつつ,当館の知的・人的・物
的資源等を活かした多彩な展示を展開した。各展覧会の企画段階に
おいては,企画意図,対象者,期待する成果等を明確にし,分かり
やすい魅力ある展示となるよう努めた。また,観覧者層や情報源等
の把握のためアンケートを実施した。
○「ダーウィン展」
他の主催者:読売新聞社,NHK
(20.3.18-6.22 88 日間(20 年度 74 日間)開催
入場者数:214,193 人(20 年度 177,947 人))
代表的著書「種の起源」とともに,進化論の提唱者として世界的
に知られるチャールズ・ダーウィンの発想や世間に発表するまでの
心の葛藤,その過程等についてダーウィンの生活環境や当時の社会
情勢等を踏まえて紹介する展示を行った。
○「金 GOLD 黄金の国ジパングとエル・ドラード展」
他の主催者:毎日新聞社,NHK,NHK プロモーション
(20.7.12-9.21 69 日間開催 入場者数:111,547 人)
「金」を科学面からだけではなく,歴史・美術工芸及び宝飾等の
見地から多面的に捉える試みとして,自然金としての鉱物資料のみ
ならず,金を利用した工業製品や宝飾資料の展示を行った。また,
コロンビア黄金博物館の金装飾品も展示した。
○「菌類のふしぎ きのことカビと仲間たち」
他の主催者:TBS
(20.10.11-21.1.12 77 日間開催 入場者数:165,390 人)
人々の生活に欠かせないパートナーである菌類にスポットをあ
て,講談社の漫画「もやしもん」のキャラクターをナビゲーターと
して,巧妙で多様な菌類の形態と生態を紹介する展示を行った。
○「「1970 年大阪万博の軌跡」2009 in 東京」
他の主催者:日本万国博覧会記念機構,毎日放送,毎日新聞社
(21.1.22-2.8 16 日間開催 入場者数:25,561 人)
高度経済成長期の象徴とも言える 1970 年に開催された日本万国
博覧会。模型や衣装など博覧会当時の実物展示を行うとともに,写
真パネルや映像を活用しながら,博覧会を紹介した。
○「大恐竜展~知られざる南半球の支配者~」
他の主催者:読売新聞社
(21.3.14-6.21 90 日間(20 年度 17 日間)開催
入場者数:570,050 人(20 年度 128,600 人))
1998 年に開催した特別展「大恐竜展~失われた大陸ゴンドワナ
の支配者」のテーマを引き継ぎ,初公開の恐竜ばかりを集め,飛躍
的に進んだ研究の成果を含め,幻の巨大大陸の恐竜の世界を紹介す
る展示を行った。
また,これらの特別展においては,会期中に当館や関係機関の研
究者による講演会や,様々な関連イベント等を実施し,入場者の興
味関心を触発するよう努めた。
項目別-20
平成20年度は,生物多様性を生み
出す種分化と進化の解明に貢献をも
たらしたダーウィンに関する特別展
や、「金 GOLD」展、「菌類のふし
ぎ」展など研究活動・研究成果を生
かした特別展が実施されている。そ
の際、金展では歴史的・美術的視点
を加え、また菌類展では漫画キャラ
クターを用いるなど展示内容、手法
等に工夫が加えられている。
このことにより、例えば菌類展に
おいては、比較的地味なテーマなが
らも若年層を誘引するなど新規の観
覧者層を獲得し、菌類に関する興味
関心を拡大するなどの成果を上げて
いる。
◎人々の要望や社会的要請に応え,
自然科学の普及と、人々のニーズの
多様化・高度化に対応した多彩なテ
ーマの特別展を企画・開催すること
が科博にとっての使命であると考え
る。
◎特別展については、入館者の層な
どを細かく分析し、成果と課題を明
らかにして、今後の企画に生かして
行くことが重要である。
○「ダーウィン展」
関連作品展として,日本大学芸術学部の学生によるポスター展
を行うとともに,展示内容や見所等をまとめた見学ガイド及び事
前学習用のワークシートを作成した。また,特別講演「女性研究
者が語るダーウィン」やギャラリートークを実施した。
○「金 GOLD 黄金の国ジパングとエル・ドラード展」
クイズラリーを楽しめる見学ガイドを作成した。また,砂金採
取体験,ギャラリートーク,金泥書実演会を開催するとともに特
別講演会を 2 回実施した。
○「菌類のふしぎ きのことカビと仲間たち」
展示内容や見所をまとめた見学ガイドを作成した。また,特別
展会場で研究者が展示内容や展示にまつわる裏話を紹介するギャ
ラリートークを実施するとともに,東京農業大学の小泉教授や漫
画「もやしもん」の作者石川氏による講演会を開催した。
○「「1970 年 大阪万博の軌跡」2009 in 東京」
大阪万博当時のパビリオンスタンプ(複製)などを押印できる
チラシを作成し,会場内で配布した。
○「大恐竜展 ~知られざる南半球の支配者~」
展示内容や見所等をまとめた見学ガイドを作成するとともに,
当館研究員や本展 CG 作画監修の伊藤恵夫氏による特別講演会「や
さしい恐竜教室」などを開催した。
【企画展】
当館で推進する総合研究,重点研究等の研究成果や各研究者の研
究内容を適時・的確に紹介する展示を行った。
「標本の世界」では,普段一般の人々があまり目にする機会のな
い「展示されていない標本」を展示し,標本とは何か,標本を集め
ることによって何が分かるか,標本がどのように活用されているか
を紹介し,「展示」だけでなく,標本を収集し,研究して様々な用
途に活用することが博物館の重要な役割であることを伝えた。さら
に,本企画展はアレンジを加えて,平成21年1月19日~4月3日の間,
文部科学省情報ひろば展示室においても展示した。
このほか,日本の科学者技術者展シリーズ,発見!体験!先端研
究@上野の山シリーズを実施した。筑波実験植物園,附属自然教育
園,産業技術史資料情報センターにおいてもそれぞれ企画展を実施
した。
○「標本の世界」
(20.9.13-11.9 51 日間開催)
博物館が収集する「標本」に焦点をあて,標本の意味,標本をな
ぜ集めるか,標本から何が明らかになったか,標本から何が分かる
か等を分かりやすく展示し,標本資料の重要性を広く一般の方々に
普及することを目的とする展示を行った。
○「東北地方の自然史研究
斉藤報恩会の足跡とコレクション」
(21.1.24-2.22 26 日間開催)
東北地方の自然史研究の現状を紹介するとともに,財団法人斎藤
報恩会が学術研究に貢献してきた足跡を紹介する展示を行った。
項目別-21
◎「標本の世界」「東北地方の自然
史研究」「琉球の植物」等、博物館
の研究成果を反映した展示が実施さ
れている。また、日本の科学者技術
者展シリーズや発見!体験!先端研
究@上野の山シリーズでは、大学や
学会と連携し、それらの資源も活用
した展示が行われている。
◎企画展「標本の世界」では、社会
における博物館の役割を伝えるな
ど、科博らしい企画が展開されてお
り、高く評価できる。
○「琉球の植物」
(21.3.24-5.17 51 日(20 年度 8 日)間開催)
琉球列島の亜熱帯地帯を中心にそこに生きる植物,そして植物と
ヒトとのかかわりを紹介する展示を行った。
また,これら企画展の関連イベントとして,関連機関研究者等を
講師に招いての講演会や,研究者によるギャラリートークの開催,
展示の内容や見所をまとめた展示ガイド等を作成し,入場者の興味
関心を喚起した。
・日本の科学者技術者展シリーズ(3回)
○「なでしこたちの挑戦-日本の女性科学者技術者」
(20.3.22-5.6 44 日(20 年度 34 日)間開催)
近代日本における最初の女性医師となった荻野吟子や女医養成機
関を初めて創設した吉岡彌生のほか,香川綾(栄養学の基礎を築
く),保井コノ(初の女性博士),黒田チカ(初の女子帝大生),湯浅
年子(初の女性原子核物理学者)の業績等について紹介する展示を行
った。
○「Dr. NOGUCHI
世界を勇気づけた科学者・野口英世」
(20.5.20-7.21 53 日間開催)
挫折と成功を繰り返す野口の波乱の生涯,病原菌へのあくなき挑
戦,そして努力の末に得た研究成果を,彼を支えた多くの人々との
交流をまじえて今日的な視点で紹介する展示を行った。
○「数学
日本のパイオニアたち」
(20.11.22-21.1.12 41 日間開催)
江戸時代に活躍した関孝和を中心とした和算家たち,明治時代の
数学教育の基礎と和算の保存に寄与した菊池大麓,近代日本におい
て初めて世界的な業績を上げた高木貞治,そして日本人初のフィー
ルズ賞に輝いた小平邦彦ら日本の数学のパイオニアたちを紹介する
展示を行った。
・発見!体験!先端研究@上野の山シリーズ(1回)
○「アフリカの自然・開発・そこに住む人々
-地球の家族を救う国際協力-」
他の主催者:長崎大学
(21.3.7-3.15 8 日間開催)
長崎大学が熱帯病研究を糸口として長年積み重ねてきたアフリカ
との交流をベースとして,アフリカにおける自然,開発,貧困,そ
こから起こってくる感染症の現状をわかりやすく紹介する展示を行
った。
・名物展示(1回)
○「月の石」
(21.3.17 -9.6 153日(20年度15日)間開催)
当館で保管中の「月の石」を常設展示で再公開するにあたり,当
館の月の石の来歴や,月の石の科学的な調査研究等について紹介す
る展示を行った。
