Information Knowledge Database. Title 乳頭部 - 東京女子医科大学

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乳頭部癌におけるX線学的臨床病理学的研究 : 胆管
X線像と癌占居部位・浸潤範囲ならびに予後を中心とし
た検討
安田, 秀喜
東京女子医科大学雑誌, 51(12):2049-2057, 1981
http://hdl.handle.net/10470/4581
Twinkle:Tokyo Women's Medical University - Information & Knowledge Database.
http://ir.twmu.ac.jp/dspace/
331
(講論57第購56筆錆)
特別掲載
乳頭部癌におけるx線学的臨床病理学的研究
胆管X線像と癌占居部位・浸潤範囲
ならびに予後を中心とした検討
東京女子医科大学消化器外科学教室(主任:遠藤光夫教授,.
安
田
秀
w導
高田忠敬助教授)
喜..
ヤスダ ヒデキ
(受付 昭和56年10月2日)
R・di・1・9茸・・1・ηd q量轟i・・P・・h61・gi・・1.S¢ゆ・n
Carcinoma of Duodenal Papilla.
.Rideki YASUDA
Institut弔of.13a5troenterology, TokyoΨρmen’s Me尋ical College
P士esent paper is a radiological and glinicopathological study.on ca士dnoma of dhodehal.pa1)111a using 48
・e3ect・d・pr・im・n・eval・・ti・g th・・19・i丘cance・fth・・ahg・.・f・ance・・ur ipva・i・P・n…vival r・tβ・
The m・te「i・1s wr「e.チ8 r蓼・e・・f ca「ciρ・m・・f.d・o尋enal p・pill・?pe「ated・t In・ζit・t・oギG・・t「・・nζξ・・監・留
during止he perio4 betwとenJan.19与S to March 1981.
.The a・6・・f.d・6d6・al p・p量ll・w・・devi“・d i…飴・・p・・…m・iゆ・d・n・l p律plll・(Ad)…叩q・・h・nnrl
(A・)・..…mih・藍bili・・yζ⑳.(Ab).aヰd…狙i・al p・n・・eaζi・d・ぐ・(Ap)・Th・.・a・g・bf・aρce・…inva・量・・附・・
exa加ih←d hi・・ρ1・9量・◎11y a・⑩ゆa・ed.毛・.亡h・・urvival・f・hr P・・i・n・・The m・≒・b・h・hri・l re・ul・・w・・e・een i・・h・
pati6ht・諦ith th6 i舳i・n qhly in Ad 6・Aと・Th・・ec・nd b・・仕e・血1・・were託・n in. th・画・nt・with th6・aヰ£・・.
re3trictβd諦ithih two 6f the fbμr忌e6tign.. The reshlts became poorer when the invasion spreaded to three oナ
IhOreコ Seごt10nS.
Oh the other hand,. pre6pe士ative. filnis of percutaneohs transhepatic.cholangiography(PTC)and
hypotonic.dugdopbgraphy(HpDG)were.re−evaluated in relation toζhe exact lgcation of the.carcinoma in中e
corresponding specimens, fblloWing the o缶cial classification in the Gen号ral Rules.{br.Surgical Studies on
Cancer of Biliary Tract. Theρo卑bination.of.PTC and HPpG we}l demonstrated the range of the cancer
proved in the surgica藍specimen.
Thes6 two results Ihay indicate that the Co止nbination of the two examin耳tions may be useful fbr the
est玉mation of prognosis in the patient唾th cancer of the duodenal戸apilla.
目
次
成績
A.乳頭部癌切除例の肉眼.型・占居部位・浸潤範
緒言
対象
囲と予後
方法
1) 乳頭部面の肉眼型と予後
一2049一
332
(2)対象48例をPTC像から8型に分類し,
2)乳頭部癌の占居部位・浸潤範囲と予後
B.乳頭部癌の胆管X線像と癌占居部位・浸潤範
それを胆管X線像とし,低緊張性十二指腸造影に
囲と予後
1)乳頭部癌の胆管X線像
2)胆管X線像と乳頭部癌の占居部位・浸潤範
おける乳頭像の腫大の有無とあわぜ,乳頭部癌の
占居部位・予後との関係について検討した.
