大気中の高沸点炭化水素と芳香族誘導体の測定

27
報 文
lll匪闘li【ll聾1瞳[ll!lil聾ll11【li【1
大気申の高沸点炭化水素と芳香族誘導体の測定
Analysis of H圭gh Boiling Hydrocarbons and Aromatic
Derivatives in Alr
花井 義道・山下
暁・高橋 敬子・加藤 龍夫*
Yosimichi HANAI, Satoru YAMASHITA,
Keiko TAKAHASHI alld Tatsuo KATOU
Synopsis
In order to research the photQchemical smog, high boiling hydrocarbons and aromatic derivatives
iH air were measured by GC−MS and GC−F王D from July to November 1976. The samples were
concentrated on sampling tubes packed wlth Tenax GC at room telnperature, and injected into
columns directly by heating. HydrGcarbons were separated over capillary c◎lumns, identified by
GC−MS and analyzed quantitatively GC−FID. Some aromatic derivatives were detected in Summer
atmosphere, such as benzaldehyde, creso1, acetophenone, and benzoic acid. Quantitative determin・
ations of them were lnade usi捻g S猟method. They are considered the photochemical prQducts
in the air contaiRing aromatic hydrocarbons a鷺d NO.
100%捕集できる。②カラム内で吸着されやすいジニ
1.緒
言
トロクレゾール,OH基に対して。位以外にニトロ化
光化学スモッグに対する芳香族炭化水素の役割を注
されたm,P一ニトロフェノール類まで加熱追い出し
翻している当研究室では,NO十〇2十hり系の反応実験
ができ,③かっこの時論墳剤からの留出成分すなわ
を行ない,その二次生成物として,芳香族アルデヒ
ちバックグランドとなる妨害ピークが出ない。各種充
ド,ニトロベンゼン類,ニトμフェノール類等を詞定
墳剤を用いて以上の条件について検討したところ,活
したP。これらの芳香族誘導体を環境大気申,および
性炭,シリカゲル,活性アルミナ等無機吸着剤は,極
低濃度反応実験で測定するため,高沸点成分濃縮法と
性物質の追い謁し,②の点で全くだめ,酸処理した
して,GC充墳剤を用いたカラム吸着法を検討した。
OV−101,0V−17等分配型充嶺剤は保持容量,バック
カラム吸着法は保持容量の差によって目的とする成分
グランド①③の点で不適当であった。有機吸着剤のう
を空気,水等から分離濃縮する方法で,古くから実施
ち,ChmmosOfb, Po■apak等も留出成分が多く,唯
されてきた2}。最近は特に有機吸着剤系統の年三剤の
∼つ以上の条件を満足したのはTenax GC(2,6一ジ
一般化に伴い,その適用例が多数報告されている脚9
フェニルーP一フェニレンオキサイのであった。ニト
Bここでは捕集管充墳剤としてTanax GCを用い,
ロフェノール類・各異性体,安息香酸,クレゾール等も
6}
実際に大気試料(1976年7月∼!1月)を分析した結果
変化を受けず捕集,追い出しが可能である。図1に捕
を報告する。
集管の型を示す。内径0.5cmφ長さ8cmのガラス製
2. 捕集管の製作
注躬器を利用したもので,Tenax GC(60/80mesh)
を1cc(0.25g)充墳し,両端は石英ウールで栓をし
捕集管の充墳剤とその量を決定する上で次の条件を