項目別-22
・その他の企画展(13回)
○上野本館
・「第 24 回植物画コンクール入選作品展」
(20.4.22-5.11
19日間開催)
○筑波実験植物園
・「さくらそう展」(20.4.19-4.29 11日間開催)
・「クレマチス展」(20.5.3-6.8 32 日間開催
・「クンショウモ・デザイン展-微少藻が誘う美の世界-」
(20.6.14-6.29 14 日間開催)
・「2008 植物園夏休みフェスタ」(20.7.19-8.3 14 日間開催)
・「消えゆく植物たち-絶滅危惧植物展-」
(20.10.4-10.13 10 日間開催)
・「つくば蘭展 2008」(20.12.7-12.14 8 日間開催)
・「ナンジャモンジャゴケと日本人研究者」
(20.12.23-21.1.25 22 日間開催)
・「第 25 回植物画コンクール入選作品展」
(21.3.3-3.15 12 日間開催)
○附属自然教育園
・「鳴く虫の文化誌」(20.8.30-9.28 25 日間開催)
・「自然教育園の森」(20.10.11-11.16 32 日間開催)
○産業技術史資料情報センター
・「みえる,わかる,なおる 放射線医療展」
(20.7.25-8.2 9 日間開催)
他の主催者:有限責任中間法人日本ラジオロジー協会
・「うま味発見 100 年記念 日本の 10 大発明『うま味調味料』」
(20.8.21-8.30 10日間開催)
他の主催者:日本うま味調味料協会
・「第 1 回未来技術遺産登録パネル展~技術の歴史を未来に生かす~」
(21.3.16-開催中
20 年度 12 日間開催)
なお,それぞれの展示会期中にはアンケート調査を実施し,来館
者のニーズの把握に努めた。
・トピック展示
最近の科学ニュース等速報性を重視した展示を行った。
○「2008 ノーベル賞受賞者記念展」
(20.12.25-21.4.5 86 日(20 年度 81 日)間開催)
2008年ノーベル物理学賞3人,化学賞1人を含めた合計13名の日本
の科学系ノーベル賞受賞者について,その素顔や業績について,解
説パネル及び受賞者にゆかりのある資料により紹介する展示を行っ
た。
・お客様ギャラリー
附属自然教育園内で写真撮影や絵画の創作活動をしている団体
の,園内における諸活動の成果を展示紹介する「お客様ギャラリ
ー」において,園内の写真を紹介する展示を1回実施した。
項目別-23
・その他の展示
○「未来の科学の夢絵画展」 (上野本館)
主催:社団法人発明協会 (20.4.8-4.20
12日間開催)
特別展実施回数
2回以上
1回以上
0回
20年度実績
5回(253日間)
6回以下
20年度実績
21回
企画展実施回数
10回以上 7回以上
1-3
独自性のある事業の実施
科学博物館の有する知的・人
的・物的資源を一体的に活用する
とともに,社会の様々なセクター
と連携した学習支援活動を実施
し,国民各層の知的好奇心を育成
する。学習支援事業全体を通じ
て,体験的な学習支援活動を年間
10件程度開発する。その際,ア
ンケート調査等を活用し,利用者
のニーズを的確に把握するよう努
める。
また,研究者及びボランティア
と入館者との直接的な対話を推進
する。
学習支援事業の
実施状況
学習支援事業の実施状況
○高度な専門性を活かした独自性のある事業
自然史・科学技術史の中核的研究機関としての研究成果や,ナシ
ョナルセンターとして蓄積された学習支援活動のノウハウ等を活か
し,研究部等の研究者が指導者となって,当館ならではの高度な専
門性を活かした独自性のある学習支援活動を展開した。また,学習
支援活動においては随時アンケートを実施し,利用者の期待等の把
握に努めた。
平成20年度は,「大学生のための科学技術史講座」「大学生のた
めの自然史講座」「自然観察会」など18企画を延べ195日実施した。
・大学生のための自然史講座
当館で35年間行ってきた「日本列島の自然史科学的総合研究」の
成果を交えながら,主に当館の研究員を講師として,日本列島の自
然,自然史について動物学,植物学,地質学・古生物学,人類学な
どのさまざまな観点からアプローチするリレー式講座である。20年
度は,全12回の講座を月2回程度,金曜日の18:00~19:30に実施
し,延べ597名の参加があった。
○学会と連携した事業の展開
ナショナルセンターであるからこそ可能であるさまざまな学会や
企業等との連携を活かして,日本化学会関東支部と共催で開催した
「化学実験講座」など14企画を延べ101日実施した。
・2008夏休みサイエンススクエア(20.7.29~8.24 24日間)
企業や学会,NPO法人,高等専門学校など48のイベント参加を得
て,夏休み期間中に開催し,延べ15,729人の参加があった。
○研究者及びボランティアと入館者との直接的な対話
研究者が来館者と展示場で直接対話したり解説するディスカバリ
ートークなど5企画を延べ444日実施した。
また,上野本館,筑波実験植物園においてはボランティアによる
ガイドツアーやボランティアによる自主企画の学習支援活動を実施
した。
・ディスカバリートーク
項目別-24
S
◎国民の多様な層に応じた事業に積
極的に取り組むとともに、博物館と
学校の連携を促進する様々な取組が
開発・実施されている。また、博物
館の資源を活かした学習プログラム
が国内の科学系博物館と協働で開発
されていることは、各博物館の活動
を活性化するものであり、ナショナ
ルミュージアムとして非常に高く評
価できる取組である。
◎世代に応じ、ニーズに対応した科
博の知的、人的、物的資源の積極
的、意欲的な活用には多様な取り組
みがみられ、先導的、モデル的な事
業として高く評価できる。
◎ナショナルミュージアムとして、
全国の博物館のモデルとなる多彩な
プログラム開発が行われている。
◎科学をすべての人に、という最近
の傾向の中で、ディスカバリートー
クは定着しつつあり、学習効果は勿
論従来のファン以外の客層に浸透し
つつあるように思われる。
◎科博のリソースを活かしつつ、対
象者の特性にも配慮した学習支援が
行われている。
土日祝日の11時・13時と12時・14時の1日2回,地球館または日本
館の展示フロアにおいて,2人の研究者がそれぞれ自身の研究内容
や展示制作に関わる話,標本資料を見ながらの解説等を延べ228
日実施した。また7月6日には,ハワイの伝統航海カヌー「ホクレ
ア」のクルーによる,ディスカバリートーク特別版「ホクレア号来
航1周年と『カフリアウ』を祝う集い」を開催した。
○科学博物館を利用した継続的な科学活動の促進を図る事業
全国の科学博物館等を利用した継続的な科学活動の促進を図るた
めに,「博物館の達人」認定,「野依科学奨励賞」表彰,「第25回
植物画コンクール」を実施した。
・「博物館の達人」認定
青少年の博物館を利用した学習を支援するために,全国の科学
系博物館を10回利用し,自然科学に関連する学習記録と感想文,
または小論文を提出した小・中学生を「博物館の達人」と認定す
る。平成20年度は,148名に対し認定書を贈呈した。
・「野依科学奨励賞」表彰
「博物館の達人」の中から,優れた小論文を提出した小・中学
生や,青少年の科学・技術への興味関心を高め,科学する心を育
てる実践活動を指導・支援した教員・科学教育指導者に対して,
ノーベル化学賞受賞者の野依良治博士の協力を得て,「野依科学
奨励賞」を授与した。
平成20年度は,小・中学生の部61点,教員・科学教育指導者の
部13点の応募があり,それぞれ8点9名,2点2名を表彰した。
・第25回植物画コンクール
植物画を描くことによって,植物のすがたを正しく観察し,植
物のもつ特性をより深く理解するとともに,植物に対して興味を
持ち,あわせて自然保護への関心を高めることを目的として開催
した。平成20年度の応募点数は,小学生の部2,847点,中学生・高
校生の部1,586点,一般の部216点で,合計4,649点であり,その中
から,文部科学大臣賞をはじめ107点の入選作品を選考し,また学
校特別表彰として2校に特別奨励賞を授与した。
○女子中高生の理系進路選択支援事業(文部科学省委託事業)
文部科学省では,平成 18 年度より女子中高生の理系進路選択を支
援するための「女子中高生の理系進路選択支援事業」を委託事業と
して実施している。本年度委託を受けた当館においては,「ルーシ
ーと私の楽しむカガクの時間@サイエンスミュージアム」と題し,
女子中高生の科学技術分野に対する興味・関心を喚起し,理系への
進路選択を支援する事業として,「植物園たんけん・バスツアー」
「神秘のナイトミュージアム」「Teatime サイエンス ~女性サイ
エンティストに聞いてみよう」「収蔵庫たんけん~秘密のコレクシ
ョン」など 7 つのイベントを実施した。
○体験的な学習支援活動の開発
身近なお菓子を題材に,地質・地層や食材などの地域の自然,棲
んでいる街並みに対する理解の広がり・深まりを目指す,4回継続の
項目別-25
中高生向けプログラム「恐竜発掘地層ケーキをつくろう!」を開発
した。このプログラムは,食を通して地域の自然を理解した後,ケ
ーキ等を用いて火山のモデルを作る実験や,地質の特徴が人々の生