成
囲
績
A・』乳頭部癌切除例の肉眼型・占居部位・浸潤
3)胆管x線虫と乳頭部癌の予後
範囲と予後
考按
1) 乳頭部癌の肉眼型と予後
結論
文献
胆道癌外科取扱い規約7)における乳頭部癌の肉
緒
言
眼型は,露出腫瘤型,非露出腫瘤型,腫瘤潰瘍
近年,各種診断法の進歩・普及に伴い乳頭部癌
型,潰瘍腫瘤型,潰瘍型,特殊型の6型に分類
の診断も容易となり,切除例の増加をみている.
されている(図一1).自験例では露出腫瘤型10
この領域の癌腫に対する定型胃切除術式として,
例,非露出腫瘤型15例,腫瘤潰瘍型12例,潰瘍腫
1935年Whipple’)による膵十二指腸切除が広く
瘤型3例,潰瘍型8例であった.肉眼型と予後と
行なわれているが,乳頭部癌の予後は近傍の膵頭
の関係を2年生存率でみると,露出腫瘤型75%,
部癌や下部胆管癌に比し比較的予後良好とされて
非露出腫瘤型63%,腫瘤潰瘍型63%,潰瘍腫瘤型
いる2)鋤.しかし,乳頭部癌と一概に称しても5
0%,潰瘍型40%であった.3年生存率でみる
年生存の得られる非常に予後の良いものから,術
と,露出腫瘤型71%,非露出腫瘤型57%う腫瘤潰
後1∼2年で再発死亡する症例もあり,これまで
瘍型43%,潰瘍型0%であった.5年生存率でみ
肉眼型や発育形式と予後の関連について研究がな
ると,露出腫瘤型71%,非露出腫瘤型14%,腫瘤
されている5)6).肉眼型からは,限局型に比し浸
潰瘍型14%であった(表1).
潤型の予後が悪いとされ5),また発育形式からは
表1 肉眼型と予後
ほぼ同様にOddi筋を破るものや,胆管や膵への
予
浸潤をきたすものの予後が不良となっている.6)
後
1年生存車 2年生存率 3年生存率 4年生存率 5年生存率
従って,乳頭部癌の占居部位や浸潤範囲を術前に
予測することが,外科手術治療上有意義と考えら
肉 眼 型
れる.今回,乳頭部癌切除例を胆道癌外科取扱い
規約7)に沿って肉眼的・浸潤範囲を分析し,更に
乳頭部癌の胆管x偶像と癌占居部位・浸潤範囲を
@(%)
@(%)
露出腫瘤型
75
75
非露出腫瘤型
80
腫瘤潰瘍型
75
潰瘍腫瘤型
100
0
40
40
潰 瘍 型
@(%)
@(%)
@(%)
71
71
71
63
57
42
14
63
43
14
14
0
検討した結果,有意義な知見を得たので報告する.
対
象
2) 乳頭胃癌の占居部位・浸潤範囲と予後
対象は東京女子医科大学消化器病センターにお
胆道癌外科取扱い規約における乳頭部の範囲
いて1968年1月から1981年3月までに膵十二指腸
切除を行い,乳頭部癌の肉眼型・占居部位・浸潤
および区分は,乳頭部胆管(Ab),乳頭部膵管
(Ap),共通管部(Ac),大十二指腸乳頭部(Ad)
範囲を検索し,かつ直接胆道造影と低緊張性十二
となっている(図一2).自験例での占居部位は
指腸造影を施行してある48例である.
Ad 2例, Ac 6例, AcAb 6例, AcAp 6例, AcAd
方
4例,AcAbAd 8例, AcAbAp 5例, AcAbAp 5
法
(1)対象48例において,胆道癌外科取扱い規
例,AcAdAp 3例, AcAbAdAp 8例であった.こ
約7)に沿って肉眼型と予後,占居部位・浸潤範囲
れら占居部位と予後との関連を2年生存率でみ
と予後について検討した.