た。図2にこの捕集管の温度と保持容澱の関係を示
設定した。①大気100Z吸引においてベンズァルデヒギ
す。この図は捕集管をカラムとしてガスクロマトグラ
以上の沸点を持つ物質を常温(20∼30。C)において
フに付けて求めた。図2によれば30。Cでベンズァル
デヒドは100Z以上の保持容量を持ち,また250QC
*当センター環境基礎」二学研究室
で,ジニトロクレゾールまで0.Uで十分追い串しがで
28
キシレンも一部脱着する。したがって常温で試料を
一一㎜』一一一一一8c〃1一.一一一一一一___ナ
』英ウール
ガラス管
@ノ
TenaxGC
.嶺;’
一;■
吸り1
50♂∼100♂捕集する場含,P一エチルトルエン以上が
定量可能な範囲となる。
Z
3.操 作 法
図1捕集管
大気試料を採取する際は,あらかじめ300。CO.1♂
OH O召 CH、、
瓶獣酬鰍掲
/minで!0分間エイジングした捕集管を真空ポンプと
向
50級引する。反応実験用真空びん(10のの場合は,
乾式積算流量計に接続し,約1.5Z/mlnの流量で通常
歪000
容器を電熱炉で200。Cに加禦1し真空ポンプで45分關吸
引し濃縮する。採取した捕集管は密栓して保存する。
100
保
CH3
試料をGCへ導入する時は,三二管に針を付け三方コ
6
持
ックで切り換えたキャリヤーガスを通し,電熱管で
300。Cまで1分で加熱し,吸引方向と逆方向に追い出
10
容
す。GC, GC−MSで使用したカラム,その分析対
量
象等を表2に示す。
1
⑤
4. 浪り定系吉果
、」
0.i
4.1高沸点炭化水素の鶴定
高沸点炭化水素のi司定をSilicone OV−10!キャピ
0.01
250 200 150 100
ラリーヵラム30mを使用し,スプリット比1/30,
50 30 〔o(=/
50。Cから200。Cまで6。C/m1n昇温で, GC−MSで
2.0 2.5 3.0 3.5>(10−3
行った。キャピラリーカラムではスプリット比が高く,
こ1、rk〕
普通のカラムより導入量が少なくなるために濃縮量を
多くする必要がある。図3はn月25臼横浜国大での測
図2捕集管保持容li}:
定例で460Z濃縮した。検出された成分は,ベンゼン,
きることがわかる。表1に実際この捕集管に試料を注
トジクロルエチレン,トルエン,エチルベンゼン,キシ
入し,空気を0∼100Z吸引した後,GC分析し,その保
レン,プロピルベンゼン,エチルトルエン,トリメチ
持率を求めた結果を示す。試料は各成分とも10㎜2μ/,
ルベンゼン,ジメチルエチルベンゼン,メチルプロピ
捕集管の温度は,20。Cと30℃で実験した。これによ
ルベンゼン,ナフタレン,インダン,n一ヘプタソ∼距
れば大気100Z吸引においても, P一エチルトルエン以
ドデカンである。これらの成分はいずれも都市大気常
上の沸点(厳密には保持容量)を持つ物質を100%捕
在成分で,汚染源はガソリン車,ジーゼル車排ガスが
集できると言える。一方トルエンの保持率は低く,P一
あげられる。ここでは測定されていないが他の分賦条
表1 吸引空気量と保持率
吸 弓【 空 気 量 〔z〕
試
料 (沸点。C)
50
10
100
20
30
20
30 20
o.77
0.55
0.58
0.20
P一キシレン (138,4)
!。O
0.90
0.93
0,75
0.87
0.53
P一エチルトルエン (!62.4)
!.0
1.0
1.0
1.O
!.0
1.0
1,2,4一トリメチルベンゼン (169.4)
1.0
1.0
1.0
l.0
!.0
1、O
ベンズアルデヒド (179.!)
1.0
1.0
1.0
1.0
1.0
l.0
m一クレゾール (202.7)
1.0
1.0
1,0
1.0
1.O
1.0
1、0
1.0
1.0
1.O
l.0
1.0
!.0
1.0
1.0
l.0
1.0
1.0
捕集管温度〔。C〕
トルエン Q一こ=トロトノレニニソ G10.6)
(221.7)
2一ニトローP一クレゾール(125/22鶏m)
・・。i
30
O.07
29
表2使用カラムと分析対:象
機
器
GC−MS
目的方法
走 査
定 挫
;m/e 1∼250.