活に及ぼした影響を探す街歩きを行い,最後に学んだことを表現す
る練習として,自分の企画したケーキを発表するものである。この
ほか,野外の河原における実習と博物館内での実習・解説を組み合
わせ地学的概念の向上を目指す中高生向けプログラム「めざせ砂金
ハンター ~河原の砂金はどこから来るの?~」や,自分で顕微鏡
のピントを合わせながら様々な試料を観察することで,顕微鏡を用
いて観察する楽しさや,観察の目的や試料によって顕微鏡を使い分
けることを知る「小さな世界~けんび鏡でしらべてみよう~」など
のプログラムを開発した。
後述する世代に応じたプログラム等の開発と合わせ,学習支援活
動全体を通じて,10件の体験学習プログラムの開発を行った。
体験的な学習支援活動開発件数
10件以上 7件以上
1-4
の開発
世代に応じたプログラム
団塊の世代,子どもなど,ター
ゲットとなる世代を意識したモデ
ル的なプログラムを開発し,その
世代に応じた科学リテラシーの涵
養に資する。
1-5
学校との連携強化
学校と博物館が,相互の独自性
を活かした連携を行うために,両
6件以下
20年度実績
10件
世代に応じたプログラムの開発状況
各世代におけるモデル的なプログラムの開発及び科学系博物館に
おける学習支援事業の体系化のため,「独立行政法人国立科学博物
館科学リテラシー涵養のための世代に応じたモデル的なプログラム
開発等に関する有識者会議」を開催するとともに,昨年度公表した
中間報告「『科学リテラシー涵養活動』を創る~世代に応じたプロ
グラム開発のために~」に基づき,それぞれの世代や学習目標に応
じたプログラムを開発・実施した。
一般成人を対象とした「大地と生命と水」がテーマのプログラム
は,登山や高山植物の観察を通して,植物の生育と植物が育つ土台
となる地質の両面について,水との関わりを通じて学ぶとともに,
学んだことを次世代に伝えるため,自然観察指導や博物館における
ボランティア活動に活かすことを目的に開発した。
また,中高生が博物館で継続して科学的な探究を行い,その成果
を一般に向けて発表する活動を通じて,参加者の科学リテラシーの
向上と,博物館の利用者(特に中高生)に対する科学や博物館への
興味関心を喚起する目的で開発した「中高生・アフタースクールプ
ログラム『科博で展示づくり~水~あたりまえがいちばんふし
ぎ』」では,参加した20名の中高生が夏期休暇と日曜日を中心とし
た17日間にわたり「水」についての探究学習を行い,その成果を一
般の来館者に伝えるための展示を制作して,当館に2ヶ月間展示し,
その期間中に2回,来館者の前で展示解説(ギャラリートーク)を行
う活動を行った。
その他,小学生を対象として開発した「なぞなぞカルタ」「かは
く発見物語」は「かはく・たんけん教室」において実施した。
学校との連携強化の状況
○大学との連携(国立科学博物館大学パートナーシップ)事業
平成17年度より開始した本事業は,当館の人的・物的資源ととも
項目別-26
者をつなぐ新しいシステムを研
究・開発する。
に外部資源等を積極的に活用し,大学と連携・協力して,学生の科
学リテラシーおよびサイエンスコミュニケーション能力の向上に資
することを目的とし,学生数に応じた一定の年会費を納めた「入会
大学」の学生に対して,連携プログラムを提供するものである。
20年度の入会大学数は49大学であった。
①常設展の無料入館,特別展の600円割引での観覧
学生は,所属する大学が本制度に入会している期間であれば,回
数制限無く,上野本館の常設展示と附属自然教育園,筑波実験植物
園に無料で入館(園)できるほか,年3回程度開催されている特別展
を600円引きで観覧できる。20年度の制度利用入館総数は,24,610
人であった。
②「サイエンスコミュニケータ養成実践講座」の受講料減額および
優先受入
社会のさまざまな場面において,人々と科学技術をつなぐサイエ
ンスコミュニケータを養成するプログラムであり,「サイエンスコ
ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 1(SC1) 」 「 サ イ エ ン ス コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン
2(SC2)」の2科目で構成されている。20年度のSC1受講生は,学生21
名(13大学),社会人3名の合計24名であった。入会大学学生は受
講料を減額した。
③「大学生のための自然史講座」の受講料減額および優先受入
大学生・院生(一般も可)を対象とした,日本列島の自然,自然
史について体系的に理解できる全15回の連続講座であり,入会大学
の学生は優先的に受け入れるとともに,受講料を減額した。
④「大学生のための科学技術史講座」の受講料減額および優先受入
日本のものづくりに焦点をあてた全6回の連続講座であり,入会
大学の学生は優先的に受け入れるとともに,受講料を減額した。
⑤博物館実習の受講料減額および優先受入
博物館学芸員資格の取得を目指す大学生の博物館実習生受入指導
事業について,優先的に受け入れるとともに,実習費を減額した。
○小中高等学校等との連携事業等
小・中・高校をモデルにしたスクールパートナーシップを構築す
るための連絡協議会を開催し,博物館と学校のそれぞれの特色を活
かした総合的・継続的な連携システムの構築について引き続き検討
し,科学的体験学習プログラムの開発を協力して行った。
モデル校等の要望に応じ,観察・実習の指導や出前講座,職場訪
問の受入等行った。平成20年度は,44団体について対応した。
そのほか,筑波実験植物園,附属自然教育園においても,それぞ
れの施設の特性を活かした連携を行っている。
○ティーチャーズセンターの活動
平成4年に開設し,学校など団体見学の受付,博物館を効果的に利
用するためのオリエンテーション等を行ってきたティーチャーズセ
ンターであるが,最近では同様の機能を持つ博物館も増え,先導的
なモデルとしての一定の役割を果たしたと考えられるため,平成20
年3月末をもって活動を廃止した。なお,学校と博物館の連携に関す
る先導的・モデル的事業については,国内の科学系博物館とも協働
して検討を進めている。
○文部科学省指定スーパーサイエンスハイスクール(SSH)との連携
項目別-27
◎学習支援活動として実施してきた
ティーチャーズセンターについて、
国内の各博物館等で同種の事業が定
着してきたことに鑑みモデル事業と
しての活動は終了している。
平成20年度も引き続きSSHに協力した。上野本館,筑波実験植物園
において,香川県立三本松高等学校の他,3校の生徒に対し,当館の
概要,研究活動の紹介など学習課職員や研究者による特別講義を実
施した。
○学習用標本貸出事業
理科の指導や科学クラブの活動で利用する学校,学習支援活動の
充実を図る社会教育施設などに対し,化石,岩石鉱物,貝,隕石な
どの標本セットを無料で貸出し,学校との連携強化に資した。平成
20 年度の貸出件数は,112 件であった。
○科学的体験学習プログラムの体系的開発に関する調査研究
(文部科学省委託事業)
学校の授業等で活用可能な科学的体験学習プログラムの開発を行
い,その成果を全国の学校の教員や自然科学博物館等の職員に普及
することにより,学校における体験的学習の質の向上に資すること
を目的としている。
磐梯山噴火記念館,仙台市科学館,旭山動物園,葛西臨海水族園
など全国の自然科学系博物館20館園と連携して,学習指導要領に対
応した科学的体験学習プログラム47本(小学校向け:29本,中学校
向け:18本)を最終的に開発し,ワーキンググループを中心に試行
を進めたほか,「授業に役立つ博物館を語る会」において参加者と
ともに内容や実施に向けての検討を行った。さらに,全プログラム
について「プログラムの使いやすさ」についての自己評価を行っ
た。
「授業に役立つ博物館を語る会」を5月から11月までの間,月1回
合計7回開催し,小・中・高等学校教員や博物館職員等合計246名の
参加があった。
また,本調査研究及び開発したプログラムを広く普及するため,
12月26日に「文部科学省委託事業調査研究中間報告会 『科学的体験
学習の創造』」を開催し,科学的体験学習や博物館活用の効果につい
ての基調講演,本調査研究の概要,開発プログラムの報告を行っ
た。小・中・高等学校・大学教員や教育委員会,博物館関係等180名
の参加があった。
○教員のための博物館の日
子どもたちに科学の不思議さ,楽しさ,学ぶ喜びを体験してもら
うためには,子どもたちの教育を担う教員自身が日頃から自発的に
科学を楽しみ,博物館を活用した「体験的な活動」に対し理解を深
めることが必要である。そのような機会を提供するため「教員のた
めの博物館の日」を設け,本年度は12月26日に「教員のための博物
館の日2008」を実施した。経営の効率化を求められる博物館のモデ
ルとして,企画・実施にあたり企業の協賛を得た。当日は,教員を
無料入館(常設展)とし,音声ガイド(PDA)を利用した博物館展示見学
体験,ワークシートを活用した博物館展示見学体験,「科学的体験
学習プログラムの体系的開発に関する調査研究」における開発プロ
グラムのポスター紹介及び実施, 当館の学習用貸出標本セットの紹