ると,Ad 工00%, Ac 100%, AcAd 100%, AcAb
一2050一
333
表2 癌占居部位・浸潤範囲と予後
予
実測)との対比を行なった(図一3).
なお乳頭腫大は,乳頭の長径が15mm以上の
後
1年生存率
2年生存率
3年生存率
4年生存率
5年生存率
@(%)
@(%)
@(%)
@(%)
@(%)
Ad
100
100
100
100
100
Ac
100
100
100
田0
100
AcAd
AcAb
100
100
ioO
100
100
100
100
67
33
33
AcAp
100
100
100
100
0
50
50
33
0
75
50
0
67
0
40
0
AcAbAd
AcAbAp
AcAdAp
AcAbAdAp
ものとした8)”11)。
筆尖型乳頭腫大例は胆管に直接的な異常をみな
い乳頭腫大の癌腫であることから,癌占居部位・
浸潤範囲は,Adと推定しうる.実測では,2例
ともAdであった.左側腫瘤突出型乳頭腫大例
の癌占居部位・浸潤範囲は,AcAbAdと推定し
うる.実測では1例のみであるが胆管X線像から
の推定と合致し,AcAbAdであった.右側腫瘤突
出型で乳頭非腫大例の癌占居部位・浸潤範囲は,
100%,AcAp 100%, AcAbAd 50%, AcAbAp 50
AcAbと推定し.うる.自験例は1例のみで実測で
%,AcAdAp O%, AcAbAdAp O%であった, 3
は,AcAdであった.右側腫瘤突出型で乳頭腫大
年生存率でみると,Ad 100%, Ac 100%, AcAd
例の癌占居部位・浸潤範囲は,AcAbAdと推定し
100%,AcAb 67%, AcAp 100%, AcAbAd 33%,
うる.実測の4例ではAcのみが3例で,他の1
AcAbAp O%であった.5年生存率でみると, Ad
例はAcAbであった. ApPle core型で乳頭非腫
lOO%, Ac lOO%, AcAd lOO%, AcAb 33%, AcAp
大例の癌占居部位・浸潤範囲はAcAbApが主病
変と推定される.自験例は1例のみで実測は
O%であった(表一2).
B・乳頭部癌の胆管x線像と癌占居部位・浸潤
AcApであった. Apple core型で乳頭腫大例の
(写真一1)。筆写型は胆管閉塞がなく胆管末端
癌占居部位・浸潤範囲は,AcAbAdApが主病変
と推定される.実測の4例中3例が推定した癌
占居部位と同様のAcAbAdApであり,他の1例
はAcAbAdであった. V字型で乳頭非腫大例の
癌占居部位・浸潤範囲は,AcAbApと推定され
る.実測一の5例中Acが1例, AcAbが2例,
AcApが1例, AcAdApが1例であった. V字型
像が筆一骨を呈するものである.左側腫瘤突出型
で乳頭腫判例の癌占居部位・浸潤範囲は,AcAb−
は胆管壁の陰影欠損が左側のみにみられるもので
AdApと推定される.実測の7例中, AcAdが2
ある.右側腫瘤突出型は胆管壁の陰影欠損が右側
例,AcAbAdが1例, AcAbAp‘が3例, AcAbAd・
のみにみられるものである.Apple core型は胆
管壁の両側に陰影欠損がみられるものである.V
Apが1例であった.鼠尾型で乳頭非腫大例の癌
占居部位・・浸潤範囲はAcAbが主病変と推定さ
字型は胆管完全閉塞の形がV型状を呈するもの
れる.実測の2・例外AcAbAdが1例, AcAbApが
で,鼠尾型も胆管完全閉塞である.又,U字型,
1例であった.鼠尾型で乳頭腫大例の癌占居部
位・浸潤範囲はAcAdと推定される.自験例は
1例のみで,実測は,Acであった. U字型で
範囲と予後
1) 乳頭部癌の胆管X解像
対象48例をPTCによる胆道末端像から,@
筆尖型,⑮ 左側腫瘤突出型,⑥ 右側腫瘤突出
型,⑥ Apple c・re型,⑥ V字型,㊥ 鼠尾
型,⑧U字型,⑤逆U字型の8型に分類した
逆U字型も胆管完全閉塞を呈し,閉塞の形もU字
状,逆U回状にみられるものである.