島灘LKB
9000
定 量
カ
ラ
分 析 対 象
ム
Silicone OV−101
高沸点炭化水索
(ガソリン,灯油,軽油成分)
0.28mmφ×30mキャピラリー
Tenax GC 60/80mesh
SIM
芳香族誘導体
(芳香族光化学反応生成物)
3mlnφ×1m
Silicone OV−101
GC−FID
島津6AM
定 癒
高沸点炭化水索
0.28mlnφ×30狙キャピラリー
FID
PEG 20M TPA
芳香族誘導体
O,28mmφx20粗キャピラリー
④ベンゼン
⑳L2.4.トリメチルベンゼン’
⑥トリク幽趣エチレン
⑳hデカン
⑥nヘフタン
⑦トルエン
⑳L2.3弓掲メチルベンゼン(p一シメン:
⑬インダン
⑳L3一ヴエチ乃ベンゼン
⑧n..オクタン
⑨テトラクロルエチレン
⑩エチルベンゼン
⑪m.P一キシレン
⑫。…キシレン
⑬n一ノナン
⑳1…メチルー3.・n一プロピノレベンゼン
⑳ジエチルベンゼン
⑳1姻チ・し..2..n・ヴロヒ,しベンゼン
⑱ジノチルエチルベンゼン
⑳[γウンデカン
⑪⑮is・η.ロいレベンゼン
⑪ナフタレン.
⑯n…フロ}二1しベンゼン
⑬n・i・デカン
⑰m,P一エチノしト,レエン
⑦
⑬1,3.ひい/メチルベンゼン
⑲・一樹チルトノしエン
⑳⑳
⑩
①②③
④⑤⑥
⑰
⑧⑨
⑫
ぎ
⑱⑲
く
⑬⑭
⑯⑯
0
5
ユ0
⑳
⑳⑬⑳(勘⑳
⑳⑳
15
⑬
⑳ ⑳⑫
20
(mi肌聰tes)
図3大気分析例① TICクロマトグラム
横浜国大 11月25日 12:41∼19=45460Z
件でメチルナフタレン,P一ジクロルベソーゼン,ジブ
逆転層の生成等の気象条件がそろわず,強い光化学ス
チルフタレート(DBP)等が検出される。 P一ジクロ
モッグ(高いNO2,03濃度)は発生しなかった。しか
ルベンゼンは衣類防虫剤,DBPは可塑剤として使用
し普通の晴天時の大気をGC−MSで分析し,探索し
彙が多い薬品である。
たところ,ベンズァルデヒド,クレゾール,アセトフェ
4.2芳香族誘導体の同定
ノン,安息香酸等の二次汚染質とみなされる芳香族誘
今年度夏期は平年より気温が低く,また強い霞射,
導体を検出した。GCカラムは芳香族誘導体がいずれ
30
③トルエン
⑤キシレン
⑥エチルトルエン
⑦ベンズアルデヒド
⑧ジクロルベンゼン
⑨クレゾール
⑬アセi・フェノン
⑪安息香酸
⑫ナフタレン
⑬
}脂肪族炭化水素
⑳
⑰DBP
⑪
⑥
②
⑨
⑫⑬%⑯
③
\賦
⑰
④
ら
起 要
0
15
10
5
(minutes)
図4大気分析例② TICクロマトグラム
横浜国大 8月21日 14;00∼15:001651
も極性が強く,OV−101等無極性のカラムでは良好な
されなかった。これは生成物質自体がより活性なた
ピークが得られないので捕集管と隅じTenax GC(60
めである。ニトロフェノール類,ニトロベンゼン類が
/80mesh)1mを50。Cから280。Cまで15。C/mln
検出されなかったのは強いスモッグ状態が起こらなか
昇温で使用した。図4に横浜国大で採取した大気試料
ったためと考えられる。
のGC−MS分析, TICクロマトグラムを,図5に
ピーク⑦⑨⑩⑪のMSスペクトルを示す。こ
の日は快晴でスモッグは無かった。検出され
た成分のうちベンズァルデヒド,クレゾール
⑦ベンズアルデヒド1一…寧ク卿レベンゼン、.