介,教員向けスペシャルガイドツアー等の体験活動プログラムを実
施した。215名の参加があった。
○小学校教員養成課程学生に対する科学的素養を向上させるモデル
的プログラムの開発に関する調査研究(文部科学省委託事業)
項目別-28
◎学校の授業等で活用可能な科学的
体験学習プログラムの開発、小学校
教員養成課程学生の科学的素養を向
上させるモデル的プログラムの開
発、世代に応じたモデル的なプログ
ラムの開発等、科博の知的・物的資
源や博物館ネットワークを活用し
て、先導的・モデル的なプログラム
開発が行われている。
◎博物館と学校との連携は重要な課
題であり、先導的・モデル的なプロ
グラム開発が行われているととも
に、学校と博物館の連携を強化する
「授業に役立つ博物館を語る会」
や、博物館の学習資源を広く周知す
る「教員のための博物館の日」の機
会等を通して、普及が図られてい
る。さらなる普及への取組を期待す
る。
昨年度に引き続き,小学校教員養成課程学生の科学的素養を高め
るため,博物館等外部の教育資源を効果的に活用するモデル的プロ
グラムの開発・実施,及び検証・分析・評価を行う事業を実施し
た。
本年度は特に,大学で理科を専攻としていない文系学生を対象
に,小学校教員として必要な科学的素養を身につけることを目的と
し,体験的活動を通した理科学習への興味・関心の喚起と,小学校
の理科授業を展開するために必要な知識や実験技能・探究的学習指
導等の習得を目指したモデル的プログラムの開発・実施に焦点化し
た。研究体制として調査研究委員会,ワーキンググループ,エヴァ
リュエーショングループ,コンプライアンスグループを設置,委員
の意見を集約し開発・実施・評価を行った。
モデル的プログラムとして,「小学校教員を目指す文系学生のた
めの理科講座『明日の先生へおくる 理科のコツ』」を実施した。
小学校教員を目指す文系の学生 15 名(採用内定の 4 年生)が参加し,
新学習指導要領と博物館の関係や,博物館の活用方法などを理解す
るための講座,天体観測の施設を利用した天体の講座,実験・観察
の技能を習得するための実験基礎講座,伝える能力の向上のための
模擬授業の講座などを行い,自信を持って理科を指導するために必
要な知識,技能を身に付けるとともに身近な自然や科学現象を素材
として,子ども達に教えるときに活用する視点の習得等を図った。
○教員免許状更新講習プログラム開発委託事業
(文部科学省委託事業)
平成21年度からの教員免許更新制の円滑な実施に向けた文部科学
省の「免許状更新講習プログラム開発委託事業」の委託を受けて,
理科担当教員を対象に教員免許更新制における更新講習のうち「教
科指導,生徒指導その他教育の充実に関する事項」の講習を実施し
た。
1-6
ボランティア活動の充実
入館者に対する展示等の案内,
児童・生徒などへの指導助言,日
常的な学習支援活動の実施など,
ボランティア活動の充実・質の向
上を図ることにより,入館者への
サービスの向上に努める。
ボランティア活動の取組状況
○上野本館におけるボランティアの活動状況
主にたんけん広場での青少年への指導・助言および図書・情報室
や地球館入口案内所などでレファレンスサービスを担当する体験学
習支援ボランティアと,動物・植物・地学・人類・理工の5分野で主
に一般展示室で入館者に対して展示案内や簡単な解説・学習支援活
動を行う展示学習支援ボランティアに分かれて活動を行った。
平成 20 年度は,10 月より開催の特別展「菌類の不思議 きのこと
カビと仲間たち」で,研修を受けたボランティアが展示の設営及び
撤収に協力した。教育ボランティアが特別展の設営に本格的に関わ
ったのは,今回が初めてとなる。また 12 月には,「教員のための博
物館の日 2008」に協力して,「教員のためのスペシャルガイドツア
ー」を実施し,好評を得た。平成 21 年 1 月~3 月には,試行的に外
国人ボランティア(英語を第一言語とし,日本語は十分に解しない)
を受け入れた。
・教育ボランティアの登録者数333名 (前年度333名)
・1日当たり平均活動者数 44.9名(前年度45.6名)
○筑波実験植物園におけるボランティアの活動状況
項目別-29
◎先駆的であり、安定した人員を確
保して行われている。
入館者に対する植物園案内,観察会・講座の補助,企画展の参
画,企画展期間中の案内,園内整備活動の補助,つくば市立吾妻小
学校の活動補助等の活動を行った。
・植物園ボランティアの登録数30名(前年度26名)
・1日当たり平均活動者数 2.9名(前年度3.2名)
○ボランティアの養成・研修の状況
ボランティア志望者に対し事前説明会,面接を行って適任者を選
定し,ボランティアの役割,活動の内容と方法などの登録前研修を
行った。また,現役のボランティアに対しても,ボランティアの知
識・経験・適性等に応じて充実した活動ができるように研修の充実
を図った。
・上野本館
(1)教育ボランティア研修 1回
教育ボランティアを対象に,その資質向上を目的として実施し
た。
(2)教育ボランティア志望者・教育ボランティア研修 1回
教育ボランティア及び教育ボランティア志望者を対象に,その
資質向上を目的として実施した。
(3)平成20年度教育ボランティア志望者研修 1回(4日間)
平成 20 年度新規登録者に対し,研修を実施した。
(4)森の標本箱研修 4回(4日間)
体験学習支援ボランティアを対象に,地球館3階発見の森におけ
る「森の標本箱」の利用方法について理解を深めることを目的に,
13テーマについて実施した。
(5) かはく・たんけん教室指導者研修 11回(延べ66日)
かはく・たんけん教室の指導を担当する教育ボランティアを対象
に,7テーマについて研修を行った。
(6)自然教育園勉強会 8回(延べ16日)
ボランティアの自主勉強会を支援し,資質の向上と自然教育園の
活動への理解を図った。
・筑波実験植物園
一般向けセミナーへの参加を呼びかけるとともに,研究員による
ボランティア講習会を4回実施した。また自宅学習用として,研究員
による講義を録画したDVDの貸出を行った。
(2)進行する科学研究に対する理
解の増進
2-1進行する科学研究に対する
理解の増進
科学に関する知識だけでな
く,科学研究そのものについて
の理解を増進すること。また最
新の研究成果などについても適
時・的確に展示・学習支援事業
に反映していくこと。
環境問題等の現代的課題,新た
な学術的発見など,進行中の研究
活動の成果について,パネル展示
などにより機動的に対応し,適
時・的確に普及に努める。
(展示公開及び
サービスの実施
状況)
パネル展示等の実施状況
○科博NEWS展示
社会的に話題となった事柄について,関連のある常設展示の一角
を利用して紹介する「科博NEWS展示」を実施した。
・「カエルツボカビ-その生物学と環境への影響-」
(20.2.5-4.6)
・「皇居のタヌキ その生態」 (20.7.23-8.31)
・「初公開はく製リンリン!-上野のパンダ全員集合-」
(20.12.23-21.4.5)
項目別-30
※「展示公開及びサービスの実施状
況」と合わせて評価
○私の研究-国立科学博物館の研究者紹介-
研究者一人ひとりの研究を紹介しながら,当館の研究活動を知っ
てもらうため,パネル展示を中心に地球館地下3階の「科博の活動」
コーナーで実施した。約2ヶ月で定期的に更新し,平成20年度は25人
の研究者を紹介した。
○自然と科学の情報誌「milsil(ミルシル)」
来館者だけではなく,広く国民全体に対して,自然史や科学技術
史などに関する情報を積極的に発信し,自然や科学技術に関する適
切な知識を持ち,現代社会の諸課題に対応していくための科学リテ
ラシーの涵養に資するため,自然と科学の情報誌である「milsil
(ミルシル)」(隔月発行 A4版 本文32ページ)を通巻3号~8号
まで発行した。
○「ホットニュース」
話題性の高い出来事や新たな知見等の分かりやすい解説を,当館
ホームページから全国的に発信する「ホットニュース」を13テーマ
発信した。
なお,発信した「速報:上野動物園最後のパンダ,リンリン死
亡」「皇居のタヌキ その生態」については「科博NEWS展示」で,
「ノーベル賞受賞」「謎の植物 ナンジャモンジャゴケ」はトピッ
ク展示等で取り上げるなど,科学ニュースと博物館を結びつけ,
人々が博物館を科学の知識を得る場として認識できるよう努めてい
る。
2-2 大学・研究機関等のアウ
トリーチ活動の拠点機能の充実
○発見!体験!先端研究@上野の山シリーズ
大学等研究機関における自然科学に関する研究の意義・過程・成
果を紹介する展示を「発見!体験!先端研究@上野の山シリーズ」
として開催し,拠点機能の充実を図った。
大学の研究者や大学院生が直接来館者に接し,研究の意義や過
程,成果を紹介する環境を創造し,また来館者からも,詳しく説明
してもらい興味深かった,研究者や学生の熱意が伝わってきた等好
評を得た。(再掲)
大学等研究機関との連携協力の
もとに,それらの機関のアウトリ
ーチ活動を支援し,現在進行中の
研究の意義,過程,成果について
紹介する。
(3)日本全体を視野に入れた活動
の展開