2) 胆管x線像と乳頭第十の占居部位・浸潤範
乳頭非腫大例の癌占居部位・浸潤範囲は,AcAb
乳頭部癌の胆管X線像に低緊張性十二指腸造影
と推定される.実測の2例ではAcAbが1例,
AcApが1例であった. U字型で乳頭腫大崎の癌
での乳頭腫大の有無を組み合わせ,癌占居部位・
占居部位・浸潤範囲は,AcAbAdと推定される.
浸潤範囲を推定し,切除標本における実測(以下
実測の2例ではAcAbAdApが1例, AcAbApが
囲
一2051一
334
1例であった.逆U字型で乳頭非腫大例の癌占居
出型乳頭非腫大例では100%,右側腫瘤突出型乳
部位・浸潤範囲は,AcAbと推定される.実測の
頭腫大例では100%であった.
6例ではAcAp 3例, AcAbが2例, AcAbApが
なお他の左側腫瘤突出型,Apple core型, V
1例であった.逆U字型で乳頭腫大例の癌占居
部位・浸潤範囲は,AcAbAdと推定される.実
字型,鼠尾型,U字型,逆U字型では5年生存例
はなかった.
測の8例ではAcAdが1例, AcAbAdが3例,
考
AcAdApが1例, AcAbAdApが3例であった.
按
乳頭部癌を取扱うに際し乳頭部の定義を明確に
3) 胆管X線像と乳頭引摂の予後
する必要があり,これまでに諸家12M5)により解
乳頭部癌の胆管x三鼎と予後との関連を検討し
剖学的見地から検討が加えられてきた.1981年胆
た(表一3).2年生存率は,筆尖型乳頭腫大例
道癌外科取扱い規約7)の成立により乳頭部の定義
では100%,左側腫瘤突出型乳頭腫大耳では100
ならびに乳頭部癌の定義が統一された.これによ
%,右側腫瘤突出型乳頭非腫大例では100%,右
ると「十二指腸壁内の胆管・膵管および共通管が
側腫瘤突出型乳頭腫大例では100%,Apple core
十二指腸壁内Oddi筋で囲まれた部分と大十二
指腸乳頭を含めた領域を総称し乳頭部とする.」と
表3 乳頭部癌の胆管X線像と予後
あり,この乳頭部に発生する癌腫を乳頭部癌と総
後
称している.
1年生存率2年生存皐3年目存率4年生存率5年生存串
100
乳頭部癌の肉眼分類についてみると,これま
で,腫瘤型と潰瘍型に分類するもの16)‘御ig),ポリ
i器・
ープ型,腫瘤型,潰瘍型に分類するもの2。),乳頭
状型と潰瘍型に分類するもの15),腫瘤型,浸潤型
に分けさらにそれらを潰瘍形成の有無により細分
化するもの6)などがある.肉眼分類に関しても胆
道癌外科取扱い規約によって統一がはかられてい
字型乳頭非腫大
型乳頭腫大
る.規約によれぽ肉眼型は,露出腫瘤型,非露出
型乳頭非腫大例では100%,Apple core型乳頭腫
腫瘤型,腫瘤潰瘍型,潰瘍腫瘤型,潰瘍型の5型
大例では,0%,V字型乳頭非腫大例では,25
に分けられている.乳頭部癌の肉眼型は予後と密
%,V字型乳頭腫大例では50%,鼠尾型乳頭非腫
接な関連があるとされ5)6)16)鰭20),’
髜詞^と潰瘍型
大例では0%鼠尾型乳頭腫大例では100%,U字
とを単純に対比したただけでも腫瘤型の方が予後
型乳頭非腫大例では10σ%,U字型乳頭腫大事で
良好であると言われている16)飼19).
