防汚機能を有する 生体適合性複合高分子材料 九州大学 山形大学 大学院工学研究院 応用化学部門 教授 田中敬二・准教授 松野寿生 大学院理工学研究科 バイオ化学工学専攻 教授 田中 賢 1 研究背景 血液適合性高分子表面 ミクロ相分離表面 超親水性表面 生体膜類似表面 PS-PHEMA共重合体 PEG修飾 PMPC Han (1989) Nakabayashi (1992) Okano (1981) 現状では、血液適合性表面設計の一般論は確立されていない。 九州大学, 2012 2 研究背景 ポリ(アクリル酸2-メトキシエチル)(PMEA) CH2 CH ¾ 有機溶媒易溶性 n C O ¾ 非水溶性 O CH2 2 O CH3 ¾ 透明性 ¾ 粘着性 血清成分 PMEA 血清成分の吸着抑制能 人工心肺コーティング剤 九州大学, 2012 3 問題点 PMEA膜 基板 100 μm/div ¾ PMEAは室温でゴム状態にあるため、固体基板上に製膜すると 「はじき現象」により形態を保持できない。 ¾各種表面解析に適する薄膜の作製が困難なため、表面の構造・物性 が明らかになっていない。 ¾PMEA表面の構造・物性と血液適合性発現機構の関係は未解明。 ¾PMEA単独ではマイクロメートルオーダーの厚膜しか作製できない。 九州大学, 2012 4 新技術の基となる研究成果・技術 表面偏析に基づく安定なPMEA表面作製技術の開発 PMEA PMMA CH3 CH2 CH n + CH2 C PMEA表面 熱処理 n C O C O O CH2 2 O CH3 O CH3 ブレンド膜 基板 ¾ 室温でガラス状態 ¾ 安定な膜形態の維持 PMEAを、室温でガラス状態であり膜形態の維持が容易な PMMAと混合し、さらに熱処理することで安定なPMEA表面 を作製した。 九州大学, 2012 5 新技術の基となる研究成果・技術 (PMEA/PMMA 50/50)ブレンド膜表面形態 (PMEA/PMMA)ブレンドの相図 450 100.0 400 350 353 K 300 相溶領域 (ガラス状態) 250 Height / nm Temperature / K 相分離領域 相溶領域 (ゴム状態) 20 μm 0.0 (原子間力顕微鏡(AFM)観察) 50 wt% 200 0 自乗平均面粗 さRMS 2.6 nm 20 40 60 80 Bulk PMEA fraction / vol% 100 : ブレンドの相分離温度 (Flory-Huggins式) : ブレンドのガラス転移温度(Tg) (Fox式) 最表面におけるPMEA体積分率 φsPMEA(0) = 100 vol% (角度依存X線光電子分光測定) PMEA表面 PMEA/PMMA 基板 T. Hirata, H. Matsuno, M. Tanaka, and K. Tanaka, Phys. Chem. Chem. Phys., 13, 4928 (2011). 九州大学, 2012 6 新技術の基となる研究成果・技術 Surface PMEA fraction / wt% (PMEA/PMMA)ブレンドの表面組成(熱処理温度@曇点以上) 100 表面張力 γPMEA γPMMA < (42.2 mN·m ) (36.7 mN·m ) 80 2 40 分子量 1 1. 2. 20 0 -1 -1 60 0 Before annealing After annealing Mn,PMEA (26k) <M n,PMMA (85k) 20 40 60 80 100 Bulk PMEA fraction / wt% 分析深さ 7 nm annealing : PMEA 九州大学, 2012 7 新技術の基となる研究成果・技術 (PMEA/PMMA)ブレンド膜(熱処理温度@曇点以上) PMEA/PMMA = 50/50 形状像 PMEA表面分率の深さ依存性 PMEA fraction / wt% 100 位相像 (PMEA/PMMA) 80 (50/50) 60 2 20 μ m 40 (10/90) 1 20 0 0 2 4 6 Depth / nm 8 20 μm 断面プロファイル 150 PMEAリッチ相 オーバーレイヤー (非相溶) 10 100 50 熱処理により、 PMEAが表面濃縮した。 0 0 20 40 60 Distance / μm 80 九州大学, 2012 8 新技術の基となる研究成果・技術 (PMEA/PMMA)ブレンド膜(熱処理温度@Tg以上曇点以下) PMEA/PMMA = 50/50 形状像 位相像 100 φ sPMEA(z) / % 熱処理時間 90 1. 2. 6h 12 h 80 70 20 μm 60 断面プロファイル 20 0 2 4 6 Depth / nm 8 10 熱処理条件の最適化により、 平坦なPMEA表面が形成した。 