28 32
105
(異性体分離せず)はトルエンの光反応実験
106
77
146148
から,アセトフェノンはエチルベンゼン,安
息香酸はベンズァルデヒドから生成される成
分であるP。これらの成分は夏期都市大気試
料(東京,横浜)から何度も検出され,図4
⑨ クレゾ…ル(÷ジエチルベンゼン)
のクロマトグラムは特殊なものではない。し
107
かし同じ反応実験で生成され,雨水から検出
108
@ 119 134
されたことがある7)ニトロフェノール類は一
度も検出できなかった。ニトロベンゼン類も
不検出であった。検出された成分は弱いスモ
⑳アセ:・フニノン
ッグ状態(低いNO2,03濃度)でも生成さ
105
77
れ,かっ安定な物質に限られていると思われ
る。特に安息香酸のピークが顕著であった。
120
トルエン反応系において,ベンズァルデヒド
は反応初期から多量に生成されるが,安患香
酸は10時間以下の反応では生成量が少なく検
諺 安 碧、香 酸
出されない。大気中の安息香酸はベンズアル
デヒドが徐々に酸化され,安定であるために
105
i22
77
長日寺間にわたって滞留,蓄積したと考えられ
る。一方キシレンからはトルアルデヒドが同
様に容易に生成されるが,大気試料には検繊
図5大気分析例② MSスペクトル
31
4.3 劣香族誘導体の定量
!現20日横浜国大での分析例を示す。なおカラム吸着
図5のMSスペクトルを見ると,ベンズァルデヒド
法と嗣時に液体酸素低温吸着法を併用すると,低沸点
のピークはジクロルベンゼン,クレゾールはジエチル
から高沸点まで分析可能となる。表3にU月19日神奈
ベンゼンと重なっていることがわかる。その他一般に
表3大気分析例④
高沸点成分には多数の脂肪族炭化水素異性体があり,
神奈川県庁前11月19日
これらと完全に分離することは困難である。したがっ
て選択的,高感度に定量する方法としてSIM法を適
用した。ベンズアルデヒド,クレゾール,安息香酸はい
濃 度*lT 比*
P
...ヨー一…一一一….一.
lC2エ タ ン
・・
C3 プロパン
1’2
C4 iso一ブタン
1・9i
12
n一ブタン
3.61
24
C5 iso一ペンタン
6.6
44
n一ペンタン
飽
2・7…
18
C6 2一メチルペンタソ
1.91
13
デヒざ1.2PPb,クレゾール0.4gPPb,安息香酸3.1PPb
和 3 メチルペンタソ
1・3i
9
であった。夏期晴天時の測定でこれらは0.1∼10ppb
1。41
9
の範囲で測定された。纈対的に安息香酸の濃度が高
n一ヘキサン
C7 2一メチルヘキサン
炭
…i
7
く,ベンズアルデヒドに対する比は!.5∼3であった。
3一メチルヘキサソ
o・71
5
図6では濃縮量が104Zと多いが, ppbレベルの測定に
化 n一ヘフタン
1・1i
7
は10Zで十分である。
Cg n一ノナン
o.4司
3
水i:lll=霧カン
・561
4
0・761
5
ずれも分子ピークが強いので,m/eを106,108,122
と各成分が出終わるごとに段階的に換えて測定した。
図6に9月ll日(快晴)横浜国大で採取した試料のS
IMクロマトグラムを示す。カラムはTenax GC lm
を100。Cから280。Cまで6。C/min昇温で使用した。
あらかじめ作った検量線から定量すると,ベンズアル
1
①トルエン
②キシレン
3、
窪
③ベンズアルデヒドL2PPb
く
④クレゾー1し 0.49ppb
⑤安息香酸 3.lppb
①
竃
1舅
く
A
④
②
・融
く
⑤
舅
へ
剥。・・酬デカソ
().33:
9
8
2
C13 n一トリデカン
0.21
2
C14 n一テトラデカソ
0.08
0.6
C15 n一ペソタデカソ
0.06
0.5
C16 n一ヘキサデカソ
0・041
0.3
C17 n一ヘプタデカソ
iC18n一一クタデカソ
0.02i
0.1
−i
lc2エチレン
5。1;
34
飽 アセチレン
9.8
65
不
麓・・プ・ピ・ソ
L2i
8
化 ic4レブテン
紮…ヴテ・
塁
㌦。売
トランスー2一フアン
争
106
0 5
全 季 令
106 108 122
10 15
C6
20
C7
(minutes)
芳
図6大気分析例③ SIMクロマトグラム
香
横浜国大 9月11日 13:00∼14:35 104♂
族
炭
C8
ベソゼソ
トルエソ
エチルベソゼソ
m,P一キシレン
。一キシレン
Cg
m,P一エチルトルエン
6.4.