3-1 情報技術等を活用した博
物館の活動の成果の普及
情報技術を活用した多様な情
報提供や,標本の貸出などを通
じて,科学博物館への入館者だ
けでなく,広く国民全体に科学
博物館の活動の成果に触れても
らう機会を拡充すること。特に
ホームページのアクセス件数に
ついては,平成22年度に年間
館内の情報を発信するととも
に,開発したコンテンツや過去の
特別展等に関する情報を提供する
など,ホームページ等の充実によ
り,平成22年度に年間200万
件のホームページアクセス件数を
達成し,広く日本全体に科学博物
館の活動の成果を発信する。
◎人々の科学リテラシー向上に役立
つと考える。
大学等と連携した,アウトリーチ活動の支援状況
日本全体を視野
に入れた活動の
状況
ホームページ等の充実状況
ホームページの基幹部分のリニューアルを行った。トップページ
を開くと開催中の特別展・企画展やホームページ内のメニューが一
目で分かるように,スライドして表示する仕組みを導入した。ま
た,従来のページ構成を全面的に見直して再構築するとともに,新
規コンテンツとしてプレスリリースの発信やホームページ上からの
写真貸出し,イベント申し込み機能を追加するなど,ユーザー側及
び管理側双方にとって使いやすく,利便性の高いホームページとな
った。筑波実験植物園,自然教育園においては,その時季にしか見
られない植物の情報や,紅葉,桜の開花情報等を発信するなど,常
項目別-31
S
◎目的とする科学普及、学習効果の
点から考えればホームページアクセ
ス件数はもっと重視されるべきだ
し、活用すべきであろう。ホームペ
ージリニューアルによるアクセス件
数の大幅な増は、ナショナルセンタ
ーとして国内の他の科学系博物館の
モデルとなるものであり、非常に高
く評価できる。
200万件を達成することを目
標とし,科学博物館の活動の成
果に関する情報を発信すること
に努めること。
に変化するコンテンツの発信に努めた。
・トップページのアクセス数 2,647,757件
(前年度 1,954,352件)
・総アクセス数 約3億9,800万件
(前年度 約3億4,300万件)
携帯サイト
・トップページのアクセス数 約26万件
・総アクセス数 約145万件
トップページへのアクセス数
2,647,757件
(目標に対し 132.4%達成)
◎必要な情報にトップページからわ
かりやすく誘導する仕組みの導入
や、トップページのビジュアル性の
改善、イベント申込機能の追加な
ど、ユーザー視点に立ったリニュー
アルが行われている。
◎総アクセス数の増加は驚異的であ
る。
※22年度評価基準
A:200万件以上
B:180万件以上200万件未満
C:180万件未満
3-2地域博物館連携事業の実施
地域博物館連携事業実施状況
標本の貸出や,巡回展などを通
じて,科学博物館の知的・人的・
物的資源を広く日本全体に還元す
る。
また他の科学系博物館に対して
専門的な助言などを行うととも
に,科学系博物館ネットワークの
中核的な役割を担い,全国の科学
系博物館の活性化に貢献する。
○全国科学博物館協議会への協力
他の科学系博物館からの求めに応じて,研究や展示等の博物館活
動に関する専門的な助言,標本資料の貸出を行うとともに,全科協
の管理運営及び事業の実施に対する協力関係の強化を図り,その充
実に努めた。
◎トップページへのアクセス数の増
加は、リニューアルによりサイトの
利便性が増したこととともに、ポス
ター、ちらしへのURLの積極的な明記
等によるものと考えられる。
・全科協事業への協力
全科協の理事長館として,学芸員に対する研修事業等の共催事
業や巡回展を積極的に実施するとともに,全科協事業として研究
発表大会や機関誌「全科協ニュース」の発行等を推進し,各博物
館の活性化に貢献した。主な研修事業と巡回展は次のとおり。
◎ホームページのリニューアルを行
い、その充実を図り、トップページ
のアクセス数は昨年度比30%強伸び
ている。
研修事業
「海外科学系博物館視察研修」 参加館10館,参加者17名
「海外先進施設調査」 参加者5名
「学芸員専門研修アドバンスト・コース」 参加者12名
「研究発表大会」 参加者72名(58館)
巡回展
「昆虫ワールド」
1館
○地域博物館等と連携したイベント等の企画・実施
全国の科学系博物館の活性化に貢献するため,連携したイベント
等を企画・実施した。
・科博コラボ・ミュージアム
全国各地の博物館等教育施設と連携して,その地域の自然や文
化,産業に関連した講演会や体験教室,展示などの博物館活動
を,トヨタ自動車株式会社の協賛を得て,計5地区で実施した。
「絶滅のおそれのある植物」
科博コラボ・ミュージアムinひとはく
(20.7.1-7.13 兵庫県立人と自然の博物館)
「恐竜とその足元にいた動物たち-手取層群の最新研究から-」
科博コラボ・ミュージアムin白山・荘川
項目別-32
◎科博コラボ・ミュージアムは効果
的である。
(20.9.9-10.1 国立科学博物館)
(20.10.4-10.5 荘川町総合センター)
(20.10.11-11.30 白山市立鶴来博物館)
「知られざるイカのひみつ!」科博コラボ・ミュージアムin鳥取
(20.11.15-11.30 鳥取県立博物館)
○「国際博物館の日」におけるイベント等の実施
「国際博物館の日」(5月18日)に上野本館の常設展示,筑波実験
植物園,附属自然教育園の無料公開を実施したほか,記念行事とし
て,「上野公園あっちこっちクイズ」,特別展「ダーウィン展」特
別講演「女性研究者が語るダーウィン」,博物館・動物園セミナー
「上野の山でゾウめぐり」を実施した。「上野の山でゾウめぐり」
は,昨年度に引き続き,上野動物園,東京国立博物館との3館連携事
業である。今回は「ゾウ」を切り口に各館で様々なアプローチを行
った。
3-3
戦略的な広報事業の展開
これまでの広報事業を見直し,
科学博物館の知的・人的・物的資
源を活用しつつ,メディアや企業
等と効果的に連携し,館全体の広
報事業を戦略的に展開する。
広報事業の実施状況
○直接広報の充実
当館の展示活動,学習支援活動,研究活動について広く人々の理
解を得るために,ポスター及びリーフレット類の作成・配布を行う
とともに,当館の各種行事の広報のため,無料情報誌を発行し配布
した。
また,当館の社会的認知度を高めるため,イベントや講演会等を
積極的に実施した。
・国立科学博物館イベント情報「kahaku event」の発行
特別展等に関する情報,館の催事,常設展示の紹介を掲載。館
内で無料配布するとともに,ホームページへも掲載した。
・メールマガジンの発信
毎月,当館展示室の写真等を用いたオリジナル壁紙(カレンダ
ー付)を配信,登録者8,000人記念のプレゼント企画等も実施し
た。
平成20年度末の登録者数 8,901名(前年度 7,096名)
・大人のための総合講座「上野学のススメ」の実施
戦略的広報の一環として,大人のより広い興味・関心に応えら
れるよう,テーマを自然科学に限らず,歴史,文化,産業などに
広げ,日本館講堂において実施した。計10回(2部制)の講演会に
は約300名の申込があり,282名が参加した。また,関連事業とし
て「上野ウォーク」を1回実施し,30名の参加があった。
・「科博・干支シリーズ2009 「丑」」の実施
新年を祝いお正月気分を盛り上げるイベントを実施することに
より,大人を中心とする入館者増を図るとともに,当館ならでは
の新春恒例の名物イベント創出を戦略的広報の一環として実施し
た。平成20年度はウシに関わる展示(21.1.2-1.18)と講演会のほ
か,関連イベントとして,ワークショップ「ニューイヤー ミュ
ージアム・ラリー2009-丑-」,ミュージアムショップやレスト
ランと連携してのお年玉企画を実施した。
項目別-33
◎広報活動は良好である。
○間接広報の充実
報道機関に対して積極的に情報提供を行った。
・「これからの科博」の送付
今後の館の催しとその趣旨,主な動き等をまとめた「これから
の科博」をマスコミの論説委員等に毎月送付した。
・記者説明会の実施
展覧会,研究成果の発表等に関して積極的にプレスリリースを
行うとともに,記者内覧会等を実施して,展示内容の周知に努
め,記事掲載の依頼を行った。
・館内での撮影対応,画像提供
TV制作会社や出版社からの館内撮影等依頼に対して,積極的に
館の名称や展示の紹介を行うよう働きかけた。平成20年度の撮影
等対応,画像提供は461件であった。
○企業等との連携の推進・充実
館の諸活動に対し社会全体からの幅広い支援及び支持を得るため
に開始した賛助会員制度では,随時会員を募集し,平成20年度末に
おける加入件数は,126件であった。賛助会費は地域博物館等と連携
したイベント「科博コラボ・ミュージアム」及び,青少年の自然科
学等への興味・関心の向上をねらいとした「中高生・アフタースク
ールプログラム『科博で展示づくり~水~あたりまえがいちばんふ
しぎ』」の経費として活用した。
企業のイベント等への連携・協力も積極的に行った。三菱商事
(株)と当館主催の「勤労障がい者向け見学会」では,土曜日の閉館
後に常設展示を見学する機会を2回設けたほか,(独)新エネルギー・