Height / nm 50 20 μm PMEA濃縮層 (相溶) 10 0 0 20 40 60 Distance / μm 80 九州大学, 2012 9 新技術の基となる研究成果・技術 (PMEA/PMMA)ブレンド膜の水中安定性 PMEA/PMMA (50/50 wt/wt) 水中浸漬1 h後 1 μm 2 1 RMS = 0.33 ± 0.01 nm 0 1 2 3 4 Distance / μm 5 1 μm 1 μm 0.0 4 Height / nm -10.0 3 0 10.0 Height / nm Height / nm 1 μm 0.0 4 Height / nm 4.0 Phase / deg. 10.0 Phase / deg. 4.0 水中浸漬24 h後 -10.0 3 2 1 0 RMS = 0.36 ± 0.01 nm 0 1 2 3 4 Distance / μm 5 表面形態は水環境下においても安定であった。 九州大学, 2012 10 10 新技術の基となる研究成果・技術 48 40 68 53 47 39 67 66 51 0 4 8 12 Time / hour 16 49 46 45 0 4 8 12 Time / hour 16 43 38 37 36 44 50 65 64 52 θ / deg. 54 θ / deg. 69 θ / deg. θ / deg. 表面凝集構造の水中浸漬時間依存性 0 4 8 12 Time / hour 16 35 0 4 8 12 Time / hour 16 PMMA PMEA/PMMA PMEA/PMMA PMEA PMMA ホモポリマー膜 (10/90) ブレンド膜 (50/50) ブレンド膜 積層膜 (ホモポリマー膜) 気泡接触 気泡が非接触 試料 sample θ air water シリンジ 九州大学, 2012 11 11 新技術の基となる研究成果・技術 66 53 47 52.5 ° 52 51 0 4 8 12 Time / hour 16 49 40 46.0 ° 46 45 0 4 8 12 Time / hour 16 43 38.7 ° 39 38 37 36 44 50 65 64 48 θ / deg. θ / deg. 67 54 θ / deg. 68.0 ° 68 θ / deg. 69 0 4 8 12 Time / hour 16 35 0 4 8 12 Time / hour 16 PMMA PMEA/PMMA PMEA/PMMA PMEA PMMA ホモポリマー膜 (10/90) ブレンド膜 (50/50) ブレンド膜 積層膜 (ホモポリマー膜) 水界面自由エネルギー(γ1-2) γPMMA-water > γPMEA-water (17.4 mJ·m-2) (1.1 mJ·m-2) 水中における静的接触角測定より算出 プローブ: 空気(気泡),n-ヘプタン PMEAはPMMAより安定な水界面 を構築することが可能 九州大学, 2012 12 新技術の基となる研究成果・技術 血小板粘着数 血小板粘着試験 2. 血小板粘着 platelet water sample sample 浸漬時間: 0, 8, 16, 24 h NumberPLT (cells / 104 μm2) 1. プレ水中浸漬 35 30 0h 8h 16 h 24 h 25 20 15 10 5 0 PMMA blend (10/90) blend (50/50) PMEA PMEA多成分膜では、プレ水中浸漬時間を長くすることで、 血小板粘着数を低下させることができた。 ブレンド膜は、PMEAホモポリマー表面と同等もしくはそれ以上 の血小板粘着抑制能を示した。 九州大学, 2012 13 従来技術とその問題点 PMEAは、既に人工心肺等のコーティング 剤として実用化されているが・・・ ¾ コーティング特性が低い ¾ 血液適合性の発現機構が不明 等の問題がある。 九州大学, 2012 14 新技術の特徴・従来技術との比較 ¾従来技術の問題点であった、コーティング特性 の改良に成功した。 ¾PMEA単独でのコーティングより血小板粘着 抑制能が向上した。 ¾本技術の適用により、PMEA使用量の低減が 図れるため、コーティングコストが1/2~1/3 程度まで削減されることが期待される。 九州大学, 2012 15 想定される用途 防汚機能を有するコーティング剤 ¾ 医用器具 (人工血管・人工心肺・透析膜 etc) ¾ 建築材 (医療施設、水道設備) ¾ 船底塗料 九州大学, 2012 16 想定される業界 ¾ 利用者・対象 医療器具メーカー ¾ 国内市場規模 生体適合性材料 (ゼラチン、抗血栓性コーティング) 2010年 11.9億円 2020年予測 9.9億億円 九州大学, 2012 17 実用化に向けた課題 ¾PMMA以外のアルキルアクリレート、ポ リエステル等、他の高分子とのブレンド 膜についてデータを取得し、適用可能な 高分子の種類の拡大を図る。 九州大学, 2012 18 本技術に関する知的財産権 発明の名称: 生体適合性材料、医療用具 及び医療用具の使用方法 出願番号 : 特願2011-270727 出願人 : 九州大学、山形大学 発明者 : 田中敬二、田中 賢、他2名 九州大学, 2012 19 産学連携の経歴(田中敬二) 2006年-2009年 NEDO産業技術研究助成 過去3年間:50件の共同研究・技術指導を実施 九州大学, 2012 20 お問い合わせ先 九州大学知的財産本部 技術移転グループ TEL 092-642 -4361 FAX 092-642 -4365 e-mail [email protected] 九州大学, 2012
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