15
5.8i
11
43
100
39
71
3.4
23
1
3.6.
24
10
4.4 高沸点炭化水素の定量
化
。一エチルトルエン
1・4…
nCg∼nC18までの脂肪族炭化水素とエチルトルエン
水
1,3,5一トリメチル
1.2…
ベソゼソ
8
素
2・7i
18
O.22i
7
からナフタレンまでの芳香族炭化水素8}をSi11cone
OV101キャピラリーカラム30mで分離しFH)検繊
器で定量した。スプリット比1/30,50。Cから200。C
まで5。C/min昇温で非常に良好な分離が得られた。ベ
1,2,4一}、リメチノレ
ベンゼン
CIGナフタレン
その他C・P一ジクμルベソゼン… 1.Oi
ースラインが安定であるため,感度を高く設定するこ
*単位ppb
とが可能であり,濃縮量は50Zで十分である。図7に
*トルエンを100とした濃度比
2
32
1 トノレエン
17rドデカン
2n一オクタン
3エチルベンゼン
18n一トllデカン
19n一テトラデカン
20n一ペンタデカン
4m.P「キシレン
×⑰
1
50一キシレン.
誌
21臣ヘキサデカン
6 臣ノナン
22n一ヘプタデカン
23n一々クタデカン
7臣プロピルベンゼン
ら
8蹟,P一工チル}・ルエン
90一エチルi・ノレエン
4
101.3,5一トllメチルベンゼン
3
1112.4−1・リメチ1レベン」::.』ン
12P一ジクロ㌃ベンー}ごン
13n一デカン
5
ユ41,2,3−i・リメチ’しベンゼン
15n一ウンデカン
8
ユ6サ’フタレン
16
1
13
15
10
X
6
2
14
7
エ7
ユ8
12
19
20
2ユ
22
23
w
卜。
0
5
101
ユ5
20
25
30
(minutes)
図7大気分析例④ FIDクロマトグラム
横浜国大 11月20日 16=10∼16:32 50Z
州県庁前での測定値を示す。低沸点成分用カラムとし
立方型容器(0.45m×0.45mxO.5m)
てSqualane 20%(Act玉ve alumina 60/80mesh)3m,
riコ心に反応容器を設置
中沸点用としてTCP 25%(Chromosorb W AW 60
}照射室内濤註度30土3。C
/80mesh)3mを用いた。
kd値0.5min『1
4.5光化学反癒実験
④ 照射時間
反応実験は大気測定と同時に進行させている研究課
1∼6時間
題である。新たにTenax GC細網管を濃縮手段とす
GC−MSで同定した成分は,ベンズァルデヒド,
ることにより,より低濃度での実験が可能となった。
トルキノン,o一,m一,P一ニトロトルエン,6一ニトP−
生成物質の同定は,TeHax GC(60/80mesh)1mと
Q一クレゾール,2一ニトローP一クレゾール,orm一,
PEG 20M 5%(ChrGhte W 8G/IGGmesh)3mカ
P一クレゾール,ベンジルナイトレートである。図8
ラムを用いてGC−MSで行ない,定量はPEG20M
に照射4時間のFIDクロマトグラムを,表4に各定
T2Aキャピラリーカラム20m,スプリット比1/28,
量値,図9にトルエンの照射時閥に対する濃度変化を
30。Cから150。Cまで6。C/min四温, FIDで行っ
示す。生成量の多かったのは。一クレゾール,ベンズァ
た。定量に際しては,各成分とも,標準試料で求めた
ルデヒド,m一ニトロi・ルエン,6一ニトロー。一クレゾ
反応容器からの捕集率をもとにして補正した。実験条
ールである。このうちベンズァルデヒドは照射時間と
件は次の通りである。
ともに生成量が増加しているが,o一クレゾールとm一
①試料および初期設定濃度
ニトロトルエンは2時間でほぼ平衡値に達している。
芳香族炭化水素 トルエン 8ppm
また6一ニトロー。一クレゾールは4時間から6時間に
一酸イヒ窒素 4 〃
かけて増加している。また反応して減少したトルエン
空気 1気圧
の董に対して表4に示した生成物質の総量の割含は4
②反応容器
時間で約65%,6時間で約50%である。物質収支を完
10Zパイレックス製翼空びん
全なものにするには,さらに生成物自体の反応の進行
③ 光源
を明らかにするとともに,より高沸点の化合物等,ま
ブラックライト 20W×8本
だ分析できていない生成物についても定量する必要が
33
1 トノレエン
2ベンズァルテヒi・
3卜’レキノ)・
9
40一二i・ロi・’レ∫.♪
5ベンジルナイトレート
6m一二、トロトFしエン
76一一ニトロー(》一ツレソ’..一,:
6
7
10
8
話
8P一一二;i・ロi・るエン
9 2一.ニトし」一p一クレゾー一.㌧
憲
u鱒
10 0一一クレゾー.一レ
エエ P一一クレソ..・一言レ
12 m一・フレゾ…乃
①
U
12
乙
器
0
5
10
20
15
25
(minutes)
図8トルエン(8ppm)+NO(4ppm)+air+hり系
F王Dクロマトグラム
照射4時間 10♂
表4トルエン反応生成物質
8
(尊丘位二 PPb)
呉醍身利雪寺1膏コ (hr.)