産業総合開発機構との主催で開催した「親子で学ぼう!!」イベン
トでは,科学技術について親子で学ぶ機会を提供し,家庭内におけ
る環境意識を醸成するきっかけとなるよう,子ども向けには科学工
作,保護者向けには企業の研究員による講演会を行うイベントを2回
実施した。
○地域との連携の推進・充実
上野本館においては,上野地区観光まちづくり推進会議や上野の
れん会等の地域団体に引き続き参画し,地域のイベント等への連
携・協力を図った。
東京都,(財)東京都歴史文化財団等が主催する「TOKYOミュージッ
クマラソン音楽祭in上野」では,東京文化会館の他上野公園の各所
で多様なジャンルのライブ・コンサートが行われ,当館において
は,サンクンガーデンにて4回のミニコンサートを実施したほか,
(財)台東区芸術文化財団主催の「邦楽図鑑」,上野の山文化ゾーン
連絡協議会主催の「上野の山文化ゾーンフェスティバル」等に引き
続き協力した。
筑波実験植物園においても,つくば市等が主催する「つくばちび
っ子博士2008事業」「つくば科学フェスティバル2008」等に引き続
き参加し,地域の特性を活かした連携の推進に努めた。
(4)知の社会還元を担う人材の育
成
4-1 サイエンスコミュニケー
タ養成プログラムの開発・実施
科学についてわかりやすく国
国民の科学や科学技術に対する
知の社会還元を
担う人材育成の
状況
サイエンスコミュニケータ養成プログラム実施状況
科学と一般社会をつなぐ役割を担うサイエンスコミュニケータを
養成する「国立科学博物館サイエンスコミュニケータ養成実践講
項目別-34
◎サイエンスコミュニケータ養成実
践講座の実施とともに、認定者等の
活動の機会の提供が図られている。
民に伝え,研究者と国民の間の
コミュニケーションを促進させ
るような,知の社会還元を担う
人材の育成システムを開発・実
施し,人材の養成に寄与するこ
と。
座」を開講し,「サイエンスコミュニケーション1(SC1)」「サイエ
ンスコミュニケーション2(SC2)」のプログラムを実施した。
SC1は「国立科学博物館大学パートナーシップ」入会大学の大学院
生を中心に24名が受講・修了した。平成20年度のSC1修了者11名と19
年度のSC1修了者1名の合計12名がSC2を受講・修了し,「国立科学博
物館認定サイエンスコミュニケータ」と認定された。
なお,SC1については,19年度より,筑波大学大学院共通科目(生
命環境科学研究科)として単位認定されているが,20年度において
は,筑波大学大学院生の3名の単位が,4単位として認定された。
SC1,SC2の講座の他,米国スミソニアン機構国立アメリカ歴史博
物館の元上席学芸員・科学技術史研究部長のBernard Finn氏を招
き,特別公開講演「サイエンスコミュニケーションと博物館の役
割」を開催するなど活動を展開した。また,「サイエンス・カフェ
モグラの穴からこんにちは ~世界一のモグラ研究者と語ろう~」
は第3期「国立科学博物館認定サイエンスコミュニケータ」が企画・
運営を行ったほか,当館で開催した野依科学奨励賞交流会のコーデ
ィネーターやノーベル賞イベントのファシリテーターを務めるな
ど,1期から3期までの認定者・修了者たちは講座修了後も多岐にわ
たって活動している。
理解度・意識の向上のために,科
学技術と社会との架け橋となる
「サイエンスコミュニケータ」の
養成プログラムを開発し,知の社
会還元を図る人材の養成に資す
る。
博物館の専門的職員である学芸員の資格取得を目指す大学生・大
学院生に対し,学芸員としての資質を体験的に養わせることを目的
として,博物館実習生の受け入れ事業を行った。
平成20年度は,新宿分館等において主に資料収集・保管及び調
査・研究活動の体験を中心に行う実習,上野本館において主に学習
支援活動の体験を中心的に行う実習の2コースを実施した。また,こ
れらの実習のほか,「ニタリクジラ発掘体験」として,2007年に千
葉県袖ヶ浦市に漂着し,骨格標本作製のために埋設していたニタリ
クジラを発掘し,クリーニングすることで,ヒゲクジラの大きさ,
骨格の特徴などを体感しながら博物館の調査研究や標本作製につい
ての理解を深める特別講座を実施するなど,館の資源を効果的に活
用し,指導を行った。
科学博物館の知的・人的・物的
資源等を活かした自然科学系学芸
員実習生を中心とした受入に重点
化し,より専門的な指導を実施す
る。
5-1快適な博物館環境の提供
展示や学習支援事業等のサー
ビスを提供する場として,多様
な入館者へのサービス向上とい
う視点から,快適な博物館環境
を入館者に提供すること。
多様な言語への対応,アメニテ
ィの充実,ユニバーサルデザイン
の導入推進など,入館者本位の快
適な環境整備を進める。博物館環
境に関して,高い水準の満足度を
維持するよう努める。
◎サイエンスコミュニケータの養成
に取り組んでいる。修了者の活動の
場をつくるなど、実践的側面での支
援も行っている。
博物館実習生の指導状況
4-2 博物館実習生に対する専
門的指導への重点化
(5)快適な博物館環境の提供
A
◎博物館実習や大学との連携事業に
よる人材育成は、専任スタッフを常
置できない現状ではなかなか困難で
あるが、科研費などのプロジェクト
チーム構成に人材育成目的を加味
し、OJT方式で人材育成を考えるのも
ひとつの方法として真剣に考えるべ
きではないか。
(展示公開及び
サービスの実施
状況)
博物館環境の整備状況
来館者満足度調査の結果等を踏まえ,快適な博物館環境の提供の
観点から,設備,サービスの充実を図った。
○アメニティーの充実
日本館地下の総合案内所の改修,企画展案内板,「本日の催し」
案内掲示板の新設など来館者にとってより使いやすい設備,分かり
やすい案内の充実に努めた。また,夏期に屋外臨時売店を設置し,
利用者の利便向上を図った。
○無料入館,開館日の拡大等
みどりの日は,筑波実験植物園及び附属自然教育園において,国
際博物館の日,文化の日には全施設(特別展を除く)において,全
入館者を対象に無料入館(園)を行うとともに,高校生以下,障害
者,65歳以上の高齢者等については常時無料入館を実施している。
項目別-35
※「展示公開及びサービスの実施状
況」と合わせて評価
◎極めて良好である。
上野本館においては,春休み等学校の長期休業等にあわせ,通常
休館日である月曜日と,正月2~4日に臨時開館したほか,ゴールデ
ンウィーク,夏休み期間の特に混雑する時期に,開館時間を1時間延
長した。筑波実験植物園,附属自然教育園においても,それぞれの
施設の特性に合わせ,臨時開館,開館時間の延長を実施した。
○案内用リーフレット等の充実
上野本館においては,日本語・英語・中国語・ハングルによる全館
案内用リーフレットを制作し,配布するとともに,日本館展示のコ
ンセプトをまとめた冊子「日本列島の自然と私たち」の英語版を制
作した。また,来館者から展示場所等についての質問が多い展示物
を紹介するリーフレット「おたずねの多い展示30」を作成・配布し
た。筑波実験植物園においては,植物園において開催する企画展の
ほか,開園25周年を記念した事業を宣伝するポスター・チラシを作
成・配布するとともに,ガイドブックの改訂,コンセプトパンフレ
ットの作成・配布を行った。附属自然教育園においても,案内用リ
ーフレット等を作成,配布したほか,園の利用促進を図るため,園
内の動植物に関するチラシ等を作成・配布した。
項目別-36
◎項目別評価<業務の効率化に関する事項>
(参考)
中期目標の各項目
業務運営の効率化に関する事項
中期計画の各項目
指標又は
評価項目
A
評価基準※1
B
C
指標又は評価項目に係る実績
評定
業務運営の効率化に関する目標を
達成するためとるべき措置
A
質の高いサービスの提供を目
指し,博物館の運営を適宜見直
し,業務運営の効率化を図るこ
と。
自己評価,外部評価及び来館
者による評価などを通じた事業
の改善,人事・組織の見直しな
どを行い,科学博物館の運営の
改善と効率化を図ること。
また,財源の多様化を図ると
ともに,運営費交付金を充当し
て行う業務については,国にお
いて実施されている行政コスト
の効率化を踏まえること。ま
た,退職手当及び特殊業務経費
を除き,一般管理費については
平成17年度と比して5年間で
15%以上,業務経費について
は平成17年度と比して5年間
で5%以上の削減を図ること。
なお,人件費については,「行
政改革の重要方針(平成17年
12月24日閣議決定)」を踏
まえ,国家公務員に準じた人件
費削減の取組を行うとともに,
役職員の給与に関し,国家公務
員の給与構造改革を踏まえた給
与体系の見直しに取り組むこ
と。
1
開
機動的で柔軟な業務運営の展
限られた資源を効率的に活用す
るために,トップマネージメント
による機動的で柔軟な業務運営を
行う。
また,業務運営については,利
用者の満足度やニーズの把握,外
部有識者による評価などを積極的
に行い,その結果を業務の改善に
反映させ,質の高いサービスの提
に努める。
業務運営・組織
の状況
○経営委員会の実施
企業経営の経験者等の外部有識者と,館長,理事,監事で構成さ
れる経営委員会を2ヶ月に1回程度の頻度で開催し,経営の状況等に
