4-1-6-2 脳神経外科 - 国立成育医療研究センター

4-1-6-2 脳神経外科
1.概要
1.1 2008 年度の活動と特色
国立成育医療センター設立と同時に新規に活動を開始した脳神経外科であるが、小児神経外科領域で
は名実共に国内を代表する施設として認識されるようになってきている.従来の小児病院脳神経外科が、
ややもすれば水頭症・先天異常の手術が中心となるなかで、当科では脳腫瘍、頭蓋底外科、機能的脳神
経外科の様に大学病院が臨床活動の中心となる領域にも積極的に取り組み、実績は高く評価されている.
国立成育医療センター脳神経外科の認知度が高まるにつれ、難易度の高い症例、あるいは他院術後の合
併症例の紹介も増えている.これまでの努力の結果として素直に喜びたいところではあるが、現今の医
療、とりわけ外科を取り巻く厳しい環境を考えると複雑な思いにとらわれるというのが実情である.
脳神経外科開設 7 年目の 2008 年度は 226 名(生後 1 日〜28 才)に対して計 344 件の手術を施行した(一
人平均 1.5 件)
。手術患者数、手術件数とも 2007 年度に較べ微増というところである.複雑な先天異常、
複合した合併奇形、あるいは難易度の高い脳腫瘍や頭蓋底病変を持つ患者さんが増えてきていることを
考えると、大きな合併症なく1年間を乗り切ることができたことを素直に喜びたい.High risk surgery
というとすぐに major surgery と結びつけられるが、小児神経外科においては合併症との関係からいえ
ばminor surgery も同様にhigh risk surgery になる.
手術の難易度に関わらず、
すべての手術はhigh risk
surgery に準じるとの心構えで毎回の手術に臨んでいる.そのような点からは、2007 年度から 2008 年度
にかけてシャント手術を始めとする水頭症手術での感染症をゼロで過ごしているのは、新生児手術件数
も少なくない中で誇れるものと考えている.
治療面においては、巨大頭蓋底脳瘤に対し従来の経験をもとに形成外科と共同で一期的に経口経口蓋
アプローチと経前頭蓋底アプローチを組み合わせ成功裡に治療することができた.外来での経過も良好
であり成育発の新たな治療法として症例を重ねていきたい.脳腫瘍に関しては、時に症例が集中し腫瘍
科医師に過大な負担をかけることがあったが、巨大例の化学療法と組み合わせた段階的手術などチーム
医療として大きな成果を上げている.これまでの実績をふまえ、2009 年には多施設共同臨床研究への参
加も決定している.来年度以降、独立行政法人化していく中でこれまで論議されてきた小児がん治療セ
ンター構想を是非実現させ、社会的な注目度も高い小児脳腫瘍に対する包括的医療を実践できるよう脳
神経外科としても努力していきたい.来年度へ向けた問題点としては、水頭症の手術件数の減少があげ
られる.大学病院、あるいは他の小児施設のように大学の関連病院でないため、常に地域から一定の紹
介患者を期待できる立場にはない.確実な日常臨床活動の積み重ねと学会・論文での学術的アピールの
積み重ねが重要と考えている.
欧米的な合理的医療システムのない日本で、医療の質を確保していくには自己献身的な個々の医師の
活動に頼らねばならないところが少なくない.小児神経外科エキスパート育成の課題を背負う脳神経外
科では、出身大学・所属医局と関係なくスタッフ・研修医を受け入れてきた.結果として、成育でトレ
ーニング後、小児専門施設での科長 1 名・医員 2 名、大学・医療センターでの小児担当責任医 4 名が臨
床・学会活動で活躍している.一方で、医療崩壊の影響を強く受けている脳神経外科現場の影響で研修
医の確保に悩まされるのが毎年恒例となっており、大学との関係見直しも視野に入れて今後の脳神経外
科運営を考えていきたいところである.
2. 診療及び研究活動
2.1 診療体制
脳神経外科の診療は医長 1、医員1、研修医1の 3 名で行っている.定時手術は月曜、水曜、金
曜である.緊急手術に関しては麻酔科、手術室の協力の元に可能な範囲で随時行っている.外来は
火曜、木曜である。2007 年より、形成外科と共同で“頭蓋顔面異常”に対するセカンドオピニオン
外来を月 1 回開始した。水頭症、二分脊椎に対するセカンドオピニオン外来を今後予定している.
2008 年度手術件数
Hydrocephalus
水頭症
67
VP/SP シャント(新設)
VP/SP shunt, newly setup
23
VP/SP シャント(再建)
VP/SP shunt, revision
16
神経内視鏡手術
Neuroendoscopic surgery
Others
その他
Congenital anomaly
先天奇形
20
138
Cranium bifida
二分頭蓋
MMC/Meningocele
脊髄髄膜瘤
Craniosynostosis
CVJ lesion
Tumor
18
42
Brain tumor
脳腫瘍
テント上
supra tentorial
27
テント下
infra tentorial
7
脊髄腫瘍
頭蓋骨
機能的疾患
Spinal cord tumor
3
Skull
5
Functional lesion
機能的脊髄後根切断術
19
Functional posterior rhizotomy
ITB pump implantation
バクロフェンポンプ埋め込み
Epilepsy
てんかん
Corpus callosotomy
Vascular lesion
血管障害
1
37
頭蓋内外血管間接吻合術
頭蓋内外血管直接吻合術
EDAS
7
STA-MCA anastomosis
2
ICH
6
脳動静脈奇形
AVM/AVF
ガレン大静脈瘤
VGA
その他
Others
Trauma
外傷
1 (2)
Moyamoya disease
もやもや病/類もやもや病
頭蓋内出血
1
2
Subdural electrode
硬膜下電極設置術
脳梁離断術
18
4 (5)
Focus resection
焦点切除術
3
18
1
10
急性硬膜下血腫
Acute subdural Hx.
1
硬膜下腔液貯留
Subdural fluid collection
3
Skull fracture
頭蓋骨骨折
2
ICP sensor
頭蓋内圧測定
その他
10
4
Others
その他
腫瘍
22
34
Intracranial cystic lesion
頭蓋内嚢胞性病変
頭蓋頚椎移行部病変
38
Tethered spinal cord syndrome
脊髄係留症候群
4
8
脊髄脂肪腫(脂肪脊髄髄膜瘤含む) Spinal lipoma
頭蓋骨縫合早期癒合症
8
Others
4
27
総計 344 件