は50%,逆U字型乳頭非腫大例では33%,逆U字
又,ポリープ型があるが,これは乳頭骨癌の中
型乳頭腫大回では25%であった.3年生存率は,
では最も予後が良好なものである20).
筆工型乳頭腫一例では100%,左側腫瘤突出型乳
今回自験では胆道癌外科取扱い規約に沿って肉
頭腫大例では100%,右側腫瘤突出型乳頭非腫大
眼型を分類し,その予後を検討したが,露出腫瘤
例では100%,右側腫瘤突出型乳頭腫大型では100
型が最も予後良好で,3年生存率71%,5年生存
%,Apple core型乳頭非腫大例では0%, V字
型乳頭非腫大例では0%,V字型乳頭腫大例では
率71%で,次いで非露出腫瘤型で3年生存率57
%,5年生存率14%で,又,腫瘤潰瘍型の3年生
0%,U字型乳頭非腫大例では50%, U字型乳頭
存率は43%,5年生存率は14%であった.潰瘍腫
腫大例では0%,逆U字型乳頭興野例では0%,
瘤型,潰瘍型の予後は惨憺たるもので,潰瘍腫瘤
逆U字型乳頭腫大州では0%であった.5年生存
率は,熱闘型乳頭腫大町では100%,右側腫瘤突
型では2年生存率は0,潰瘍型では3年生存率が
一2052一
0となっている.このように腫瘤型の予後が潰瘍
335
.女 r日 論 文 附 図〔1〕
〆
凹
ε濃
写真1 乳頭祁・癌の胆管X線像
A:筆尖哨,
B:ノi{1則腫瘤突出上ト/[!,C:「右1則腫瘤突ll}1[l!!,
D:APPle core型,
E:V字胆,
F=鼠尾型,
H:逆U字型
G:U字:咽、
嚢
(露出腫瘤型)
嚢
(非露出腫瘤型)
(D腫瘤型
簑
(2)腫瘤潰瘍総
(3)潰瘍腫瘤型
(4)潰瘍型
図1 乳頭麗麗のμミ1眼!1/1!
一2053
曙
336
安田論文附図〔丑〕
彫・・
Ad(大十二指腸乳頭)
Ac(共通管部)
、
Ad
Ap(乳頭部膵管)
Ab
Ab(乳頭部胆管)
Ap
Bi(下部胆管)
Ac
Ph (膵頭部)
’
i’1.・・Ph.
D (十二指腸)
D
図2 乳頭部の範囲および区分
Ad
筆
尖
嘆…
o
o
o” 「
左側腫瘤突出型乳頭腫大
右側腫瘤突出型乳頭非腫大
〃
○
馳
a
型乳頭腫大
Q
ρ..
Apple Core 型乳頭非腫大
窪k
2障x
〃
V
十
型乳頭腫大
艶職
b
Q 4
寢噤B封《
F
j
X
o
型乳頭腫大
o
暮
P、円
型乳頭腫大
馨
’
蓼
o
8
堰f
型乳頭腫大
蓼父
雛苓自
逆 U 字型乳頭非腫大
〃
享
要
o璽昏
b「
●
字型乳頭非腫大
〃
8辱’
j
o熊
セみ
尾型乳頭非腫大
〃
U
型乳頭腫大
字型乳頭非腫大
〃
鼠
Ap
Ab
Ac
鼠‘贈
型乳頭腫大
婁野’
口合 繁懸x血
ム
.曇
炉
罵1胆管X線像から推定できる腫瘍の占居部位・漫潤範囲
図3 胆管X線像と占居部位・浸潤範囲
一2054一
337
型に比し良好とは言え,腫瘤潰瘍型の予後が潰瘍
逆U字型,不整型などの分類が多く用いられて
腫瘤型や潰瘍型に比し良好で,非露出腫瘤型に類
いる17)27)陶31).われわれは乳頭部癌の胆管像を筆
似したものであることは興味ある結果と言える.