ついて検討を行い,業務運営の質的向上を図った。
○来館者満足度調査等の実施
どのような客層が来ているのか,また個々のサービスについてど
のくらい満足しているのかを調べるために,博物館の入館者を対象
として満足度調査を実施した。20年度は,10月の企画展開催期間中
に実施し,経年変化を追うとともに,企画展の開催によりどのよう
な変容がみられるかについて検証を行い,業務の改善を図ることと
した。
また,人々が休日等の文化・学習・娯楽活動において,当館を含
めた博物館をどのように活用している(活用していない)のか実態を
明らかにするため,インターネット調査を実施した。年齢,性別,
家族構成,博物館美術館の利用頻度・期待するもの,当館のイメー
ジ等に加え,科学に対する関心度,自由な時間の活動状況,興味・
関心のある分野といったライフスタイルについて調査した。
○研究活動に関する外部評価の実施
当館の研究活動等の強化及び効率的推進を図るため,外部評価委
員会を設置して,研究活動に関する外部評価を実施した。評価結果
については,平成21年3月に『外部評価委員会報告-国立科学博物
館の研究活動』としてとりまとめた。
効率的な組織への改編
効果的・効率的な業務運営や分
野横断的な研究などを実現するた
◎組織の見直しを実施しし、意欲的
な業務の効率化を図っている点は評
価される。ただ、これらの経営努力
と博物館の本来の目標との関係にず
れがないかを確認する作業は常に必
要であろう。
業務運営の状況
なお,これまで経営委員会での議論や満足度調査からの不満要因
の分析結果等を反映して,平成20年度は,ホームページのリニュー
アル,当日開催のイベントを一元的に案内する掲示板「本日の催
し」の設置,来館者から展示場所等についてよく質問のある展示物
を案内するパンフレット「おたずねの多い展示30」の作成・配付,
GWやお盆の特に混雑する期間に開館時間の延長を行うなど,質の高
いサービスの提供を目指して業務運営の改善を行った。
2
留意事項等
組織の状況
調査研究と標本資料収集・保管,展示・学習支援活動を一体的に
実施しさらなる成果をあげるため,また,組織全体及び職員の潜在
項目別-37
A
◎来館者調査等による来館者層の把
握や不満要因分析、新規顧客層の拡
大に向けた検討が行われ、サービス
の質の向上に活用されている。
◎経営委員会による質の向上、来館
者満足度調査で開館時間延長、パン
フレットの作成等、マーケットリサ
ーチに留まらず具体化している。
めに,研究組織を含めた組織体制
の見直しを図る。
また,各種の研修等の能力開発
制度の充実を図るとともに,個人
の業績を多様な観点から評価し,
職員の勤労意欲の向上を図るため
に,目標管理制度などを段階的に
導入し,職員の専門性の向上を促
す。
3
経費の削減と財源の多様化
経費の削減については,業務改
善や外部委託等の推進により縮減
を図り,退職手当及び特殊業務経
費を除き,一般管理費について
は,平成17年度と比して5年間
で15%以上,業務経費について
は平成17年度と比して5年間で
5%以上の削減を図る。
また,関係機関及び民間企業等
からの外部資金の獲得や自己収入
の増加に積極的に努め,財源の多
様化を図る。
経費の削減と財
源の多様化の状
況
力を引き出すために効果的な組織の改編について検討を行った。
また,人事評価の第 2 次試行について一般職職員を対象とし,第 1
次試行の結果を踏まえ実施に向けての検討を行った。
◎限られた人的資源に対応した効果
的な組織の在り方等について検討が
行われている。展示公開、学習支援
活動、広報活動等の一体的な推進に
向けた組織の見直しが期待される。
経費の削減と財源の多様化の状況
◎削減率は中期計画を達成する見込
みで推移している。
○経費の削減による効率的な運営
機械警備システムについて,これまで単年度で行っていた契約を
複数年度に切り換えたことにより,事務の効率化を図るだけでなく
一年あたりの契約金額を節減することができた。これにより今後3年
間で約300万円の節減が見込まれる。この他,古紙のリサイクルにつ
いて,回収方法を変更したことにより,支出がなくなり収入が発生
するようになったなど,契約等の見直しによる経費の節減に努め
た。
A
◎事務の効率化を図り契約の見直し
財源の確保に努めている。
○財源の多様化
引き続き積極的に外部資金を受け入れるとともに,施設の一時使
用についてホームページを用いて利用を促進し,テレビ番組や雑誌
の撮影などによる施設利用料の増を図るなど,多様な財源の確保に
努めた。
一般管理費削減率(対17年度)
20年度実績
9.96%
(20年度
(19年度
(18年度
(17年度
728,643千円)
723,517千円)
747,117千円)
809,233千円)
(20年度
(19年度
(18年度
(17年度
2,208,249千円)
2,217,384千円)
2,242,824千円)
2,395,692千円)
業務経費削減率(対17年度)
20年度実績
7.82%
※22年度評価基準
一般管理経費削減率
A:15%以上
B:10.5%以上15%未満
C:10.5%未満
業務経費削減率
A:5%以上
B:3.5%以上5%未満
C:3.5%未満
◎順調に推移している。
項目別-38
◎項目別評価<財務内容の改善に関する事項>
(参考)
中期目標の各項目
財務内容の改善に関する事項
中期計画の各項目
指標又は
評価項目
A
評価基準※1
B
C
指標又は評価項目に係る実績
評定
財務に関する事項等
A
税制措置も活用した寄付金や
自己収入の確保,予算の効率的
な執行等に努め,適切な内容の
実現を図ること。
1 自己収入の増加
積極的に外部資金,施設使用
料等,自己収入の増加に努める
こと。
また,自己収入額の取り扱い
においては,各事業年度に計画
的な収支計画を作成し,当該収
支計画による運営に努めるこ
と。
2 経費の節減
管理業務を中心に一層の節減
を行うとともに,効率的な施設
運営を行うこと等により,経費
の節減を図ること。
Ⅲ 予 算(人件費 の見積 もりを 含
む。),収支計画及び資金計画
収入面に関しては,実績を勘案
しつつ,外部資金等を積極的に導
入することにより,計画的な収支
計画による運営を図る。
また,管理業務の効率化を進め
る観点から,各事業年度におい
て,適切な効率化を見込んだ予算
による運営に努める。
1 予算(中期計画の予算)
別紙のとおり。
2 収支計画
別紙のとおり。
3 資金計画
別紙のとおり。
Ⅳ 短期借入金の限度額
・短期借入金の限度額:5億円
・想定される理由
運営費交付金の受入に遅延が生
じた場合である。
Ⅴ 重要な財産の処分等に関する計
画
重要な財産を譲渡,処分する計
画はない。
Ⅵ 剰余金の使途
決算において剰余金が発生した
時は,次の購入等に充てる。
1 標本の購入
2 調査研究の充実
3 企画展等の追加実施
4 利用者サービス,情報提供の
質的向上
外部資金等の積
極的導入と管理
業務の効率化
予算等
○外部資金等の積極的導入
引き続き積極的に外部資金を受け入れるとともに,施設の一時使
用についてホームページを用いて利用を促進し,テレビ番組や雑誌
の撮影などによる施設利用料の増を図るなど,多様な財源の確保に
努めた。また,入場料収入の増大に向けた定量的な目標を策定し
た。
A
留意事項等
◎努力は確実に成果として現れてい
るが、仕事の高度化、多様化に比し
て人的補充は少なく、十分な労働環
境が用意されているか心配である。
配慮すべき課題である。
◎内部監査、内部統制が実施されチ
ェックを行うなど財務体質は健全で
ある。
◎外部資金等の取組が積極的に行わ
れている。
20年度外部資金受入実績
・受託研究
89,509千円
・寄附金
36,395千円
・科学研究費補助金(直接経費・間接経費含む) 165,730千円
○経費の削減
機械警備システムについて,これまで単年度で行っていた契約を
複数年度に切り換えたことにより,事務の効率化を図るだけでなく
一年あたりの契約金額を節減することができた。これにより今後3
年間で約300万円の節減が見込まれる。この他,古紙のリサイクル
について,回収方法を変更したことにより,支出がなくなり収入が
発生するようになったなど,契約等の見直しによる経費の節減に努
めた。
◎契約方法の見直しにより、事務の
効率化、経費の節減化が図られてい
る。
○官民競争入札等の活用
上野本館の施設の管理運営業務への民間競争入札について,対象
業務の範囲,実施予定時期等について検討を行い,平成21年度に民
間競争入札を実施し,平成22年4月から落札業者による業務を開始
することとしている。
◎整理合理化計画に対応して、施設
管理・運営業務(展示業務の企画を
除く。)について、平成21年度に民
間競争入札を実施することし、22年
度より業務委託する事を決定してい
る。
○契約の適正化
内部監査体制の充実のために,平成20年4月より,直接契約手続
きに携わらない監査業務を専門に行う担当を配置し,競争性が保た
れているか,随意契約の適用が適切であるかなど,個々の契約につ
いてチェックを行っている。
規程関係については,「独立行政法人における契約の適正化につ
