世 が 世 な ら 駅 前 の 名 店

秋田市大町 丁目、通称横町通り
の一方通行の狭い道筋に、
周囲の家並
とはおもむきを異にするレンガ造りの
建物がある。
さほど大きくはないもの
の、
どっしりと存在感がある。
この建物は明治 年に旧大嶋商会
の店舗として建てられた。
ハイカラな
洋品雑貨を扱い、「秋田県最初の百貨
店 」であったと も 言われている。しか
し、繁華街でもなく、
さほど人の往来
が多いわけでもない場所になぜこれほ
どの店が?
それには 大 嶋 商 会 創 業 者のちょっ
とした
〝誤算〟
があった。
明治 年代に
奥羽線の建設が青森側と福島側から
進められ明治 年に秋田駅の開業を
見るのだが、その秋 田 駅の設 置 場 所
を 市の東 側にするか西 側にするかで
誘致合戦が繰り広げられた時、大嶋
某は西側の一人として誘致運動に加
わった。
つまり、将来この場所が「秋田
駅前」
になるであろうことを見越して
〝先行投資〟
したのだ。
しかし 結 果 的
に秋 田 駅は 現 在の場 所に決ま り、大
嶋 商 会 店 舗は 住 宅 街の中にポツンと
取り残されてしまった。
現在の建物は所有者が変わり、平
成6年からは生花店「花京都」
が借り
受けている。「花京都」店主によれば、
店内で作業をしていると建物の写真
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を撮っていく人の姿をよく目にすると
か。
建築ファンには知られた存在だ。
ち
なみに、店内は至ってシンプル。建物見
物のついでに店オリジナルのプリザーブ
ドフラワーでも買い求めてはいかがだ
ろう。
店の前の通 りは 、2020年の完
成を目指して 年度から道路拡幅事
業がスタートする。そうするとこの建
物も引っ掛かる。
貴重な明治期秋田の
建築、
移築してでも保存する手だてが
ないものかと 所 有 者は 考えているよ
うだ。
赤れんが郷土館(旧秋田銀行本
店)
よりも 年あまりも早い建物だ。
遺す意義は大きい。
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〜旧大嶋商会店舗・秋田市大町〜
川反通り
本町通り
旭川
南大通り
有楽町通り
赤れんが館通り
茶町通り
(現 花京都)
5丁目橋
横町通り
旧大嶋商会
(文/己戸 春策 ・イラスト/堀 千里)
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↑至竿燈大通り
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世が世なら駅 前の名 店
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[所在地]秋田市大町6丁目5-7
※営業中の店舗につき、見学は外観のみ