尖型,左側腫瘤突出型,右側腫瘤突出型,APPle
これは一つに胆道癌外科取扱い規約による腫瘤潰
c6re型, V字型,鼠尾型, U字型,逆U字型の
瘍型が,腫瘤型が主体でその表面に一部潰瘍をみ
8型に分類し用いてきた.
るものとし,本来的には腫瘤型の分野に入れられ
この胆管X線分類は低緊張性十二指腸造影の乳
るものであるかとも考えられるところである.ま
頭腫大の有無を加味することによって,乳頭部癌
た,林も腫瘤型(乳頭状型)でも経過とともにび
の占居部位・浸潤範囲を把握することができ,乳
らんや潰瘍を形成するようになることがあると述
頭即興における胆管X線像の成り立ちを理解しや
べている15).
すいところに利点がある.乳頭部の腫大の有無に
癌占居部位・浸潤範囲と予後との関係では,』こ
ついては諸家の報告に従い,低緊張性十二指腸造
れまでOddi筋を破るか否か,膵実質への浸潤の
影により乳頭の大きさを計測し長径で15mm以
有無,膵・胆管への浸潤の有無が大きく関係する
上のものを乳頭腫大とした8)”11).ここに用いた
とされている6).胆道癌外科取扱い規約に準じた
胆管x線豫から乳頭部癌の占居部位・浸潤範囲を
予後についての報告はいまだ出ていないが,Adや
推定し切除標本における実測と対比したところ,
Acの1区域だけに限局するものや, Oddi筋を破
千早型乳頭腫大例,左側腫瘤突出型乳頭腫大胡,
らないものの予後が良い事や,AdAcよりなる2
Apple core型, V字型では,ほぼ一致したもの
区でも,AbやApに浸潤が及ぶものの予後が悪
いことが推測される.自験例でみると,AdやAc
の1区域にだけ限局するものの予後は良好で,
が得られた.
Apの関与の見落しがみられた.このことから,
AcAb, AcAP, AcAdなどの2区域にまたがるもの
胆管X線像と乳頭部の腫大の有無からの判定で
しかし鼠尾型,U字型,逆U字型においては,
ではやや予後不良となっている.AcAbAd, AcAb−
は,膵管についての予測に難点があるという事柄
Ap, AcAdApなどの3区域にまたがるものは子後
を示しているものであろう.なお,自験例では,
不良であり,AcAbAdApの4区域にわたるもの
胆管X線像と乳頭部像との組み合せでは鼠尾型,
の予後は極めて悪い.これらのことから,乳頭癌
U字型,逆U字型でApのfacterを拡大し推定
の予後は大きく異なるものであり,癌占居部位・
することにより補正しうるものがあった.すなわ
浸潤範囲に左右されるものであると言える.従っ
ちこれらの型では,AcAbApかAdAcAbApまで
て,この癌占居部位・浸潤範囲を術前に把握しう
の癌占居部位・浸潤があると言うことになる.
ここに用いた胆管x線像と乳頭腫大の有無を組
るかどうかが,外科治療上,大切なことと思われ
る.乳頭解題の診断法には種々のものがあるが,
み合わせ,それぞれの型の成り立ちについてみる
癌占居部位・浸潤範囲を把握するとともに乳頭部
る.これに対し,PTCによる胆管像と,低緊張
と,裾野型乳頭腫大例はAb・Acには無関係で
Adが主病変と推定できる.従ってこの型の予後
は良好と考えられ,実際に5年生存率100%であ
性十二指腸造影を選択したのは,単に乳頭部癌の
る.左側腫瘤突出型はAcにApの関与が推定
の範囲および区分を表現しうるものが必要とされ
診断のみならず,その進展形式を把握するためで
され予後が悪く,3年生存率は100%だが,4年
ある.これらはX線像であるため肉眼型に関して
以上の生存はない.右側腫瘤突出型はAcにAd
が関与すると推定されたが,ほとんどAcめ症
例で予後は非常に良好で,5年生存率100%であ
は難点があるが,進展形式についての把握を中心
にしたからである.