いて」(平成20年11月14日付 総務省行政管理局長)の要請を受
け,随意契約に係る基準を明確にすべく会計規程の改正を行うな
ど,契約の適正化に努めた。
項目別-39
◎国に準拠した規程に改正するな
ど、契約の適正化に向けた取組が行
われている。
○随意契約見直し計画の進捗状況
「随意契約見直し計画」において競争性のある契約に移行するこ
ととなっていた契約案件については,全て競争性のある契約に移行
している。また,平成20年度契約案件より,可能な案件については
複数年度契約への移行,入札情報のwebにおける提供など,見直し
計画の達成に向けた具体的な取組を行った。
○一者応札について
専門性が高い調達に関しては応札する業者が限られてくるため,
結果として一者のみの応札となるケースがあるが,より多くの業者
に情報が提供できるよう,入札情報を当館ホームページ上で公表す
るだけでなく,文部科学省の入札情報のページからも当該情報が得
られるようにするなどして,応札者拡大に努めている。
○資産の活用状況
収蔵庫の建設候補地であった霞ヶ浦地区については処分すること
を決定した。
○利益剰余金・繰越欠損金
運営費交付金の収益化基準について,費用進行基準のみの適用か
ら業務達成基準,期間進行基準及び費用進行基準の併用に移行した
ことに伴い,節減努力による利益剰余が発生している。当該利益剰
余から本中期目標期間に自己収入で購入した固定資産の減価償却費
相当分を差し引いた額が,当期総利益として計上されている。
○関連公益法人との関係
関連公益法人である財団法人科学博物館後援会との関係は,主と
して独法から店舗用地を賃貸しているものである。財団法人野外自
然博物館後援会との関係についても,主として店舗用地を賃貸して
いるものである。独法からそれぞれの関連公益法人への出えんまた
は出資は行われていない。また,関連公益法人との随意契約は行っ
ていない。
○監査の状況
新たに監査業務を専門とする担当を配置し,内部監査体制の充実
を図り,競争性が保たれているかなど,個々の契約についてのチェ
ックを行っている。
監事監査については,監事監査規程及び監査実施基準を定めて実
施されているとともに,独立監査人による監査として,新日本監査
法人による監査が実施され,適切に監査が行われている。
年間契約案件の契約手続きを行うにあたっては,契約予定案件に
ついて事前に監事がチェックを行うほか,期中に発生する契約につ
いても行って金額以上の案件については事後にチェックを行うな
ど,入札・契約の適正な実施についてのチェックを行っている。
○内部統制体制の状況
「独立行政法人国立科学博物館監事監査規程」「独立行政法人国
立科学博物館監事監査実施基準」に基づき,監事による業務・会計
の監査を実施した。
項目別-40
◎見直し計画の達成に向けた取組が
適切に行われている。21年度も引き
続き取組が行われることを期待す
る。
◎一者応札について、応札者拡大に
向けた取組みを行っている。
◎霞ヶ浦地区については、収蔵庫と
して有効活用を図ることが困難なた
め、整理合理化計画の趣旨に則り、
処分が決定されている。
◎運営費交付金債務の残高について
は、補正予算の成立に伴う計画変更
によるものや、その性質上年度をま
たぐような事業等にあてるものが中
心である。20年度については、中期
計画の達成に関して影響は見られな
いが、早期に適切に執行することが
必要である。
◎関連公益法人への出資等は行われ
ておらず、随意契約も行われていな
い。
◎監事による個々の契約についての
チェックは適切に行われている。
◎監査に係る規程等に基づき監事監
査は適正に行われている。また、内
また,「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライ
ン」(平成19年2月15日文部科学大臣決定)の趣旨を踏まえ策定し
た「独立行政法人国立科学博物館における公的研究費の不正防止計
画」に基づき,公的研究費の管理責任体制の整備や,納品検収の徹
底など,公的研究費の適正な運営及び管理に努めた。
さらに,新たに監査業務を専門とする担当を配置し,内部監査体
制の充実を図り,競争性が保たれているかなど個々の契約について
のチェックを行っている。
短期借入金
短期借入金はなかった。
重要な財産の処分等
重要な財産の処分等はなかった。
項目別-41
部統制のために構築している体制と
して、契約行為に携わらない監査担
当を配置し、個々の契約についての
チェックが行われている。
◎項目別評価<その他業務運営に関する事項>
(参考)
中期目標の各項目
中期計画の各項目
その他業務運営に関する重要事
項
その他業務運営に関する事項
1 施設・設備の整備にあたっ
ては,長期的な展望に立って推
進するものとする。
1
2 人事に関する計画の策定・
実施により,適切な内部管理業
務の遂行を図ること。また,調
査研究事業等において大学等と
の連携を促進し,より一層の成
果を上げる観点から,非公務の
メリットを活かした制度の活用
を図ること。
2
指標又は
評価項目
A
評価基準※1
B
C
指標又は評価項目に係る実績
評定
留意事項等
A
施設・設備に関する計画
別紙のとおり
人事に関する計画・方針
施設・設備の状
況
人事管理の状況
施設・設備の整備状況
補正予算が成立したことを受け,筑波地区の研究管理棟の耐震改
修及び収蔵庫の建設に向けて設計に着手した。
人事管理の状況
研修等を通じて,職員の意識向
上を図るとともに,人事に関する
計画の策定・実施により,適切な
内部管理業務を遂行する。
職員の意識,専門性の向上を図るために,館として職員研修を実
施するとともに,外部の研修に職員を積極的に派遣し,その資質の
向上を図った。
館内研修
7件(延べ参加者数 82名)
また,調査研究事業等において
大学等との連携を促進し,より一
層の成果を上げる観点から,任期
付研究員の導入など非公務員のメ
リットを活かした制度を活用す
る。
外部研修
8件(延べ参加者数 12名)
人件費については,「行政改革
の重要方針(平成17年12月24日閣
議決定)」を踏まえ,退職手当,
福利厚生費(法定福利費及び法定
外福利費),及び今後の人事院勧
告を踏まえた給与改定分を除き,
平成17年度と比して5年間で5%以
上の削減を図る。
・人員に係る指標
常勤職員については,その職員
数の抑制を図る。
(参考1)
期初の常勤職員数146人
期末の常勤職員数の見込み146人
(参考2)
中期目標期間中の人件費総額
A
◎収蔵庫の新設は、年来の希望が果
たされた思いがするが、長期的展望
を持つとともに、研究環境の改善に
引き続き努力されたい。
非公務員型のメリットを活かした制度として,任期制を導入して
おり,この制度を活用して任期付職員1名を雇用している。
国家公務員の給与構造改革を踏まえ,地域手当の支給割合につい
て改定を行い,東京地区16%,筑波地区8%とした。
人件費については,退職手当,福利厚生費(法定福利費及び法定
外福利費)および今後の人事院勧告を踏まえた給与改定分を除き,
平成17年度と比して10.6%削減した。福利厚生費について,レクリ
エーション経費はなく,法定外福利費として,役職員対象のインフル
エンザ予防接種費用の補助,定期健康診断,永年勤続表彰及び定年
退職者等表彰に係るものがある。
国家公務員との給与水準(年額)の比較指標について,事務・技術
職員が100.2となっているのは,当館の職員は東京23区及び茨城県つ
くば市にのみ在勤しており,それぞれ地域手当が支給されているこ
とから,地域手当非支給地勤務者も含まれる国家公務員の行政職
(一)俸給表適用者と比較すると,地域手当分が影響して100を上回っ
ていると思われる。なお,在勤地域を勘案した比較指標は89.5と100
を大きく下回ることとなり,また,俸給表,諸手当等の給与体系は
国家公務員に準拠しており,給与水準は適切であると考える。
項目別-42
A
※22年度評価基準
A:5%以上
B:3.5%以上5%未満
C:3.5%未満
◎人件費は17年度比10.6%の削減で
あり、中期計画を達成する見込みで
推移している。
◎人件費においては中期計画の削減
率を既に達成している。給与水準に
おいては、在勤地域を勘案した比較
指標は、大幅に下回っており適切と
いえる。
◎法定外福利費については特段問題
なしとされた
6,106百万円
◎引き続き作業環境の改善に努力さ
れたい。
ただし,上記の額は,常勤の役
員報酬並びに職員基本給,職員諸
手当,超過勤務手当,休職者給与
及び国際機関派遣職員給与に相当
する範囲の費用である。
※1:評価基準の設定に当たっては,おおよそ
A:当該年度に実施すべき中期計画の達成度が100%以上
B:当該年度に実施すべき中期計画の達成度が70%以上
C:当該年度に実施すべき中期計画の達成度が70%未満を目安として設定する。
<留意事項等記載事項例>
・「指標又は評価項目」に該当しないが優れた成果が得られたもの,力を入れたもの
・実績が好ましくない場合の理由
・改善すべき事項
・海外の状況について参考となるものがある場合には付記
・各委員からの主なコメントを◎で付記
項目別-43