ベンズアルデヒド
濃
5
トルキノソ
1
2
PP加
120:
210
_ 61
201
31
m一 〃
10 堰@1701
P一 〃
一 20i
6一ニトロー。一クレゾールi
0
0 2 4 6
。一クレゾール
80…450i
P一 〃
IO 6Qi
ベンジルナイトレート
101
10
110i
150
3。i
9・1
,ll
2一ニトローP一クレゾール
m一 〃
6
40・50i
0一ニ トロ トノレエソ
度
4
・・14・1
3… 16…
・・l
50
150
80
460
60
ll…
30
31
照射時間卜r.
ある。
5. ま と め
って測定した。高沸点炭化水素についてはキャピラリ
ーカラムによって分離定量した。GC−MSで芳香族
誘導体を探索した結果,夏期大気中からベンズアルデ
Tenax GC捕集管によって大気中の高沸点炭化水
ヒド,クレゾール,アセトフェノン,安息香酸の4回
素,芳香族誘導体を濃縮,GCおよびGC−MSによ
分を検出した。定量はS王M法で行なった。相対的に
34
は安慰香酸の濃度が高く,これは安定であるため長時
究センター紀要,2,41(1976)
間にわたって大気中に蓄積されたと推定された。まだ
5)Jalnes S. Farsons, Stnley Mitzner:Gas Chro.
大気検体数が少なく,特に強い光化学スモッグ時の測
matograph三。 M:ethod for Concentration and
定がないので,さらに測定を続け,実験との対比を行
Analysis of Traces of Industrial Organic Pol.
なっていく予定である。
lutants童n Environmenta正A玉r and Stacks, Er1.
viron。 Sci. TechlloL,12,1053(1975)
文
6)日本環境衛生センター=悪臭物質の測定等に関す
1)加藤龍夫,花井義道:芳香族炭化水素の光化学反
る研究,31(1976)
応に関する研究,横浜国大藤境科学研究センター紀
7)Kazuhiro Nolima, Katsuhisa Fukaya, Shozo
要,2,1(1976)
Fukui, Saburo Kanno, Shinichi Nishiyama,
2)荒木酸,加藤竜夫:高沸点大気汚染成分のガス
Yu亡aka Wada:S亡udies on Pho亡ochemlstry of
クロマトグラフィーによる分析,分化誌,1,12
Aromatic Hydrocarbons III, Chemosphere,1,
(1963)
25 (1976)
3)John W. Russelll Analysis of Air PoUutants
Using Sampling Tubes and Gas Chromatography,
Environ. Sc三. Technol.,13,1175(1975)
4)石黒智彦,長谷刈隆,重田芳広,加藤龍夫:GC
−MS法による下水臭の分析,横浜国大環境科学研
8)Alain Raymond, Georges Guiochon: Gas
Chromatographic Analysis of C8℃18 Hydro−
carbons in Paris Air, Environ. Sci. Technol.,
2, 143 (1974)