これまで乳頭部癌の胆管豫については,一般
に結節型,V字型, U字型,直線型,鼠尾型,
った.Apple core型は,乳頭非腫大1例では,
AcAbAp,乳頭腫大2例では, AcAdAbApと推測
一2055一
338
され,3区域あるいは4区域にまたがり予後不良
方向への進展をみるものの予後が不良となってい
なものと考えられ,実際3年生存率は0である,
る.AcAbAd, AcAbAp, AcAdAp,と3区域又は
V字型は,乳頭非腫大では,AcAbAp,乳頭腫大
AcAbAdApと4区域にわたるものでは予後が極め
ではAcAdAbApと推定され, 3’区域あるいは4
て不良であった.
区域にまたがり予後不良と言える.実際3年生存
4)乳頭部癌の胆管X線像を8型に分類し,低
率は0である.鼠尾型は,乳頭非腫大ではAcAb,
緊張性十二指腸造影の乳頭腫大の有無と組み合わ
乳頭腫大では,AcAdと推定される。乳頭非腫大
せることにより,癌占居部位・浸潤範囲の推定が
の実測では,AbのfacteTに加えApが加わっ
ており予後不良で,1年生存率も0と極めて悪
可能となり乳頭部癌の予後の判定に有効であっ
た.
い.一方乳頭腫大では実測がAcのみの1例であ
稿を終えるにあたり,御校閲を賜った小林誠一郎教
り現在2年4ヵ月生存中のものである.
授,遠藤光夫教授,羽生富士夫教授に謝意を捧げる.直
u字型は,乳頭非腫大ではAcAb,乳頭腫大で
はAcAdAbと推定される.実測では,乳頭非腫
接指導を賜った,高田忠敬助教授に謝意を捧げる.な
大型はAcAbApと3区域にわたり,予後も3年
謝するとともに,病理学的検討の御指導を賜った愛知医
生存率50%で4年以上の生存はない.乳頭腫大で
は実測はAcAdAbApと4区域にわたり, 2年生
存率50%で3年以上の生存はない.
お本論文の研究に御協力いただいた内山勝弘先生に深
科大学林野次教授に深謝する.
本論文の要旨は第21回日本消化器病学会秋季大会,お
よび第17回日本胆道疾患研究会にて発表した.
逆u字型は,乳頭非腫大ではAcAb,乳頭腫大
ではAcAdAbと考えられるが,実測では乳頭非
文
献
1)Whipple, A.0.:Treatment of carcinoma of
thc ampulla of vater. Ann Surg 102763(1935)
腫大がAcAbApと3区域,乳頭腫大ではAcAd−
AbApと4区域にわたり,予後も乳頭非腫大で2
年生存率33%,3年生存率0,乳頭腫大で2年生
2)斉藤洋一:癌占拠部位と臨床像.日本外科学会
雑誌 80 (11)
964 (1979)
3)佐々木英制:膵頭領域癌の病態と手術成績に
関する検討.日本外科学会雑誌80(11)968
存率25%,3年生存率0と不良である.
(1979)
このように胆管x線像と乳頭腫大の有無との組
4)羽生富士夫:膵頭部領域癌の外科的治療.日本
み合せにより,癌占居部位・浸潤範囲の推定がな
外科学会雑誌80(11)978(1979)
5)中山和道:膵頭部領域癌の治療成績.日本外科
されることから予後の判定が推測しうるものとな
学会雑誌80(11)983(1979)
る.
6)中村光司=+二指腸乳頭部癌の臨床病理学的
結
論
検討一とくに予後に影響をおよぼす諸因子に
ついて一.日本消化器外科学会雑誌 11(11)
1)乳頭部癌48例を対象に胆道癌外科取扱い規
941 (1978)
約に準じ,肉眼型と予後,占居部位・浸潤範囲と
7)胆道癌外科取扱い規約.日本胆道外科研究会編
予後,胆管X線像と予後との関係について検索し
金原出版(1981)
8)笹本登貴夫:胆路系疾患における十二指腸
た.
ファーター乳頭部のX線学的臨床的研究。千葉
医会誌44613(1969)
9)服部外志之:十二指腸乳頭部に関するレ線的
研究.日本消化器病学会雑誌68(4)3(1971)
10)石原陽一:十二指腸大乳頭癌並びに膨大部癌
のレ線的臨床的研究. 日本消化器病学会雑誌
2)肉眼型は,露出腫瘤型の予後が最も良好
で,非露出腫瘤目ならびに腫瘤潰瘍型の予後がそ
れに続くが,潰瘍腫瘤型,潰瘍型の予後は極めて
不良であった.
69 (3) 90 (1972)
3)癌占居部位・浸潤範囲と予後の関係が密接
11)高瀬潤一:+二指腸下行蔀のX線診断.胃と腸
でAdやAcと1区域に限局するもの, Ad・Ac
41373(1969)
12)溝ロー枝:日本人十二指腸の肝膵管開口部の
と十二指腸面に進展するものの予後は良好であ
解剖学的研究.昭和医学会雑誌20549∼564
るが,それらに比し,AcAb, AcApと胆管・膵管
(1960)
一2056一
339
32)本庄一夫:日本における膵癌治療の現況・1日癌
13)棋 哲夫:胆道疾患に対するファーター斥乳
治1082(1975)
頭部分的切除術と乳頭部の病理組織学的変化.
♀3)田代征記:乳頭部癌の外科的治療成績。日本消
臨床外科1265∼73(1957)
化器外科学会雑誌11(11)934(1978)
14) sεerling, J』L。3 significant facts concern三ng
24)羽生富士夫:膵頭部領域癌の外科的治療.手術
the papilla of vater, Am J Dig D三s 20124∼
34 (6) 637 (fg80)
126(1953)
15)林.活次:知られざる臓器“膵”膵臓の病理.
エーザイ(株)東京(1975)
25)Longmire, W。P.3 Carcinoma of the ex旗a.
16)Mi皿e野, E.M.=Carcinoma in the region of
26).籾 鵬飛:膵頭十二指腸領域癌の臨床病理学
hepatic biliary tract. Ann Surg 178333(1973)
的研究一予後を左右する因子の検討一.日本
外科学会雑誌81(6)562(1980)
27)高田忠敬:経皮的胆管造影法による診断一閉
塞性黄疽一診療の実際一39中外医学社(1978)
28)大藤正雄:経皮的胆管造影一肝・、胆・膵の診
断一医学書院(1973)
29)黒田知純=ファーター乳頭部癌のX線診断に
関する検討.臨床放射線25(11)1165(1980)
30)富士 匡:十二指腸癌の診断に関する臨床的
研究.日本消化器病学会雑誌76(8)17(1979)
the papilla of vater. Surg Gyneco10bstet 92
172∼182(1951)
17)穴沢雄作:乳頭部癌の診断と治療.胃と腸4
1383 (1969)
18)菅原克彦:胆管癌および膨大部痛.臨床外科
27 (3) 65 (1972)
19)岡島邦雄:Vater乳頭部癌の組織学的進行度分
類とその意義.癌の臨床23(9)895(1977)
20)中山湘道=+二指腸乳頭部癌切除症例の検討
一特に病型分類及び無黄疸:症例について.日本
消化器病学会雑誌73(4)442(1977)
21)荒木京二郎:Vater乳頭部癌の臨床病理学的検
討一とくに性・年令からみた特徴について一.
日本消化器外科学会雑誌13(11)1271(1980)
31) Evans, J.A.3 Specialized roentgen diagnastic
technics in the investigation of abolominal
disease. Radiology 82579(1964)
一2057一